特集 2015年5月28日

外国人達にオセロを挑んでたら元世界王者と戦う事になった話

外国人たちを次々に倒し、世界一を目指す!
外国人たちを次々に倒し、世界一を目指す!
「世界一」になる人がいる。
地球上には言葉も文化も違う人たちが70億もいるのに、世界一。凄いことだ。

それはそれは大変だろうと、私達は戦いの壇上に立つ事なくあきらめてしまう。でも、自分の力に気づいていないだけで、世界一になる可能性はゼロではない。

そこで、「オセロ」で世界一を狙うことにした。自分の得意な分野で戦えば世界一になる可能性があるのだ。
東京葛飾生まれ。江戸っ子ぽいとよく言われますが、新潟と茨城のハーフです。
好きなものは犬と酸っぱいもの全般。そこらへんの人にすぐに話しかけてしまう癖がある。上野・浅草が庭。(動画インタビュー)

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世界中で愛されているオセロ

世界中で愛されているオセロ。「覚えるのに1分、極めるのに一生」と言われ、ルールは単純ながらも奥の深いゲームだ。

私はこのオセロに割と自信がある。子供の頃によく遊んだものだが、負けた記憶が無いほどだ。
世界一になるべく、通りがかる外国人に対決を挑む。(私が持っているのは英語のメモ)
世界一になるべく、通りがかる外国人に対決を挑む。(私が持っているのは英語のメモ)
ということは、これまでに世界に挑戦する機会が無かっただけで、私は世界一かもしれない。

そこで、上野公園で世界大会を開催する事にした。外国人観光客を相手に、日本代表としてオセロで戦うのだ。世界中で遊ばれているゲームだ、そこら辺に猛者がいるに違いない。
アメリカ代表「オセロ? 知らないなあ」
アメリカ代表「オセロ? 知らないなあ」
日本のオセロ経験者は6000万人で、なんと人口の半数(長谷川五郎著『オセロの勝ち方』より)。世界で考えたら数えきれないだろう。
スウェーデン代表「やったことない」
スウェーデン代表「やったことない」
世界的にはオセロに似た「リバーシ」がよく知られている。調べたところ「オセロ」は日本の水戸が発祥地で、長谷川四郎さんという英文学者(上記の 本を書いた人のお父さん)がシェイクスピアの戯曲から名前をとってつけたものだそうだ。
中国代表「ごめんなさい、知らないです」
中国代表「ごめんなさい、知らないです」
今回オセロ(世界的にはリバーシ)を対決種目に選んだ理由は、全世界で愛されていることと、自分が強い事を思い出したからだ。

そう、子供の頃「一人オセロ」をやる位好きだった。友達がいないから一人でやっていたんじゃない、周りが弱いから一人でやっていたのだ。

大人になりしばらくはやっていなかったけれど、久々にやってみるとやはり私は強かった。それで、世界に飛び出したくなったというわけだ。
5レンジャーのような服のインド代表とネパール代表は「できないです」と去っていった。
5レンジャーのような服のインド代表とネパール代表は「できないです」と去っていった。

棄権により連続不戦勝

しかし残念なことに、外国人選手たちは次々と棄権していった。理由は「見たことあるけどルールは知らない」というのが多かった。なんてこった。

せっかく世界一になれるチャンスなのに(上野公園内でだけど)。
棄権が12ヶ国も。不本意だが私の勝ちということにする
棄権が12ヶ国も。不本意だが私の勝ちということにする

オセロは年配の遊び?

聞くと、オセロ(リバーシ)は年配の人たちがやる遊びとして認知されているようだった。20~40才位の年代は、「他にもたくさんゲームがあるか ら今更やらない」と言っていた。

そこで5~60代位の方に声をかけると「もちろん知ってる」との反応。みな時間がなく対戦はできなかったけど、ご年配の方が対戦できる確率は高いみたいだ。
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VS イギリス代表 アナベルさん

そんな中でも「子どもの時にやったことがある」と言って対決してくれる女性が現れた。リバーシの本場、イギリスの出身だ。

真剣勝負ではあるが、一期一会の相手とあって聞きたいことはたくさんある。好きな日本語は「かわいい」と「元気」だといった情報を聞きながら和やかに対決した。
56対8で私の勝利!
56対8で私の勝利!
正直すぐに勝てそうだな、と分かったが容赦なく戦った。世界一を狙っているのだ、負けるわけにはいかない。

