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ひらめきの月曜日
 
高級スーパーは安いものも高い
こう見えて、高級食品です

スーパーの中でもひときわ人をときめかせる種類の店がある。高級スーパーだ。食べたことのないものはもちろん、見たことすらないものが庶民には非日常すぎる値段で売られている。

行きたいけれどなかなか行かれないが、元々安いものだったら楽に買えるんじゃないかということに気がついた。(古賀及子


たとえば魚肉ソーセージ

元々安いもの。たとえば魚肉ソーセージやカニカマ、駄菓子にあとは焼きそばあたりだろうか。豪華にしてもそうは高くはならないだろう。

ただし、高級スーパーはもやしですら高い。

もやしといえば地元埼玉にある激安スーパーの年末大売出しでは1円で売られることもある驚きの低価格野菜だ。1円は言いすぎでもたいてい一袋50円もしないだろう。その常識が高級スーパーでは一切通用しない。


以前見つけたもやし。1袋89円だった セールでなお49円というのを見たこともある

上の高級もやしは当サイトで以前高級スーパーを取り上げた際に発見したもの。

(記事「高級スーパーにも魚のアラは売っているのか」、記事「セレブのもやし炒め、セレブのねこまんま」)

高級スーパーでもやしに注目しすぎの人生であるが、なにしろ もやしさえ牙をむくのが高級スーパーであることは覚えておかねばならない。

ねらうは新宿高島屋の紀ノ国屋

今回挑むのは東京の高級スーパーのラスボスである紀ノ国屋である。

高級スーパーにもいろいろ種類はあるが、庶民の付け入る隙のなさは紀ノ国屋がナンバーワンだ。一言でいうと「ぜんぶ高い」。

しかもねらうは百貨店の地下にある新宿高島屋店。高級スーパーな上にデパ地下である。

鬼が金棒を持った状態でご乱心、くらい手のつけられない高級感だと思っていただいて間違いない。


いざゆかん鬼が島と新宿駅に降り立ったが、工事中で高島屋への連絡通路が以前とは変わっており遠回り。さすが守りが堅い!

さて、結論から言おう。高級スーパーは安いものも高かった。とんでもなくといってもいいほど、高かった。


買い物後に驚いたことが2つあった。
(1)買ったものをつめてくれた紙袋の底に紙が入っていたこと……。いい紙袋すぎ!
(2)買い回り中にもらったパンフをカゴに入れておいたら、わざわざビニールに入れて紙袋内に入れてくれたこと……。丁寧!

ソース焼きそば399円(2人前)

なにしろソース焼きそばが2人前で399円(1人分約200円)だ。普通のスーパーであれば3人前100円のあの焼きそばがである。

高級焼きそばは1人分の値段ですでに庶民3人分の値段の倍なのだ!!

大丈夫かこんなショッキングなこと書いて。誰か裏の組織に狙われるんじゃないか。書きながら手の汗でささくれが染みるが、とにかくこれが事実だ。


プライベートブランド商品というと手ごろ価格のイメージだが、そうは紀ノ国屋が卸さない

貧乏くさく食べてやろう

食べるのももったいないくらいだが、いったいどんな味ならこんな値段になるのか食べて突き止めねばならない。

せめてもの強がりにと、最大限貧乏くさく食べることにした。

私が買ったからにはどんな高級品であれソース焼きそばはソース焼きそばだ。身の程を思い知らせてやろう。



ボロボロで片付かない和室でフライパンのまま食べる具なしの焼きそば。

……ここまでおとしめることもなかったか、と同情するくらいうら寂しい景色になってしまった。

これでは紀ノ国屋というお城からソース焼きそばというお姫様を誘拐し今まさに喰ってやろうかという状況だ。なんだ私は山賊か。山賊なのか。

山賊の改心

しかし食べてみたらこれがおいしかった。素直に素直においしかった。しっかりとしたコシの麺は弾力もすごい。モチモチだ。

実は調理中から麺の俄然の違いは感じていたのだ。コシがあってほぐしやすかった。


モチモチしてコシがある麺……!

