特集 2015年3月26日

森ビルの都市模型で鳥の視点になる

これが森ビルの1000分の1都市模型だ!
これが森ビルの1000分の1都市模型だ!
森ビルが作っている都市模型というものを見学する機会を頂いた。

以前話題になったが、ものすごいよくできた東京やニューヨークのジオラマみたいなやつで、現在も日々アップデートしているらしい。

2時間に渡ってみっちり見たが、本当に楽しくて時間がとても短く感じた。その全貌を大公開します。
1976年茨城県生まれ。地図好き。好きな川跡は藍染川です。(動画インタビュー)

前の記事:会社に直行する

> 個人サイト ツイッター(@mitsuchi)

一目見て大興奮

森ビルの都市模型は、1000分の1スケールで精巧な東京などの模型を作っているもので、以前に何回か一般公開されたが、いまでは原則非公開だ。

今回特別に見学の許可を頂いたので、当サイトのライター陣を誘ったところ、ものすごい早さで「行きたいです!」という返事をもらった。
続々と参加表明。そして大山さんすごい。
続々と参加表明。そして大山さんすごい。
そして当日。朝9時という、宵っ張りのライターにはつらい時間にも関わらず誰一人遅刻することなく会場の六本木ヒルズに集合した。
具体的な場所は秘密です
具体的な場所は秘密です
そして、模型の置かれている部屋に一歩足を踏み入れたとたん、ライター陣から歓声があがった。
こ、これは・・・!!
こ、これは・・・!!
もう遠目にもすごいことになってるのが分かる。近くで見るとこんなだ。
新宿
新宿
ニューヨーク
ニューヨーク
なんだこれは。

なんだこれは。

こんなの見たことない。なんという精巧さ。なんという巨大さ。もっと近くで見たい。穴が開くほど見たい。全部見たい。

走らずに模型の近くまで歩いていけたのが、ぼくが保てた最後の理性だったかもしれない。
目の色が変わるライターきだてさん
目の色が変わるライターきだてさん
かぶりつく大人たちの、
かぶりつく大人たちの、
いい笑顔。
いい笑顔。
だってこんなだもん。これ模型だよ!?
だってこんなだもん。これ模型だよ!?
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見どころが無限にある

森ビルの都市模型の見どころはもうほんとにたくさんあって、おそらく1日いても見たりないだろう。しかしここは落ち着いて、順番に紹介したいと思う。

ここには東京、上海、ニューヨークの模型が設置されていた。まずは東京から。
高田馬場上空から南西を望む
高田馬場上空から南西を望む
模型の範囲は、西は新宿から東はスカイツリーまで、北は東京ドームから南は羽田空港まで。縮尺は1000分の1だ。

クローズアップしてみる。
新宿新都心
新宿新都心
高層ビルだけでなくあらゆる雑居ビルも、外見を含め精巧に作られてるのが分かる。
渋谷。すでに再開発されてる!
渋谷。すでに再開発されてる!
渋谷の東急プラザはつい先日閉館されて話題になったが、都市模型上ではすでに解体されて周辺の再開発も終わっていた。左側のヒカリエは分かるけど、その右側の建物は見覚えないでしょう?

随時更新しているとは聞いていたが、さすがの速度だ。
いっぽうで、国立競技場はまだ解体が始まってない。
いっぽうで、国立競技場はまだ解体が始まってない。
国立競技場についてはまだ最終的なデザインが未確定なので、まだ置き換えていないそうだ。ただ解体自体は始まっているので「小さい重機でも置いておこうかな?」と担当の方が冗談で言っていた。
大井埠頭。ガントリークレーン(通称キリン)もちゃんと並んでいる。
大井埠頭。ガントリークレーン(通称キリン)もちゃんと並んでいる。
東京スカイツリー周辺
東京スカイツリー周辺
東京タワー
東京タワー
隅田川
隅田川
表参道。こうやって見ると、ああ参道なんだ、明治神宮の森と一続きなんだと実感する。
表参道。こうやって見ると、ああ参道なんだ、明治神宮の森と一続きなんだと実感する。
お台場
お台場
まだまだ全然きりがないんだけど、ここでいったん休憩。

ここの模型がすごいのは分かった。でもいったいどうして、どうやってこんな模型を作っているんだろうか?
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都市模型は鳥の視点になるためのツール

話をしてくれたのは、森ビルの河合さんと田村さんだ。
森ビルメディア企画部の河合さん(左)と田村さん(右)
森ビルメディア企画部の河合さん(左)と田村さん(右)
森ビルは、港区を中心に主に再開発をしているディベロッパーだ。計画の段階などで対象の場所の地権者や近隣の人と計画案を協議するようなプロセスがあるんだけど、

