コラボ企画 2014年7月7日

山手線の糖分を調べる

いい年したおじさん2人があてどなく糖分を摂る調査。
いい年したおじさん2人があてどなく糖分を摂る調査。

都内のあちこちでケーキや和菓子など甘い物がいっぱい売られている。

疲れている時には糖分が欲しくなるというが、では逆説的に、甘い物を売っているお店の多い地域は、疲れている人がいっぱいいるのではないか?

例えば山手線沿線をサンプルに地域の糖分分布を調べれば、疲れている街がわかるかもしれない。とりあえず調べてみよう。

1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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調査の前提

編集安藤さんから「きだてさん、甘い物どうですか」とメールが来たとき、正直しまったと思った。

以前、安藤さんから「データの分析とかをやっているジーリサーチとのコラボ企画なんですけど、なにか調査ネタないですかね」と相談されたことがあった。

その時うっかり「地域ごとに甘い物売ってるお店の数を調べたら、疲れてる人が多い地域が特定できるんじゃないですかね」と適当な思いつきを言ってしまったのだ。

山手線、ちゃんと目で見て調べてきました。
山手線、ちゃんと目で見て調べてきました。

「どうですか」と問われても、僕はいま本気でダイエット中だし、正直甘い物は苦手である。

聞いた安藤さんも実はあまり得意ではないらしい。

とはいえ、言った以上は仕方ない。

安藤さんが山手線『東京』から『目白』まで、僕が『高田馬場』から『有楽町』まで。半分ずつを実際に回って調べてみた

東京駅は深追いするな

編集部安藤です。甘い物は嫌いじゃないですが、あるレベルを超えたところで震えが来ます。最近では水ようかんで震えました。

東京駅から目白駅までを担当します。レッツ糖分!

スタート地点の東京駅。構内は若者からお年よりまで、幅広いお客で毎日ごったがえしていた。
「スイーツ」という名を冠したお土産屋さんの集合施設が点在。
「スイーツ」という名を冠したお土産屋さんの集合施設が点在。
構内にお店がたくさんあるんだけど、いわゆるお土産屋さんというよりも一つ上に構えた感じ。キラキラしたおしゃれなお店がとにかく多い。僕みたいな地方出身者からすると、この駅に降りてお土産買って帰るだけで東京行ってきた!って自慢できると思う。
甘味どころが随所に。上京疲れにも安心です。
甘味どころが随所に。上京疲れにも安心です。
地上階では特に京葉線へと向かうKEIYO STREETの糖分の充実ぶりが抜きん出ていた。京葉線はディズニーランドに行くときに乗る路線である。ここで糖分を補給してから一気にテンション上げて遊びにいく流れだろう。実に理にかなっている。
その勢いは地下にも続く。
その勢いは地下にも続く。
しかし東京駅の本当の実力を知るのは地下に潜ってからである。東京駅にはグランスタというお店の並びが地下に広がっていて、ここはほとんど糖分のかたまりと言っていい。服がべとべとするくらい甘い物がたくさん売られている。

さらに先がある。
なんでもない場所に突然行列ができていると思ったら。
なんでもない場所に突然行列ができていると思ったら。
最近話題のポップコーンのお店でした。1時間半待ち。
最近話題のポップコーンのお店でした。1時間半待ち。
グランスタから改札を出ると東京駅壱番館、東京おかしランドと矢継ぎ早に甘い物が続き、さらにその先には甘さの巨人、デパート大丸も控えるという豪華ラインナップ。東京の本気を見た気がした。
東京駅で買ったクロワッサンたい焼き。あんことザラメが織りなす凶暴なまでの甘さに鼻の奥がしびれました。
東京駅で買ったクロワッサンたい焼き。あんことザラメが織りなす凶暴なまでの甘さに鼻の奥がしびれました。
ただ、地上出口から一歩外に出ると、そこは生き馬の目を抜く丸の内ビジネス街。スイーツとかチャラチャラしたこと言ってる雰囲気のまったくない現実が待っているというこの落差にも注目。
外でスイーツとか言ってっと泣かすぞ。
外でスイーツとか言ってっと泣かすぞ。
追えるところまで追って128店。甘い物は主に地下に蓄えられている。アリみたいだ。
追えるところまで追って128店。甘い物は主に地下に蓄えられている。アリみたいだ。
今回の調査は判断基準に主観が含まれていることも書き添えておきたい。たとえば羊羹専門店ならばカウントされるが、甘いシナモンロールが売られてい るパン屋さんは数えなかった。なぜならカレーパンもあるからだ。おおむね8割方甘い物で占められている、と判断したお店をカウント対象とした。

