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ひらめきの月曜日
 
スウィーツをつまみに、花見酒を

お酒を飲んだ時は、甘いものを食べない派だ。
飲み会で「抹茶アイスとバニラアイス、どっちがいいー?」と声をかけられたら、反射的に「どっちも結構です」と言ってしまうくらいだ。
でも先日、知人の年下女子に、
「私、家でひとりで飲む時、時々、ショートケーキをつまみに、赤ワイン飲むんですよ。気持ち悪がられるかもしれないから、人にはとくに薦めないんですけど…。」
と言われた時、ピン! とくるものがあった。
え、それは美味しいんじゃないの…? よくわからないけど…。
何故かそんな気がした。

大塚 幸代



そこで、記事「練馬で、すっぱいビールが美味しかった」「あっためて飲 むとおいしいお酒はどれだ?」でも登場して頂いた、『酒舗 石塚』の若旦那・石塚博康さんにご協力いただき、お話を伺いつつ、試食&試飲をしてみた。

――根本的に、スウィーツとお酒って、合うんでしょうか。
「よく合いますよ。」

――若旦那は甘いもので飲むんですか?
「僕は何でもツマミにしますよ(笑)。うちの大旦那は、大福や甘納豆と日本酒を合わせて、よく飲んでますね。 基本、甘いものには、甘いお酒を合わせるんです。」

――コーヒーやお茶は苦いものを合わせるのに、お酒だと、甘いものじゃないと駄目なんですね。
「お酒も甘味も両方、糖度を感じる食べ物ですから、バランスを合わせないといけないんです。
ケーキにはワイン、和菓子は日本酒でしょうね。淡麗辛口ではなくて、コクのある、旨味があるものと合わせるといいですね。」

――チョコレートはもともと、洋酒と合わせて食べる文化が、ありますよね。
「ウイスキーの苦みに、カカオの苦みが合うんです。
チョコレートは何にでも合わせやすいんですよ。日本酒にも、赤ワインにも合いますよ。」

――『お酒の会』(石塚は不定期で『お酒の会』を開催している、参加者がツマミを持ち寄るのが恒例)で、甘いもの持ってきた方って、今まで、いらっしゃいましたか?
「アップルパイを焼いてきた方がいたんですが、あれは難しかったですね。りんごの部分じゃなくて、パイの部分の食感に、お酒を合わせるのが難しくて。ビール、日本酒も駄目でした。あの時は試さなかったのですが、リキュールのような甘いお酒が良かったのかも…。」

――じゃあ、今日、いろいろ試してみましょう!

というわけで、実際に石塚で売っているお酒の中で、「スウィーツ向きの酒」を選んで頂いた。

 

大福の甘みと酒の旨味が、ふくらむ!


石塚の試飲スペースにて、大福と日本酒。妙な光景。

「大福におすすめのお酒は、『分福 純米吟醸、無濾過、生原酒』群馬県分福酒造)と、『カネタマル、純米吟醸、15BY』(栃木県若駒酒造)ですね。
『分福』は生酒、『カネタマル』のほうは一回火入れした半生状態のお酒です。
両方とも、冷蔵庫で熟成させてます。」

――吟醸といえば雑味が少なくスッと飲めるお酒ですけど、寝かせると甘くなるんですか
「そうですね。『分福』はマイナス5度の冷蔵庫で7年間熟成させていて、もともと新酒の時は辛口のお酒だったんですが、寝かせることでかなり変化して、旨味のある濃厚な味わいになっています。
『カネタマル』は蔵の冷蔵庫で6年熟成させていて、すごく旨味が凝縮してます。食前酒やデザートワイン感覚で、ってラベルにも書いてあります。」

――二つとも旨味があって、甘く感じるお酒なんですね。ではさっそく、まず『分福』のほうから。(試食)……お!
「大福の甘みと酒の旨味が、ちょうど合いませんか?」

――味が合わさって、ドーンとふくらむ感じがします! これがいわゆる、料理とお酒のマリアージュってやつなんでしょうか。マリアージュって、グルメ漫画の中でしか知らなかったけど、こんな感じなんですね。
お酒の味の中で、大福の豆の味が、豆として、きちんと際立って香りますね。