「やはり図面などを読むのは得意でない方も多いです」

という。そういうときに、街そのものの模型があればとても分かりやすい。確かに、その効果はさっき渋谷で見たばかりだ。渋谷が今後どうなるか、一目瞭然だったでしょう。
再開発後の渋谷を再掲
再開発後の渋谷を再掲
それから、模型は森ビル自身にとっても都市を考えるツールになる。

「先代(森稔 前社長)は、街を見る視点には鳥の目線と人の目線があるといっていました」

街づくりでは、人の目線で近くから見て綺麗だからいい建物というだけではだめで、鳥のような目線で都市全体を考える必要がある。遠くから見たときに周囲と調和しているかといったことも考えないといけない。模型は、鳥の目線になるためのツールにもなるという。

「その場所に実際に行って建物の写真を撮ります」

そのために、都市模型をどうやって作るのか。この話がすごく面白かった。

まずは、作ろうとする街の地盤や建物などの情報を集める。地盤は1ミリ単位(!)で等高線に沿って積み重ね、その上に航空写真を印刷した紙を乗せる。
断面はこんなふうになってる。けっこうな急斜面だ。
断面はこんなふうになってる。けっこうな急斜面だ。
高さ方向は誇張してない。横方向と同じスケールだ。それでもガケはちゃんとガケと分かる。

建物は、まずスタイロフォームという材料を専用のカッターで切り出して、形を作る。
銀座の和光の建物。左が原形で、右が写真を貼り付けたもの。
銀座の和光の建物。左が原形で、右が写真を貼り付けたもの。
そこに上の右側のように外観の写真を貼り付ける。これは、なんと実際に現地に行って写真を撮っているのだという。撮った写真は見上げる感じで角度がついてしまっているので、垂直になるように補正したりもする。そしてここからがすごい。

「そうやって集めた街の要素を、カテゴリごとに整理してデータベース化しています」というのだ!
たとえばこれは建物の外壁集
たとえばこれは建物の外壁集
「な、なんだってーーー!!」と言いながらライターたちが河合さんのファイルに群がった。
そ、それは何ですか!
そ、それは何ですか!
信号のデータ集もある。赤信号と青信号は別のデータ!
信号のデータ集もある。赤信号と青信号は別のデータ!
それらは「都市のエレメント」というタイトルでデータ化されているそうです
それらは「都市のエレメント」というタイトルでデータ化されているそうです
街のなかの特定のパーツ(例:マンホール)ばっかり撮り集める、ということについては当サイトでは長年やってきた自負がある。が、まさかこんなところに同士がいたとは!

ぼくの場合は、そういうのを集めて分類するくらいで満足だけど、森ビルの場合はモデル化してコンピューターでのシミュレーションに使ったりするらしい。まじめだ。

なお、模型の制作はフルタイムでそればっかりやってる訳ではもちろんなくて、本業の傍らやっているそうです。そりゃそうか。でも面白そうだなあ。ちょっとやってみたい。
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ニューヨークもあるぞ

都市模型は東京だけじゃない。ニューヨークと上海もある。これを東京と見比べることで、逆に東京が分かるという面もある。
ニューヨーク!
ニューヨーク!
たとえば建物の高さ。まずは慣れ親しんだ東京を見てみよう。
新宿
新宿
新宿に、1つ見慣れないビルが建っているのが分かるだろうか。一番高いビルだ。
これですね
これですね
ニューヨークのエンパイアーステートビルを、担当の方が説明のために置いてくれた。高さは443メートル。建てられたのは1929年だけど、今でも新宿に置くとどのビルよりも高いのが分かる。
対するニューヨークの高層密度
対するニューヨークの高層密度
そしてニューヨーク都心部の高層の密度はすごい。こんな場所はさすがに東京にも日本のどこにもない。

つぎは街区の大きさ。
慣れ親しんだ東京。みっしり。
慣れ親しんだ東京。みっしり。
東京だと、道路に囲まれた区画のなかに小さい建物がみっしり建っている。日常の風景だけど、ニューヨークと比較してみるとこうだ。
ニューヨークはゆったり
ニューヨークはゆったり
ニューヨークの場合、街区が規則的な形で1つが大きく、その中に大きめの建物がいくつかだけ建ってる。道路も広い。比較するといろいろ違うんだなと思う。

