特集 2016年8月17日

ガリって自分で作れるんだ(そしてウマイ)

自作のガリをずっと食べ続けています。そもそもガリが好きなんです。
自作のガリをずっと食べ続けています。そもそもガリが好きなんです。
ふと、普段買ったことがない野菜を買ってみようと思い立ち、新生姜を買った。『岩下の新生姜』は食べたことがあるし好きだが、新生姜そのものは買ったことがなかった。

買ってみて、どうやって食べるのかよく判らないけど、すし酢にでも漬けたらうまいものが出来るに違いなと思って漬けてみた。

大当たりだったのだ。
あばよ涙、よろしく勇気、こんにちは松本です。

1976年千葉県鴨川市(内浦)生まれ。システムエンジニアなどやってましたが、2010年にライター兼アプリ作家として自由業化。iPhoneアプリはDIY GPS、速攻乗換案内、立体録音部、Here.info、雨かしら?などを開発しました。著書は「チェーン店B級グルメ メニュー別ガチンコ食べ比べ」「30日間マクドナルド生活」の2冊。買ってくだされ。(動画インタビュー)

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知ってる人にしたら大した情報じゃないだろうが

新生姜の甘酢漬けといえばそう、『ガリ』である。今までガリを作ろうと思ったことは無かったが、なんとなく買った新生姜を酢に漬けたらガリが出来た。
新生姜は白い。そしてタツノオトシゴみたいでかっこいい。
新生姜は白い。そしてタツノオトシゴみたいでかっこいい。
酢飯が好きなのですし酢を常備している。合わせ酢を毎回作るのが面倒なのでミツカンの『すし酢』を買っておいてあるのだ。
すし酢は個人的な必須調味料。
すし酢は個人的な必須調味料。
後で色々レシピを調べたが、スライスした生姜を湯にくぐらせるとか、酢を煮立たせて冷ましてから合わせるとか、なんだか面倒な手順が多かったので全部無視してやった。
スライスした新生姜をすし酢に漬けるだけの簡単レシピ。
スライスした新生姜をすし酢に漬けるだけの簡単レシピ。
自分で漬けたガリのうまさたるや。すし酢のやさしい酸味、爽やかな香り、ガリッという食感、すべてが大好きだ。食事のたびに山盛り食べている。

過ぎ去った40回の夏に新生姜を食べてこなかったことを心底後悔するくらうまい。

でも、これから毎年夏に新生姜を楽しめるかと思えば、人生楽しみが増えたってもんだ。

勝手にけっこうピンクになる

市販のガリは結構ピンク色で、原材料を見るとなんらかの色素が入っている。だからガリの色というのはなにかで付けているのかと思ってた。
市販のガリ。色は色素で付けているらしい。
市販のガリ。色は色素で付けているらしい。
野菜色素って書いてある。パプリカとかそういうのだろうか。
野菜色素って書いてある。パプリカとかそういうのだろうか。
この辺の赤い生姜はみんな野菜色素で色を付けているようだが、安いやつは『赤102』とかを使っているのもある。
この辺の赤い生姜はみんな野菜色素で色を付けているようだが、安いやつは『赤102』とかを使っているのもある。
が、自分で作ってみて判ったのだが、新生姜を酢に漬けると色素などを入れなくてもピンク色になるのだ。
新生姜と酢が合わさるとこの色になるらしい。
新生姜と酢が合わさるとこの色になるらしい。

化学反応だったのだ

酢と言えば酸で、酸をかけると赤くなると言えばそう、リトマス試験紙である。ガリがピンク色なのは酸と生姜の色素が反応しているからなのだった。
そこで、どこのご家庭にもあるクエン酸(結晶)である。
そこで、どこのご家庭にもあるクエン酸(結晶)である。
ドラッグストアなどで買える純度100%のクエン酸500g。大体千円位。酸っぱい飲み物を作ったりするのに使っている。

それを新生姜スライスにどばっと掛けてみた。
くらえ、純粋なクエン酸攻撃。
くらえ、純粋なクエン酸攻撃。
どうなったか。
速攻でこの色である。
速攻でこの色である。
もちろん食べられる。ただし味はというと、めちゃくちゃに酸っぱい。歯が溶ける勢いの酸っぱさである。

海原雄山もおちょぼ口になり女将を呼べないレベルの酸っぱさなのだ。酸味の暴力である。

しかし、好きな人は好きという味であり、かくいう僕も嫌いじゃない。むしろ好きだ。
これは一度湯通ししてからすし酢に漬けたガリ。このくらいの色なら自然に出るようだ。色は時間と共に退色していくのだとか。
これは一度湯通ししてからすし酢に漬けたガリ。このくらいの色なら自然に出るようだ。色は時間と共に退色していくのだとか。

ではアルカリはというと

酸性で赤くなるとしたら、ではアルカリではどうなるのだろう?

