特集 2014年8月26日

イカ墨を使った焼きそば「海賊焼」を食べる

ディス(西) イズ(伊豆) 海賊焼き
ディス(西) イズ(伊豆) 海賊焼き
イカの持つ黒い液体「イカ墨」。これを使った料理が存在する。イカ墨パスタなどが有名だろう。食べた後にお歯黒のように歯が黒くなるのも特徴の一つだ。

西伊豆にはこのイカ墨を使った「海賊焼」という焼きそばがある。麺は黒いのだけれど、歯が黒くならない。ぜひ食べ歩いてみようと思う。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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> 個人サイト Web独り者 彼女がいる風の地主恵亮

歯が黒くならない麺

ご当地焼きそばというものが存在する。静岡県富士宮市の「富士宮やきそば」や、秋田県横手市の「ホルモン焼きそば」などが有名だ。そして、忘れてはならないのが、静岡県西伊豆町の「海賊焼」である。
これが海賊焼
これが海賊焼
西伊豆町といえば、「日本一の夕陽」の街として有名だ。日本の夕陽100選にも選ばれている。

しかし、夕陽よりも海賊焼である。花より団子と言われるように、食えもしない夕陽よりも、海賊焼なのだ。

だって焼きそばが真っ黒なのだ。
夕陽なんて見ている場合ではない!
夕陽なんて見ている場合ではない!

佐野製麺

イカ墨パスタなどは、麺にイカ墨を絡める。これが海賊焼ともっとも異なる点だ。海賊焼は麺にそもそもイカ墨が練り込んであるのだ。

そのため、麺は黒いが歯は黒くならない。この麺を開発するにあたって気をつけたことだそうだ。
佐野製麺(静岡県賀茂郡西伊豆町仁科399-3)
佐野製麺(静岡県賀茂郡西伊豆町仁科399-3)
海賊焼の麺を売っているのは佐野製麺というお店。この辺りには海賊焼を出すお店があるが、麺やソースはすべてこのお店で作られ、各お店に卸されている。

ここでは食べることはできないが、お土産用の麺が売られている。
買えます!
買えます!
お店の方に話を聞けば、麺やソースは一緒だけれど、各お店がそれぞれ工夫をして海賊焼を作っているらしい。

ちなみに西伊豆町には「しおかつおうどん」というご当地うどんもあるのだけれど、それもここで麺は作られている。この辺りの麺の総本山かもしれない。
その他にもいろいろな麺がありました!
その他にもいろいろな麺がありました!

河津屋食堂の海賊焼き

麺を見た後はいよいよ海賊焼を食べ歩こうとではないか、ということで「河津屋食堂」を訪れた。創業90年という歴史あるお店だ。

肉丼が有名だそうだけれど、今回食べるのは、なんと海賊焼である。流れからそうに決まっている。
河津屋食堂(静岡県賀茂郡西伊豆町仁科1111-1)
河津屋食堂(静岡県賀茂郡西伊豆町仁科1111-1)
コチラのお店で食べられるのは、「海賊焼」と「海賊あんかけ焼そば」の2つ。どちらも美味しそうである。

ちなみに伊勢エビやら、ホタテやらを豪快に網で焼く料理も海賊焼と言う。そちらも美味しいそうだけれど、値段的には西伊豆の海賊焼だ。
海賊焼!(600円)
海賊焼!(600円)
美味しそうである。具沢山で黒い麺がキクラゲのようにも見える。

素晴らしい匂いがしている。魚介が多いが磯臭いということはなく、食欲をそそるような匂いだ。

土曜の半ドン後の昼食でこれが出てきたら泣いて喜ぶと思う。
黒い!
黒い!
美味いよ!
美味いよ!
やはり普通の焼きそば麺よりも海を感じる。ただ磯臭いわけではなく、味に深みを生み出している。

高級な味ではないけれど、もっとも親しみを覚える味。会いに行けるアイドルを焼きそばにするとこれだと思う。
男性が作っているのもポイント高い!
男性が作っているのもポイント高い!
厨房ではこのお店の三代目と四代目が海賊焼を作っていた。これが非常にポイントが高い。

ギャルが作っていたら、たとえそれが海賊焼でも、海賊度が低く感じる。合格である。

ただしギャルが作った海賊焼が嫌かと言われればそうではない。それはそれ、これはこれなのだ。
海賊あんかけ焼そば
海賊あんかけ焼そば
麺はもちろん黒い!
麺はもちろん黒い!
黒い麺が少しパリパリと香ばしく美味しい。成功者の家の子供なら土曜日の半ドンはこれを食べていたのではないだろうか。平和で優しい味だ。

スタンダードの海賊焼もいいけれど、このような変化球もいい。観光客は少ないお店らしいが、来て大正解のお店だった。
美味しいし、歯も黒くならない!
美味しいし、歯も黒くならない!
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黒、黒、黒

