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ひらめきの月曜日
 
意外材料食品を探る

君たちになら騙されてもいい

続いて探ってみるのはお菓子類。捜索にやってきたのは、京橋にある明治屋ストアー。


重厚な構えの明治屋
知らないうまそうさがいっぱい

ジャムなどで全国的にもおなじみの明治屋。いくつか高級スーパー形態の店舗を展開していて、こちらもそのひとつ。いかにも歴史がありそうな建物に入るだけでも楽しい。

店内には普通のスーパーでは見かけないような品々もいろいろ。写真の「デラックスケーキ」は、シンプルな商品名と、独特の包装紙が魅力的。

そんな中から選んできたのはこれだ。


品のあるデザインの瓶
「MINCEMEAT」は「ミンスミート」と読みます

買ってきたのはイギリスからの輸入品である「ミンスミート」なるもの。「mince」とは、「細かく刻む、挽く」という意味。つまり名前だけで言うと「挽き肉」といったところになる。

ただ、実のところはそうではない。イギリスに伝わる保存食の一種で、牛肉や果物やスパイスを脂肪分と一緒混ぜ込んだものだ。特にクリスマスシーズンのお菓子作りには欠かせないものであるらしい。


高級なジャムのようにも見える
確かにそうだ

瓶から出すと甘くてスパイシーな香りが広がっておいしそう。食べてみる。

…これは、フルーツ入りのパウンドケーキを徹底的に凝縮した味だ。こういう味のパウンドケーキ、食べたことが誰にでもあると思う。

パッケージを見ると、やはりパウンドケーキの材料とするのは一般的な用い方のひとつであるようだ。あのケーキから、具だけを取り出してまとめて食べた味だと思ってもらえるとよくわかるだろう。

ただ、パッケージの表記には気になることもあった。


肉が不在の原材料欄

原材料名のところに、牛肉の文字がないのだ。

実はミンスミート、当初は肉やフルーツを混ぜ合わせて作ったものらしいが、その後の変遷で今ではイギリスでも肉の入っていないものが一般的であるらしい。

残っているのは名前だけなのだ。肉なき肉食品、ミンスミート。


新高島平駅のすぐ近く
すごい値段のカットケーキ

こうなると気になるのは本来のミンスミート。なんとかならないかと調べてやってきたのは、板橋区にある「ガトーマスダ」という洋菓子店。

店内には様々な焼き菓子が並べられているこの店。中にはわずか1カットで1050円という「熟成ショコラケーキ」があるなど、かなり本格的なお店だ。

カット前の一本売りだと10500円の値札がついていたそのケーキ。これのミンスミート版もあると聞いて出してもらった。


しっかり確認できるミンスミートの文字

こちらがその「ミンスミートロワイヤルケーキ」。1カットなのに個別に箱に入ってるのがすごい。「いにしえの英国に生まれ、たゆまぬ努力で現代の宝によみがえった」と書いてあるのも、気分を盛り上げてくれる。

しかし、先ほど書いたとおり、現在では本場イギリスでも果物のみのとなっているミンスミート。こちらのはどうなのだろうか。


原材料欄を確認すると…
あった!

パッケージを確かめてみると、確かにあった「牛肉」の文字。

しっかり牛肉が使われている、クラシックタイプのミンスミートケーキ。それ以外にも使われている材料の種類がとても多くて、食べる前から複雑な味わいが期待できそうだ。


ババーン
お肉はどこかな?

箱から出してみる。広がる甘い香り。先ほどのミンスミートの瓶詰めと似通った匂い。このケーキも瓶詰めも、両方とミンスミートであることがよくわかる。

しかしこちらは牛肉入り。目を凝らして探してみるが…これぞ牛肉!というものを見つけることはできない。たくさんの具がふんだんに入っていて、見分けが付かないのだ。

食べてみる。ものすごく濃厚な風味。よくあるこの手のケーキの濃さと複雑さを数倍にしたような味わい。肉の有無にこだわっていたことを忘れるような、圧倒的なおいしさだ。

姿こそ見えないけれども、肉もこのハーモニーの一部として溶け込んでいるのだろう。目には見えなくても、心に肉はある。そういうことなのだと思う。

 

では、いよいよ最後の意外材料食品を紹介しよう。こちらである。


何の変哲もなく見える

目玉焼きとウインナーとおぼしき写真。どこに意外性があるのだろうか。ではその実体を解き明かしていこう。


小さくヒントも見える
 

やってきたのは文京区湯島にある「花月」というお店。大きなお店ではないが、老舗のたたずまいが感じられる店構えだ。

買ってきたのは右の包み。ふろしき風の紙に包まれて、パッケージングにも風情がある。これではなんだかわからないだろう、では開けてみよう。


老舗のウインナー?

見えてきたのは袋詰めにされたウインナー。いや、あの店構えとあの包装で、ウインナーというのはないだろう。全体的にあまりにも和風すぎる。


正解はこちら
正体がわかってもなおウインナー的

実はこれ、ウインナーではなくかりんとう。60年以上前からあるこのお店、温度の違う油で三度揚げして作ったのがこのかりんとうなのだそうだ。

しかしそうだとわかってもウインナーのように見える擬態力。もちろん手に取ったときの軽さと、口に入れたときの味わいでかりんとうだとわかるのだが、食べたあとでもまたウインナーに見えるからすごい。

ただおいしさを味わうだけでなく、正体を知ることでも楽しめる意外材料食品たち。まだまだ探せばたくさんありそうなのも楽しみだ。

最後に載せた写真もウインナーに見えるかりんとう。このあと目玉焼きとかりんとうを交互に食べて、思ったよりめちゃくちゃな組み合わせでもないな、と思いました。


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