特集 2015年8月26日

クモの網でバドミントンはできないか

上、ノーマルラケット。下がクモの巣ラケット。
上、ノーマルラケット。下がクモの巣ラケット。
以前に当サイトでクモの網で小魚を掬うという記事を書いた。
その結果、クモの網は存外に強力で、ちょっとやそっとの衝撃ではなかなか破れないことがわかった。じゃあクモの網をガット代わりにラケットへ張れば、お遊び程度ならバドミントンだってできてしまうのではないか。って思ったから実行に移した。
1985年生まれ。生物を五感で楽しむことが生きがい。好きな芸能人は城島茂。(動画インタビュー)

前の記事:クモの網で魚を掬う

> 個人サイト 平坂寛のフィールドノート

台風直前の沖縄でクモ探し

そんなわけでクモの網を求めてやって来たのは沖縄本島のとある林。

なお、時期は台風上陸の直前に合わせた。これは「どうせ台風で壊されるんだし、このタイミングならクモ的にも張り直す手間が一度で済んでいいよね」というクモたちへの配慮。…に見せかけた、己が良心の呵責をごまかすための薄っぺらな小細工である。
網を張るクモの中では日本最大になるオオジョロウグモ。日本で最も強力な糸を紡ぐクモでもある…と思う。なお、雄はずっと小さい上に体色も異なり、別種のような姿。
網を張るクモの中では日本最大になるオオジョロウグモ。日本で最も強力な糸を紡ぐクモでもある…と思う。なお、雄はずっと小さい上に体色も異なり、別種のような姿。
さて、使用するのは「オオジョロウグモ」という国内では南西諸島にしか分布していない大型のクモが張る網だ。これが格別に強力なのである。
タモ網に応用すれば魚も掬える。
タモ網に応用すれば魚も掬える。
このクモの網を林の中で探し出しては、ガットを外したバドミントン用のラケットへ絡めていく。
なお、ラケットは100円ショップで購入。
ガットを外した100円ラケット。こんなにしっかりした作りのラケットが100円!…と、このときは思っていた。
ガットを外した100円ラケット。こんなにしっかりした作りのラケットが100円!…と、このときは思っていた。
オオジョロウグモの糸の特徴は頑丈さだけではない。
オオジョロウグモの糸の特徴は頑丈さだけではない。
糸が太く、黄色いのだ。決して汚れているわけではない。
糸が太く、黄色いのだ。決して汚れているわけではない。
この黄色い糸を折り重ねたり、束にしてやると、ちょっとやそっとのことでは千切れなくなる。伸縮性もかなりのもの。
この黄色い糸を折り重ねたり、束にしてやると、ちょっとやそっとのことでは千切れなくなる。伸縮性もかなりのもの。
10枚の網を絡め取り、ようやくクモ網ラケットの完成。二本作ろうとも考えたが、さすがに心が痛むのでやめておいた。
10枚の網を絡め取り、ようやくクモ網ラケットの完成。二本作ろうとも考えたが、さすがに心が痛むのでやめておいた。
黄色い糸で編まれた網の下端にラケットをあてがい、上方へ向けてくるくると巻き取るように網を絡める。

1枚や2枚ではさすがに心もとないので、10枚の網を頂戴する。そういえばタモ網を作った時も同じ枚数の網を使用したな。
クモの網なので、飛んでいる虫だって当然採れる。これはナナホシキンカメムシというタマムシ並に綺麗なカメムシ。
クモの網なので、飛んでいる虫だって当然採れる。これはナナホシキンカメムシというタマムシ並に綺麗なカメムシ。
いよいよ実験開始!
いよいよ実験開始!

意外といけるぞ!

これで準備は整った!

いよいよ現地のホールを借りて実験開始である。受付の人にホールの用途について「クモの巣でバドミントンするところを撮影したい」と説明したところ、上手く状況が飲み込めないという顔をしていた。やはり「クモの巣で」という情報は削った方が良かったか。
クモ網ラケットを僕が、ノーマルラケットを友人が担当。
クモ網ラケットを僕が、ノーマルラケットを友人が担当。
でも借用許可は出たので結果オーライ。

普通のラケットを友人に渡し、いよいよラリースタート。はじめのうちはスマッシュのように強く振りぬく打ち方は避けて様子を見る。
果たしてまともに打ち合えるのか?
果たしてまともに打ち合えるのか?
おお!?ちゃんと打てるぞ!
おお!?ちゃんと打てるぞ!
ポヨンポヨンとゆるい反発で打ち返されるシャトル。意外にもちゃんと打ち合えている。
これは大成功か!

※ここからは動画も交えつつどうぞ。
ゆるい打ち合いならそこそこいけるみたい。ラリーが続かないのはラケットではなくプレイヤー2人の腕の問題です。

やっぱ長期戦は無理

が、10打目を目前にしてふとラケットを見ると…。
9打後。小さな穴が空く。
9打後。小さな穴が空く。
早くも恐れていた事態が。その後も数打ごとにダメージが蓄積される様がガット面に表れてくる。
違和感を覚えた16打目。終わりの始まりである。
違和感を覚えた16打目。終わりの始まりである。
20打後。傷むペースが速くなってきた…。
20打後。傷むペースが速くなってきた…。
そろそろプレーに支障が出始める頃。再起不能となる前にスマッシュ的な強い球を打ってみよう。
あああーッ!
スマッシュ後。いよいよシャトルがすっぽ抜けはじめる。
スマッシュ後。いよいよシャトルがすっぽ抜けはじめる。
やはり、スマッシュの衝撃には耐えられなかった。たとえ網が万全の状態でも、大穴が空いていたことは確実だろう。
シャトルには網が絡みつき始めた。
シャトルには網が絡みつき始めた。
さらに騙し騙し打ち合いを続けるが、いよいよ穴が広がり致命的なことになってきた。
なんか悲しい!オオジョロウグモよ、ごめん!!
なんか悲しい!オオジョロウグモよ、ごめん!!
さすがにもうだめか…?いや、まだいけるはず!
さすがにもうだめか…?いや、まだいけるはず!
そこからもさらにラリーを続けようと試みるが…
まさかのラスト!
頑張ってラリーに挑むも、シャトルを絡め取られて終了!まあ、良いオチがついたな。
頑張ってラリーに挑むも、シャトルを絡め取られて終了!まあ、良いオチがついたな。
一応、軽いおもちゃのシャトルを使えば、20回程度のお遊びラリーには耐えることが判明した。

だが、たぶん公式試合で使われるような硬く重い正規のシャトルを使った場合はスマッシュ一発で大穴が空いてしまうだろう。これ以上の強度を求めるならば、本格的にクモの糸からガットを編むしかない。だが、残念ながら僕にはそんな技術も時間も無いのだ。

だが、あと何十年かしたらYONEXやGOSENあたりがクモ糸由来の繊維で紡いだガットを売りに出す日が来るかもしれない。来てほしい。

それなりには遊べるよ!

ちなみに、この後ももうちょっと頑張ってはみようとしたのだが、今度はラケットのシャフト(アルミパイプ製だった)が折れてしまった。クモ糸ガットの耐久限界は100円ラケットのそれと同等だと言えるのかも。
それなりには遊べるよ!
それなりには遊べるよ!
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