ラブレターの下書きを書いていた
当時、メールではなくて紙の手紙が主流だったからか、私はかなり下書きをしていた。短文のメモでも、ものすごく考えて書いていたっぽい。
これは、21歳の時に、好きだった男の子(ふられた)に書いた手紙、というか誕生日カード。
たん生日 おめでとう
いろいろごめんなさい
でも冬の間は嬉しかったよ
健康でいてね
貸してた本はあげる
うっすらと覚えているのは、クリスマス前後に、なんか一悶着あったこと。で、実は、相手の誕生日が7月なので……半年以上ひきずっているわけですね。粘着ですね。悲しいわ~。相手はイヤだっただろうなあ。
……えー、今回、こういう調子で続けるけど大丈夫?
好きだった人の写真もはさんであった。引くわ~。この人、フェイスブックでつながりそうになったことがあって、ヤバイと思ってブロックしたのは、ここだけの秘密ですよ。
普通の日記の下書きも書いてた
Nちゃん
この間、半年ぶりくらいに、Sさんから電話があったよ。SさんとNちゃん、連絡とりあってるんだって? 無視しちゃえあんなの、ただの若い人リサーチだもん。リサーチして商売しようと思ってるんだよ、キモチ悪い。Sさん「Nさんは自分では何も始めることはないでしょう」って酷いこと言ってたよ。何の根拠なんだろう。新作の感想をボロカスに言ったら「私が売れて態度が変わってチヤホヤしてきた人がたくさんいたけど、なんでアンタは変わらないんだ」って言われたよ。あたりまえじゃ!
それはさておき、お正月はいかがでしたか? 私は寝てたっす。今日、HMVでバイトしてる子にストーンローゼスのバッジもらった!
これは…当時交流があった、作家のSさんについての手紙ですね。自分が「若者だから価値がある、消費されてる」自覚はあったみたいです。しかし、このくだらない手紙の下書きを、わざわざしようとした意図がわからない。それにしても他人への配慮がない、傍若無人な手紙ですねー…。バッジもらった、って、どうでもいい話だよなあ。
もだえる感じの日記
これは…と、読んでもだえる系の日記もありました。ラブレターの下書きと変わらないノリでした。
あなたに触れると恐怖とかなくなるんだよ
目の前にして話してるとまるで駄目なのに
私なんか退屈だろうなって思うばかりで
いつもよりずっとずっと喋るのが下手になって舌がもつれてしまう
でも本当は触っちゃいけない男の子だったみたいで
現実にあったことことかどうかってあやしいくらい
私はもとにもどる
普通に喋れるようになりたかった
あなたといろんな場所に行きたかった
手元に写真が1枚ある
あなたが酔っぱらって私の耳をくすぐってた5月の写真
これは…ラブレターの下書きと同じ相手ですね。耳をくすぐられたことは一切思い出せない。飲み会で何か、あったんですかねえ。私は、自堕落な音楽サークルに紛れ込んでる文系少女ちゃん、という立ち位置でしたので、結構いろんな人におちょくられてましたから。いやー、でも駄目だわ、こんなの書いちゃうような女子、大学生男子には重いでしょう、そりゃフッちゃうよ。でもまあ、青春ってことで。
ポエム!!!!
詩も書いてました。若者のやりがちなことです。
私は自作の詩集も出していましたので(!)これらはアウトテイクだと思われます。
赤い花がテーブルの上に乗っている
運が良ければ、しおれる瞬間が見れるかもね
かっこいいおじさんも、かっこいいおばさんも
あんまりいない
でもよく考えたら、かっこいい同い年もいなかった
なんかシュールですね。「かっこいい同い年」、いなかったのか…。
ひみつの話を違う人からきいた きみを責めない
電話の声は 消化が良くて バナナみたいだね
チョコレートをキオスクで買う
電車の中でチョコレートを食べるために
汚れた手でチョコレートを割る
うがいすべきノドにチョコレートをほおりこむ
チョコレートを食べる私がガラスにうつりこむ
これは…リアルに電車の中でチョコ食うのがマイブームの時の詩ですね。これ、詩なのか? それにしても「バナナみたいだね」っていうのは唐突過ぎません?
くらい、くらい場所で 牛乳をただ飲んでは
ああ陽の当たる 美しい景色を思うのさ
暗い、暗い場所で 無理に新聞読んでは
ああ陽の当たる 美しい日々を思うよ
おそらく今日は誕生日
あんまり意味はないけれど 気に入ってるシャツを着る
これはバンドやってた時の…歌詞の案ですね。もちろんボツられましたが。
当時、照明を付けてない部屋で新聞を読むことがよくあって(何だそれ)、母が「何で暗いところで読んでるの!!」と怒って電気をつける、というのが定番パターンだったのです。そのうち、ムキになってわざと暗いところで雑誌読んだりしてた記憶が…。暗いと落ち着きますよね。落ち着かない?