大福は太子堂で買いました。

――『カネタマル』のほうは、…(試食)、ふくらみ度は少ないですけど、大福とすんなり食べられます。違和感全然ナシです。日本酒、全然イケますね!
「大福のほかにも、チョコレートにも合いますよ。」

――この2種以外で、『スウィーツに合わせる日本酒』の選び方のポイントを、教えて頂きたいんですが…。
「本来は低温熟成している、旨味のあるお酒がいいんですが、熟成していないお酒の場合は、『日本酒度』は数値が低いぐらい、『酸度』は、出来れば数値が高い方がいいですね。
逆に通常の古酒だと、お酒の風味が強過ぎて、食べ物の味が分からなくなっちゃうので、注意ですね。」

 

生クリームだけ食べてるのに、ふわーっとベリーの香りが

――次はショートケーキです。シュークリームも買ってみました。


ケーキはFLOで買ってみました。

「シュークリームは難しいですねえ。何がいいかなあ。アップルパイの時もそうでしたけど、具よりも、シュー生地の食感が難しいんですよね。」

――ではまず、ショートケーキのほうを。
「ショートケーキやチーズケーキには、基本的に甘いワインです。
ケーキ自体の味わいを壊さずに食べるには、スパークリングワインを合わせるのが一番いいんですが、赤ワインを飲むことによって、味が変わります。
今回は、スペインの、樽で熟成させた、渋みとコクがある、フルボディの赤ワインを合わせてみますね。好みにもよりますが、赤ワインの渋みと、ケーキの甘みがマッチすると思うんです。」


今回飲んだのはマルケス・デ・アリカンテという、スペインワインでした。石塚価格、980円。お手頃。

――(試食)おおー。生クリームの部分だけ食べてみたのに、ふわーっとベリー系の果物の味がします。何ですかこれ! ワインがぶどうだから!?
「樽で熟成してるワインは、ぶどうの皮と果汁の旨味が増すんですよ。だから最初にベリー系の香りがひろまって…。クリームとフルーツと、丁度合うんですよね。」


すっげー合うわ、これ。

――んー(再び試食)、いちごの部分だけ食べて飲むと、果物の香りがすごく強調されますね。
「これは4ヶ月寝かせた樽熟スペインワインですけど、何年も寝かせたものだと、今度は樽の風味が強過ぎちゃうんですよね。このくらいのワインが、ケーキには丁度いいと思います。」
――シュークリームとは…(試食)合わないですね。何故だろう。
「卵の黄身とか、バニラビーンズとか…、いろいろな風味のものが入ってるからでしょうね。ちょっといま、梅酒で試してみたんですけど、梅酒だと、今度は梅酒のほうが強くなっちゃいますね。悔しいですね(笑)。ちょっと待ってください、考えます。」
――じゃ、シュークリームは保留で。

 

チョコレートは何にでも合う&裏技も

――次は何にでも合わせやすいという、チョコレートです。


ハイカカオのチョコレートと、ミルクチョコレートを用意しました。

「さきほど紹介した日本酒の、『分福』と『カネタマル』は、チョコレートでも合わせやすいと思います。先に口の中でチョコを溶かして、飲んでみてください。」

――(試食)すごく複雑になりますね。チョコの素材が際立って、この部分がカカオだよ、この部分が砂糖だよ、って主張するような味で。面白い。ミルクチョコにも、ハイカカオのチョコにも合いますね。
「ハイカカオのほうが、何にでも合わせやすいですね。でも樽熟ワインには、ハイカカオよりミルクチョコレートのほうがいと思いますよ。」

――さっきの樽熟ワインですね。(試食)おお、果物の味。ワインだけ飲むのと違って、やたらフルーティで飲みやすくなりますね。
「逆に言うと、間違ってスーパーで、安い薄いワインを買って、飲みやす過ぎて物足りないと思ったら、口の中にハイカカオのチョコレートを含んでから飲むと、複雑な高級ワインの味に変身するんですよ(笑)。」

――それは…いい裏技ですね。
「本当、チョコレートが一番合わせやすいんですよ。ウイスキー、ブランデーはもちろん、日本酒にもワインにも、黒糖焼酎にも。黒糖焼酎も試してみますか?」

――はい!(試食)…うーん! チョコとお酒の味がふくらみますねえ。ふくらむのが、合う組み合わせなんですね。
「黒糖焼酎が合うということは、ラム酒にも合うんですよね。」

 

フレンチクルーラーには、あのあまいお酒を!

