特集 2015年5月18日

トキパックがかわいい佐渡牛乳はうまい

パッケージがかわいいと評判の佐渡牛乳ですが、その中身についても知ってください。
パッケージがかわいいと評判の佐渡牛乳ですが、その中身についても知ってください。
佐渡島で造られている『佐渡牛乳』のパッケージがかわいいと、ネット上で評判になっているのをちょっと前に見かけた。

私は佐渡島に何度も通っているリピーターなので、もちろん知っている。そう、佐渡牛乳はかわいい。だがしかし、かわいい以上に大切なポイントがある。佐渡牛乳はうまいのだ。

そんな佐渡牛乳の製造元に、思い入れたっぷりのファン目線で、話を伺いに行ってきた。
趣味は食材採取とそれを使った冒険スペクタクル料理。週に一度はなにかを捕まえて食べるようにしている。最近は製麺機を使った麺作りが趣味。(動画インタビュー)

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佐渡牛乳と私

私が佐渡島に初めて来たのは、今から4年前の2011年。

当サイトのプープーテレビなどでおなじみの宮城マリオさんの里帰りに、ずうずうしくも同行させていただいたのだが、島へと向かうフェリーの中で、うまいコーヒーがあるよと教えてもらったのが、佐渡乳業のコーヒーだった。
なんだかんだで10回近く佐渡島に来ています。
なんだかんだで10回近く佐渡島に来ています。
そのレトロなデザインのコーヒーは、旅行のテンションと相まって、とてもおいしかった。

しっかりと甘いのだが、牛乳の味がちゃんとする、懐かしいあのコーヒー牛乳だ。
商品名が『佐渡乳業コーヒー』で、その実体は生乳50%以上の乳飲料。ほぼコーヒー味の牛乳だ。
商品名が『佐渡乳業コーヒー』で、その実体は生乳50%以上の乳飲料。ほぼコーヒー味の牛乳だ。
美化された記憶の中にあるコーヒー牛乳と結びつく味なので、そうとうレベルが高いのだろう。なんでも佐渡産の生乳を50%以上も使っているのだとか。そりゃうまいさ。

私は佐渡島の大きさをよくわかっておらず、佐渡で牛乳がとれることに驚いたのを覚えている。

佐渡旅行といえば佐渡牛乳

そのコーヒーがとてもおいしかったこともあり、せっかくだからと飲んだ牛乳もまたおいしかった。

それをきっかけに、朝起きたら佐渡牛乳をゴクゴクと飲み、温泉から上がるとコーヒーをチューチューと吸い、品薄の佐渡バターが手に入ればトーストにたっぷり塗るというのが、佐渡にいる間の生活スタイルとなった。
なんで牛乳なのにニワトリなんろうだと思ったら、実はトキだったパッケージ。
なんで牛乳なのにニワトリなんろうだと思ったら、実はトキだったパッケージ。
そんな訳で私にとっての佐渡旅行は、フェリーに乗って佐渡乳業の自販機前に立ち、牛乳とコーヒー、どっちにするかを迷うところから毎回スタートするのである。
注ぎ口がクチバシになる。チョコボールのキョロちゃんじゃないよ。
注ぎ口がクチバシになる。チョコボールのキョロちゃんじゃないよ。
そんな思い入れたっぷりの佐渡牛乳が、トキのパッケージがかわいいと話題になったけれど、やはりその味も誰かがしっかりと伝えるべきだろう。よし、私だ。

そんな行き過ぎたファン心理から、製造元の佐渡乳業と、そして生乳を生産している佐渡の酪農家に取材をしてきた次第だ。
その愛情、確かめに行きますよ!
その愛情、確かめに行きますよ!
今回も宮城マリオさんと一緒です。
今回も宮城マリオさんと一緒です。
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株式会社佐渡乳業にやってきました

佐渡牛乳を製造している株式会社佐渡乳業は、島の中央あたりにある。

ここで牛を飼っているものだと思っていたのだがそんなことはなく、島内各地に現在14軒ある酪農家から、毎日ミルクローリーで集乳した生乳を、ここの工場で佐渡牛乳やコーヒー牛乳、バターやチーズにしているのだ。

『ミルクローリー』と『集乳』という単語を初めて知ったので、あえて使ってみた。
牛乳やアイスが買える直売所が、5月1日にできたそうです。
牛乳やアイスが買える直売所が、5月1日にできたそうです。
金山と佐渡おけさのイメージしかないかもしれないが、佐渡島は昔から酪農が盛んな場所で(島といっても東京23区よりも広い)、明治時代から牛乳、バター、チーズなどが作られていたそうだ。へー。

平成16年まではJA佐渡が牛乳などの製造を担っていたのだが、だんだんと本土から安価な牛乳がやってくるようになり、これからは生乳の質の高さや生産者のこだわりが販売面に活かされなければ生き残れないと、JA佐渡と酪農家が出資をして作ったのが、この株式会社佐渡乳業。

