特集 2015年9月2日

夜通し踊り続ける盆踊りが超楽しい

午前3時頃の様子です。
午前3時頃の様子です。
岐阜県の郡上八幡市で、毎年お盆になると徹夜で踊り続ける盆踊り大会があるという。

以前行った友人がすごく面白かったというので、行ってみたらすごく良かったので是非皆様にも行ってみていただきたいと思うところでございます。
1983年三重県生まれ、大阪在住の司法書士。
手土産を持参する際は消費期限当日の赤福で受け取る側に過度のプレッシャーを与える。

前の記事:暑くてカラシ豆腐しか食べる気にならない

> 個人サイト owariyoshiaki.com

ただのサイコーの「ぼくのなつやすみ」じゃん

なんと絵に描いたような自然の風景
なんと絵に描いたような自然の風景
お祭りのある郡上市は岐阜市からバスで一時間ちょっと位。名古屋から2時間位。意外と近いなと思ったところがこの景色よ。
最近の若いもんは、何かを網でひょいひょいすくってて凄い。
最近の若いもんは、何かを網でひょいひょいすくってて凄い。
典型的な日本の夏のイメージ、みたいな光景が当たり前に繰り広げられていく。
橋から飛び込む子どもたち。
橋から飛び込む子どもたち。
おおらかな雰囲気で、子どもたちが橋から飛び込んで遊んでいたりする。子供の頃は自分も飛び込んでいたものだけれど今は「どうか、誰も怪我が無いように…。」としか思わないので、老いを感じる。
老いた者に染み入る良さよ…。
老いた者に染み入る良さよ…。
自然だけではなく郡上八幡は町並みもすごく良くって、歩いていて楽しい。この夏、特に夏っぽいことはしなかったけれど、ここで川に足をつけてビール飲んだ時点でトップ夏ランカーになれたと思う。
懐かしい感じのお店の店構えが良い。
懐かしい感じのお店の店構えが良い。

にわかに感じる祭りの気配

郡上踊と書いたぼんぼりがデカイ。
郡上踊と書いたぼんぼりがデカイ。
祭りが始まる前にすでに満足してしまっている感はあるのだけれど、街は祭りの気配にあふれている。というか、この辺、夏の間はほぼ毎日がお祭りだそうだ。
祭りの日程を書いた表。
祭りの日程を書いた表。
「郡上おどり」とは、郡上市の八幡町というところで行われる一連の盆踊り大会をまとめて呼ぶ名前で、なんと二ヶ月足らずの間に32回もの盆踊りが行われるという。

8月なんて31日間に23回も盆踊り。しかも同じ町内で。完全にやり過ぎではないか。
徹夜組
徹夜組
その中でお盆まっただ中の8月13日から16日までは夜を徹して踊り続ける徹夜踊り。大丈夫だろうか、そんなに踊って飽きちゃってないだろうか。

一気に表情を変える街よ

ひと通り街をぐるっと回り、有料の休憩所で一服。さぁ、出かけよう!としたところ、浴衣が着れなくてびっくりした。浴衣って着るの大変なんですね(初めて着た)。
至れり尽くせりな郡上八幡よ。
至れり尽くせりな郡上八幡よ。
どうしよう、助けて!って休憩所の受付していたおじいちゃんにお願いすると、二人がかりでガッツリと着せてくれた。
おじいちゃん写り込んじゃった、みたいな写真。
おじいちゃん写り込んじゃった、みたいな写真。
「(浴衣の着付けは)有料やで?」とか言われながら、着せてもらっていたら何故か最後は「来てくれてありがとう、ありがとう」と言われてしまった。なんといいひと。

さぁ戦闘準備は万端だと、街に繰り出して驚いた。
なんという華やかさ
なんという華やかさ
お昼のほのぼのした感じとは打って変わって驚きの華やかさ、風情よ。激風流じゃん、なんだこれは。
写ってる人ほぼ全員踊ってる。
写ってる人ほぼ全員踊ってる。
そして盆踊りの会場に行って更に驚いた、なんだこの人数は。見渡す限り盆踊りを踊る人。原宿の竹下通りの人が全員踊りながら歩いていると思ってもらうのが最も状況に近い。なんだこれは。
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想以上に規模がすごい

昼間とは人出のレベルがぜんぜん違う。下の写真は午前1時くらいなのにこの人数。
ほら、両サイドめっちゃ踊ってるでしょう。
ほら、両サイドめっちゃ踊ってるでしょう。
想像していた盆踊りと全然違う。やぐらを囲んで一部の人が踊って、後は見てる。みたいな感じじゃなくてほぼ全員参加である。
星の位置がやぐら。黒い線に沿って時計回りだったり、反時計回りだったりに進んでいく。