上海もある

森ビルは上海でも再開発を手がけた関係で、上海の模型もある。
上海の浦東という地区
上海の浦東という地区
中央やや左の水色っぽい高層ビルが、森ビルの上海環球金融中心(ワールドフィナンシャルセンター)だ。

浦東地区はもともと民家がひしめく住宅地だったのを、上海政府がたった数年でこの広い範囲を更地にしたそうだ。森ビルが20年近くかけて一人一人の地権者と協議しながら六本木ヒルズを作ったのとはえらい違いで、中国すごいなという感はある。

なお、この模型は森ビルの内製ではなくて中国の業者に頼んだものだそうだ。最初に納品されたビルが頼んだ縮尺よりだいぶ大きくて、確認したらよかれと思って大きめに作ってくれたんだそうだ。面白い話だけど、こんなところも東京と違うんだと思った。
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見どころをひたすら紹介

見どころはたくさんあるといいましたが本当にそのとおりで、ついに5ページめに突入しました。ここからは、思わずうなった景色を順不同にひたすら紹介したいと思います。
目黒。日の丸自動車の赤い球体!
目黒。日の丸自動車の赤い球体!
ゆりかもめのループ
ゆりかもめのループ
国際展示場
国際展示場
虎ノ門ヒルズ。建ったばかりだけどもちろん模型もできてる。
虎ノ門ヒルズ。建ったばかりだけどもちろん模型もできてる。
雷門と仲見世
雷門と仲見世
羽田空港。ちゃんと飛行機も置いてある。既製のミニチュアは1/500が多いので、3Dプリンターで1/1000サイズを自作したが「ほとんど担当者の趣味です」とのこと。
羽田空港。ちゃんと飛行機も置いてある。既製のミニチュアは1/500が多いので、3Dプリンターで1/1000サイズを自作したが「ほとんど担当者の趣味です」とのこと。
クイズ、ここはどこでしょう
クイズ、ここはどこでしょう
上の答えは秋葉原でした。これは日本武道館。
上の答えは秋葉原でした。これは日本武道館。
かっぱ橋にはちゃんと「ニイミ」の人形が!
かっぱ橋にはちゃんと「ニイミ」の人形が!
中央線も走っている。
中央線も走っている。
「この長い建物は何だろうと思いました」ライター萩原さんのメモより。あえて謎のままで。
「この長い建物は何だろうと思いました」ライター萩原さんのメモより。あえて謎のままで。
「この基地の中に普段はいるはずのない新幹線500系(現在は新大阪~博多間しか走っていないため)を担当者が趣味で入れたと森ビルの方が言っていました」。萩原メモより。
「この基地の中に普段はいるはずのない新幹線500系(現在は新大阪~博多間しか走っていないため)を担当者が趣味で入れたと森ビルの方が言っていました」。萩原メモより。
「グッゲンハイム駐車場も忠実に再現されててすごいなと思いました」。萩原メモより。真ん中に線が入ってるのは、一畳くらいの大きさの都市模型の単位のつなぎめだからです。
「グッゲンハイム駐車場も忠実に再現されててすごいなと思いました」。萩原メモより。真ん中に線が入ってるのは、一畳くらいの大きさの都市模型の単位のつなぎめだからです。
参宮橋付近。真ん中の小さな家の並びで、くぼんだ地形が見える。「春の小川」に歌われた川の跡。
参宮橋付近。真ん中の小さな家の並びで、くぼんだ地形が見える。「春の小川」に歌われた川の跡。
とにかくすごい。すごいでしょう。最後に、鳥になったらどんな視点かを動画でお見せして終わりにします。

またいつか見たい

はっきりいって、これでもまだ紹介しきれてないし、見足りていない。原稿を書きながら、なんであそこの写真を撮ってないんだ!と思うことしきりです。

冒頭でも言ったようにこの都市模型は通常非公開。ですが、森ビルが開催している子ども向け体験学習プログラム「ヒルズ街育プロジェクト」ではこの模型を見学するツアーが開催されることもあるそうです。

募集情報は以下のサイトに掲載されるそうなので要チェックです。
https://www.mori.co.jp/machiiku/

森ビルのみなさま、今回は本当にありがとうございました。

イベントやります

『地図と暗渠のムフフな関係。今宵、見えない川を、見にゆこう!』という地図のイベントを、3月29日(日)18時よりに東京カルチャーカルチャーで開催します。

暗渠(あんきょ)というのは、この記事の最後にでてきたような川の跡のこと。それを東京で探します。今回の記事が好きな人ならきっと好きなはず! ぜひいらしてください。
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