生乳を生産している酪農家達が、販売方法や商品開発にも深く関わっている牛乳屋さんなのである。
牛乳を飲みながら、佐渡乳業の土屋さんに伺いました。
牛乳を飲みながら、佐渡乳業の土屋さんに伺いました。
佐渡の酪農家は小規模のところが多く、14軒あるけれど乳牛の数は350頭ほど。そこで絞られた生乳は佐渡乳業で加工され、ほとんどが島内で消費される。

本土からやってくる牛乳に比べると少し高いのだが、それでも佐渡牛乳を選ぶ人が多く、佐渡での牛乳のシェアは約6割を誇っており、木製の樽で手作りしている佐渡バターは常に品薄状態だ。

トキパック牛乳は2009年から

そして話題のトキパックが登場したのは、2009年に佐渡の酪農家が高度な衛生管理手法の印である『クリーンミルク生産農場』という認定を受けたのがきっかけだそうで、質の良い生乳と合わせて地域の魅力をアピールしようと、佐渡在住のデザイナーが作成。
右上がリニューアル前の佐渡牛乳。佐渡と書かれてはいるけれど、プレミアム感はないかな。
右上がリニューアル前の佐渡牛乳。佐渡と書かれてはいるけれど、プレミアム感はないかな。
魚には原産地表記が義務付けられているが、牛乳は製造元の表記こそあるけれど、それがどこの生乳を使っているのかが書かれていない。

そこでちょうどトキの放鳥のタイミングでもあったので、これは100%佐渡産の牛乳なんだよとアピールするには、やはりトキだろうとなったそうだ。
「まずは手に取ってもらわないと」と、トキパックとなった佐渡牛乳。ちょっと高いが、たしかにこれは手が伸びる。
「まずは手に取ってもらわないと」と、トキパックとなった佐渡牛乳。ちょっと高いが、たしかにこれは手が伸びる。

こんなにあるぞ、トキパックの種類

そんなトキパックは容量によってデザインが微妙に違っている。

まずフェリーなどの自販機でも売っている一番小さい200ミリだが、注ぎ口がくちばしになっているのが特徴。

これは佐渡の学校給食でも使われており、子供らはストローではなく注ぎ口から直飲みをして、飲み終わるとトキの紙人形として遊ぶそうだ。いいなー。
トキのクチバシって黒だっけ?
トキのクチバシって黒だっけ?
と思ったら、確かに黒くて先っぽが赤かった!
と思ったら、確かに黒くて先っぽが赤かった!
家庭で一番飲まれる1リットルパックは、正面に顔と足、そして左右に翼があり、向きを変えて3つ並べると、合体して超かっこいい。
床の間に飾りたい3リットル。
床の間に飾りたい3リットル。
500ミリは基本的に1リットルとデザインは同じなのだが、高さが半分になるので、より愛くるしいトキが現れる。
二頭身になったトキ。さあ、萌えよう。
二頭身になったトキ。さあ、萌えよう。
さらに300ミリというレアなパックもあり、これは頭にトサカ(っぽいなにか)があるのが特徴だ。見かけたら即買いすべきだろう。
手前が300ミリ、奥が500ミリ。ほら、ちょっと違う。
手前が300ミリ、奥が500ミリ。ほら、ちょっと違う。
そしてお求めやすい価格の低脂肪牛乳は、大空を舞うトキの群れがデザインされており、組み合わせることで何羽にも増やせる可能性を秘めていて縁起が良い。
低脂肪牛乳も甘みがあっておいしいよ。
低脂肪牛乳も甘みがあっておいしいよ。
ちなみに『トキパック』というネーミングは、学校給食で飲んでいる子供たちがつけた愛称なのだとか。

私が大好きなコーヒーは、風呂上りに飲んだあの懐かしさをイメージさせるために、あえて古いデザインのままなのだそうだ。確かに温泉から上がって飲むのに最高の味なのである。
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酪農家に会いに来ました

佐渡牛乳のパッケージはトキがモチーフなのだが、もちろん原材料にトキは入っていない。入っている訳がない。

ならば佐渡の牛乳とトキは全く関係ない、ただのイメージキャラクターなのかというと、実は確かな関係があったりする。

そのあたりを佐渡で一番大きな酪農家であり、佐渡のチャンピオン乳牛『ゴールデンキャット アシュモア チナ』を産出した、金子さんご夫婦に話を伺った。
佐渡市南部の小木堂釜で酪農をしている金子さんご夫婦。
佐渡市南部の小木堂釜で酪農をしている金子さんご夫婦。
佐渡は放鳥されたトキと人間が共生する島であり、島全体の取り組みとして、減農薬や減肥料をすすめている。そして金子さん達酪農家は、乳質を維持しつつ飼料をなるべく島内で調達したり、自家生産するようにしている。