あまりに踊る人が多すぎて、やぐらの周りを回るということが出来ないので、やぐらを中心に十字に道沿いを踊りながら進んでいく。
深夜一時過ぎの光景です。
深夜一時過ぎの光景です。
この行列が真夜中でも本当に途切れることなく続いていて、大体1km弱くらいは人が列をなして踊っているのだ。
みんな下駄履いてるのが分かりますでしょうか。下駄で地面を蹴りあげているところ。
みんな下駄履いてるのが分かりますでしょうか。下駄で地面を蹴りあげているところ。
列に加わってみたらば、これが楽しい楽しい。振付がそんなに難しくなくて、手を叩いたり下駄を鳴らしたりというポイントがたくさんあって、揃った時がすごく気持ちいい。

郡上踊りおもしれぇな!と思ったけれど夜はまだまだ長く、郡上踊りはまだまだ深いのであった。

踊りで見る親子模様(踊りは関係ない)

ビール飲み飲み、盆踊りを踊る。何度もビールを買いに行っていたらビールを売っていた青年と仲良くなった。青年は名古屋で働いているが、徹夜踊りの時期になったら必ず帰ってくるらしい。ビールは手伝いだそうだ。

「踊んないの?」って聞いたら「熱いのかかったら行きますよ」って言う。盆踊りの曲でも盛り上がる「熱い曲」があるらしい。なんかクラブみたいだな…。と思った。
写真右の「洋菓子ことぶき」で仲良くなった。夜になるとビールを売っていた。もちろん洋菓子も。
写真右の「洋菓子ことぶき」で仲良くなった。夜になるとビールを売っていた。もちろん洋菓子も。
話していると奥の方からオッサンが現れた。青年のお父さんらしく、「この人だれや」といって、踊りに来た人というと「来てくれてありがとうな、ありがとうな」と言いながらドンドンビールを奢ろうとしてくる。商売!商売っけの無さ!初対面でこの親戚感あふれる対応は何だ。

お父さんは上機嫌で色々と話してくれる。そして、ヒートアップしてきて「息子が夢を諦めて地元に帰ろうとしとるんですが、どう思いますか?」と息子を目の前に突っ込んだ話をしてくる!当り障りのない事を返すがお父さんはまだ続ける。結構酔っているっぽい。
完全にビール売る側のポジションに座ってた俺。
完全にビール売る側のポジションに座ってた俺。
すると息子が、「今までは言ってなかったんやけど」と切り出した。

「仕事で父親に発注した際の仕事っぷりが非常にカッコ良かった。素直にこの人(父親)と仕事をしたいと思った。今までの仕事も活かせるし地元の力にもなれる。自分なりに考えた結果なんだ」

というような事を言うと、お父さんは「そんなこと言うてもやな…」と言いながら、かなり勢いが削がれている。そして、すっと後ろに下がって一人でビールを飲みだした時の顔があんまりにも嬉しそうでびっくりした。
今どこにいる?って聞かれたけど、親子の話を伝えたくて食らう「なんの話やwww」という適切なツッコミ。
今どこにいる?って聞かれたけど、親子の話を伝えたくて食らう「なんの話やwww」という適切なツッコミ。
こんな、こんなことってあんのか。旅人と話して親子が和解する、「男はつらいよ」みたいな、昭和のヒューマンドラマみたいなことってある!?作り話感がすごくて書いてる自分もビックリで、友達にすぐにLINEで連絡した。

息子に「お恥ずかしいところをお見せして…」と言われたが「いえいえ(いいネタ頂きました…)」と思った。
その後合流した友人は知らない人にお酒を奢られまくって潰れていた。なんなんだ郡上踊りは。
その後合流した友人は知らない人にお酒を奢られまくって潰れていた。なんなんだ郡上踊りは。
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自分なりのまちおこし

友人がみんな寝てしまったので一人で夜の踊りへ繰り出す。と、さっきの息子とその友人たちと出会った。

すると、「誰?」「名古屋から来た人」「名前は?」「尾張」「おっけー、尾張一緒に踊ろうぜ」というやりとりだけで、その後はもう友達みたいに話せるようになった。なんだこの子供の頃に戻った感は。
左から、首に青いタオルかけてるのが息子。ポロシャツが38歳(名前知らん)、首にタオル結んでるのがしょうごう。後一人、天馬というやつもいる。
左から、首に青いタオルかけてるのが息子。ポロシャツが38歳(名前知らん)、首にタオル結んでるのがしょうごう。後一人、天馬というやつもいる。
そうして知り合った人とビールを飲んでいたら「春駒」という曲がかかる。郡上踊りの中でも一番盛り上がる曲で、B’zで言えばultra soulみたいな曲だ(知らんけど)。