東京を出るとしばし不作地帯が続く

東京駅を出て神田、秋葉原、御徒町、このあたりまでスイーツ不作地帯が続く。不安のある人は東京駅でしっかりと糖分補給しておくべきであろう。
駅構内にあるジューススタンドは迷ったがカウントしなかった。
駅構内にあるジューススタンドは迷ったがカウントしなかった。
神田2店、秋葉原6店という不作ぶり。
神田2店、秋葉原6店という不作ぶり。
こんな感じでカウンター片手に甘い物を探して歩いています。
こんな感じでカウンター片手に甘い物を探して歩いています。
神田から御徒町まで、町には甘い物よりも定食屋や飲み屋、パチンコ屋などが目についた。歩いているのも学生や若者よりビジネスマンが多い印象である。東京駅でピークを迎えた糖分は北へ向かうと一気に勢いを失う。
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独自のラインナップで甘党をうならす町、上野

単純にでかい駅には甘い物が多いのでは、という推測も成り立ちそうだが、その理屈でいくとたくさんの路線が集まる巨大駅、上野にも糖分が集まってしかるべき、ということになろう。
アメ横は上野駅の周辺としてカウントしました。
アメ横は上野駅の周辺としてカウントしました。
棒に刺さった果物が人気。ここはカウントに入れなかった。
棒に刺さった果物が人気。ここはカウントに入れなかった。
東京駅以降の不作地帯を挽回できるのか、上野。
東京駅以降の不作地帯を挽回できるのか、上野。
上野駅は構内にecute(エキュート)というお土産や惣菜の売り場があって、ほとんどの糖分がそこに集中している。アトレという商業ビルも併設されているが、6月現在リニューアル中で甘いものは売られていなかった。新しくオープンしたら甘くなるのかもしれない。
上野の甘さはエキュートで。
上野の甘さはエキュートで。
上野駅にはチェーン展開している甘いお店以外に、上野ならではといえる物もいくつか見つかった。デニッシュパンダ、とろけるクリームパンダ等、パンダモチーフの糖分は動物園で疲れた体にしみわたることだろう。

上野で見つけた甘い物、38店。巨大駅ながら常識の範囲内と言っていい。
デニッシュパンダ、オレンジヨーグルト味。オレンジヨーグルトのクリームが控えめに入っていて途中で飽きることなく食べ切れる。
デニッシュパンダ、オレンジヨーグルト味。オレンジヨーグルトのクリームが控えめに入っていて途中で飽きることなく食べ切れる。
構内にちょっとした休憩どころがあるので、買った甘い物をそそっと食べることができるのも親切。
構内にちょっとした休憩どころがあるので、買った甘い物をそそっと食べることができるのも親切。
甘い物は美味しいのに、なぜか食べると罪悪感が頭をよぎる。

罪悪感というか背徳感というか。太るとか虫歯になるとか、そういう実際的な害以外にも、「こんな昼間から甘い物食べて」みたいな後ろめたさとでもいおうか。この取材のことは家族には内緒である。これが辛いものだったらきっと写真撮ってLINEで送っているところなのに。
ここですでに甘さに疲れて野菜ジュースに手を出しました。
ここですでに甘さに疲れて野菜ジュースに手を出しました。
しかし取材だから次の駅へ行きます。

