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ロマンの木曜日
 
「建築かもしれない展」に行ってきた

最初の課題は「環境のノイズ」

まずぼくの目をひいたのは、石川先生による「環境のノイズ(宿題2)」という課題だった。内容はつぎのとおり。

■環境のノイズ(宿題2)

「環境のノイズ」を見出し、その由来や経緯を調べ、現状を報告する。以下の手順にて行う。

1.地図上で「不自然な箇所」「奇妙な記載」(ノイズ)を見出し、特定する。
2.現地へ赴いて、その箇所が実空間上にどのように現れているかを観察する。
3.地形図や旧版地図、空撮写真などを駆使し、その箇所の歴史的経緯や地形的文脈などを調べ、「ノイズ」発生の由来を推測する。

要約すると、地図上にヘンなものを見つけて現地に行き、なぜそうなっているかを考えなさいというものだ。


それに対する田熊さんの回答

それに対する1年生の田熊さんの回答におおいに共感した。


彼が見つけたヘンなものは、上の地図の赤線で引いたところ。すぐ南の大通りに対する妙なバイパスができている。大通りのさらに南側は学習院女子大学で、左側を南北に走るのは明治通りだ。

彼はここに「奇妙な分岐を発見した」という。分かる!分かるよ!

じつはこの道、ぼくも以前から妙だなと思っていたのだ。


現地はこんなふう

ここは、早稲田大学の理工学部キャンパスから本部キャンパスへ抜ける近道の途中にある。ぼくも学生時代ここを通るときに妙だなと思っていたのだ。同じことを考えている人がいる!とうれしくなった。

で、彼は昔の空撮写真を見て驚愕の事実を発見する。こっちのバイパスこそ、昔は本道だったのだ。


驚愕の事実。まっすぐの道はなかった!

そして彼は考える。当初の道は曲がっていて、いまの新道はまっすぐだ。なぜ最初からまっすぐ作らなかったのか?

彼は調べた。調べたが分からない。どうしても分からない。これはまじめな課題だ。どうしよう?選択肢は2つ思いつく。

1.調べられなかった理由を言い訳して終わる
2.そもそも対象地点を変えて調べなおす

彼が選んだ終わり方はこうだ。


大金持ちイケメンだな

深刻になることなく、ここまでしか分かりませんでしたということを、イラストつきで面白く伝えている。これ、なかなかできることじゃないです。

じつはぼくも当サイトではこの課題と似たようなことを何回もやっていて、この前だと「へんな区境をめぐる」という記事を書いている。

区境の形がなぜそうなっているのか分からず、区役所の人に聞いても分かりませんでしたと言い訳ぽく終わらせてしまった。彼に学ばないといけないと思った。

 

もうちょっとだけつっこむ

せっかく彼に動機をもらったので、もうちょっとだけしらべてみよう。上の写真のとおり、昭和22年の空撮では道はくねっとしていた。じゃあその前の地図ではどうだろう?


東京時層地図(iPhoneアプリ)より

関東大震災直前の大正初期には、左右の道は食い違い、何とつながっていなかった。その後の震災の復興に伴って、便利なように道をつなげたんじゃないだろうか?

でもなんで最初にくねっと作ったのかはやっぱり謎だ。大金持ち説にぼくも一票入れたい。


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