かかるやいなや、「行こうぜ!」と言ってみんなすごい勢いでビールを飲み干す。「そ、そんな飲み干んでも」と言うと「地元の人は、踊るとき手になにも持たんようにしてるんですよ。そのほうが見て綺麗だし、なによりちゃんと踊るほうが楽しいでしょ」と返され、俺もググっと飲み干した。
「おしっこしたい」というと「こっちに地元の人しか使わんトイレあるよ」と言って裏道を通って案内してもらった所から見た夜空。
「おしっこしたい」というと「こっちに地元の人しか使わんトイレあるよ」と言って裏道を通って案内してもらった所から見た夜空。
一緒に踊っていると、みんな本当に踊りが上手い。子供の頃から踊ってるからかと思ったら「(一回都会に出て)地元に帰ってきてから踊り始めた」とか「二年前から踊り始めた」という(もちろん子供の頃から踊ってる人もいる)。
頭に手ぬぐい巻いてるのが天馬。天馬の踊りは動作が大きくてすごい楽しそう。
頭に手ぬぐい巻いてるのが天馬。天馬の踊りは動作が大きくてすごい楽しそう。
地元を活気づけたくて何かできる事が無いかと考えて、盆踊りを楽しく踊ろうって決めたそうだ。

盆踊りっていうお祭りは、花火みたいに何かが有ってそれに集うわけじゃなく人の輪が有り、それに加わるっていう人ありきのお祭りなので、これだけ盛り上がっているのは地元の人の「楽しもう、そして楽しんでもらおう」っていう気持ちのおかげなんだと気付かされた。

そしてクライマックスへ

そりゃあ俺も踊らにゃなるまいと、踊る。踊り続ける。酔っ払ってるし、眠いし、踊り続けの疲れで頭がボーっとしてくる。そこでかかる、鉄板アゲ曲の「春駒」だ!
午前3時の様子です。
午前3時の様子です。
周りも、来たッ!という雰囲気。高まる熱気の中、踊り始めると今までと比べてメッチャメチャテンポが速い。歌う人もテンション上がっちゃうとテンポが上がるらしい。

すでに深夜3時過ぎ、歌をうたう方もテンション上がってたら踊る方もノリノリで、ダンスフロアは最高潮。真ん中を踊りながらヒャッハー!って突き抜けて行く人もたくさん現れる。
春駒の様子です。当時の視界に非常に近い様子で写真が撮れています。
春駒の様子です。当時の視界に非常に近い様子で写真が撮れています。
ドンドン早くなるビートに一糸乱れぬ下駄の音で応える。無心でステップを踏み、下駄を鳴らす。頭のなかから雑念が消え、会場に、盆踊りの輪の中に意識が溶けこんでいく。

うひゃー、なんじゃこりゃ、たのしい、たのしいぃぃ~と、なった所で春駒が終了。今日一番の拍手が沸き起こった。

ネバーエンディング盆踊り

地元民にあのテンポの春駒はなかなか無いよ。と、言わしめるほどのベストアクトの後も祭りは続く。
空が白んできた
空が白んできた
ゆるゆると踊り続けると、徐々に登ってくる朝日。
朝五時過ぎの様子です。朝五時を過ぎても一糸乱れぬ振り付け。
朝五時過ぎの様子です。朝五時を過ぎても一糸乱れぬ振り付け。
来る前は、徹夜って言っても最後はほとんどいないだろう。と思っていたのが、最後までこの勢い。今いる人達すべてに連帯感を感じるほどの踊りっぷりとなっている。

そして最後に流れる「まつさか」という曲。締めはこの曲と決まっていて、一晩に一度しか流れない。なのになぜか踊れる周りの人達。一体何なのか。
終わった後の写真を見ると、さっきまでの人の多さがよく分かるでしょう。
終わった後の写真を見ると、さっきまでの人の多さがよく分かるでしょう。
終わった後の疲れと達成感に、朝の空気の爽快さが気持ちよくて徹夜で踊る意味が少しわかったような気がした。

休憩所に一本歯の下駄が置いてあって、完全に天狗の仕業。
休憩所に一本歯の下駄が置いてあって、完全に天狗の仕業。
サイコーに楽しかった徹夜踊り。街の環境とか風情とかはもちろんなんだけど、郡上八幡にいた人みんなが観光客に対して「よそ者」としてではなく「来てくれてありがとう」という気持ちで接してくれていたからだと思う。

盆踊りって地域の祭だから、あんまりよそ者が行くのとか良くないのかな。とかはじめは思っていたんだけれど、実際に行ってみると地元の人は盛り上げようと、盛り上がるように観光客大歓迎だった。

皆様方においても盆踊り好きとか、ぼくのなつやすみっぽいことしたいとか、風流な町並みが好きだとか、ちょっとでも気になったらばぜひとも行ってみてほしいと思う次第です。

以上、よろしくお願い致します。
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