巣鴨のあんみつに甘党の本気を見た

上野を出て鶯谷から駒込まで、日暮里の10店をのぞいて一桁台の低迷が続いた。駒込では甘いお店よりも先に碁盤や熱帯魚など、甘さに翻弄されないしっかりとした趣味の用品店が目についた。

この並びで巣鴨の13店は久しぶりに目の覚める感じがする。10店を超えてくると甘い物を売っている駅としては中堅どころ、少し歩くと甘い物が見つかる、くらいのレベルだ。
13店は駅としてはそこそこ甘い方。
13店は駅としてはそこそこ甘い方。
駅を出てすぐのアーケード内にある老舗の和菓子屋さん。
駅を出てすぐのアーケード内にある老舗の和菓子屋さん。
巣鴨に着いたとたん雨が降り出したので、駅から一番近くにあった和菓子屋さんに入ってみた。お店の奥に喫茶スペースがあり、一休みすることができる。せっかくの巣鴨である、町に浸りたい。

看板メニューのあんみつを注文。
たぶん外であんみつを食べるのは初めてである。
たぶん外であんみつを食べるのは初めてである。
出されたあんみつを前に少しとまどった。おそらく記憶にある限りお店であんみつを食べるのは初めてである。

あんみつってなんだ。まずこのあんこをどうしたらいいんだろう。かき混ぜて溶かすのか、それともそのまま食べるのか。汁は飲むのか、残していいのか。
どうやって食べたらいいのかわからない。
どうやって食べたらいいのかわからない。
知らないあんみつをつつきながら肌で巣鴨を感じる。

同じ喫茶コーナーには僕の他にも母親くらいの年代のグループが。いろいろなキーワードが甘い匂いに乗って聞こえてきた。

「相続税」「ちり紙」「それはあなたが作り上げた財産」「子どもがいる人の浮気といない人の浮気」「嫁として迂闊」

はじめてのあんみつは想像以上にパワフルな食べ物だった。甘さが軽くK点を超えている。これ、レッドブルとか朝鮮人参とかよりもはるかに体にくるんじゃないだろうか。夜眠れないかもしれない。

あんみつを攻略したあとの付け合せの苦いお茶のうまさは今思い出しても頬が緩む。

池袋の地下はスイーツの巣窟

名前からして糖分高そうな道だ。
名前からして糖分高そうな道だ。
東京駅に比べればひとつ各下と言わざるをえないが、池袋駅の糖度もたいしたものである。東京駅に比べて気取ったところがないのもいい。

メロンパン専門店八天堂は東京と上野にもあったが、池袋で見た方が老舗パン屋に見えるから不思議である。東京と上野では前を通り過ぎた僕も、ついに池袋店で一つ買ってしまった。
品のある甘さでした。
品のある甘さでした。
池袋も上野同様、キャラの立っている駅なので、他の駅にはないスイーツがいくつか見られた。たとえばこちら、池袋といえばフクロウということでフクロウの形をした人形焼(のでかいの)。
池袋ならではのスイーツ、ハッピーフクロウ。ずっしりと、隅までカスタードクリームが詰まっていました。おいしいけどコーヒー必須やで。
池袋ならではのスイーツ、ハッピーフクロウ。ずっしりと、隅までカスタードクリームが詰まっていました。おいしいけどコーヒー必須やで。
池袋も地下で東武やら西武やらパルコやらいろいろなデパートがつながっているため、どこまで深追いするかによってお店の数はかなり変わってくると思うが、おおよそぐるりと見渡した駅周辺、というくくりで今回は線引きした。