相変わらず最低だね ほめてくれる人と一緒にいたいんでしょ
内側をのぞく人は嫌いなんでしょ
逃げてればいい、必要としてくれる人なんていないんだから
傷つけない人とだけ喋ってればいい
ずっと向こうまで何にも見えない場所を、全速力で走ってるのに
(僕がふつうのモラトリアムなだけってわかるけれど、どこか、ふつうのモラトリアムとは違うつもりでいるんだよ。だけど、そんなふうに、僕は特別じゃないことは知っているし、僕は特別だって誰もが思っていることも、なんとなくわかるんだ。モラトリアムっていう言葉を使うこと自体恥ずかしい、モラトリアムについて人と話すことも、ひどくかっこわるい気がする。どうして正直にモラトリアムのことを話せるんだろう。そんなの本当のモラトリアムじゃないよ。バカだ、バカだ、バカだ、バカ、じゃないの? 誰とも会話が出来ないよ。僕も誰も、たいしたことなんかない、ただふつうに頭がいいだけってわかっているけれど。ぜんぜんわかってくれなくてもいい。ひとつもわかってくれなくていい。中途半端にわかったふりをされるくらいなら、まとはずれになぐさめてくれたほうがまだまし。誰にも嫌われたくないんだ。本当に嫌われるくらいなら、偽悪者になって、本当じゃなく嫌われてしまったほうがいい。たしかに本当の僕はやさしくなんかないのだし。)
(「そんなの、砂漠でションベンするようなもんじゃないの?」と彼は言った)(なんてすばらしい日々!)
これは…なんか、『ライ麦畑』的なものを書きたかったんじゃないのかな、と思われます。いきどおってるね!
「砂漠でションベン~」という表現は、実際に友人のSくんが言ったもので、それをパクったんだと思われます。
ファミリーマートの光がうつくしく道路を照らしていた。
うすいピンクのロンズデールのTシャツを着た彼が立っていた。少し痩せていて、見慣れた形の猫背で、1年前と変わらない様子だった。
世界一、ピンクのロンズデールが似合っている男の子だと思った。
これは何か小説の1パートみたいです。前後が欠損しているので、なぜファミマに集合したのか、ひとつもわからず。
ただ、当時から今まで一環して、ピンクのTシャツを着こなす男子は好きです。あの色、着こなすの難しいからね~。
誰とも喋らないで終わる一日と、ひどく喋り過ぎてとても後悔する一日と、どっちがましなんだろう。
いつだって現実感なんてないんだ。夜中のテレビにうつってる青い空のほうがリアルだったりするんだ。
平気じゃないくせに平気な顔をしてしまうのは何故だろうね。
すべてが大掛かりなギャグだったらいいのに。
これも詩……なのか? 若者らしい虚無感ですね。何、大掛かりなギャグって。
冷蔵庫の光とテレビの光って、夜中に見るとなんでこんなにきれいなんだろう/さっきコンビニで買ったポカリスエットを飲む、喉に冷たいものが通っていく感じがたまらなく気持ちいいんだ/身体をぴったりとくっつけるのも手を触れないのもまるで同じ/テレビの光ってどうして青いんだろう/タオルケットの上でオセロをしよう/16才で有名になって19才で死にたかった
16才で…って、何のジャンルで成功したかったんですかね。謎。
それにしても夜中のテレビの光が、大好きだったみたいですね。不眠だったからかもしれませんが…。
わたしは素直で正直でやわらかい
わたしは笑うのも泣くのも得意
しましまとブルーと白いシャツが好き
愛されることを知ってる
わたしは素直で残酷でやわらかい
悪気はないのよ これで普通
わたしは人生に疑問なんかない
愛されるために、そのために
愛のために/
これも、デモテープをもらって、作った歌詞なんですけど、ボツになりました。内容的には…希望を歌にしたんでしょうね。多分。
スケジュール帳のひとことメモ
スケジュール帳にもいろいろ書いてありました。
いろんな人に飲みにさそってーといっているのに 誰も声かけてくれないのは身持ちの堅さからでしょーか
これは、今なら言えます。自分で誘わないと人は寄ってきてくれないから! 誰か誘ってくれないかな~なんて寝言を言うな!
まあ今もあんまし人を誘わず、寂しい思いをしているわけだけれども!
行ったコンサートの日付とか見ると「こんな昔か~」って思っちゃいますよね。
変わったような、変わらないような
いや、まだまだ他にもいっぱいあったんですけど…、申し訳ないのでこれくらいにしておきます。
この生きにくそうな20歳の女子に、タイムマシンで会いに行って…「20年後は、今よりはましにはなるけど、結局のところ、根は変わらないよ」って言ったら、泣くでしょうね。がっかり感が半端ないでしょうね。
20歳「私、就職して、マトモな人生をおくりたいんだけど、それは出来てるの?」
40歳「出来てないね、ごめん…そもそも就職活動に失敗するから」
20歳「今企画してるバンドはうまくいく?」
40歳「ああ、ポシャって音源も出せず、2年くらい落ち込むと思うよ」
20歳「仕事で成功するわけでも…」
40歳「ないんだ、ごめん」
20歳「王子様は来た?」
40歳「そんなもん来ないよ、アハハハ」
20歳「……(がーん)。」
40歳「そして20年後、アナタの書いた秘密のポエムは、全世界に公開されるから!」
20歳「ええ!? なんで!? うわーーー(泣)」
40歳「まあ泣くなよ、20年経つと、笑い話になってるから大丈夫!」
皆さんも昔のノートを見返して、昔の自分と対話してみてはいかが。胸が痛いけど、開き直れるよ!
なんか時間割が出て来た、ああ甘酸っぱい。どんな授業内容だったのか全く覚えてないけど。あ、トランポリンの授業だけ覚えてるなあ、一回転したなあ、とか。