車やバスで移動しているとき、長い橋やトンネルを通ることがある。普段は何気なく通り過ぎてしまうので、橋やトンネルの形や景色を気にすることはあまりないし、どのくらい長いのかもよく分からない。
そこで、橋やトンネルを自分の足で歩いて通る友の会を結成。どんな景色が見えるのか、どのくらいの長さなのか、体験してみた。
(萩原 雅紀)
新木場駅から歩く
「長い橋やトンネル」とは言っても東京近郊にはそうそうない。なので微妙なニュアンスではあるけど、そこそこの長さの橋を求めて、まずは新木場駅にやってきた。
新木場駅のあたりは東京メトロ有楽町線とりんかい線、そして首都高速が高架で並走しているので、高架橋がずらっと並んでかっこいい。会員からも歓声が上がる。高架の隙間から漏れる日の光が爽やかだ。
ここから線路や高速と平行して走る一般道を東へ歩く。埋め立て地らしい一直線の歩道は狭くて、片側はスピードに乗った車が通り過ぎ、反対側は植物が手のつけられない育ち方をしている。
こんなとこ誰もいないだろうと思ったら、歩き初めはアウトドア風の男女グループと鉢合わせた。双方のメンバーが入り乱れ賑やかな道中になったけど、彼らは楽しそうに笑いながら近くの公園に入って行った。バーベキューだろうか。休日の昼下がり、バーベキューをする男女グループと、歩いて橋を渡る友の会。
楽しさで言ったらこっちだって負けねーかんな!ひとりの会員の叫びが沈黙を破った。
しばらく歩くと、先の方で道路が急に上り坂になっているのが見えてきた。あそこが目的の橋の入口だ!会員のテンションも上がる。
荒川河口橋を歩いて渡る
新木場駅から20分くらい歩いて到着したのは、京葉線と首都高速湾岸線、そして国道357号線が並走しながら東京最大の河川、荒川を越える荒川河口橋。
その名の通り荒川でもっとも下流に架かる橋で、目と鼻の先は東京湾。ほとんど海抜ゼロメートルに近い位置から橋の頂点の27mまで一気に上り、向こう岸までの全長は840mとなかなか渡り甲斐がありそうだ。前例がないのでまったく適当だけど。
実際に歩いてみると思ったより長い。車で通ってしまえばあっという間だけど、息を切らして登りながら周りの景色を眺めてみる。
眼下に荒川の水面が姿を現すと、その上をたくさんの船が行き交っているのが見えた。多くはいわゆるプレジャーボートというやつだ。船の行く先を目で追うと、いま登ってきたすぐ脇にマリーナがあるようで、その入口には赤い水門がチラリと見えた。
あれは非常に稀少なセクターゲートだ!
セクターゲートとはラジアルゲートを横に倒した形で...とか説明すると本来の目的から逸れるので、航空写真でみてほしい。
かっこいいでしょ?どうやら近づくことはできないようだけど、この橋の上からは何とか見える。いつか開閉するところを目撃したい。
さらに進むと、ようやく橋の頂点にたどり着いた。いままで知らなかったけど、頂点の部分の歩道は少し外側に膨らんでいて、展望台のようなスペースになっていた。これも徒歩ならではの発見!
展望スペースからの眺めは素晴らしい。東京いちの大河が海に注ぐ、その数百メートルある川幅を視界いっぱいに捉えることができるのだ。この橋の良さは歩かなければ分からない。
バーベキューやってたらこの景色は味わえないのだ。その代わり橋を渡っても焼いた肉や女の子の笑顔は堪能できないけどさ。
そのまま向こう岸に降りて行くと、どこからか賑やかな楽器の音と人々の声が聞こえてきた。音の出所を探して橋から見下ろすと、河川敷に数人が集まり、打楽器を鳴らしながら踊っていた。楽しそう!
車で通り過ぎてしまっては気づかない、こういう発見も歩いて通る醍醐味だ。
渡り終わったあともすごい景色目白押し
長かった橋を渡り切ると、上空で首都高が分岐して、その脇には配管がうねる工場があった。どこかで見たことある景色だなーと思ったら、ライター大山さんがジャンクションを撮っていた場所だ。
そうか、大山さん、こんな場所でひとり夜中に撮っていたのか...と目頭が熱くなる。
橋を降りてから、今度はいま渡ってきた橋を下から見上げてみようと荒川の河川敷に出てみると、4本もの巨大な橋が密集して架かる、ものすごい光景が目の前に現れた。
歩いて渡るとこんなステキなスポットも発見できてしまう。友の会のメンバーも大満足の渡り初めだった。
この余勢を駆って、さっそく次の橋に向かおう。今度は全国にその名を轟かせる超メジャー橋の登場だ。