それでも確実に100を超えてくるあたり、糖度ポテンシャルの高さを見せつけられる。
来たぞ100超え。
来たぞ100超え。
池袋駅は糖分だけでなく、たこせんべい、ラーメン、タコ焼きなど、塩分についても抜かりなかった。町の様子としては若者が多いイメージだったが、隣 接されたデパートの地下ではむしろ年配の方々が中心となってスイーツを値踏みしていた。若者が地上で中古CDとか見ている感じだろうか。

甘い物と向き合ってみて

山手線半分を調査してみて、これまで見えていなかった甘い物が世の中には僕の知る何倍もあるぞ、と思った。こういうきっかけでもなければあんみつなんて一生食べることがなかっただろう。それはそれでもったいない。

スイーツは年齢層を問わないレジャーなのだと思った。カブトムシが樹液に群がるように、僕たちも遠慮なく甘い物を求めて駅前をうろついていきたい。
調査を終えたあと食べた味噌汁のおいしさは1週間くらい引きずると思う。
調査を終えたあと食べた味噌汁のおいしさは1週間くらい引きずると思う。
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つづいて、高田馬場から有楽町までは、きだてが糖分調べを担当します。

甘い物はかなり苦手です。すぐに胃に溜まってウプッてなります。

さらにこの4か月で10kg以上のダイエットを成功させたばかりです。泣きそう。

こちらは地味なスタート

安藤さんは東京駅スタートでいきなりロケットスタートをかましたが、こちらは一転して比較的おとなしめな高田馬場から。
今回は駅から100m半径ぐらいを「駅周辺」と考えて調査。
今回は駅から100m半径ぐらいを「駅周辺」と考えて調査。
学生の多い駅ということで、基本的には牛丼とカレーとラーメンと安い居酒屋の多い地域、という認識があったのだが、やはりどこを見てもそんな感じ。

僕も学生時代にそれ以外を食べた記憶があまりない。学生の主食は牛丼とカレーとラーメンと居酒屋の揚げ物だ。糖分はほぼ摂取してない。
ザ・高田馬場の風景。牛丼カレー牛丼そば中華のコンボ。
ザ・高田馬場の風景。牛丼カレー牛丼そば中華のコンボ。
それでもサーティーワンアイスやミスドなどお馴染みの甘味を見つけて5店をマーク。

安藤さんの東-北エリアの結果を受けても平均的なところっぽい。

ところで出だしからイレギュラーだが、100m半径を超えても高田馬場で食べてみたかった甘味が一つあった。
高田馬場から徒歩6分の和菓子屋。駅周辺とは言えないか。
高田馬場から徒歩6分の和菓子屋。駅周辺とは言えないか。
お店が駅からすぐ、という距離ではないので今回はノーカウントとしたが、漫画好きには知られた銘菓『くりまんアトム』である。
残酷なアトムの補食シーン。朝っぱらからの甘い物で目が死んでる。
残酷なアトムの補食シーン。朝っぱらからの甘い物で目が死んでる。
さすが手塚治虫ゆかりの地ということで、鉄腕アトムを模した栗まんじゅうである。

カリッと硬めに焼き上げられた食感がロボットらしい、ということだろうか。

アトムをくわえたままで、隣駅の新大久保へ移動する。
韓国スイーツの店、あきらかに減ってると思う。
韓国スイーツの店、あきらかに減ってると思う。
韓国料理にはまっていた時期がありそこそこ訪れていた駅だが、以前はあちこちにあった韓国スイーツの店がかなり減っている気がした。

新大久保の糖分は3店。

糖分魔城、新宿駅

ここはすごいことになるな、と来る前から予測していた新宿だが、やはりすごい。

駅直結の小田急・京王のデパ地下は言うに及ばず、駅構内いたるところに甘味が存在する。
ちょっと歩くたびに甘味がある。甘味遭遇率が異常だ。
ちょっと歩くたびに甘味がある。甘味遭遇率が異常だ。
少し歩くと糖分、ちょっと目を向けると糖分。数えるカウンターが止まることなくカチャカチャ進む。糖分濃度高過ぎ。

