特集 2014年7月22日

広大すぎる中国文具問屋へ行く

広大すぎる中国の文具卸売市場に潜入してきました。
広大すぎる中国の文具卸売市場に潜入してきました。
昨年の冬、玩具コレクターの友人に「きだてくん、中国にすごい広くてデカイ卸売市場があって、おもちゃも文具も大量に売ってるんだ。いちど一緒に行こうよ」と誘われた。
その時僕は残念ながら都合が付かなかったのだが、当サイトのウェブマスター林さんが行ってハトのおもちゃ240個を買ってきたりしていた。正直、楽しそうで羨ましかった。
しかし先週、僕もついに行ってきたのだ。憧れの義烏(いーうー)国際商貿城へ。
1973年京都生まれ。色物文具愛好家、文具ライター。小学生の頃、勉強も運動も見た目も普通の人間がクラスでちやほやされるにはどうすれば良いかを考え抜いた結果「面白い文具を自慢する」という結論に辿り着き、そのまま今に至る。(動画インタビュー)

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来たぞ義烏

義烏は、上海から高速鉄道(新幹線)で2時間半ほど。

上海高速鉄道と言えば、3年前に事故を起こして、事故車両をそのまま地中に埋めてしまったあの鉄道だ。

「あの埋まった新幹線、和諧号だ!」というだけで妙にテンションが上がる。
行きは普通だったけど帰りの和諧号はなんと寝台車両だった。新幹線なのに。
行きは普通だったけど帰りの和諧号はなんと寝台車両だった。新幹線なのに。
で、義烏駅からさらにバスで30分ほど行くと、いよいよ夢にまで見た義烏国際商貿城三区である。(国際商貿城は一区から五区まであって、文具は三区)

あらゆる文房具(ただし安物)がここに集まり、世界中の文房具バイヤーが買い付けに来る。(安っぽい)文房具好き夢の楽園である。
一階と二階、五階が主に文房具の問屋。
一階と二階、五階が主に文房具の問屋。
今回は事前に「デカい建物の写真をドーンと撮りたいから」と10mm-18mmの超広角レンズ(デイリー的には工場やダムの写真を撮る用のレンズ)まではりきって購入していた。

だが、残念ながら建物の全景を撮る事は出来なかった。なぜなら、建物が予想を超えて巨大すぎたからである。

数字で言うと、5階建ての建物で総面積が46万平方メートル。
「万平方メートル」って単位、建物の面積に使うもんなのか。
屋内に消失点がある建物は初体験。
屋内に消失点がある建物は初体験。
リゾート施設より広い建物のあちこちで、子供がバトミントンとかスケボーしてた。
リゾート施設より広い建物のあちこちで、子供がバトミントンとかスケボーしてた。
比較できるように、これに近い面積の施設がどこか無いかなーと検索していたら、千葉県にある体験型リゾート施設『ロマンの森共和国』が、「40万平方メートルの広大な敷地に、宿泊、食事、湯、遊びの施設が揃う自然体験型リゾート!」と宣伝していた。

湖でボートに乗ったりオートキャンプ場がある施設らしい。40万平方メートルってそのレベルだ。

そこよりさらに6万平方メートル以上でかい文具市場。あっていいのか、そんなもん。

中の文具問屋もなにかおかしい

で、その46万平方メートルの中になんと1万以上の問屋が密集しているのだ。

当然、それだけの店があると「なんでも売ります」ではやっていけないらしい。どの問屋も極端な特化をすることで生き残りを計っている。
粘着テープと接着剤専門店
粘着テープと接着剤専門店
滞在してるだけで全身がねばねばしてきそうなぐらい、とにかくひっつくものしか売ってない。

あと、店の隅っこにごきぶりホイホイみたいなのが置いてあった。これは売り物では無かろうが、徹底して粘着材を使うんだなあと感心した。
ここはハサミ専門店。カラフルなハサミがびっしり。
ここはハサミ専門店。カラフルなハサミがびっしり。
当然、カッターナイフ専門店だってある。
当然、カッターナイフ専門店だってある。
上に挙げたのは、まだ分かりやすい方の専門店だ。

次のページからは、あまりにも進化しすぎてどこに行こうとしているのか分からない類の専門店。

たぶん生物で言うとオオツノジカとかサーベルタイガーとか、ああいうパンチ効きすぎた進化の袋小路的なやつ。
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需要の分からない専門文具問屋