そんな大人げない私にアナベルさんは拍手を送ってくれ、このあとも頑張ってね、と応援までしてくれた。彼女のためにも勝ち続けなくてはいけない。

VS スイス代表 ジェイさん

マックブック開いて音楽を聞いてたジェイさん。先日まで北海道でスキーを教えていたらしい。
マックブック開いて音楽を聞いてたジェイさん。先日まで北海道でスキーを教えていたらしい。
次に戦いの壇上にあがったのはスイス代表。オセロ未経験者だった。

ただ、「ルールを教えてくれるならやりたい」と挑戦的だったのでその意気込みを買って対決することに。端っこや角を取ったほうが有利だということもちゃんと教えた。
「サンドイッチしたらターン」と説明。英語は苦手だがなんとなく伝わったようだ。
「サンドイッチしたらターン」と説明。英語は苦手だがなんとなく伝わったようだ。
41対23で私の勝利。初めてオセロをやる相手に勝つのは当たり前だが嬉しいは嬉しい。
41対23で私の勝利。初めてオセロをやる相手に勝つのは当たり前だが嬉しいは嬉しい。
初めてやるという相手であっても緊張は伴った。卓球で速く低いボールを打つ相手に慣れてくると、高くユックリな初級者ボールをうまく返せなくなる、みたいなことだ。セオリーが無視されている分、先が読めなくてこわいのだ。

一方のんきなジェイさんは、私が後半ひっくり返していく度に「オオ~ゥ」と感動し拍手をしてくれた。平和だ、なんて平和な世界大会なんだ。

VS オーストラリア出身 クリスさん

自国にいた時は知らなかったそうだが、日本に来てから何度かやるように。
自国にいた時は知らなかったそうだが、日本に来てから何度かやるように。
次の対戦相手は日本人の彼女と一緒にいたマシューさん。日本に長く住んでいるらしく日本語がペラペラ。オセロも経験者とのことでスムーズな運びだ。
43対21で私の勝ち。
43対21で私の勝ち。

日本は特にオセロ好き!? 世界大会優勝の常連国だった

「オセロ(リバーシ)やったことない」と言う外国人が多かったあたりから想像できたけど、もしかしてオセロ人口って日本人が圧倒的に多いんじゃないか? クリスさんがオセロできるのも、日本に来てから彼女の家族に誘われてやるようになったかららしい。

そして、これは後で知ったことだけど、世界大会のチャンピオンは日本人ばかりだった。1977年に始まって以来、日本が1位になる確率がなんと7割強だ。(英語版Wikipedia「Reversi」の項より)すごいぞ日本!
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VS フランス代表 マシューさん

次に対戦してくれたのは、フランス代表。黒いファッションでキメているカップルだけあって、黒色の石を選んでいた。
今日はアキバと浅草のお祭が楽しかった、と言っていたカップル。メロディという名前の彼女がすごくキュート。
今日はアキバと浅草のお祭が楽しかった、と言っていたカップル。メロディという名前の彼女がすごくキュート。
マシューさんもそんなにオセロをやったことが無いらしいが、試合はテンポよく進んだ。

私が「私はオセロのチャンピオンだ(今の所)。あなたが勝ったらあなたがチャンピオンになる(ただし上野公園内で)」と伝えると、笑いながらもがぜん張り切っていた。
49対15で私の勝ち
49対15で私の勝ち
結果は私の勝ち。日本人は子どもの時にみんなオセロをやると伝えると「そりゃあ負けるわ」という顔をしていた。

いやー、それにしてもこれだけ勝ち続けると気持ちいいな。私に勝てる者などいないんじゃないだろうかという気になってくる。

VS ドイツ代表 ベンさん

負けず嫌いの28才。2人で寝ていたところに声をかけた。
負けず嫌いの28才。2人で寝ていたところに声をかけた。
初挑戦だが暇だしやってみたいと言ってくれたのでルールを教える。しかし先ほどの初挑戦だったジェイさんと違って、ベンさんは細かい所まで聞いてくる。「サンドイッチしてターン」だけでは納得してくれない。