駅の床とか舐めたら甘いんじゃないか、新宿。
駅前のアルタには、安藤さんがやられたクロワッサン鯛焼きも。
駅前のアルタには、安藤さんがやられたクロワッサン鯛焼きも。
さらに、駅ナカ・駅直結だけでなく駅の外にも糖分が点在する。

クロワッサン鯛焼きやタピオカドリンクの屋台、フルーツパーラーなどとにかく糖分に事欠かない。事欠かないというか、過剰だ。
駅前のフルーツパーラー高野で、季節のチェリーパフェ。お値段1700円!
駅前のフルーツパーラー高野で、季節のチェリーパフェ。お値段1700円!
高いパフェ、美味いな。
高いパフェ、美味いな。
さすがにいい値段するだけあって美味しいパフェを昼食代わりにいただいて、糖分調べ完了。

新宿は105店。東京・池袋にはわずかに及ばなかったが、堂々の100越えである。
100超えると「もういいよ」って気分になるな。
100超えると「もういいよ」って気分になるな。
あまりにもカウンターが上がるスピードが速かったので、途中からかなり判定を厳しめにしたのだが、それでもこの数字は立派であろう。

ついに出た、山手線糖分ゼロの駅

さて、糖分魔城新宿駅のホームから見えているぐらい近いのが、次の代々木駅。

なんとここは糖分ゼロの駅だった。
新宿の隣とは思えない静かさと甘さ。
新宿の隣とは思えない静かさと甘さ。
スマホのナビで検索すると駅前に和菓子屋が一軒存在するはずなのだが、地図の指示する場所にはタバコ屋があるだけ。
和菓子屋の痕跡はゼロ。屋号も違ったので全く分からなかった。
和菓子屋の痕跡はゼロ。屋号も違ったので全く分からなかった。
駅前の交番で確認したところ、あっさり「ああ、もう無いねー」と言われてしまった。

すぐ近くに新宿が存在するので、それでも糖分補給に特に支障はないのだろう。

ついでに順番は狂うが、山手線にはもう一つだけ糖分が抜け落ちたゼロ駅がある。

南に下って大崎駅である。
糖分のない街、大崎。
糖分のない街、大崎。
ソニーのテレビ事業部やローソン、アドビなど大企業の本社がひしめきあうビジネスの街なのだが、なぜかおどろくほどに糖分が存在しない。

大企業のタフなエリートたちは疲れを知らないのか。糖分を必要としないのか。
一度もカウンター押さなかった。なんか寂しい。
一度もカウンター押さなかった。なんか寂しい。
糖分が摂取できそうなのはコンビニや喫茶チェーンが数店あるだけで、あとはランチや飲み用の飲食店ばかりだった。

僕自身は甘い物は苦手だし、それ以前に代々木と大崎には全く縁もない。それでもやはり心配になってしまう。人間はたまに糖分摂った方がいいぞ、と。

クレープの街原宿から渋谷

再び順路に戻って、代々木から原宿へ移動する。

全国から若者がクレープを食べに来る、あの原宿は竹下通りである。

実際、修学旅行とおぼしき若い集団が「これが原宿のクレープかー」と感動しながら糖分の塊にかぶりついていた。

僕が食虫植物というか食修学旅行生植物なら、花からクレープの匂いを出して彼らを呼び寄せるだろう。
修学旅行生らしき一団の手前で、クレープ看板の写真を撮る老人。
修学旅行生らしき一団の手前で、クレープ看板の写真を撮る老人。
あと、何が目的なのかよくわからないが、店の前でクレープの看板を何枚も撮影しているおじいさんがいた。

もしかして、地方にいる孫に「これが原宿のクレープだぞ」と見せてやるために撮影していたのかもしれない。いい話だ。
この1時間前には新宿でパフェ食ったばかりです。涙目。
この1時間前には新宿でパフェ食ったばかりです。涙目。
こんなにクリームやらフルーツソースがたっぷりのクレープは食べたこと無かった。
原宿クレープのサービス精神とスピリッツは感じられる。

