特集 2014年1月17日

この液体が高い

リッター7万円の液体を目に!
リッター7万円の液体を目に!
パソコン仕事で目が疲れるので、疲れ目に効くという目薬を買った。あるとき何気なく容器を見ていたら「内容量13ml」と書いてあった。ちなみに希望小売価格は945円。

つまりこの目薬、単純計算で1リットルあたり7万円以上もするのだ。なんて高価な液体!と興奮した。

そこで、さまざまな液体の1リットルあたりの価格を比べてみることにした。
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

前の記事:リニアが来る!そのとき橋本は

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1リットルあたりの価格だけで比較

いろいろな液体を比較、とは言っても、使い途も価値もまったく違う。同じ目薬でも成分や効き目によって値段は違うだろう。

当然、ここではそれぞれの用途や効能は完全に無視して、単純に1リットルあたりの価格を比べてみる。卸値とかサイズによる差とかも考えず、うわ、この液体高けぇー!と低レベルに興奮したい。
いろいろな液体を価格だけで比べてみる
いろいろな液体を価格だけで比べてみる

水道水

まずは基準として、われわれにとっていちばん身近でいちばん安いと思われる水道水を調べてみた。
これで4銭くらい
これで4銭くらい
どうやら、地域や使用する量によって価格が変わるらしいのだけど、とりあえず自宅に届いた料金のお知らせを見ると、22立方メートル、つまり22000リットルで3632円。ここから1リットルあたりを計算すると、およそ0.16円。東京の一般家庭ではこの程度が相場のようだ。
単位が立方メートル(1000リットル)ってアバウトだと思ったけど単価も安かった
単位が立方メートル(1000リットル)ってアバウトだと思ったけど単価も安かった
日本の水、こんなに安かったのか!これはこれで興奮する。だってこの価格には水道局の職員さんの人件費や、水道管や浄水場や水がめのダムの建設費の一部まで入っているのだ。水だけに密度の濃い0.16円である。

ちなみに、東京の水がめのひとつである小河内ダムの貯水量はおよそ1億8千万立方メートルなので、単純計算するとこのダム1杯でおよそ300億円分である。あらゆる単位がでかすぎてイメージ湧かないけど、やっぱり爆安なんじゃないかな。
このダム1杯の水およそ300億円分(立入禁止場所から許可を得て撮影)
このダム1杯の水およそ300億円分(立入禁止場所から許可を得て撮影)

オレンジジュース

何か高い液体はないかとスーパーマーケットに行ったところ、お洒落な瓶に入ったオレンジジュースを見つけた。
シルエットからして普通じゃない
シルエットからして普通じゃない
初めて見たこのおいしそうなオレンジジュース。マンダリンという種類を使っているらしい。裏側のラベルにはマンダリンを収穫した農家の人だろうか、外国人の顔写真があったので輸入モノのようだ。そして一般的な濃縮還元ではなく、絞ったそのままのストレート。瓶の底には濃いオレンジ色の成分が厚く沈殿していた。気になる価格は330ミリリットル入りで驚きの1050円、つまり1リットル換算で約3000円。プ、プレミアム!

こういった価格の輸入モノを見ると、終戦から70年近く経った今でも敗戦国であることを実感する(大げさ)。
私が造りました外人バージョン
私が造りました外人バージョン
ちなみに同じスーパーには、よく見かける牛乳と同じパックに入ったオレンジジュースも売られていた。同じように外国ブランドだけどこちらは濃縮還元。1リットル入りで希望小売価格は220円(スーパーでは148円で売られていた)とリーズナブル。
安心の紙パック
安心の紙パック
こちらはこちらで、カリフォルニアの広大な敷地一面に広がる畑で収穫されたオレンジが大挙して太平洋を渡って押し寄せてくるイメージが湧いた。やはり敗戦国のメンタルである。

この記事の趣旨からは外れるけど、せっかくなので飲み比べてみよう。

まず安い、というかよく見かけるリッター100円台で売られているオレンジジュースを飲んでみた。何というか、飲み慣れた安心できる味。オレンジジュースと言えばこれだし、充分おいしい。
こ、これは!
こ、これは!
しかし、次にリッター3000円のマンダリンを飲んでみると、違いがはっきり分かった。まず何と言っても味が濃い。甘みと酸味と、あともうひとつ何かみずみずしい味がある。そして、それがひとつに混ざって、スポンジに水が染み込むみたいな感じでするすると身体に入ってくる。これはうまいわ。