次は「喜久屋」に海賊焼を食べに行く。

実は海賊焼には少し満足しているので、もうひとつの名物「しおかつおうどん」を食べたい気もするが、海賊焼が私を呼んでいる。海賊に愛された男なのかもしれない。
喜久屋(静岡県賀茂郡西伊豆町仁科803-2)
喜久屋(静岡県賀茂郡西伊豆町仁科803-2)
こちらのお店では「海賊焼」と「ブラックラーメン」を食べることができる。

ブラックラーメンと言えば、富山の醤油ラーメンを思い浮かべるが、こちらのブラックラーメンは違う。麺が海賊焼同様に黒いのだ。
まずは海賊焼
まずは海賊焼
海苔がすごい。同じ海賊焼でも、先のお店の海賊焼とは、分かりやすい違いを感じる。どちらも同じ麺とソースを使うが、こうも違って来るのだ。

兄弟でも兄と弟で全然違うのと同じだ。私の家もそうだ。最近、弟が大きなお菓子会社に就職したが、兄である私は平日の昼間から海賊焼きを食べ歩いている。

根本は同じでも違うのである。
麺はもちろん黒い!
麺はもちろん黒い!
海苔の衝撃度がすごい。私はご飯をワザと喉に詰まらせて水で流し込むのが好きなのだけれど、それに近いことがこの海賊焼ではできる。

つまり美味しいのだ。口の中にモリモリくる感じ。ただしカイワレ等であっさり。優しい海賊だ。
続いて「ブラックラーメン」
続いて「ブラックラーメン」
ブラックラーメンは名前の通り黒かった。コチラにも海苔がふんだんに使われていて、麺がまだ見えていないのに黒い。

ちなみに塩味のラーメンなので、スープは黒くない。でも、黒い。最近、毛という毛に白髪が混じり始めたので純粋に黒いことが羨ましい。
もちろん麺も黒い
もちろん麺も黒い
食べてみると塩味に黒い麺がよく合う。塩と海苔とイカ墨は海同士で相性がいいようだ。

適度な磯の感じが伊豆に来ていることを実感させてくれる。美味しいし、伊豆を感じるしで、素晴らしいではないか。
美味しい!
美味しい!

夕陽も見ておこう

西伊豆町の海岸線を夕方頃に走れば、明日を夢見て沈んで行く太陽が見える。妖精の笑顔のような夕陽だ。

そんなポエミーなことを書きたくなるような夕陽なのだ。海賊焼と夕陽、西伊豆の深さである。
夕陽!
夕陽!
そんな夕陽を見ていたら、海賊焼はもういいか、となった。夕陽の力だ。

負けた高校球児が涙と共に笑顔を浮かべるように、海に沈み行く太陽を見ていて、僕らは次のステップに進むべきだと感じたのだ。

どうにかいいように書こうと頑張ったが、本当は「しおかつおうどん」を食べたかったのだ。

もう満腹なので海賊焼をもう一店食べたら、食べられないのだ、しおかつおうどんが。苦渋の選択だった。
ということで、しおかつおうどんです!
ということで、しおかつおうどんです!

しおかつおうどん

この辺りの名物に「しおかつお」というものがある。カツオを丸ごと塩に漬けこみ、乾燥させてもので、お正月などに食べられる。「しおかつお」と「しょうがつお(正月魚)」のダジャレだそうだ。
それを食べに「かつ善(静岡県賀茂郡西伊豆町仁科430-8)」に!
それを食べに「かつ善(静岡県賀茂郡西伊豆町仁科430-8)」に!
しおかつおを使ったご当地グルメが「しおかつおうどん」だ。

塩鰹ふりかけと鰹節などをうどんに乗せて、醤油と混ぜて食べるうどんである。美味しそうではないか。

すでに胃を海賊に侵略されているが、しおかつおなら行ける気がする。
しおかつおうどん
しおかつおうどん
風味の権化。いい香りとしかいいようがない。この匂いの香水が欲しい。

食べてみても風味が口の中で生きる。味はあっさりだし、しおかつおの美味しさも凝縮されている。海外帰りにこれを食べたら号泣するであろう味だ。
しおかつお茶漬けもある
しおかつお茶漬けもある
こちらもやっぱりあっさりで、風味がすごい。風味のお手本のような一品だ。飲んで朝帰ってきてこれを食べられたら、二日酔いにならない気がする。

実際は二日酔いになるが、いつもの二日酔いより許せる気がする。美味しいのだ。
幸せ!
幸せ!

西伊豆は美味しい!

以前から「海賊焼」も「しおかつおうどん」も知っていたのだけれど、西伊豆は遠くてなかなか食べられないでいた。念願かなって食べたそれはとても美味しかった。

歯が黒くならない海賊焼に、あっさりのしおかつおうどん。食べ過ぎてくるしくて、私の顔があっさりとは逆に濃くなっていたけれど、幸せだった。
富士山も見えた!
富士山も見えた!
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