特集 2016年2月9日

健康フルーツ「ノニ」をジュース以外の方法で食べる

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一昔前、「ノニ」という果物が流行したのを覚えているだろうか。
とにかく体に良いとかで、当時は健康食品界の風雲児的な扱いであった。

しかし、なぜか生のまま店頭に並ぶことはほとんど無く、加工品もジュースや葉を煎じたお茶しか見当たらなかった。

なんでそのまま食べないの?
そして、なんで今ではほとんど見かけないの?

その謎に迫るべく、沖縄で野生のノニを摘んできた。
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

前の記事:貝殻を背負ったタコ カイダコ(アオイガイ)を捕って食う

> 個人サイト 平坂寛のフィールドノート

ほぼ飲料系の商品しか存在しない

もちろん、ノニ製品は現在でも無くなったわけではない。
根強いファンたちに支えられ、今も販売され続けている。しかし!
ノニジュースとか
ノニジュースとか
ノニ茶とか
ノニ茶とか
相変わらず飲み物ばっかし!
生ノニとかノニアイスとかノニゼリーとか無いのかよ!
なんでだよ!
メジャー商品のジュースはどんな味なんだ。なんか青臭いけど……
メジャー商品のジュースはどんな味なんだ。なんか青臭いけど……
とは言いつつ、実は僕もこのノニジュースを飲んだことが無い。
一体どんな味なのか、試しに飲んでみることに。
おああ!身体に良さそうな味ですねねねね
おああ!身体に良さそうな味ですねねねね
とても身体によさそうというか、健康的というか。
良薬口に苦しというか、ドラクエの「やくそう」ってこんな味なのかなとか。
とにかく酸っぱくて、青臭い独特の風味がある。
ちなみに、色はコーラやルートビアのよう。

いや、不味いとは言ってないよ。味や風味にかなりエッジは効いてると思うし、僕の口にあまり合ってはいないけど。

自生するノニを求めて沖縄へ

こんなにマズ…いや、個性的な味の元となったノニとは一体どんな果物なのか。
そして、加工前の果実の味は?
気になったので、ノニが自生する沖縄へ飛ぶことに。そう!ノニって国内にも生えているのだ。
海沿いの林を探して歩く
海沿いの林を探して歩く
実は「ノニ」とはハワイでの呼称であり、この植物にはちゃんと「ヤエヤマアオキ」という和名がついている。
分布はインド・太平洋の熱帯亜熱帯地方の広域に跨っており、地域によっては食用・薬用植物として認知されているようだ。
お、この葉っぱは…
お、この葉っぱは…
ノニだぁ!!
ノニだぁ‼
以前訪れた際にノニっぽい樹木を見かけたような気がした林。
記憶を頼りに歩いていると、あのジュースのパッケージ写真と同じ木の実が目に入った。あった!ノニ!
味見に十分、かつ余裕を持って食べきれる量だけ収穫。白っぽく熟したものと、まだ緑色が残るものも試してみる。
味見に十分、かつ余裕を持って食べきれる量だけ収穫。白っぽく熟したものと、まだ緑色が残るものも試してみる。
見つけたノニを摘まんとしていると、散歩中だという地元のおじさんに遭遇。
「この実、ご存知ですか?ノニ。」
「知ってるよ。身体にいいって流行ったさね。いろんな病気に効くっていってさ。実はジュースにして、葉っぱや根っこも煎じてお茶になるらしいよ。」
「お父さんは試したことありますか?」
「自分は無いけどね。身体にはいいって聞くけど苦くて飲みにくいって、みんな続かんわけ。いくら身体によくてもおいしくないんでは仕方ないね。」

やはりそういう評判なのね…。

くさい!すっぱい!苦い!渋い!

試しに採れたてをかじってみよう。独特なにおいが鼻を突くが…
試しに採れたてをかじってみよう。独特なにおいが鼻を突くが…
ジュースに加工したものばかり流通しているということは、きっとそのままではさらに受け入れ難い味なのだろう。
それくらいのことは察しがつくが、それでもまだ「生の実そのものは意外と美味い」という展開を諦めきれない。
摘んだその場で、黄白色に熟れた果実をかじる。
やっぱり身体によさそうな味いいいいいい
やっぱり身体によさそうな味いいいいいい
残念ながらというか、思った通りというか、なかなかヘビーな味である。

