特集 2016年2月4日

おそらく日本一甘い醤油、まぐろのホルモン、アイスがライバルの焼き芋

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飲食業関係者のみが入場できる、デパートの物産展のようなイベントがある。

その名も、「食の商談会」という。

食品メーカーのイチオシ商品をバイヤーに紹介するという催しなのだが、今回、鹿児島市・熊本市・福岡市・北九州市の四市が連携して「2016食の商談会in東京」を開催するということでお邪魔させていただいた。

日本一甘くしようと作った醤油、ホルモン食感のまぐろ、アイスクリームみたいな焼き芋などなど、楽しくおいしくお話を伺うことができたので紹介したい。
千葉県在住。歳を重ねるごとに甘いものが好きになっていく。夏が好きなのに暑さに弱いのが悩み。

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> 個人サイト yukatta-yokatta

開会あいさつは「皆様の販路の拡大をお祈りします」

いきなりだが、フロアマップを見てみてほしい。
左半分の青いところに注目してほしい
左半分の青いところに注目してほしい
会場の左半分、青い部分は商談スペースなのだ。
デパートの物産展なら、フリー飲食スペースになっていそうな部分だが、これは商談会なのでがっつりビジネスの話をするスペースが設けられている。
開始前にそっと様子を見せてもらいに行く編集部古賀さんと私
開始前にそっと様子を見せてもらいに行く編集部古賀さんと私
ずらっと個別商談用のブースが並んでいる。
ずらっと個別商談用のブースが並んでいる。
開場時間前に見せていただいたのだが、出展ブースからわくわくするようなおいしいカレーの匂いが漂ってくるのに、こちらのスペースは冷静で無機質という対比が面白い。

フリー商談スペースで、鹿児島市の林課長からお話を伺った。
食の商談会は2010年から始まり、今回で7回目とのこと。
食の商談会は2010年から始まり、今回で7回目とのこと。
もともとは鹿児島市・熊本市・福岡市の三市が2009年から連携して事業を行っており、途中から北九州市も加わったそうだ。
熊本市の市章のシンプルさが気になる。 ひらがなの「く」の字を図案化したものらしい。
熊本市の市章のシンプルさが気になる。 ひらがなの「く」の字を図案化したものらしい。
さて、突然ですがクイズです。なぜこの4市が連携しているのでしょうか。

林課長に質問するまでずっと疑問だったのだが、帰宅後クイズ形式で家族に出題したところ、すぐ正解したので、とても簡単な問題かもしれず恐縮です…。

ということであっさり答えを言うと、正解は九州新幹線の停車駅でしたー!
確かに博多駅、熊本駅、鹿児島中央駅は全列車停車駅だ(そういえばそうだったみたいに書いているが、帰宅後調べました)。

今回は四市合計で51社が出展しており、どれもロット数が少ないので全国流通はしていないが、海の幸に山の幸からスイーツまで自慢の品がそろっているとのこと。どれも楽しみだ。

開場時間になり、主催者挨拶が始まった。
マイク前にいらっしゃるのは、運営を担当された(株)マイナビの水野部長
マイク前にいらっしゃるのは、運営を担当された(株)マイナビの水野部長
この挨拶の中で、注意事項として、「冷蔵庫の中に忘れ物をしないように…」というのがあった。
唐突に会場内に冷蔵庫・冷凍庫がある。かなりの存在感。
唐突に会場内に冷蔵庫・冷凍庫がある。かなりの存在感。
いかにも飲食業っぽい注意事項である。物産展なら人目につかないところにあるはずの冷蔵庫が、存在感全開に佇んでいるのもなんだかプロっぽい。

さらに、挨拶の締めの言葉も興味深かった。
よくある「皆様のますますのご健勝とご発展をお祈りして…」という部分が「皆様の販路の拡大をお祈りして…」だったのだ。
そうだ、カレーの匂いに加えてお出汁の香りなども増して、ますます夢心地の空間になっているが、ここはビジネスの場なのだ。
商談の邪魔にならないよう気をつけつつ、各ブースを取材させてもらおう。

開場時刻になったので、まずは会場内をぐるっと見て回った。
一見デパートの物産展なのにやけに高いスーツ率
一見デパートの物産展なのにやけに高いスーツ率
あまごころ本舗さんの「塩うにパウダー」
あまごころ本舗さんの「塩うにパウダー」
うに専門店のあまごころ本舗さんでは「塩うにパウダー」を使ったお出汁を試飲させ ていただいた。スープなのに味も香りもあふれんばかりにうにで、あれ!? 液体なのにうに!?私うにを飲んでる!?と混乱する。全く生臭くなくおいしい! お店でうに鍋(!)などに使われるらしい。
あげ玉本舗さんの「シェイクdeチャチャチャ」
あげ玉本舗さんの「シェイクdeチャチャチャ」
あげ玉本舗さんの「シェイクdeチャチャチャ」。あげ玉にフレーバーを振りかけたお菓子。あげ玉をお菓子に、その発想はなかったと思わずうなってしまった。
「さつまいもブリュレ味」(!)を試食させていただく。プリッツにありそうな味なのだが、さくさくした軽い食感は確かにまごうことなきあげ玉。甘い味にもこんなマッチするとは…!
太田屋醤油店さんの「コンだし」。
太田屋醤油店さんの「コンだし」。
太田屋醤油店さんのハイブリットだし「コンだし」。コンソメとだしを融合した調味料。

