特集 2014年12月17日

射的を電子化してみた

Maker Faireでこんなの出展してました
Maker Faireでこんなの出展してました
当サイトもたびたび参加しているDIYの祭典「Maker Faire」。(だいたいこんなイベントです。) いつもはデイリーポータルZのブースで私も出展させてもらってるのだが、今回は同僚と組んだサークルから出展することになった。

そこで出展したのがパソコンの画面の上のほうをマウスで突っつくと、ディスプレイの上に置いてあるものが落ちる「電子射的」なのだが、とにかくまずは見てもらおう。
島根県生まれ。毛糸を自在に操れる人になりたい。地元に戻ったり上京したりを繰り返してるため、一体どこにいるのか分からないと言われることが多い。プログラマーっぽい仕事が本業。(動画インタビュー

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電子工作で射的ってなんだ

今回、私が参加していたサークルでは、祭りの屋台にありそうなアレっぽいものを出展していた。
マウスで操作する電子の射的
マウスで操作する電子の射的
「あの射的を電子化した!」というものなのだが、いったいどこが電子かなのかというと……
ディスプレイの上に的となるものが置いてある
ディスプレイの上に的となるものが置いてある
マウスで画面の上のほうを叩くと、台の上に置いてあるものが落ちるようになっている。
マウスカーソルが画面の上のほうへいくと
マウスカーソルが画面の上のほうへいくと
鉄芯が飛び出す
鉄芯が飛び出す
叩いたときに実際の物質がカチカチと叩かれたような感触があり、マウスに振動がくるようになってるのかと何度か聞かれた。いや、まったくそんな高度なことはしてない。リアルにぶつかる音から感じる錯覚だろうか。

不思議な感触で、やり始めるとただなんとなく延々とカチカチやってしまう。

梱包材の「プチプチ」をつぶす感覚が味わえる「ムゲンプチプチ」をただなんとなく延々とやってしまう感覚と似てる。
画面の上のほうにカーソルがいくと、いずれかの鉄芯が必ず飛び出すので、動かせばまあ100%倒れる。

外れることがないので、射的かどうかと問われたら疑問ではあるが、「射的っつったら射的だ!」 ということにして話を進めよう。

製作よもやま話

思えば最初は「射的」の案も「画面の上のほうを叩く」という案もなかった。紆余曲折があって、こんな形の射的に辿り着いたのだ。

メンバーたちと製作時の試行錯誤を軽く振り返ってみよう。
メンバーの福嶌、山本、松本
メンバーの福嶌、山本、松本
――そもそもどういうなりゆきで射的を作ることになったんだっけ……

「電子工作を使って、遠くのものを念力みたいに動かしたいっていうのがまずあったんですよね」

――その一方で私は「編み物を使ってできることはないか……」と考えてて。

そう、どういうものを作るかのアイデアを出す段階で、サークル内で方向性が2つにわかれたのだ。
「遠くのものを念力みたいに倒したい」⇔「編み物を利用してなんかしたい」 (※両方電子工作のはなし)
「遠くのものを念力みたいに倒したい」⇔「編み物を利用してなんかしたい」 (※両方電子工作のはなし)
仕事で取り扱っている『HOTMOCK』というマイコンキット(本来はものをデザインする人が使い勝手を検証する目的で開発されたシミュレーションツールなのだが、電子工作にも利用可能)を使ってなにか面白いことを……! と仕事仲間で結成したサークルだったが、早くも意見が真っ二つ。 交わらない、ああ、交わらない。
アイデア交わらず。どうすれば……
アイデア交わらず。どうすれば……
結局、どっちのアイデアも形にして見てみたいよね……ということになり、2作品を並べて展示したのだった。
並べて展示していた編み物を使った作品についてはまた別の機会に……
並べて展示していた編み物を使った作品についてはまた別の機会に……
念力案だったのが射的になった
念力案だったのが射的になった
そんな訳で、同じサークルでの展示だが、私はこの射的の製作にはあまり関与していない。

なので本記事は、客観的な視点でのインタビュー形式で進めさせてもらう。叩いて落ちるのを初めて見たとき「すげーー! なにこれ!」と思ったので、実際いろいろと気になってるのだ。

念力からタイピングゲームへ

――念力っていう案がどうして射的になったんですか?

「手元で入力した情報で離れた的にぶつけられたらちょっと念力っぽくて面白いよねってアイデアが出て。

そこから『(キーボードを)打つ』と『(射的の)撃つ』を掛けた『射的』っていいかな、となりました」


そこでまず、キーボードに的の名前を入力すると、的が倒れるものを作り始めた。
ローマ字で「kame」と打つと
ローマ字で「kame」と打つと
カメが撃たれる
カメが撃たれる
そんなに凝った作りではない。「左から2番目はカメ」と決まってるのでカメを乗せ、「kame」と打つ。 間違えたときには鉄芯は飛び出さない。

――これ、ゲームとしては楽しめるんですか?