ジュースよりも青臭さの輪郭が鮮明で、かつ苦味が強い。そこへ遅れて唾液腺を締めつけるような酸味とエグみが覆いかぶさってくる。

うわー、これ丸かじりだと一個消費するだけでも相当大変だぞ。
実はさらに熟すと発酵したようにふくらみ、独特の青臭さ(ノニ臭)は一層勢いを増す。一方で味にはほんのりと(ホントにほんの~~りと)甘みも加わる…ような気がする。
実はさらに熟すと発酵したようにふくらみ、独特の青臭さ(ノニ臭)は一層勢いを増す。一方で味にはほんのりと(ホントにほんの~~りと)甘みも加わる…ような気がする。
この段階になると、果肉は半透明でブヨブヨに。一説によると、ジュースに使用するのはこれくらいよく熟れた実だとも。
この段階になると、果肉は半透明でブヨブヨに。一説によると、ジュースに使用するのはこれくらいよく熟れた実だとも。

苦みを殺せ!苦みを生かせ!

やはり、本当にそのまま一切処理をせずに食べるのは無理があったか。とりあえず苦みと渋みをどうにかしたい。
スライスして氷水にさらす。
スライスして氷水にさらす。
苦味やエグみが消えているといいが。
苦味やエグみが消えているといいが。
というわけで、苦みエグみを軽減するためにスライスして氷水にさらしてみることに。
こちらはあえて苦味を活かしてゴーヤの代用に。というわけで沖縄らしくチャンプルー。
こちらはあえて苦味を活かしてゴーヤの代用に。というわけで沖縄らしくチャンプルー。
また、いっそ苦みを逆手に取ってゴーヤ的に使ってしまおうと、ゴーヤチャンプルーならぬノニチャンプルーも作ってみた。
いただきます!種が固い!
いただきます!種が固い!
嗚呼、なんと身体によさそうな味か!
嗚呼、なんと身体によさそうな味か!
…水にさらすと苦みも渋みも多少は抜ける。が、焼け石に水。そもそも美味い要素がほとんど無いので、不味の要素をいくら軽減したところで、どうしたっておいしくはならないのだ。

もっと長く処理すれば!と思い切って水にさらしてみること12時間。さすがに苦み渋み酸味含め、あらゆる味が大幅に抜けてくれたが、青臭さだけは強烈に残るという結果に。
ジュースを飲んで口直し…
ジュースを飲んで口直し…
…にならんわ!
…にならんわ!
チャンプルーはというと、ゴーヤ的な苦み以前にノニの妙な酸っぱさと個性的なにおいが見事にマッチしていない。ひどい。刻んだスパムで口直ししつつ食べきる。
非常に嫌なたとえだが、炒めたノニは胃液のような味わいだった。きつい。
最終手段。油でカリッカリに揚げる。ノニチップスだ。
最終手段。油でカリッカリに揚げる。ノニチップスだ。
だが!さすがのノニといえども揚げてしまえば軽く食べられるはず…。
逆に、これで食べられなければ食材としての扱いをいったん諦めざるをえない。
これで決着がつく。
あーあ、やっぱり身体によさそうな味…。
あーあ、やっぱり身体によさそうな味…。
すっぺえ。顔をしかめながらなら食べられるが、できれば二度とはいただきたくない。
揚げてもだめか。食材としてどうしようも無いな。

そういえば、ノニジュースのパッケージにこんなアドバイスが
やっぱり割らないといけないかー
やっぱり割らないといけないかー
…リンゴと蜂蜜って、カレーの中にあってさえ負けずに隠し味として能力を発揮できる強力タッグじゃん。そんなやつら連れてこないと誤魔化せないとか。やはりノニの個性は半端じゃないのだ。

飲み物にするのがやっぱり正解

(薄々気づいてはいたが)ここでようやく確信した。ああ、そんなに頑張って味を誤魔化してまで飲むって、それもう完全に薬じゃん。
「食材」とか「果物」とか、そういう目で見てはダメなものなんだろうな、ノニって。ジュースやノニ茶など他のもので割ったり、一気に流し込んだりできるドリンクスタイルは理にかなっていたのだ。
同じ健康食材系フルーツでも、ノニに比べてアサイーは長続きしているね。いつかお前も摘んで食べてやるからな。
同じ健康食材系フルーツでも、ノニに比べてアサイーは長続きしているね。いつかお前も摘んで食べてやるからな。
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