トキと共生する米作りはよりおいしいお米を生み出したのだが、そのお米をとった後の稲わらが乳牛の飼料の一部となっているのだ。さすがの私も試食はできないけれど、お米がうまいんだから稲わらだってうまいはずだ。
潮風を浴びて育つ佐渡の稲わらはミネラルが豊富でうまいのか、牛がうまそうに食べるのだそうです。
潮風を浴びて育つ佐渡の稲わらはミネラルが豊富でうまいのか、牛がうまそうに食べるのだそうです。
また広いといっても狭い島での話なので、減農薬は牛の飲み水や吸う空気、そして牧草などに影響している部分もあるのだろう。あると思った方がより牛乳がおいしく感じられるので、きっとある。
奥さんが描かれた壁画。牛のペガサスがトキと空を飛んでいるぞ。
奥さんが描かれた壁画。牛のペガサスがトキと空を飛んでいるぞ。
そして佐渡乳業は売上金の一部を、「トキの森づくり」活動という自然保護活動に寄付しているそうで、こうして守られた佐渡の自然が、巡り巡って一杯の牛乳になるのだ。

風が吹けば桶屋が儲かるように、トキが住む島は牛乳がうまいということか。
搾乳作業は365日、朝晩毎日だそうです。たいへーん。
搾乳作業は365日、朝晩毎日だそうです。たいへーん。

金子さんの話

「佐渡は海に囲まれているので、風通しがよく、牛が飼いやすい土地です。エサの購入には船賃が掛かりますが。

牛乳作りは生き物が相手なので、ちゃんと牛を飼わないと、良い牛乳は搾れません。牛は口をきけないので察してやることが難しいですが、毎日触れることで健康管理には注意しています」
牛って鼻の穴に舌が届くんですね。
牛って鼻の穴に舌が届くんですね。
「僕も他の地域にいったらやっぱり牛乳を飲んでみるんですけど、慣れや贔屓もあるんだと思いますけど、うちらの方がうまいなーって、自画自賛してますね。佐渡の牛乳は本当においしいと思います!」
こちらはペットのヤギ。かわいかったので載せる。
こちらはペットのヤギ。かわいかったので載せる。
約70頭が飼われている牛舎はとても清潔で、広々として風通しも良く、牛達がジャズのBGMに合わせて気持ちよさそうにモーモーと鳴いていた。

『クリーンミルク生産農場』というのがどういうものかよくわかっていないのだが、きっとこういう農場のことなのだろう。
凄い怖い顔で猫がやってきた。縄張りに入ってすみません。
凄い怖い顔で猫がやってきた。縄張りに入ってすみません。
と思ったら、ものすごく人懐っこかった。ネズミを捕るために飼っている猫だそうです。
と思ったら、ものすごく人懐っこかった。ネズミを捕るために飼っている猫だそうです。
ここまでいろいろと熱く書いたけれど、佐渡牛乳がうまいことはわかるのだが、おいしい牛乳同士を飲み比べたときに、その違いについて語れる自信はまったくない。

ちゃんとした牛乳は、北海道でも岩手でも山形でも、ちゃんとおいしいだろうし。なので比べる気はまったくない。
最後に直売所で佐渡バターが買えてうれしかったので自慢します。
最後に直売所で佐渡バターが買えてうれしかったので自慢します。
クリームチーズのように柔らかいのですよ。この写真、いやらしくないですか?
クリームチーズのように柔らかいのですよ。この写真、いやらしくないですか?
バターを塗ったトーストに、追いバター!口どけの柔らかさがすごい!
バターを塗ったトーストに、追いバター!口どけの柔らかさがすごい!
生クリームを振って作ったあのバターの味がする。まさに牛乳のうま味を濃縮した感じ。
生クリームを振って作ったあのバターの味がする。まさに牛乳のうま味を濃縮した感じ。
僕の思い入れのある牛乳が佐渡牛乳なのであり、はっきりいって佐渡が好きだからえこひいきしている部分が大きい。

地産地消だけに『ECOひいき』といってもいいだろう。お、うまいこといった。

なにがいいたいのかというと、佐渡乳業の方や佐渡の酪農家の話を聞いて、今まで以上に佐渡牛乳が好きになったということだ。

やっぱり佐渡島で飲むからうまいのかもしれません

佐渡牛乳は生ものなのでなかなか島外では買えないけれど、デパートの物産展などで売られていることもあるそうです。

それはきっとおいしいはず。特にコーヒーはわかりやすいかな。でもやっぱり佐渡へと渡って、その土地に立って飲むのが一番おいしいと思います。フェリーは海の上だけどね。
直売所で購入したソフトクリーム。ジェラートっぽい口当たりで、しっかり甘いけれどサッパリしているよ。
直売所で購入したソフトクリーム。ジェラートっぽい口当たりで、しっかり甘いけれどサッパリしているよ。

取材協力:株式会社佐渡乳業
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