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ロマンの木曜日
 
置いたエサ最初に食らいつくのは誰だ
タヌキ目撃地点

先日、家の近所でタヌキを見た。びっくりした。

僕の家は東京郊外とはいえ住宅地の中にある。近くに山や大きな森はない。そんな場所にタヌキが忽然と現れたのだ。

思えば、都市で生活していても身近にはさまざまな動物たちがいる。試しにエサを置いてみたら、最初に食らいつくのはどんな動物だろう。

萩原 雅紀



そこら中に動物がいる

近所に山や森がない市街地とはいえ、猫やネズミはそこらへんにいるだろう。カラスやハトやスズメはたくさん飛んでるし、カエルやトカゲもたまに見かける。そんな中にタヌキまでいた。

どうやら僕たちは想像以上に動物に囲まれて暮らしているらしい。ではそのあたりにエサを置いてみたら、最初に現れて食らいつくのは誰か。

ふと知りたくなって、実験をするため近所の河原にやってきた。


動物がたくさん暮らしてそう

「そこらへんにいる」と言いつつなぜ河原まで来たかと言えば、ふつうの街中で行なったら子供を連れたお母さんや犬の散歩の人から通報されかねない実験だからだ。

ここなら子供や飼い犬よりも野生の動物の方が多いだろう。

その中でも特にひとけのなさそうな場所を選んでエサを置いてみることにした。


エサを置いてみる

今回準備したエサはパンとバナナ、そしてソーセージ。草食男子も肉食女子もスイーツ好きもバッチコイなチョイスである。


食べやすいよう小さく切る
動物向けランチ

エサを見つけた動物が食べやすいように、それぞれ小さく切ってお皿に盛りつけた。匂いに釣られて喰いついてくれさえすればいいのだから、もったいないので使う食材は最小限。残りは僕がその場で食べて実験のエネルギー源とした。


草むらにぽっかり空いたいいスペースに設置
カメラで録画しながら見張る

河原の水面の近く、でも草に囲まれてぽっかり空いたいいスペースを見つけた。草むらの下の方に、ひょっとして獣道じゃないかというような隙間がいくつか開いている。ここに皿をセットして、少し遠くから見張ることにした。もちろん、動物がエサに食らいつく貴重なシーンを見逃さないように録画するカメラもセット。

果たして最初にやってくるのは誰だ。ネコか。タヌキか。カラスか。はたまたコモドオオトカゲか。

最悪のパターンは人間の子供か飼い犬がやってきて食べてしまうことである。そんなことになったらものすごく怒られるだろう。この記事も載らないどころか、二度と本名で物が書けなくなってしまうので断固阻止せねば。

しかし。


セットした途端に子供たちの集団が現れてものすごくドキドキ

紙一重の実験

エサとカメラをセットして少し離れた場所に腰を下ろした瞬間、遠くから賑やかな声が近づいてきた。振り返ると幼稚園くらいの子供たちが大勢やって来た。どうやらここで川遊びをするようだ。

目立たない場所にセットしたとはいえ、どこに動くか分からない子供たちのことだ。もし見つけて食べてしまったらどうなるかは容易に想像がつく。新聞やネットニュースのページに自分の名前が踊る場面が頭をよぎった。

ハラハラしながら中腰で見守っていると、遊びに夢中の子供たちは僕の心配をよそに何事もなく目の前を通り過ぎて行った。引率の先生に「騒がしくてすみません」と謝られ、余計に肩身が狭い。

でもまあ、子供の探知能力なんて野生動物と比べるまでもないぜ(急に強気)。


肝を冷した

エサから離れたとはいえ、相変わらず子供たちは目の前の川で遊んでいる。僕がここに佇むのはちょっとまずいかも知れない。

そう思って、セットしてから3分も経たないうちに、場所を移動しようとエサを片付けに行った。

すると、呆気なく実験結果が出ていた。

苦手な人もいると思うのでいちおうモザイクかけます。


そういえばコイツの存在忘れてた
(クリックするとモザイクが消えます)

最初に食らいついたのは

お皿を覗いたとき、ちょうど1匹のアリがパンに登ったところだった。

そうか、そういえば企画段階から昆虫の存在を忘れていた。それにしても彼らのレーダー網はすごい。お皿を置いて3分以内にもう見つけているのだ。

さすがにアリはなぁ、と思ってその後2時間くらい粘ってみたのだけど、結局アリとハエとアブラムシしか来なかった。ものすごく日に焼けた。

というわけで、河原に置いたエサ、最初に食らいつくのはアリである。

どうせなら、アリがエサを見つけてから行列ができるまでも見たい、と思ってそのあとも録画し続けた。しかし、常に1〜2匹のアリが興味を示すものの、結局最後まで行列はできなかった。

なんだよ、食べるものないならエサを食べればいいじゃない!

動画もずっと録画していたけど、見てもあまり気持ちのいい映像じゃないので出しません。


水の中はどうだ

陸上は昆虫の独壇場であった。せっかく河原にいるんだから、水の中に入れたエサを誰が最初に食いつくかも調べたい。というわけで急遽仕掛けを作った。


こんなこともあろうかと凧糸を持って来ていた

アリが食べなかったソーセージに凧糸を通し、糸の反対側ひは小枝を結んで、水の流れの中に引っかけた。ソーセージが泳ぐように水の中を漂う。


気持ち良さそうに泳ぐソーセージ

さあ、このソーセージに最初に食らいつくのは誰だ。鯉か。ザリガニか。アロワナか。

ふと川の中洲を見ると、鷺のような白い鳥が飛んでいた。よく見たら手前にはカルガモも。


鳥ぜんぜん知らないけどかっこいい!

かわいい番のカルガモ

あんな派手な鳥たちが食べてくれたら記事的には締まる!

でもソーセージなんて食べさせたら野鳥好きの人に怒られそうだ。

食べてほしいような、来ないでほしいような。さっきの幼稚園児たちとは少し違う葛藤を抱えた。


来てほしいけど来ないでほしい

結局、しばらく待っても鳥は来ず(あたりまえだ)、日が暮れる前に引き上げた。

置いたエサに動物が食らいつくのを見ることよりも、動物にエサを食べさせることの難しさを再確認した一日だった。

無闇にエサやれない

実際にやってみるまで、いま僕たちが暮らしている環境の中で闇雲に「エサを置く」ことがこれほど難しいとは思わなかった。

結局アリにしか相手にされなかったけど、結果的には誰も来なくて良かった。

でも動物へのエサやりはなぜだか楽しいので、無毒でノンカロリーのエサがあればいいのになあと思っている。

待機中はものすごく暇だったので主に貨物列車を見ていた

 
 

 

 
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