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ちしきの金曜日
 
羽を広げたクジャクが見たい

目撃情報のある動物園にやって来た

羽を広げたクジャクを求めて、動物園二件目、横浜野毛山動物園にやってきた。編集部古賀さんが羽を広げたクジャクを見た、という場所である。


いい動物園なのに入場料は無料。行かない理由が見あたらない。

ここには国内最高齢のラクダのツガルさんがいることで有名なのだが、園内にクジャクが放し飼いにされていることも忘れてはならない。

僕も何度か足を運んでいるのだけれど、あの自由なクジャクたちが羽を広げたところは一度も見たことがなかった。

自由な、というのがどういうことなのか、ちょっとだけ説明させてください。


会話中に平気で人の間を通っていく。自由。


ここのクジャクは放し飼いである。

飼育員さんに聞いてみたところ、いつからかは分からないが、もうずっと放し飼いなのだとか。

自由を手に入れたクジャクたちの姿は園内のいたるところで見られる。


たいてい野鳥みたいにそのへんにとまっている。もちろん檻とか入っていない。
よくハト(野生)といっしょになって土をつついている。

下から羽だけ見えてる。
追いかけると逆に向かってくる。

園内にはグリーンをベースにした虹色の羽がきれいなインドクジャクと、真っ白な羽のクジャクがいる。どちらも放し飼いである。

半野生という自由を手に入れたクジャクたちは、もはや人間を恐れるなんていうこともない。人がベンチに座るとなにかくれるんじゃないかという顔で当たり前のように寄ってくる。


なに、なにくれるの?って顔して寄ってくる。

僕がベンチに座ってお茶を飲んでいると一羽のクジャクが近づいてきた。羽の長いオスの白いクジャクだ。なにやらごそごそやっている。

と、さわさわ…という衣擦れみたいな音と共にクジャクが大きくなったように見えた。僕のすぐ横でだ。

ま、まさか。


シャーッ!

あっさり広げてくれました

思いっきり広げてくれた。

念願のクジャクの羽広げだ。感動の瞬間なのだけれど、あまりにもあっけなく見せてくれたので少し戸惑ったのも事実。もうちょっと張り込んでから見られることを予想していたのに。


すごい。生き物として、この姿は最終形な気がする。

人が近づいてもまったく動じない。羽を広げたまま向きを変えるので、羽がうちわとなり風を頬に感じる。

ほうけたようにみとれる僕からはなにももらえないと判断したのか、白クジャクはくるりと後ろを向いて別のベンチに向かっていった、羽は広げたままである。羽広げたまま歩けるんだ。

後ろにいたカップルにゆっさゆっさと羽をゆすってアピールしている。水族館のアシカショーならご褒美くれるよこれ、と言わんばかりだ。


でも完全に無視されていた。

緑色の方も見たい

羽を広げたクジャクはものすごく綺麗だし珍しいと思っていたのだけれど、僕以外のお客さんがさほど興奮していなかったのは不思議だった。もしかしてこの記事、カレーって辛いですよね、くらいのあたりまえのこと書いてるのか。

こうなったら虹色のインドクジャクの羽を広げたところも見てみたい。両方の写真があれば記事として締まるだろう。

しかしこちらはなかなかその気になってはくれなかった。1時間くらいいったりきたりしながら見張っていたのだけれど、クジャクは道の脇の茂みでうつらうつらしていただけだ。メスがいないとテンション上がらないのだ、きっと。

しかし何があったのか、だらだらしていたクジャクが急に目を見開いて立ち上がったかと思うと、次の瞬間猛烈な勢いでベンチに向かって突進していった。


あまりにも急に行動を始めるので子どもも驚く。
そのまま一直線でベンチに向かっていくクジャク。もう何しに行ったかだいたいわかる。

ずんずん行って。
子どもを連れたおじさんのところまでやって来ると。

おもむろにテーブルに飛び乗ってお菓子をつつき始めた。

羽が長いので振る舞いは総じて優雅なのだけれど、やっていることはギャングである。人のことなどまったく怖がらない。子どもがその迫力に押されて泣きそうになってる。


怖がる子ども。奥のベンチではお母さんが赤ちゃんの顔に覆い被さって守ろうとしていた。

クジャクはこのあと、飼育員さんたちの手でベンチから追い払われていた。キジが畑を荒らして困る、という話を妻の実家で聞いたことがあったが、クジャクもキジ科であることを再確認した次第。

しっし!って言われてた。ちょっとかわいそう。


羽を広げると急に人気が出る

お菓子の粉をつつきに行ったばかりに子どもに怖がられ、大人に追い払われ、ぞんざいな扱いを受けてしまったクジャクだが、ここからが本領発揮だった。

ちょっと離れたところで澄ました顔をしていたかと思うと、おもむろに羽に空気をはらみはじめたのだ。


最初はゆっくりと羽に空気をためるように膨らませていきます。
さわさわ…、と小刻みに振るわしながら持ち上げていって。

バッサー!
やった2ショット!って思ったけどおれじゃま。

羽を広げるとやはりクジャクならではの存在感である。

さっきまで「しっしっ」とぞんざいに追い払っていた大人たちですら走り寄って写真を撮っていた。襲われそうになった子どもも笑顔だ。げんきんなものである、クジャクに謝れ。


この世のものとは思えない美しさなのだ。もっと大切にされるべき。

異性へのアピール以外に理由はあるのか

それにしてもクジャクは異性(メス)へのアピールのために羽を広げるんじゃなかったのか。

近くにメスは見あたらないし、それどころか羽を広げるきっかけとなるものが近くに何もないのだ。お菓子の粉をつついて追われたうさばらしなのか。

理由はともかく、綺麗なのでうっとりと眺めていたら、クジャクはくるりと後ろを向いて体をぶるぶる震わせ始めた。


で、うんこした。

もしかしたら編集部石川さんの言っていた通り、クジャクにとって羽を広げるのは背伸び程度の行為なのかもしれない。単に広げた方がうんこしやすいだけなのかも(お尻が出るので)。

ともあれ、ずっと見たかったクジャクの羽を広げた姿が間近で見られたことはとてもうれしい。またひとつ世の中の不思議が解明された瞬間である(おおげさ)。



クジャク見に行くなら今!

超自然現象だと思っていたクジャクの羽広げ、実はこの時期結構な確率で見られるようです。7月くらいまで綺麗に羽を広げ、そのあと羽は抜け落ちてしまうのだとか。

羽を広げたクジャクを見たい方は今がチャンスですよ。本物を見るとやっぱり感動しますから。

ベンチに座っていた僕の足を平然と踏んでいくフレンドリーさ。

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