そう考えると、リッター100円台の方は飲み込む感触が水に近いし、最初は甘みが強いけど後味では尖った酸味が少し目立つ気もする。

でも価格的に考えればやっぱり充分。逆にマンダリンは滅多に飲めない(たぶん記事という建前がなければ買えない)。とにかく、1リットル3000円、水道水の2万倍近い価格のジュースがあることを知ったということが収穫だった。オレンジだけに。
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スターバックスは1リットルいくらか

高い液体を探してさまよい歩くうち、スターバックスの看板が見えてきた。
鳥取県以外を網羅するチェーン店
鳥取県以外を網羅するチェーン店
そうだ、スタバのメニューはおいしいけど、お値段もそれなりにする。というわけで店に入ってみた。僕はコーヒーが苦手なので定番メニューが分からないのだけど、やや上の価格だったカフェモカというのを買ってみた。サイズはとりあえずのトールで440円。
持って帰るまでに上に載ってたクリームは全部溶けた
持って帰るまでに上に載ってたクリームは全部溶けた
お店の人に訊いたところ、スターバックスのトールサイズは350ミリリットルとのこと。これを1リットルに換算すると約1257円。うむ、ぜいたくはステキだ。

ちなみに、いわゆる缶コーヒーのショート缶の容量は185ミリリットル。これが自動販売機で120円で売られているということは1リットルあたりおよそ648円。

そう考えると、あのステキなメニューと快適な店内でくつろぐ時間が缶コーヒーの倍で価値、というのは十分アリだろうし、そんなことは既に散々語り尽くされていると思うし、このただ価格を比較して高い安い言うだけの記事の趣旨からすると完全に蛇足である。

ヤクルトはどうだ

缶コーヒーが1リットル600円以上、というのは意外にインパクトがあった。というわけで小さい容器でそれなりの値段がついているもの、と考えて思いついたのはヤクルト。
1リットル分買っちゃった
1リットル分買っちゃった
何を思ったか1リットル分買ってしまった。調べたところヤクルトは65ミリリットル入りで40円。一瞬安い、と思うけど、1リットルに換算すると615円である。なかなか手が出ないお値段。ちなみにヤクルトに入っている乳酸菌カゼイシロタ株は1本につき200億個だそうなので、1個につき0.000000002円。5億個で1円。乳酸菌、気の毒なほど安い命である。
1リットルのヤクルトを作った。集めに集めたりカゼイシロタ株3076億個
1リットルのヤクルトを作った。集めに集めたりカゼイシロタ株3076億個
空いた容器で会いたかったーYes!
空いた容器で会いたかったーYes!
おそらくヤクルト的には1本で十分な乳酸菌が採れるのだろうけど、おいしいから単純にもっと飲みたい。でもヤクルトは安くない。そんなニーズに応えるのがピルクルでありビックルといった飲料なのだろう。
ヤクルトヒエラルキーの中の人たち
ヤクルトヒエラルキーの中の人たち
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薬局は高価な液体がずらり

ここまでいろいろな飲料を比べてきたけど、さらに高い液体を探してドラッグストアにやってきた。冒頭に書いた1リットル7万円の目薬をはじめ、高い液体がタプタプ(ゴロゴロみたいな意味で)してそうである。
13ミリリットルで945円、1リットル換算で7万円以上!
13ミリリットルで945円、1リットル換算で7万円以上!
今後はまほうのせいすいと呼ぼう
今後はまほうのせいすいと呼ぼう
最初に目に留まったのは喉の殺菌、消毒の定番のどぬーるスプレー。調べたところ15ミリリットル入りで1155円、1リットル換算で7万7千円!のどぬーるがこんなに高い液体だったとは!

また、目薬もさらに高いランクで15ミリリットル入り1470円、リッター換算9万8千円というものがあった。超高い液!
リッター10万円突破も近い
リッター10万円突破も近い
そのほか、シャンプーや洗剤は1リットル千円から数千円程度と、それなりに現実感のある数字だった。
TSUBAKIはリッター換算3150円
TSUBAKIはリッター換算3150円

高い液と言えばユンケル

ドラッグストアで最後に目に入ったのは栄養ドリンクの棚。そう言えば数千円するユンケルがあると聞いたことがある!
どうして日本はこんなに栄養ドリンク発展したんだろう
どうして日本はこんなに栄養ドリンク発展したんだろう
ユンケルの中でもっとも高価だったのが50ミリリットル入り4078円のユンケルスターでリッター換算8万1560円というものすごい液。こんなの飲んだら僕、どうなっちゃうんだろう。

さすがにネタひとつで4千円は払えなかったので、お値段抑えめのを1本買ってみた。これでも売値で800円くらいする。
定価だとリッター3万4千円
定価だとリッター3万4千円
小さな瓶がケースに入っててVIP待遇
小さな瓶がケースに入っててVIP待遇