ポトフにしたものをいただいてみると、舌はコンソメを認識するのに、鼻から抜ける香りは和の出汁という不思議な感覚!旨味の相乗効果がすごい。ソースと醤油のハイブリット調味料「ソーゆ」も面白かった。目玉焼きに何をかけるか論争に一石を投じるのでは。
かごしま旅の駅魔猿城さんの「かるかんしろくま」
かごしま旅の駅魔猿城さんの「かるかんしろくま」
かごしま旅の駅魔猿城さんの「かるかんしろくま」。氷菓子の「しろくま」をモチーフにしたかるかん。かるかんの生地にドライフルーツが練り込まれている。たまたま通りかかって、見た目の可愛さに古賀さんと二人引き寄せられてしまった。もちろんおいしいのだが、そもそも魔猿城さんの見どころが多すぎる。建物外観はお城!

自称・日本一甘い醤油の糖度はジャムと同じ

まずは鹿児島市の藤安醸造さんを紹介したい。

こちらは、醤油、みそ、お酢を中心に加工食品も扱う、明治3年創業という歴史あるメーカーだ。
前情報で、こちらの醤油は甘いと伺っていたので、どれくらい甘いのかと楽しみにしていた。

お話しの前に、まずはお豆腐に直接かけたものをいただいた。
右のボトルが自称・日本一甘い醤油「極あまくち 専醤」
右のボトルが自称・日本一甘い醤油「極あまくち 専醤」
わわわ、思った以上に甘い!!
普通のお醤油より若干とろっとしている感じもあり、言うならばみたらしだんごのタレのイメージだ。
営業部の山下さんからお話を伺った。
営業部の山下さんからお話を伺った。
・九州ではもともと醤油は基本的に甘口が好まれる
・九州の中でも、南部に行くほど甘くなるので鹿児島の醤油が一番甘い
・国道3号に点在するラーメン屋さんを南から順番に味わって行くと、醤油ラーメンがしだいに甘口から辛口になっていく
・普通のしょっぱい醤油も小売店で売られているが、多くの家庭には甘い醤油しかない
・九州以外の人から贈答品でしょっぱい醤油をもらってしまうと口に合わないが捨てるのはもったいない、そこで各家庭で好みの甘さに調節できるよう、ブレンド用の特別に甘い醤油を作ろうとしてできたのが専醤



なるほど、もともとは単体で使うのではなくブレンド用として開発されたのか!
関東育ちの私からすると、専醤はすきやきのたれや鶏の照り焼きのたれの味だ。
実際、専醤だけでこれらの料理を作ることもパッケージで推奨されていた。


・専醤は「日本一甘い醤油を作ろう」と思って開発された
・もともとはブレンド用だったが、いまは単体で使う醤油として売れている



醤油の味の指標として、「塩分控えめ」や「無添加」などはわかるのだが、「甘さ」を究めて行こうという姿勢は思いもよらなかった。

厳密に調査しているわけではないので、「おそらく」とか「自称」をつけて、日本一甘いと称しているとのことだが、もしこれより甘い醤油があったらもはやカラメルソースになってしまうのではと感じる。

専醤をいただいてきたので、当サイトで頻出の糖度計で計測したところ、51%という数値が出た。これはジャム並の糖度だ(ちなみに同じ糖度計でキッコーマンの醤油も計測したら37%という結果だった)。
藤安醸造さんのパンフレット。商品のバリエーションが幅広い。山下さんの「全部甘いと思ってくれていいです」の言葉に、古賀さんと思わず「カッコイイ!」と拍手してしまった。
藤安醸造さんのパンフレット。商品のバリエーションが幅広い。山下さんの「全部甘いと思ってくれていいです」の言葉に、古賀さんと思わず「カッコイイ!」と拍手してしまった。
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焼き芋を冷凍したらアイスクリームになった

続いて、熊本市のくまもと南園の匠協同組合さんのブースに向かった。

こちらでは、有限会社コウヤマさんの商品である、おやついもをご紹介いただいた。
おやついもは、半解凍のままアイス感覚で食べられるという冷凍焼き芋である。
さつまいも関連の商品のバリエーションがすごい。
さつまいも関連の商品のバリエーションがすごい。
ちょうど食べごろのものを試食に出してくださっている。
ちょうど食べごろのものを試食に出してくださっている。
甘さって冷たくなると感じにくくなると思うのだが、わざと半解凍で食べるというのは、甘さへの自信の表れか?さてさて、私が満足できるくらい甘くなっているのかしら…などと思いながらいただいてみた。
おいしい!甘い!おいしいよ!!!
おいしい!甘い!おいしいよ!!!
古賀さんに「あまいあまい!!おいしいですね~!!」と喜びを伝えたら、古賀さんも「うんうん、よかったね~!」と返してくれた。
口の中でひんやりととろける感じだ。冷たいのに甘さは十分。まさにアイスクリームだ。

