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ちしきの金曜日
 
生まれ育った場所でラップを歌う、登戸哀歌(エレジー)

前回、ピロリ菌の感染が発覚してショックを受けている気持ちを歌にした。プロのミュージシャンによって素晴らしい歌が出来上がり、ピロリ菌と別れることが惜しいとすら思っている。歌の収録時、歌を作ってくれたひよせさんが私のラップを褒めてくれた。社交辞令なのかもしれない。ミスター林も褒めてくれた。おもしろがっているだけかもしれない。でも、久しぶりに人から褒められてうれしかった。だから、今回もラップをやることにした。

住正徳
(すみまさのり)
1970年神奈川県生まれ。デザイン、執筆、映像制作など各種コンテンツ制作に携わる。「どうしたら毎日をご機嫌に過ごせるか」を日々検討中。
> 個人サイト すみましん


多摩川の河原で待ち合わせ

私のラップにかける情熱をミスター林に説明したところ、そういうことだったら生まれ育った場所でラップを作ったらどうでしょう、という提案をいただいた。

自分のルーツを歌詞にしてラップで歌うという寸法だ。ラップには魂を込める必要があると考えていたので、ミスター林の提案はとても理にかなっていると思った。

「では、登戸の河原で待ち合わせましょう」

とミスター林からメールをもらった。

確かに私の実家は登戸にあるが、多摩川の河原で生まれ育った訳ではない。なぜ、河原で待ち合わせなのか。ミスター林の中で登戸イコール多摩川の河原ということになっていて、それはイコール私が河原で生まれ育ったということになってやしないだろうか。それは大きな間違いだ。いつかミスター林の誤解を解かなければならない。

 

高架下で作詞

私の実家に近い多摩川の河原であるが、デイリーポータル11年の歴史の中でこの場所にはちょこちょこと訪れている。糸電話で市外通話を試みたり、ペットボトルロケットを飛ばしてみたり、ペットボトルの筏で川下りに挑戦したり、時代劇の撮影をしたり。

子どもの頃よりも30才を過ぎてからの方が頻繁に河原に来るようになった。
あの頃の未来に僕は立っているのだろうか。

とにかく、この場所でラップの作詞をしていく。


約束の場所

待ち合わせの日はあいにくの空模様だった。傘をさしながらでは集中出来ないので高架下に移動する私とミスター林。頭上を走る電車の音が時折聞こえて、そのリズムがラップを作る雰囲気を盛り上げてくれる。


高架下にて

今回のラップ作成にあたり、編集部の石川君がリズムトラックを作ってくれた。 ミスター林のiPadからその音源を聞かせてもらう。


iPadからリズムトラックを流す

石川君が作成したリズムトラック

           

多摩川の河原に石川君のリズムが鳴り響く。一定に刻まれたリズムが陰鬱な雰囲気を醸し出す不思議なトラックである。雨が降りしきる多摩川の河原で聞いたから、そういう印象を覚えたのかもしれない。このトラックを作っている時の石川君の顔が目に浮かぶようだ。うっすらと微笑んでいたに違いない。

多摩川、雨、電車のリズム、石川君のトラック。

それらの要素に囲まれながら今までの人生を振り返りつつ、ミスター林とラップの歌詞を紡いでいく。


歌詞を紡ぐ

2人でフレーズを出し合った結果、「登戸哀歌(エレジー)」という曲が出来上がった。


登戸哀歌(エレジー)

(1番)
ロケット飛ばした10年前(注釈1)
ちょんまげ結った5年前(注釈2)
再び戻った俺とお前
心はいつも不動前
いつかは行きたい議事堂前
だけどあそこは前じゃない
地下鉄だから下じゃない

(2番)
生まれ育った My home town
Yesterday なくしたハンドレッドサウザンド(注釈3)
ラブホで落とした10万円
あの娘 今ではドイツの首相(注釈4)
メルケル メルケル
アンゲラ・メルケル

だだをこねる
あの娘が帰る
愛のシュプール
シュプレヒコール

(3番)
俺の人生右往左往
今のポリシー分相応

沖縄土産のちんすこう(注釈5)
分かって欲しい趣味趣向

40過ぎても法政二校
それ出身校


歌詞の説明

まずラップの曲で「哀歌(エレジー)」とタイトルに付く曲があるのかどうか、私には分からない。更に、歌詞の中に所々意味が分からない(私にだけ分かる)フレーズが出てくることと思う。説明が必要なフレーズには以下のように注釈を入れさせていただく。


