おぉ〜これはなかなか良い湯だなぁ〜ハハンなどと良い気分に浸っていると、どこからともなくブルルルルという低いエンジンの音が聞こえてきた。そしてその音は、うなりを上げつつ道路の方へと遠ざかっていく……って!
私は慌てて道路に飛び出すと、大声を上げ、諸手を振ってバスに合図を送った。それを見た乗客の誰かが、運転手さんに言ってくれたのだろう。バスはしぶしぶといった感じで路肩に停止し、その扉を開けた。
私は肩で息をしながらそれに乗り込み、運転手さんと乗客の方々に頭を下げる。いやぁ、危ない、危ない。荷物は全て、バスの中に残していたままだったのだ。席に座り、荷物の安全を確認し、ほっと一息。
久方ぶりに全力で走った為か、それとも温泉の効用なのか、いや、その両方だろう。お湯につけていた手は、しばらくポカポカと暖かかった。 |