ソースが気取った味でないのがまた憎い。スパイシーさがテーブルコショウのような懐かしさで、このむっちりした麺によく合う。

ちゃんとしたチープさがあるのだ。なんだこの高級なのに話が分かってる感。「家で作るソース焼きそばは、ちょっとジャンクでなくちゃね」なんてウインクしたそこの ちょい悪オヤジ起立! 和解だ。握手しよう。

つまり、おいしすぎて逆切れして知らんおっさんと握手するような味、ということである。


ソースは粉末ではなく液体

ああ、ちゃんとキャベツとか豚肉を入れればよかった。お皿に盛ってきちんとテーブルで食べればよかった。そう思わされた。

美しいソース焼きそば姫のきれいな心が山賊を改心させたのだった。

魚肉ソーセージは、ない

魚肉ソーセージも高かった。

いや、結果としては高い魚肉ソーセージは買えたのだが、それ以前に高島屋の紀伊国屋には置いてすらなかった。

なんと高級スーパーには魚肉ソーセージを置かないという選択肢があるのだ!


他の高級スーパーで探す。元町UNIONにもなし 成城石井にもなくあきらめかけたところでザ・ガーデン自由が丘で発見

魚肉ソーセージ178円(1本)

発表します。高級スーパーには基本的に私たちが魚肉ソーセージと聞いて連想する3本くくりになっている、いわゆるギョニソーはあまり売っていません。ジャジャーン!

そんな中でぎりぎりで売っているのを発見したのがこちらの魚肉ソーセージだ。1本178円。もはや肉ソーセージより高い。


なんと使用魚肉が鮭100% 魚肉ソーセージであることは控えめにアピール

切ってしまえばおなじみ魚肉ソーセージなのだが……

これは鮭だぞ

味は、鮭だった。パッケージに「さけ」と太字で書いてあるだけのことはある。薄味で鮭のそのままの味を楽しんでくださいという上品さ。

高級スーパーは魚肉ソーセージですら高級で上品。いよいよすごいことになってきた。

ちなみにこのソーセージを買う際、店内でお漬物の試食をすすめられるがままにいただいた。そしてうっかり100gで600円する あんずの紫蘇漬けというものを買いそうになっていた。高級スーパー、危なすぎる。

駄菓子は、本格的にない

魚肉ソーセージと並び駄菓子も扱いがなかった。

昔懐かしい系のお菓子(南部せんべいや黄粉飴のような)であれば高級スーパーはむしろ得意分野なのだが、いわゆる街の駄菓子屋さんにあるような現代的な駄菓子は一切置いていない。


仕方ないので麩菓子を買った

麩菓子 294円

294円で8本入った麩菓子だ。これなら安いだろうと思ったのだが、冷静に考えれば通常の麩菓子というのはだいたい300円前後で20本くらい入っている。2倍以上の価格である。

なにしろ何もかもが高いので私の感覚もだいぶ狂わされてきているようだ。


「二度ぬり」というだけあって、かりんとうかというくらい黒糖がごつごつしている

こりゃスイーツだわ……

そしてやはりもやしが高い

焼きそばも高い、魚肉ソーセージも高い、麩菓子も高い。わかった、これくらいでもう勘弁してやろう。いや勘弁してくださいと逃げ出さんタイミングで、もやしが目に入った。

冒頭で高級スーパーの実力を予言したもやし。なんとさらなる高みを見せていた。

今回はスルーしようと思っていたもやしだが、これはご紹介しないわけにはいかないだろう。

一袋100円を超える商品を見つけたのだ。その名も「プレミアムもやし」105円である。


モルツ、ロールケーキときてプレミアムは「もやし」の時代に突入

“常識を超えた特徴!”、“スーパーもやし”と勢いがすごい

味はもう、この袋の文章通りだった。美味しゅうございました。

高級スーパーで安いものを高く買い、そしておいしさに驚くという繰り返しの今回である。安くておいしいのはうれしいが、高くておいしいのは庶民には驚き疲れるということが分かった。


ヒゲもそのままに塩コショウでいためた。ふれこみどおりの甘さ 先ほどの焼きそばにあわせたら、こりゃ繁盛店の突出しだ

単純なことだが、やはり高いものはそれなりにおいしいのだ。

高級スーパーというとお金持ちが行くものだとばかり思っていたが、それプラス、おいしいものが好きな人が行くところでもあるのかもしれない。考えてみればもやし一袋100円だったら高いけれど毎日買えないこともないのだ。

いいことがあったら、私も焼きそばを買いに行こうと思います。


高級弁当



高い豆をもらっていた

紀ノ国屋で品さだめをしている際、丹波の黒豆煮の瓶詰めが目に入った。

おやこれは正月に親戚の家でいただいたものと全く同じじゃないか。価格を見ると1575円とある。ふんが!

すでに食べきってしまっていたのだが、あまりにもおいしかったので煮汁はとってあった。ナイス気転、自分! 1575円の豆の煮汁だ!

この高級な記事を貧乏くさい写真で締めくくれることが大変に誇らしい。

高くて甘い汁

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