そこで、みんな大好き、掃除や料理に革命を起こし続けてきた重曹の登場だ。
とりあえず重曹を使うと掃除や料理の常識が覆って話題になったりしがち。
とりあえず重曹を使うと掃除や料理の常識が覆って話題になったりしがち。
続きは次のページへ。
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炭酸水素ナトリウム水溶液に新生姜を漬ける

炭酸水素ナトリウムというのは重曹のことだ。そういえば『化学式で表せるものは毒』とか言い出す人は重曹についてはどう思っているんだろうか。

しかして、アルカリ水溶液に漬けた新生姜の色はあまり変わらなかった。
ちょっとだけ黄色くなったような気が無くもない、って程度。
ちょっとだけ黄色くなったような気が無くもない、って程度。
きっと重曹の濃度が足らなかったのに違いない。そこで、重曹の粉をバッサバッサと新生姜に掛けて放置してみた。
1時間後、生姜は黄色くなっていた。
1時間後、生姜は黄色くなっていた。
一応アルカリにも反応するようだ。

食べてみると、もちろん味はほとんどない。重曹由来の苦味がちょっとあるだけで美味しいものではない。

これでは『スタッフが美味しくいただきました』と言えずに困ってしまうので、酢に漬け直すことにした。
酸とアルカリが反応して泡立ってしまった。
酸とアルカリが反応して泡立ってしまった。
クエン酸と炭酸水素ナトリウムが反応を起こして、水、二酸化炭素、クエン酸ナトリウムが発生している。中和である。

つまり、この泡は二酸化炭素であり人体に顕著な害はない。そして、酸に反応した新生姜はほんのりピンク色になった。
化学反応っておもしれぇなぁ。
化学反応っておもしれぇなぁ。

並べてみると判りやすい

酸とアルカリに反応した新生姜を並べてみたら見事にグラデーションになった。
左からクエン酸結晶、すし酢、元の生姜、重曹で、赤から黄色に変化しているのが判る。
左からクエン酸結晶、すし酢、元の生姜、重曹で、赤から黄色に変化しているのが判る。

なぜ色が変わるのか?

なぜ酸やアルカリで色が変わるかというと、新生姜に含まれる『アントシアニン』のせいらしい。

紫キャベツとかブルーベリーとかのあの色である。花とか野菜の色はアントシアニンによるものが多い。

そして、新生姜はアントシアニンが多いから酸で色が変わるのだという。

では、普通の生姜ではどうなのか?
一年中ある生姜。『ひね生姜』である。
一年中ある生姜。『ひね生姜』である。
ひね生姜を酢に漬けても色は変わらないと聞いたので、スライスしてすし酢に漬けてみた。
皮は剥いた。最初の見た目は新生姜と大差無い。
皮は剥いた。最初の見た目は新生姜と大差無い。
すし酢に漬けて1日、一部だけ赤くなった。筋状にアントシアニンが存在すると言うことだろうか。おそらくこれは個体差や時期による違いがある。
特殊な試薬で染色した細胞みたいな見た目である。
特殊な試薬で染色した細胞みたいな見た目である。
時間が経つともっと赤くなった。が、いまいち食欲をそそらない見た目である。
時間が経つともっと赤くなった。が、いまいち食欲をそそらない見た目である。
味は、新生姜のガリよりだいぶソリッドであり、辛い。ガリを作るなら見た目的にも味的にも新生姜がいいんじゃないかと思う。

さて、では紅ショウガも作ってみたい

生姜の漬け物と言えばガリと、あとは紅ショウガであろう。ならばと思って紅ショウガも作った。ガリより酸味が強いので、普通の酢で漬けてみたが、いまいち色が出ない。
実物はうっすらピンクだが、写真に撮ると赤みが出ない。
実物はうっすらピンクだが、写真に撮ると赤みが出ない。
味としてはまさに紅ショウガなのだが、見た目ときたらてんで地味である。

お好み焼きがこの有様だ。
味はいいんだけどねぇ。見た目が地味すぎですね。
味はいいんだけどねぇ。見た目が地味すぎですね。

とんこつラーメンもぐったりだよ

せいぜい桃色ショウガであり、お好み焼きやとんこつラーメンに乗せても映えない映えない。

目を引かないことこの上ねぇ。
モヤシかなにかにしか見えない。
モヤシかなにかにしか見えない。
別に自然食品が好きとか、着色料が入ってたら食べられないとか繊細ぶる気はないのだが、市販の紅ショウガの赤っぷりは少々やりすぎだなぁと思っていた。

だから紅ショウガを自作してみたいのだが、いざ料理にのせてみるとダメである。あの真っ赤っかは必要な真っ赤かだったのだ。
なんね、このヘルシーすぎる見た目は。
なんね、このヘルシーすぎる見た目は。
紅ショウガの赤さを思い出してみよう。
とんこつラーメンには紅ショウガですよ。明太ご飯も赤いから美味しそうに見えるわけですよ。
とんこつラーメンには紅ショウガですよ。明太ご飯も赤いから美味しそうに見えるわけですよ。
牛丼にも紅ショウガが必須なんですよ。
牛丼にも紅ショウガが必須なんですよ。
僕のGoogleフォトで『牛丼』って検索したら出てきたとんこつラーメン。Googleの人工知能的には『牛丼=茶色の中に紅ショウガ』らしい。
僕のGoogleフォトで『牛丼』って検索したら出てきたとんこつラーメン。Googleの人工知能的には『牛丼=茶色の中に紅ショウガ』らしい。
紅ショウガはやっぱりこの真っ赤っかこそが正義なのだ。