(注釈1)ロケット飛ばした10年前

今から10年前、私とミスター林はこの場所でペットボトルロケットを飛ばした。その模様は「多摩川ロケットボーイズ」という記事にまとめられている。

 

(注釈2)ちょんまげ結った5年前

今から5年前、デイリーポータルZの年末特別企画として、ライターの大北君が監督を勤めた時代劇「江戸城無血開城」が公開された。その撮影でもやはりこの場所が使われた。真冬の河原での撮影がとても辛かったことを覚えている。

 

(注釈3)Yesterday なくしたハンドレッドサウザンド ラブホで落とした10万円

Yesterdayというのはこの河原から見える場所にあるブティックホテルの名前である。今から20年以上前、まだ学生だった私は当時お付き合いをしていた女性とYesterdayに宿泊した。その際、封筒に入ったアルバイトの給料10万円を部屋に忘れてしまったのだ。
ホテルを出てすぐに気づき戻って掃除のおばさんに聞いてみたが「知りません」と言われた。結局10万円は見つからなかったけど、バイト先の先輩たちがカンパをしてくれた。それは宝石のような思い出として今も私の心の柔らかい部分に残っている。落とした10万円以上の優しさをバイトの先輩たちからもらったのだ。
あの先輩たちは今、どこで何をしているのだろう。


ここで10万円落とした

(注釈4)あの娘今ではドイツの首相

私のYesterdayでの思い出にミスター林が勝手にストーリーをつけたフレーズだ。もちろん、私の昔の彼女がメルケルな訳ではない。なぜ私がメルケルと交際をしてて、メルケルと行ったブティックホテルで10万円を落としたことになったのか。

よく分からなかったので、ミスター林に「なぜメルケルなのか?」詰め寄ってみた。

すると、ミスター林が最近閲覧した「世界のグラマー」という少しセクシーなページの一番最初にメルケルの写真があってガッカリした、というエピソードを聞き出すことに成功した。ミスター林の中で、今メルケルがホットなのだろう。

 

(注釈5)沖縄土産のちんすこう

唐突に登場する沖縄土産。この日、登戸駅から河原に向かう道中に目にした「ちんすこう」の文字が印象的だったので、ラップに乗せることにした。


たまたま目にした「ちんすこう」

河原で収録

ちなみに、1番と2番は河原で作り、3番は河原近くの喫茶店で作成した。


喫茶店で3番を作った

喫茶店で流れていた「ネバー・エンディング・ストーリー」に気持ちを持っていかれたミスター林から次の歌詞の提案があった。

  登戸エレジー
  ネバーエンディング

せっかくのフレーズではあったが、「ネバー・エンディング・ストーリー」に対して特に思い入れがないので、却下とさせていただいた。

こうして3番までの歌詞が出来たところで、私たちは再び河原に戻ることにした。河原でラップを収録するためである。

河原に戻るまでの間、昼カラオケをやっているスナックがあり、「失敗しないマイクの持ち方」を説明するパンフレットを入手した。


失敗しないマイクの持ち方

パンフレッド(余計な濁点がついている)

入手したパンフレットの内容を以下、抜粋する。これが失敗しないマイクの持ち方である。


いいマイクの持ち方

悪いマイクの持ち方

この辺りの情報を加味しつつ、私たちはラップを収録するために再び河原に立った。


土手に書かれた「新春」の文字

河原のお店はお休みだった。

これからラップを収録します

降りしきる雨の中、ICレコーダーに向かってラップを歌った。





本当のラッパーだったら、雨に濡れることなんて気にしないだろう。しかし、私は本当のラッパーではないので傘をさしてラップした。

ミスター林のiPadが雨に濡れないように気遣いながら収録した音を少し加工して「登戸哀歌(エレジー)」は完成した。

完成した音源がこれである。

 

登戸哀歌(エレジー)

           

10年前にペットボトルロケットを飛ばした場所で、43才になった私はラップを歌った。色々と思うところはあるが、あの頃の私が10年後のこんな姿を想像していなかったことだけはハッキリとしている。人生は不思議だ。


ピロリ菌除菌情報

先日、お医者さんからピロリ菌除菌の薬を処方してもらいましたが、まだ薬を飲み始めていません。ピロリ菌除菌に関する情報は、私のメールマガジンで随時お伝えしますので是非メルマガにご登録いただければと思います。無料です。

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