「この場合はどうなるの? この場合は?」と始める前から念押ししてきた。マジである。
45対19で私の勝ち。めちゃくちゃ悔しそうだった。
45対19で私の勝ち。めちゃくちゃ悔しそうだった。
終わった後には「縦一列だけに石を並べていたけど、あれは戦略?」と聞いてきた。なんて勉強熱心なんだ、彼の将来が楽しみである。ちなみに縦一列になったのは偶然だ。

VS フランス代表 サラさん

サラさんは子どもの時にやっていたそうで、勝ち方を思い出しながらの対戦。オセロをよく知らない彼氏からの助言を完全に無視しながら真剣に戦っていた。
これから帰国するという2人。荷物減らすためか、あったかそうな格好だった。
これから帰国するという2人。荷物減らすためか、あったかそうな格好だった。
43対21で私の勝ち。
43対21で私の勝ち。
負けたのが悔しかったようで、「帰ったらすぐにオセロの特訓をするわ」と言っていた。

こうして、日がくれるまで戦った結果、私は全勝した。ゆえに私は世界一となったのだ(上野公園内で)! お陰でオセロへの自信はさらに高まった。

倒すべきは日本人

しかし家に帰って改めて調べると、日本こそがオセロの最強国だと知ることになった。身内に最大の敵がいたのだ。
急きょオセロ大会のオープン戦に出場することに。力試しだ。
急きょオセロ大会のオープン戦に出場することに。力試しだ。
日本オセロ連盟のサイトで、誰でも参加OKの大会を見つけた。世界一(in上野公園)が来た事にみんな驚くことだろう。
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驚くのはこっちだった

オセロ大会は、日本各地で毎週のように開かれていた。あれだけ世界では知名度が低かったのに、この日本の盛り上がり様はなんだろうか。

東京地区では品川区にある「こみゅにてぃぷらざ八潮」という教室のような所で開かれている。
大会ルールを教えてくれた谷田さん。なんと元世界王者だ! 彼も参戦するという。
大会ルールを教えてくれた谷田さん。なんと元世界王者だ! 彼も参戦するという。
進行役の中島八段(元世界2位)も参加。とんでもない所にきてしまったのでは…
進行役の中島八段(元世界2位)も参加。とんでもない所にきてしまったのでは…

参加者は元世界王者や有段者ばかり!

1500円払えば誰でも参加OKのオープン戦だったということと、「こみゅにてぃぷらざ」という敷居の低い会場名に侮っていた。

集まったメンバーはほぼ有段者で、しかも元世界王者まで数人混ざっている。井の中の蛙が太平洋の真ん中に飛び込む位、無謀な挑戦をしてしまった気がする。
全日本女子チャンピオンも。ツワモノ達が続々と集結。
全日本女子チャンピオンも。ツワモノ達が続々と集結。
初心者は他に「中目黒に敵はいないと思って挑戦しにきた」と、私と同じ発想でやってきた2人組だけ。自然と仲間意識が芽生える。
初心者は他に「中目黒に敵はいないと思って挑戦しにきた」と、私と同じ発想でやってきた2人組だけ。自然と仲間意識が芽生える。

オセロ人口と、日本でオセロが盛んな理由

進行の中島さんに「競技」人口を聞くと、約2~3千人だと教えてくれた。では全世界となったら? なんと「その倍にもならない」のが答えだった。とにかく日本人層が厚いのだ。

そして、オセロが特に日本で盛んな理由は、「オセロボード」の存在が大きいらしい。実は日本ほどオセロボードがきちんと作られ広まっている国はないのだそうだ。

(ちなみに「オセロ」は株式会社メガハウスの登録商標)
あとで試合を振り返りたい人のために棋譜用紙が用意されていた
あとで試合を振り返りたい人のために棋譜用紙が用意されていた

細かいルールを教わる

初心者には「最初に置く2石は右側が白」とか「石の色の決め方」といった基礎から、「打った方の手でタイマーを押さないといけない」という細かいルールまで教えてくれた。

面白いのが「相手のタイムが無くなった場合、そこで勝敗は決定するが、残りは自分一人で二人分打ち続ける」というルール。

世界を目指しているのに一つも知らなかった。
各々のタイムは20分。考えていると意外とすぐに無くなるそうだ。
各々のタイムは20分。考えていると意外とすぐに無くなるそうだ。
対戦は6回で、「スイス式」という方式だった。最初の対戦相手はランダムで決め、その後は同じ勝敗数の相手と戦っていく。一度でも負けると、最強の相手とは戦えない仕組だ。