次のページにつづく。
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色を付けたい

紅ショウガはもうちょい赤い方がいい。という事で、パプリカで色を付けることにした。

酢と一緒にスライスしたパプリカを入れてみた。これで色が抽出出来るのかどうかは判らないが、少しは赤くなるかも知れない。
パプリカ色素で色が付くだろうか?
パプリカ色素で色が付くだろうか?
そして再度登場のクエン酸結晶である。強力な酸で強制的に赤くしよう。
酸に漬ければ赤くなるのは判っているのだ。
酸に漬ければ赤くなるのは判っているのだ。
結果として、こうなった。
上が市販の紅ショウガ、左下がクエン酸、右下がパプリカである。
上が市販の紅ショウガ、左下がクエン酸、右下がパプリカである。
クエン酸による強制発色はまぁまぁ成功した。パプリカによるチャレンジは失敗に終わったので早々に忘れよう。

ピンクのクエン酸紅ショウガの酸っぱさはものすごい。妊婦も「もう酸っぱいもの欲しいとか言わないっす」って言うレベルである。

まさにクエン酸そのものの味で、人が酸っぱいと認識できる上限に近い。

味として美味しいのは圧倒的に市販の紅ショウガで、酸味と生姜風味のバランスがいい。
ピンクの紅ショウガは可愛いと思う。が、暴力的酸味はどんな料理にも合いそうにない。
ピンクの紅ショウガは可愛いと思う。が、暴力的酸味はどんな料理にも合いそうにない。

美味しさとバランスさせると色が付かない

ガリにしろ紅ショウガにしろ、顕著に赤くするには結構な酸が必要で、よくよく思い出してみればガリも紅ショウガも大して酸っぱくない。

そして、実際に添えられているガリはほとんどが白い。Googleフォトに登録した15万枚の写真を『寿司』で検索してガリを探してみた。
ついさっきまで生きてたイカの寿司。
ついさっきまで生きてたイカの寿司。
トロづくし。
トロづくし。
イワシの寿司。
イワシの寿司。
極太鉄火巻き。
極太鉄火巻き。
どっかで食べた寿司。
どっかで食べた寿司。
山盛りのウニ軍艦。
山盛りのウニ軍艦。
100円回転寿司で最強だと思う、スシローのガリ。
100円回転寿司で最強だと思う、スシローのガリ。
これだけガリがピンク色だった。
これだけガリがピンク色だった。
以上、寿司の写真を見ていただきました。よかったですね。

ほとんどのガリは白くて、一つだけピンク色のガリがあった。

このガリが酸っぱかった記憶は無いので色を付けたものだろう。色の濃さからすると市販品の可能性の方が高い。
普通の酢で漬けるとこんなもん。
普通の酢で漬けるとこんなもん。

生姜は良い

告白しておくと、寿司の写真は今日の晩ご飯か明日のランチにみんなが寿司を食べたくなぁれ♪って気持ちで載せました。飯テロです。

飯テロついでに、ガリ以外でも生姜をたしなんでいるので最後にちょこっと紹介させていただきたい。
谷中生姜。ちょいと味噌をつけて食べるわけです。茎の部分をどれだけ食べられるかチャレンジします。
谷中生姜。ちょいと味噌をつけて食べるわけです。茎の部分をどれだけ食べられるかチャレンジします。
谷中生姜が無い時は新生姜をスライスして味噌を付けながら食べ、なんでもいいからアルコールを摂取します。大人で良かったと思うひとときです。
『桃屋のきざみしょうが』です。ほのかな酸味と油のおいしさを生姜がアシストします。
『桃屋のきざみしょうが』です。ほのかな酸味と油のおいしさを生姜がアシストします。
冷や奴に桃屋のきざみしょうが。パーフェクトです。
冷や奴に桃屋のきざみしょうが。パーフェクトです。

旬の新生姜を食うんだ

そろそろ新生姜の旬が終わりそうな8月中旬にこの記事ですよ。さぁ、旬が終わる前に急いで新生姜を買いまくって食べまくってください。

生姜の影響か最近胃腸の調子が良く、ちょっと辛い物を食べるとお腹を壊していたのがウソみたいに絶好調です。胃腸が暖まるんでしょうか。

以上、生姜を普通に紹介してしまいましたが、笑いの一つもないのもアレなんで謎かけを。

えー、ショウガと掛けまして、すぐ人を叩く人と解きます。その心は、どちらもポカポカするでしょう。

はい、みんな心がポカポカしたところでまた来月。
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