――そして最後に、ドーナツです。いろいろ持ってきましたが、フレンチクルーラーをお題にしたいんですが。


ミスタードーナツ! 写真右がフレンチクルーラー。砂糖がけの甘くてニクいヤツ。

「何が合うのかなあ。やっぱりワインかなあ。(試食)…違いますね。
シュークリームとドーナツは、難しいですね。何がいいですかね。…………これ、どうでしょう。『はちみつのお酒』(高知、土佐・菊水酒造)」

――はちみつ100%で作られた、甘いお酒ですね。飲んでみます。(試食)……あっ! アリです、ふくらんだ感じがします、ドーナツに負けてない!


甘いお酒が、甘いドーナツを包み込んで、ふわっと味がふくらむ!

「シュークリームのほうも、はちみつのお酒で…(試食)あ、イケますね! ということは、アップルパイも、はちみつのお酒だったら、合ったのかもしれませんね。
あと考えてみると、『あたためて美味しいお酒』は、基本的に甘いものと合いますね。」

――温めると美味しいお酒と、甘いものに合うお酒が、何故、共通してるんでしょうか。
「どれも、旨味が凝縮されてるお酒だからですね。
……あとですね、今回、紹介した以外にも、甘いものに合うお酒、ありますよ。
『生酒のにごり酒』は、ケーキと大福、チョコレートに合いますね。 にごりのクリーミーな旨味と生酒のフレッシュ感が、上手くマッチするんです。
また、岐阜県のみりん『玉泉白瀧 三年熟成 純米本みりん』もいいですよ。 」

――え、みりん!
「濃厚でカラメルの様な旨味が、チーズケーキ、ティラミスや大福、羊羹、チョコレートに最高です。 」

――面白いですね。スウィーツ酒、楽しいですね!
「個々人で、旨味の種類をうまく合わせて、楽しんで頂ければいいんじゃないかと思います。」

――今回、こっそりお酒の値段を見てたんですけど、特別に高いお酒はないですね。
「はい、気軽に試して頂けますよ(笑)。」

レッツ甘味酒!

ポイントをまとめると、スウィーツに向いているのは

  • 和菓子には、低温熟成している旨味のある日本酒か、無ければ『日本酒度』は数値が低いぐらい、『酸度』は出来れば数値が高い日本酒を。
  • ケーキには、スパークリングワインか、樽で4ヶ月くらい熟成させた、渋みとコクがある、フルボディの赤ワインを。スペイン産かアルゼンチン産が、入手しやすく安価。
  • チョコレートには、ウイスキー、ブランデー、ワイン、日本酒、黒糖焼酎、なんでもござれ。
  • シュークリームやドーナツなどには、リキュール的な甘みの強い酒、例えば、はちみつのお酒(ミード)を。
  • にごり酒やみりんも、甘味に合う!?

といった感じか。

結論ですが…。
飲めるよ。甘いもので、お酒、楽勝で飲める。
「こんなところに、こんな味わいがあったのか」とショックだった。
新たな世界が見えました。ニューワールド!

貴方もこの桜の季節に、花を見ながら、
お互いの近況など話しながら、静かに甘味酒はいかがですか。
とりあえず、女子にはウケる気がします。ウケないわけがない!

取材協力

酒舗 石塚
東京都練馬区関町東1-1-8
03-3920-1124
http://www16.ocn.ne.jp/~ishizuka/27.html

紹介した中のお酒には入手困難なものもありますので、お店に問い合わせてみてください。

店内で常時、いろんなお酒の試飲が出来ます。 事前に、四代目の若旦那に予約しておくと「若のナビゲートによる、比較試飲」もやって戴けるそうです。

不定期開催で試飲会もアリ。詳しくは、ソーシャル・ネットワーキング・サービス、mixiのコミュニティ
「酒舗 石塚」 まで。
http://mixi.jp/view_community.pl?id=1221978


ライター大塚よりおしらせ。初めて電子書籍というか電子ZINEを作ってみました。当サイト「デイリーポータルZ」にて試した料理を集めた本『コネタレ シピ』です(全30P)。『パブー』にてβ版を無料配信中です、よかったら見てね!
http://p.booklog.jp/book/14185


 
 

 

 
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