ただ、それを受け止めるだけの充分な糖分センスが無い僕が言える感想は「甘いなー」だけだ。申し訳ない。

駅から100mちょいぐらいまで竹下通りを移動。さらに路地まで探査して原宿は8店。駅の規模が小さい割にはさすが多いなという印象である。
若者と糖分が交錯する街、渋谷。
若者と糖分が交錯する街、渋谷。
次の渋谷も、さすが若者の街と呼ばれるだけあって糖分が多い。

広い地下街に加えてヒカリエのように建物の1フロアほぼ糖分、という施設もあり、なかなかのペースでカウンターは進む。
RPG風に言うと「糖分の塔」ヒカリエ。
RPG風に言うと「糖分の塔」ヒカリエ。
渋谷は73店。実は最初に予想していたよりも少な目だった。

駅内外に改装改築中の部分が多く、一時閉店もしくは移転となっているお店がいくつかあったのが原因と思われる。

工事が全て終わったあかつきには、都内最大級の糖分エリアとなる可能性は大だ。
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山手線は糖分凝縮の傾向

続いては恵比寿。これまた糖分が多いのではないかと予想される駅である。
駅ビルの中はおしゃれ糖分がたっぷり。
駅ビルの中はおしゃれ糖分がたっぷり。
カウントは14店。ほとんどがアトレ(JRの駅ビル)に集中していた。

この辺りで気付いたのだが、どうも山手線駅の糖分は、一部に凝縮する傾向があるのではないか。

実際、恵比寿以降の駅でもアトレがある規模の駅にはアトレに、デパートが直結している駅はデパ地下にと、とにかく甘味のお店は一か所に詰め込まれている印象が強かった。

その代わり、一歩駅の外に出るとほぼ糖分がない。
恵比寿駅前の商店街は糖分はゼロ。
恵比寿駅前の商店街は糖分はゼロ。
アトレのない小規模駅であれば、駅前の商店街にはケーキなり和菓子なり甘い物のお店がパラパラと点在しているのが普通だ。

駅の規模が大きくなり、駅ビルができた途端に周辺の糖分分布は一極集中の偏在型となる。

駅周辺で糖分を探すのであれば、アトレもしくはデパ地下以外を探すのが効率的ということだ。
ジャパニーズアイス。和風ジェラートとかき氷のお店。
ジャパニーズアイス。和風ジェラートとかき氷のお店。
とはいえ、もちろん駅外に糖分が全く無いわけではない。

恵比寿にも駅を挟んで商店街の逆側にはかき氷のお店があった。
くまちゃんかき氷。これは超かわいい。
くまちゃんかき氷。これは超かわいい。
取材当日は湿度と気温が高く、暑さでバテ気味だったのでかき氷はありがたい。

できれば「味なしの氷のみ」が欲しかったのだが、さすがにそれを注文していいものかわからなかったので、見た目がかわいかったくまちゃんかき氷をオーダー。
この日最大のショック。サプライズあんこ。
この日最大のショック。サプライズあんこ。
そして、くまちゃんのシロップがかかっている部分を掘り進み「さあ、いよいよ味のない氷だぞ」とワクワクしていたところに、中にどんと埋もれたあんこの塊を見つけた時の気持ち。

糖分が苦手な人には理解してもらえるだろうか。

逆に、甘い物が好きな人にはかなりハッピーなかき氷なんだろう。

目黒・五反田を抜けて品川のアンミラへ

次の目黒(14店)、五反田(5店)は恵比寿と同様、アトレなど駅近接の商業施設に糖分の偏りを見せる傾向だった。

そして、上野と同じく駅ナカにエキュートを持つ品川は、新幹線停車駅としてお土産糖分にあふれていた。

東海道を通して都内の糖分を西へと運ぶ、糖分大動脈の起点とも言えるだろう。

カウンターは35店と、上野の38店に近い数字だった。エキュートによる底上げ分が似ているのだろう。
東京の糖分を西へと運ぶ人たち。美味しいお土産を持っていってください。
東京の糖分を西へと運ぶ人たち。美味しいお土産を持っていってください。
もう一つ、品川と言えばパイである。