アロンアルファも高い液

ドラッグストアを後にし、コンビニに入ってみた。ここで目に留まったのはアロンアルファ。確か容量ものすごく少なかった気がする!と思って見たら容量2グラム(ミリリットルではなかった)、参考価格472円。水と同じ1グラムを1ミリリットルとして計算すると、1リットル換算で23万6千円。

ついに来た、リッター20万オーバー!
アロンアルファ1リットルあったら街ひとつ壊滅させられる
アロンアルファ1リットルあったら街ひとつ壊滅させられる
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君はシャネルの5番の匂いを嗅いだことがあるか

最後に向かったのはデパート。まったく詳しくないけど、高価な香水を今回のラインナップに加えてみたいと思ったのだ。

とは言え、化粧品なんてまったく縁がない。そんな僕が唯一知っている香水はシャネルの5番。あのマリリン・モンローが愛用していたということで、化粧品に疎い男性の皆さんも名前だけは聞いたことがあるんじゃないかと思う。

ネットでも価格は分かるけど、まずどんな匂いなのか気になったので、お店で嗅いでみたいと思った。
ものすごく敷居が高い化粧品売り場
ものすごく敷居が高い化粧品売り場
しかしデパートの化粧品売り場は男性に敷居が高い。スカイツリーより高い。ほかの女性客がいなくなるのを待ちながら目の前を2度3度通りすぎ、これ以上ウロついたら怪しまれる!と(既に十分怪しい)、思い切って店員さんに話しかけた。

「シャネルの5番、という香水があると思うんですけど…」

「はい、ございますよ」

「あの、匂いを嗅いだことがなくて、嗅いでみたいのですが、できますか…?」

「あ、はいもちろん、こちらにどうぞ」

くっきりメイクをキメた店員さんは、シャネルで「シャネルの5番」などとボケる僕を怪しむ様子もなく(顔に出さず)すんなりと店の奥に案内し、丁寧にラインナップの説明をしてくれた。同じ5番でも匂いの強さで種類があるのだ。せっかくなので説明しよう。

・オードトワレ 持続時間2、3時間
・オードパルファム 持続時間4、5時間
・香水 持続時間8時間くらい

話しかけるまでは緊張したけど、いざ訊いてみたらとても気さくに教えてくれた。その後、ブランドロゴの入った小さな紙に香水を一吹きし、「どうぞ、嗅いでみてください」と僕に渡した。

たぶん初めてちゃんと嗅いだ5番は、想像と違う匂いだった。何というかこう、べったりと甘くて濃厚な重い匂いだと思っていたけど、どちらかと言うと軽くてみずみずしい匂いだった。

「あ、意外と爽やかなんですね」

「そうなんですよ、ローズのみずみずしさもあって」

「よろしければカタログ差し上げますのでご検討くださいね、香水が7.5ミリリットルで1万4700円からありますので」


と言って、カタログを手渡してくれた。僕にとって明らかに場違いの店だったけど、この店員さんの接客は素晴らしかった。説明も分かりやすく、そして何より僕が匂いを嗅いでいる段階で「ご検討くださいね」とカタログを準備していた。「こいつ今日買わねえな」ということにいち早く気づき、こちらが不慣れで緊張しているところまで読み取って、言い方悪いけど用事が済んだら手際よく店から「追い出して」くれた。その一連の流れやタイミングが完璧で、気持ちよく店から出られた。こういうところも含めて一流ブランドなんだと思う。半分本気であの店員さんから買いたいと思った。

でも家に帰ってから、アイツきっと夜のお店のお姉さんに貢ぐんだな、と間違いなく思われていることに気づいて悶絶した。
右がカタログ、左の小さな紙に香水が吹きかけられている
右がカタログ、左の小さな紙に香水が吹きかけられている
さて、というわけでシャネルの5番の価格を1リットルに換算すると!

なんと196万円!出ました最長不倒!!

シャネルの5番すごい。たった1リットルで自動車が新車で買えてしまうのだ。
1リットルあたりの価格一覧表
1リットルあたりの価格一覧表

まだ見ぬ液に高揚

というわけで、目についた液体の1リットルあたりの価格を調べてみた。量を揃えることでその液体の本当の価値が浮き彫りになった気がするけど、水は安すぎるしアロンアルファはものすごく高かった。きっとまだほかにも強烈な価格の液体があるだろう。

そして香水の種類も勉強できたうえ、一流ブランド店の完璧な接客というものに触れることもできた。

つまり何が言いたいかというと、また時間とお金を無駄にしてしまったということだ。
ガソリンはジュースやミネラルウォーターより安い
ガソリンはジュースやミネラルウォーターより安い
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