「タイピング速度を競う目的なら遊べるかなと思って、時間でスコアが出るようにしたり、作りこんでたんですけど……」
あ、実はこんな機能があったのか。全部撃ち終わったタイムが出る。ランキングも出るようになってる
あ、実はこんな機能があったのか。全部撃ち終わったタイムが出る。ランキングも出るようになってる
「これが8割がたできてたころ、ディスプレイの上にごちゃごちゃ物を乗っけたままにしてたら、これ直接叩けばいいじゃん! ってなって。
あと子供に遊んでもらうとなったとしても、子供ってローマ字打てないってのにも気づいて。

試しにマウスバージョン作ってみたら、触ったメンバーの反応がよかった。で、これも出そうということになりました。

打てば必ず倒れるからゲーム性はないけど、感覚自体が面白いからもうそれだけでいいかな、と」
そんなにただなんとなく、試しに作ったものだったとは
そんなにただなんとなく、試しに作ったものだったとは
結局イベント当日は、タイピングバージョンの方はほとんど使わなかった。チラ見しつつ素通りしようとした人が引き返してくるほどに、マウスバージョンのほうが説明不要だったからだ。

ゲーム性がなく外れることがないお陰か、びっくりするぐらい小さな子でも遊んでいってくれた。
ギリギリマウスに届くぐらいの子が無言でプレイしてった
ギリギリマウスに届くぐらいの子が無言でプレイしてった
もう少し大きな子になると、拾う側に対して無遠慮にもほどがある……というほど容赦なく倒しにかかってくる。

2日間通して、ほんとに子供のお客さんが多くて、マウスを握ったまま離さない子や3回ぐらい来たリピーターの子なんかも居た。
外国の人も多かった
外国の人も多かった
――印象に残ってるお客さんっていましたか?

「外国の人はリアクション大きい人が多かったですよね。動画に残しておきたかったぐらい。

あと真面目そうなおじさんが、最初真面目な顔して触ってるのに、子供の顔に戻って「ええええーっ」ってなる瞬間が何度もあって、そういうのを見るとうれしかったです。子供が理由なしに笑顔になるのもうれしかったですね」


思い返すと、子供より大人のほうが驚いてた印象はある。子供は「こういうものだ」と疑問にも思わずすんなり受け入れるんだろう、きっと。

「もっとゲームっぽく」の声

ゲーム性のなさのお陰で小さな子にも遊んでもらえたが、大人からは「たまには外れてほしい」という声がたびたびあがる。

あとは「射的のほうは作りこんであるのにマウスがそのまますぎる」とか、「マウスをエアホッケー風にしたら?」とか。
これは当初タイピングゲームとして作ってたからこのままなんです
これは当初タイピングゲームとして作ってたからこのままなんです
うーん、なんとかゲーム性を持たせるとしたら……? たとえばドミノっぽく遊ぶってのもありかもしれない。
駄菓子を並べて、一番左のをマウスでたたくと……
駄菓子を並べて、一番左のをマウスでたたくと……
おおおっっ!!
おおおっっ!!
うまく倒れた!!
うまく倒れた!!
射的に飽きたらドミノとしてでもアリだな、これは。

――今回はこんな風に遊んでみたけど、今後もしゲーム性を持たせるとしたらどうしたいですか?

「射的を2つ並べて対戦形式にして、早く倒した方が勝ち……ってルールにしたら燃えそうですよね。今度こそ念力っぽく、たとえばパンチしたら的が倒れるようにするとか。ふたり並んで画面に向かってパンチしてたらバカっぽくて面白そう」
並んでエアパンチしまくる大人、確かに見てみたい。こういうのって性格出そう
並んでエアパンチしまくる大人、確かに見てみたい。こういうのって性格出そう

そういや仕組みってどうなってんだこれ

――さいごに、どういう仕組みで出来てるのか、簡単に教えてください。

「画面に表示されているflashアプリ上で設定されているエリアにマウスカーソルが入ったら、最終的には『ソレノイド』という通電すると鉄芯が飛び出る部品が動くようになっています。

カーソルを置くエリアによって、どのソレノイドを飛び出させるかを指示し、それに向かって電流を流してます」
描いてもらった図に聞いた説明を描き足したもの
描いてもらった図に聞いた説明を描き足したもの
なるほど。マウスの操作で「どこに電流を流すか」を選ぶ→指定された鉄芯が電磁力で飛び出る→上に置いてあるものが落ちる、という流れだったのか。

裏をめくってみるとこうなってた。
なんか引っかかってた。地引網か
なんか引っかかってた。地引網か

肉体労働の2日間だった

展示したものに対して良い反応をしてもらえると、それだけで達成感があり、充実した2日間だったが、翌日からどうも身体が痛い。

振り返ってみると、「落とされて→拾って→落とされて→拾って」を何度繰り返したか……あの動きを利用してちょっとした発電でもできたんじゃないかと思うほどだ。
うまくいけば裏に置いてある袋がキャッチしてくれる予定だったが、そんなにキャッチしない
うまくいけば裏に置いてある袋がキャッチしてくれる予定だったが、そんなにキャッチしない
次にもし展示するときは、念力よりパンチよりなにより、的の飛び散り対策をどうにかしたほうがいい気がしてる。

今まで電子工作をやってみたいという思いがありつつも、Makeではファービーみたいな工作ネタばかりをやってきた。ようやく電子工作に触れて、多少ノウハウも掴めてきたので、そのうちまたDPZのブースでも電子工作ネタで出展したい。
射的の横に居た腹まわりがきつそうなこのクマについてもそのうちまた
射的の横に居た腹まわりがきつそうなこのクマについてもそのうちまた
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