かわいい制服でお馴染み、アメリカンパイのチェーン店『アンナミラーズ』が都内で唯一営業しているのがここ品川なのである。
品川駅を出てすぐのビルに、都内唯一のアンミラ。
品川駅を出てすぐのビルに、都内唯一のアンミラ。
アンミラと言えばチェリーパイ。
アンミラと言えばチェリーパイ。
店員さんに写真をお願いすると、表情に困る。
店員さんに写真をお願いすると、表情に困る。
上の写真、実はパイとアイスクリームの甘さにかなりヤラれているところ。

ただ、この時は撮影をアンミラ服の店員さんにお願いしているので、露骨に胸焼け気味な表情もできずに耐えているのである。

山手線の糖分、いよいよ佳境

次の田町はお菓子メーカー、森永製菓の本社がある駅だ。

駅前には製菓の本社ビルを含む森永プラザという施設もあるぐらいで、きっと糖分が充ちているのに違いない。

むしろ森永プラザがお菓子の家的な建物だったらどうしよう。外壁はウエハースか、チョコか。全部お菓子でできたビルは1カウントでいいのか。
駅から徒歩1分の森永プラザ。お菓子の家じゃなかった。
駅から徒歩1分の森永プラザ。お菓子の家じゃなかった。
ところが、プラザ内の飲食フロアには糖分なし。もちろん建物もお菓子ではなかった。

建物の入口に森永アイスの自販機が1つあっただけ。正直、ちょっと寂しい。
仕方ないのでこれも1糖分としてカウント。
仕方ないのでこれも1糖分としてカウント。
このアイスの自販機も含めて田町は2店。

しかも自販機は全て同じ銘柄の「濃厚チーズスティックアイス」。

もしかしたらこれが森永製菓のイチ推しアイスなのか。じゃあ食べるべきか、とも思ったのだが、直前のチェリーパイで胃がキツかったので諦めた。
運河はあっても糖分は少ない町、田町。
運河はあっても糖分は少ない町、田町。
スマホのナビでは駅前にケーキ屋があると出ていたのだが、こちらも代々木と同じように無くなっており、現在はケバブ屋になっていた。色々と甘くないな。

さて、山手線糖分調べもここまでくればあとわずか。
新橋駅前で大きい将棋を指すおじさんたち。甘い物は食べてなかった。
新橋駅前で大きい将棋を指すおじさんたち。甘い物は食べてなかった。
浜松町は羽田方面へのモノレールステーションに2店。次の新橋は地下街や駅前にほどよく分散して8店だった。

基本的に飲み系の店ばかりと思われがちな新橋だが、意外と健闘している。

最後に、二人がかりで回った山手線のゴール、有楽町へ。
いよいよ最後の有楽町。これでもう甘い物食べなくていいんだ…。
いよいよ最後の有楽町。これでもう甘い物食べなくていいんだ…。
土曜の午後15時で40分待ち。人気だ。
土曜の午後15時で40分待ち。人気だ。
この日は休日と言うこともあり、駅前の商業施設イトシアでは和の甘味処『おかめ』が行列。というかここは平日でもわりと並んでるイメージだ。

銀座OLの皆さんはあんこを摂取するのが好きなのか。

ちなみにほぼ隣接の有楽町交通会館地下にも同じ『おかめ』があり、こちらはさほど並んでいなかった。
いちご大福の元祖(諸説有り)大角玉屋。
いちご大福の元祖(諸説有り)大角玉屋。
駅から100mは少し超えるが、有楽町にはいちご大福の元祖を名乗る和菓子屋の『大角玉屋』もあった。

