先ほどしんちゅうの「いいゴミ」をいただいた昭和金属の向かいにあるのが早川ネジ製作所だ。一見普通のマンションに見えるが、扉が重い鉄で出来ている。
重い扉をずずずと開けると中では3人のお父さんたちが機械に向かっていた。高い天井、光り取り窓、機械油の匂い。
ここ早川ネジ製作所では主に大量生産に向かない変形ネジなどを制作しているのだとか。
「インターネットの企画でゴミを集めているのですが」とどこにもウソはないがにわかに意味もわからない申し出をすると、…いいよ、ちょっと待って!といろんなところから削り屑を集めてきてくれた。ありがとうございます。
で、これがまたいいゴミなのだ。
お願いするとみんな親切にゴミをくれる
「これが鉄、でこっちがステンレス。ニッケルが混じるとちょっと色がほら、黄色くなるわけ」
見せてもらったゴミは精密なバネのように丸まっていて一目でいいものとわかった。少しもらえませんか、とお願いすると袋をくれ、中に「鉄」「ステンレス」「しんちゅう」と但し書きまでしてくれた。
先ほどの昭和金属さんしかり、ここ早川ネジ製作所さんしかり、事前に連絡してきたわけでもないのにものすごく親切に対応してくれるのだ。今度改めて取材させてもらいたい。
これら「いいゴミ」は、主に鉄の棒を細く加工する過程で発生するらしい。
削って細くした部分にネジを切るとぴったり元の太さと同じ径のネジができるのだという。詳しいことはわからないが、とにかくすごい技術である。
早川ネジ製作所は昭和22年から続くネジ工場。
「いやあ、後継者はいないよ、ネジは」といいながらも、作業しているみなさんがとにかく楽しそうにやっていたのが印象的だった。
昭和金属さんでもらってきたしんちゅうのゴミを見せると「ああ、これは自動送りだな、だってきれいだもん」と一発で加工方法まで見抜いた。
「うちの機械はほとんど手作業だからさ、ゴミの幅もまちまちなわけ。こんな綺麗じゃないよ」と。
それでもいただいたゴミは間違いなく「いいゴミ」でした。
これらゴミを家に持ってかえって自慢したら子ども(6歳)が羨望の眼差しで見ていたので一本あげたらバネにしてペットボトルのフタを飛ばしていた。やはりわかる者にはわかるのだ。妻は背を向けて食事の準備をしていた。