これって、カチカチの状態だとどうなのでしょうかと聞いてみたら、冷凍庫から出してきてくださった。
ブースのすぐ横に冷凍庫がある。
ブースのすぐ横に冷凍庫がある。
かちかちに凍ったものは例えるならあずきバー。
凍ったまま一本にぎって食べ始めたら、最初はあずきバー気分で、だんだん半解凍になっていくというのも味わえそうだ。
営業部の渡邉さんにお話を伺った。
営業部の渡邉さんにお話を伺った。
・サツマイモの種類は紅はるか
・夏に売れる商品を作りたい、そして小さすぎて売れないサツマイモを活用できないかというところから、焼き芋にしたあと冷凍して夏場の商品にしてみたらどうかと試したのが始まり
・サツマイモは40日以上熟成させた後、35度以上の糖度になったものを使っている(最高では糖度52度のものもあるとのこと)
・糖度が高くなるほど軟らかく、ねっとり系の焼き芋になる



紅はるかといえば、先日一日放置するとクリームになるというべつやくさんの記事があった。
確かに、こちらの焼き芋はまさにクリーム。冷凍したらアイスクリームになるのも道理だ。


・コウヤマさんはお菓子メーカーではなく、農業生産法人として自社で収穫したさつまいもを加工し販売している
・最初は業務用のペーストを売りだした
チロルチョコのいきなり団子で使われているパウダーはコウヤマさんのもの
業務用の紫芋パウダー。
業務用の紫芋パウダー。
とてもおいしかったのでまた食べたいのだが、生産量が少なく、いまのところコウヤマさんの通販か生協の取り寄せを利用するしかないとのこと。

でも、今年の秋くらいにはデパートの催事などでの量り売りを検討しているとのことだったので、また出会えることを期待したい。

食感はホルモン、味はまぐろの佃煮

最後は、鹿児島市のYSフーズさんの本まぐろのホルモンをいただいた。
まぐろのホルモンとは、まぐろの胃袋のこと。
中央が甘辛味。左は金ゴマ、右は塩レモン。
中央が甘辛味。左は金ゴマ、右は塩レモン。
いただいてみると、食感は完全に焼き肉のホルモンだ。こてっちゃんのイメージだ。
でも味はまぐろなのだ。
味つけは焼き肉を意識したピリ辛味なのに、ずっと「俺だよー!ご存知まぐろの佃煮だよー!」という声が聞こえている。
食感は楽しいし、しっかりめに味つけられているので、ごはんにもお酒にも合いそうだ。
副社長の山口さんからお話を伺った。
副社長の山口さんからお話を伺った。
・昔から地元ではまぐろの胃袋が食べられてきたが、新鮮な状態でしか食べられないので、漁師さんだけが食べていた
・食べ方は、醤油味の煮込みや、新鮮なものならそのまま酢味噌をつけてなど
・YSフーズさんでは肉のホルモンに近づけた味つけで、真空で冷凍することで商品化した
・ご当地魚のグルメコンテスト、フィッシュ1グランプリでグランプリに選ばれた


ご厚意で商品を頂戴することができた。
山口さんから、居酒屋さんのメニューで野菜炒めにしていると伺ったので、家で調理してみた。
もやし半袋、たまねぎ1/2個、えのきだけ半株と炒めた。
もやし半袋、たまねぎ1/2個、えのきだけ半株と炒めた。
ホルモンは冷凍なので、熱湯で解凍してから野菜と炒めた。
もともと味付けがしっかりしているので、まったくほかに味付けを加えることなくてもおいしく食べることができた。
そりゃおいしいよね!というごはんのせ
そりゃおいしいよね!というごはんのせ
もちろんごはんに乗せてもおいしい。
内袋ごと熱湯で温めるだけで食べられるのも嬉しい。

一本のまぐろからそう大量にとれるものではないので、物量をそろえるのが大変ということだったのだが、最近は全国の居酒屋さんでも扱うお店が増えているとのこと。
どこかで今後見かけることができるかもしれない。

会場内で聞こえてくる声がみな九州弁だったのがとても心地よかった。
私旅行中だったっけというような、ほのぼのとした気持ちになるのだがよく周りを見るとスーツの人たちがガンガン名刺交換をしている。

そして、デパートの物産展と最も違うのは、試食をいただいてどんなに気に入っても、あくまで商談が目的なのでここでは買って帰れないのだ。

どれも小ロットのため、全国に流通するというのは難しいかもしれない。
でも、今後デパートの物産展などで今回知った商品を見つけられるかもしれないので、目を光らせていきたい。
藤安醸造さんからいただいた専醤をアイスクリームにかけてみた。 甘い醤油だから甘いものに合うだろう、ハーゲンダッツだってみたらし胡桃を出したくらいだし!と思ったら、意外にも醤油のしょっぱさが際立つ結果になった。そうだった、あくまで醤油なのだ、九州ではお刺身を食べるときにこれを使っているのだということを思い起こす結果となった。
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