小さいお店だが、こちらもなかなかの人気らしい。本当に和菓子好きだな、銀座有楽町エリア。
甘みが優しいので、糖分が得意でない人でも美味しい。
甘みが優しいので、糖分が得意でない人でも美味しい。
ゴールを祝して何か一つ、ということで元祖のいちご大福を食べようかとも思ったが、季節のお菓子である水無月を。

大角玉屋の水無月は小豆ではなくアンズをういろうに入れたもの。これが甘すぎず酸味があって美味しかった。これはまた食べたい。

山手線の糖分、まとめ

まず数値としてまとめてみると、こんな感じ。

見るかぎり、トップ3の東京・池袋・新宿は駅の規模から考えても100越えは当然、という納得の数字だ。

次いで規模の大きな渋谷、新幹線停車駅の上野・品川という流れ。
正直予想通りというか「ああ、まぁそうだろうな」という結果。
正直予想通りというか「ああ、まぁそうだろうな」という結果。

これだけだと「駅の規模が大きい=糖分が高い」という結果でしかない。

そこで、JR東日本が公表している一日乗降客数で糖分件数を割ってみた。

乗降客数で割るだけでいっきにデータ分析っぽい匂いがしてきた!
乗降客数で割るだけでいっきにデータ分析っぽい匂いがしてきた!

一人あたりの項目、単純に「糖分件数÷乗降客数」だと0.000…と小数点以下が長くなったので、単純に結果に×10,000してある。

よって、この数値は「乗降客一人あたりの糖分数」ではなく10,000人あたりの糖分件数となるのだけれど、めんどうなので「糖度」として扱うことにする。

この数値だと、糖分件数3位の新宿が一気に6位にまで落ちている。なんと東京の半分以下だ。

それに対して巣鴨(8位)、大塚(12位)が1.69と新宿を抜いて4位タイに急上昇。やはり年齢層高めなイメージの地域だけあって、疲れやすいのかもしれない。

あと、糖分以外に「疲れた時に欲しくなるアレ」の数値をグラフ化して、糖度にあわせてみた。

山手線駅ごとの生中ジョッキ一杯の平均価格(ぐるなび調べ)である。


なんとなく山の上下動が似てるような気がする。
なんとなく山の上下動が似てるような気がする。

糖分と、キングオブ糖質とでもいうべきビール。どちらも、疲れている時「自分へのご褒美」にする人は多いだろう。

グラフにしてみると、ビールの平均価格が高い(=需要が多い≒飲んでる人が多い)地域はおおむね糖分に対しての需要も高いような気がする。つまり、これは疲れている地域と言ってしまっていいのではないか。

あと面白いのは、糖度が高くビールが低い巣鴨と、その逆に糖度が低くビールが高い恵比寿。

巣鴨は、たぶん年齢的に病院でお酒を制限されている方が多く、疲れを糖分で癒そうとする傾向が高いのではないだろうか。

恵比寿に関してはよくわからないが、もしかして恵比寿に来るとみんな値段の高いヱビスビールを飲むから、ビールの平均価格だけ極端に上がってるのかもしれない。



糖分は疲れに効く、というのが定説であったように思う。

が、それぞれ取材を終えた僕と安藤さんが二人して合意に至ったのは「翌日以降、疲れがとれない」だった。普段食べ慣れないものを食べた、糖分疲れとでもいうのだろうか。

それだけ体を張っておきながらの、このゆるふわな結論。

この僕らの糖分調査も、きちんとしたデータ会社による分析が加われば興味深い結論に至るに違いない。

ジーリサーチさん、これ、使えないでしょうか。

編集部追記:このデータをジーリサーチに見せたところ、これはもうちょっと分析したら面白い結果が出るかも!とのことで、分析してもらうことにしました。新発見があったら誰の手柄になるのか、今のうちから話し合っておきます(安藤)。

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