世界王者に勝つチャンスがきた

しかし2試合目までは、三段以下の人なら五段以上の人を指名できるというルールがあった。そこで、このメンバーで最も上位の村上九段を指名した。過去3回世界王者に輝いている方だ。

村上さんを破れば私は一気に世界トップレベルだ!
村上九段が途中で手を止め、10分の長考に入った。も、もしかして…私、良い勝負しちゃってる?
村上九段が途中で手を止め、10分の長考に入った。も、もしかして…私、良い勝負しちゃってる?
そんな訳もなく1石を残して惨敗。ドヤという心の声が聞こえてきた。このあと最初から打ちなおして悪手を教えてくれた。試合内容を全て覚えているのだ。
そんな訳もなく1石を残して惨敗。ドヤという心の声が聞こえてきた。このあと最初から打ちなおして悪手を教えてくれた。試合内容を全て覚えているのだ。

勝ち負けだけじゃない。石の数も重要だった

村上さんが長考に入ったのは、どうすれば石をより多く取れるか考えていたからだった。

オセロは勝敗数が同じだった場合、石の数が順位に影響してくるのだ。後半はもう「打たされている」感じで、村上さんのなすがままだった。
村上さんは家に帰ってからでも全試合再現できるそう。こちらはこれまでの試合メモノート。
村上さんは家に帰ってからでも全試合再現できるそう。こちらはこれまでの試合メモノート。
大会は13時から19時の長丁場。途中ドリンク抽選やチョコレート抽選タイムが入って嬉しい。私はドリンクがあたった。
大会は13時から19時の長丁場。途中ドリンク抽選やチョコレート抽選タイムが入って嬉しい。私はドリンクがあたった。

結果は2勝4敗(うち1勝は不戦勝)

その後もいとも簡単に負けていった。唯一、初心者仲間との対戦で相手のミスにより勝つことができた。さらに出場人数の都合で不戦勝をもらった。

1回勝てば3級、2回に勝てば2級なので、私は晴れて2級である。
初心者の3人とも仲良く2級をゲット。みんな初心者同士の低レベルな戦い+不戦勝のおかげで取れた。私はさらにブービー賞で商品も貰ってしまった。
初心者の3人とも仲良く2級をゲット。みんな初心者同士の低レベルな戦い+不戦勝のおかげで取れた。私はさらにブービー賞で商品も貰ってしまった。
最初の企画を忘れるくらい、楽しく濃い大会だった。だって、まさか元世界王者と戦える機会がくるなんて。

日本で優勝すれば、もはや世界一

日本の壁は厚かった。完敗だ。しかしそこさえ破れば世界で王者になる確率は高いと知ることができた。「世界一」がグッと身近に感じられた一日だった。
上野公園内での世界一は、日本では2級。あの対戦してくれた外国人達、浮かばれないだろうな
上野公園内での世界一は、日本では2級。あの対戦してくれた外国人達、浮かばれないだろうな

2016年は水戸で世界大会が開催!

日本人から圧倒的に愛され、そして日本が最強国だったと知ることで一層オセロが好きになった。今後も日本の活躍に注目していきたい。

大会にはパンを持って行こう

最後に、オセロ大会に興味を持った方に伝えたい事がある。それは「食べ物を持っていった方がいい」ということだ。長丁場というのもあるが、頭を使うためお腹がすいてしまうのだ。

休憩中にツワモノたちがパンやオニギリを食べている姿は、ギャップがあり、ノホホンとして面白かった。

また、ビギナーコースやオンライン教室もあるそうなので、まずはそこから始めるのもいいかもしれない。

中島八段のオンラインオセロ教室
中島八段が薦めるオセロゲーム
二段と戦った試合。なんとデイリーポータルZの「Z」が浮き出てきた。負けたのに嬉しい。
二段と戦った試合。なんとデイリーポータルZの「Z」が浮き出てきた。負けたのに嬉しい。
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