特集 2017年1月13日

少し前の自分と共演する

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猫の手も借りたいくらいに忙しい時、実際に猫の手を借りても役には立たない。そんな時、自分がもう一人いたらとても助かる。
相手が自分だから気心が知れているし、変に気を使う必要もない。例えばタイムマシーンを使って少し前の自分を連れてきて、一緒に仕事をやってもらえたら随分楽だろう。ドラえもんにもそんな話があった。

しかし、実際にそんなことは不可能だから、バーチャルで実現させてみたい。少し前の自分とバーチャルで共演してみる。
1970年神奈川県生まれ。デザイン、執筆、映像制作など各種コンテンツ制作に携わる。「どうしたら毎日をご機嫌に過ごせるか」を日々検討中。


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ディレイカメラのアプリを使う

今回のプロジェクトに挑むのは、林さん、テクノ手芸部よしださん、そして僕で構成されるIoT三兄弟だ。少し前の自分と共演する方法を、会議室で真剣に議論した。
実現に向けて
実現に向けて
真剣に
真剣に
会議
会議
三男のよしださんがお土産に買ってきてくれたどら焼きを食べながら、実現方法について検討を重ねた結果、僕たちが出したソリューションは以下の通りだ。

・iPhoneで自分を縦位置で撮影する
・その映像をディレイさせて(遅らせて)プロジェクターに送る
・自分の横にその映像を投写
・今の自分と少し前の自分が共演

完璧である。

映像をディレイさせるiPhone用のアプリ「ReplayCam」を長男の林さんが見つけた。このアプリを使って撮影すると最大60秒前の映像を映し出すことが可能らしい。アプリの説明画像にゴルフ_スイングの写真が載っていたので、フォームの確認などに使用されることが多いのだろう。

僕たちは少し前の自分と共演するためにReplayCamを使用する。

動きを考えるが、頭が混乱

会議室のモニターを使って実験を試みた。モニターサイズが小さいため、投影される自分のサイズが小さくなってしまうが、動きの確認はできる。ディレイタイムを3秒に設定して試してみた。
モニターに少し前の自分がいる
モニターに少し前の自分がいる
モニターに映し出される少し前の自分と今の自分とでインタラクティブなやり取りができたら面白い。そう考えていたのだが、実際にやってみるとこれがかなり難しい。動きを合わせるためには時間軸を考慮しないといけないからだ。つまり四次元で発想しないと、少し前の自分と今の自分の動きがリンクしない。

長男がホワイトボードにコンテを起こして動きを考える。
動きをコンテに起こす長男
動きをコンテに起こす長男
今、自分が取った動きは3秒後にモニターに現れる。その3秒前の自分に対して、何か動きを取るとその動きもまた3秒後にモニターに映し出される。先の先の先の方を見据えて動いていかないと、すぐに破綻してしまうのだ。

長男がモニターに線路を描き始めた。
線路を使って考える長男
線路を使って考える長男
「時という名の列車があって、その列車はどんどん遠ざかっていくわけですよ」

分かりやすいような、全く分からないような喩え話であるが、ポエジーであることに間違いはない。四次元は人をポエマーにしてしまうのかもしれない。
時の列車について考えるが全く分からない
時の列車について考えるが全く分からない
大ヒットしている映画「君の名は」を観た時も頭が混乱したくらい、僕は時間軸が苦手である。きっと、羽生名人だったら簡単に答えを導き出してしまうのだろう。自分の地頭の悪さがうらめしい。

一方、時間の流れを「時の列車」に喩えた長男も、「少し前の自分と動きをリンクさせる」という目的においてその喩えが役に立たないことに気づき、時の列車を途中下車していた。

1つの動作ならうまくいく

どういう動きだと少し前の自分とやり取りできるのか。

はっきりとした答えが出ないまま、場所を大きな会議室に移した。会議室の白い壁を利用して、等身大で自分を映し出す。
iPhoneのアプリReplayCamで撮影して
iPhoneのアプリReplayCamで撮影して
その映像をプロジェクターに送信
その映像をプロジェクターに送信
それを壁に映し出し
それを壁に映し出し
サイズを調整する
サイズを調整する
まずは三男が動きを試してみる。
少し前の自分と
少し前の自分と
キッス
キッス
それを見た長男も負けじと自分にキッス。
自分にキッス
自分にキッス
さらに、
少し前の自分と
少し前の自分と
ハイタッチ
ハイタッチ
少し前の自分にキッスをしたり、少し前の自分とハイタッチをしたり。いい感じに少し前の自分と共演できた。

そこで僕も1つの動きを思いついた。

少し前の自分に気功をかける、である。
少し前の自分に気功をかける
それを見た長男も、「少し前の自分に突っ込む」という動きを繰り出した。
少し前の自分に突っ込む
キッス、ハイタッチ、気功、突っ込み。

これらはいずれも1つの動作なのでうまくいく。しかし、連続的な動きになると一気に難易度が上がっていく。位置調整が難しかったり、タイミングを取るのが難しかったり。

少し前の自分と連続的でインタラクティブなやり取りをとることはできるのだろうか?
宙をみつめるしかない
宙をみつめるしかない

連続的な動きへの挑戦

実現させたい連続的な動きとして、次のような動作を考えた。

少し前の自分と名刺交換をした後に、少し前の自分にカンチョウをする。

動きをリンクさせるためにシナリオをホワイトボードに起こす。
名刺交換からのカンチョウ
名刺交換からのカンチョウ
ReplayCamのディレイタイムは引き続き3秒。3秒間隔でイベントを発生させて、少し前の自分とリンクさせる。

早速、トライしてみた。
一人コント:名刺交換 その1
最後のカンチョウのタイミングが早かった。

引き続き長男もトライする。
一人コント:名刺交換 その2
やはり、カンチョウのタイミングが合ってない。そもそも名刺交換した相手に、なぜカンチョウをお見舞いしないといけないのか。自分で考えておきながら、その動作の不条理さに腹が立ってくる。

何度か撮影して、その中で一番うまくいったのが次の動画である。
一人コント:名刺交換 その3
もっとビシっとしたタイミングでカンチョウを決めたかったが、これが限界だった。

静止画にすると怖い感じになる

連続的な動きを動画におさめることに疲れた我々は、ディレイして映し出される映像の一場面を静止画で記録することにした。

場所を最初の会議室に戻し、モニターを使って挑戦する。
奥にたくさん三男がいる
奥にたくさん三男がいる
このように、iPhoneでモニターを映すと合わせ鏡のようにモニターが無限に現れる。

ディレイカメラの機能を使い、一場面を切り出すと次のような写真が出来上がる。
2番目のモニターにだけ、藤原くんがいる
2番目のモニターにだけ、藤原くんがいる
こちらも2番目のモニターにだけ長男が
こちらも2番目のモニターにだけ長男が
どうだろう。

なんだかとても怖い写真になってしまっている。
3人目の住だけ怒っている
3人目の住だけ怒っている
これも呪われた写真のようになっている。偶然こういう写真が撮れてしまったとしたら、しかるべき所に行ってお焚き上げしてもらった方がいいだろう。

ディレイカメラを使って面白い映像が撮りたかっただけなのに、最終的に怪奇現象の再現のようになってしまった。
以上、IoT三兄弟がお送りしました
以上、IoT三兄弟がお送りしました

やっぱり時間軸が絡んでくると頭が混乱してしまう。僕の頭脳では四次元は手に負えない。時空を超えたカンチョウが原因で持病のいぼ痔が再発する可能性もゼロではない。そうやって時空を歪めてしまった結果、タイムパトロール警察に捕まる可能性もゼロではないのだ。
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