帰国してから写真を見直していても、「あれ、ここ何の問屋だっけ」と首を傾げる店ばかり。

いや、写真を見れば分かることなんだけれど、脳が勝手に「そんな専門店あるはず無いだろう」と常識的な判断をしてしまうのだ。
問題1. これはなんの専門店でしょうか。
問題1. これはなんの専門店でしょうか。
答え1. 植物っぽい見た目のボールペン専門店。
答え1. 植物っぽい見た目のボールペン専門店。
雰囲気はほぼ花屋や植木屋と変わらないが、ここに並んでいるのは全部ボールペンである。

世界中の植物っぽいボールペンを求めるバイヤーがこのお店で買い付けをしているのかと思うと、いろんな意味でゾクゾクする。

ちなみにこのヒマワリペンは最小ロット2500本と言われた。買ってしまうと、部屋がそこそこな規模のヒマワリ農園である。
問題2. これはなんの専門店でしょうか。
問題2. これはなんの専門店でしょうか。
答え2. バインダーやリングノートなどの紙を留めるリング専門店。
答え2. バインダーやリングノートなどの紙を留めるリング専門店。
文房具ではなく、まさかの文房具のパーツ専門店である。

右上に写っているロールは、リングノート用のリングを巻いて作るための針金らしい。

もちろん、世界中のバインダーのリング留め具を求めるバイヤーがこの店に来るのだ。
ここは輪ゴム専門店。輪ゴムが死ぬほど売ってる。
ここは輪ゴム専門店。輪ゴムが死ぬほど売ってる。
昔あった、砂鉄で絵を描く(タカラの『せんせい』とか)ボード専門店。
昔あった、砂鉄で絵を描く(タカラの『せんせい』とか)ボード専門店。
変な修正テープ専門店。普通の修正テープはほとんど売ってない。
変な修正テープ専門店。普通の修正テープはほとんど売ってない。

問屋で文房具購入にチャレンジ

見ているだけでも相当に楽しいのだが、やはり義烏まで来たからには買い付けもしてみたい。

いろいろ回っている中で見つけた変なボールペン専門店で、ものすごく気になるペンを見つけたのだ。
これが気になるボールペンです。
これが気になるボールペンです。
ほら、ボールペン。栓抜きとワインオープナーもついてる。
ほら、ボールペン。栓抜きとワインオープナーもついてる。
これは欲しい。役に立つシーンが一切想像できないところがグッとくる。

早速、同行してくれた玩具コレクターでライターのいんちき番長氏に通訳をしてもらって、お店と交渉に当たる。

「このペン欲しいんですけど、売ってもらえますか?」
「1ロット5,000本カラネー」
いんちき番長(右)は中国人と中国語で喧嘩できるレベルで喋れる人。
いんちき番長(右)は中国人と中国語で喧嘩できるレベルで喋れる人。
一発で断念だ。

先のヒマワリペンもそうだが、やはり問屋なので基本的に1個売りはやっていないのだ。

その代わりに一本あたりの単価はものすごく安いのだが、それにしたって5,000本は手の出しようがない。

もし買ったとしたら、今後は僕が日本で栓抜きペン専門の問屋を開かなければならない。

しかし、もう一本気になったペンがある。

こちらはもう少しロット単位が少ないらしい。ここは交渉である。

価格ではなくロットを値切るのは、人生初体験だ。
ハサミとLEDライトつきペン。さっきのよりちょっと実用的。
ハサミとLEDライトつきペン。さっきのよりちょっと実用的。
「コレハ1ロット2,000本カラダヨ」
「そこをなんとか、もうちょっと少なくしてもらえませんか」
「ショウガナイネ。ジャア500本ナラ買ウカ?」
「え、500本?それは少ない!買います買います」
交渉成立。やったね!
交渉成立。やったね!
義烏の買い物は常にロットとの戦いである。

冒頭で「文房具好きにとって夢の楽園」と書いたが、欲しいモノが目の前にあっても気軽に買えないのでは逆に地獄なのかもしれない。

で、いま冷静に考えたら、500本のハサミ付きペンはぜんぜん少なくなかった。

結局、僕は今後、文房具ライター兼ハサミ付きボールペン問屋として生きていかねばならないのだろうか。

とりあえずお土産で配りまくってどこまで減らせるかが勝負だと思う。
すでに自宅で結構な場所を食ってる500本のペン。
すでに自宅で結構な場所を食ってる500本のペン。
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