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コネタ


コネタ986
 
靴をウェザリングする。

新しいスニーカーを買った時、服の適度なクタビレ具合に比べて、靴だけが妙にツルンとしてるのに違和感を覚えたことはありませんか?しかもコレが意外とほどよいクタビレ具合になるまで結構な時間がかかる。では直接傷を付ける?と思っても、11月の安藤さんの特集『ジーパンにダメージを与える』を見ても、ムリなダメージは好ましい結果を出さないようだし。何より実際に痛んじゃう。ではどうするか? ‥そうだ、ダメージを「描けば」いいのだ。

(text by 大坪 ケムタ

まずは砂をスミ入れ

最近はプラモデルの塗料売場に行くと、汚し専用の塗料が売っている。専門用語でいえば「ウェザリング」用。全体をフツーに綺麗に塗ったあと、これで思う存分汚しまくるのだ。しかも粉末、液体、ペン型と何でもござれ。パテ塗り→ヤスリかけの時点で「メンドくせぇ‥」と挫折した元プラモ少年からすると、まさしく21世紀的グッズ。これを使ってバンバン汚していきたい。


昔はリアル炭とか付けてたんだけどね。

まず色をつける前に、ある程度塗料の定着をよくするためにザックリとサンドペーパーで全体をコスる。直接ダメージは与えないといっても、この位は軽いもんでしょう。


この位傷ある方がそれっぽいでしょ?

続いて全体を汚す前に「スミ入れ」を全体にほどこしたい。スミ入れとは、プラモデルの表面に書かれたミゾに色をつけること。戦車でも車でも、コレやるだけで全体が締まって見える基本中の基本のテクニック。

普通だとミゾに黒い線を入れるのだけど、今回は靴だけに縫い合わされた糸に細かい砂が入ってる感じを再現したい。ということでサンドカラーをスミ入れ開始!


ベロっと塗った後、ティッシュで拭くと‥
凹んでる糸の部分だけ色がつく。

てな作業を繰り返し、さらに表面も適度に塗っていく。ついでに目立つ部分には紙ヤスリでダメージも与えていく。なかなか白ベースの靴だとベッタリ塗り過ぎてもウソっぽいし、塗りが軽いと軽いで綺麗さが抜けない。まぁ、新品なんだから当たり前だが。

とはいえ塗り始めて10分、塗ってない方と比べると偽りのクタビレ感がイイ感じに出始めた。


輝きを無くしていくマイシューズ。
比較すると色がくすんできてるのが分かる。

 

靴の汚れは土だけじゃないのだ

でも、このままだと何か足りないんだよな‥そうだ、汚しが砂だけだと校庭しか走らされてない体育靴や、おじいちゃんのゲートボール用シューズみたいなんだよ!もっと若者のアグレッシブな感じが無くては。本当のダメージ受けたスニーカーなら、ライブハウスでモッシュ中に足踏まれた日もあるだろうし、あの子会いたさに靴に泥水もかぶって走った日もあろうよ。そのダメージがまだ伝わらない!

あらためて自分のボロっちいスニーカーを見直すと、適度な黒ずみがある。歩くための靴とはいえ、その歴史は地面を踏みしめるだけでなく、アチコチに擦りつけたり踏まれたりの歴史もある。ということで擦り跡を再現するべく、一番近い色・泥カラーをこすりつけていく。


ひと擦りごとに歴史が刻まれる!

そして、塗り始めから30分‥こんな感じでそれっぽく完成!

汚すぎず綺麗すぎず‥のバランスになれたかね?

まだ若干ながら光沢は残るものの、履き始めて3、4ヶ月くらいは経ったであろうダメージは感じる。これ以上色づかないのは「あとはオマエの人生の疵を刻み込め!」という彼からのメッセージだろう。

底はもちろんキレイですよ。

汚れてキレイなものって意外とない

このスニーカーウェザリングのそこそこのデキに気を良くして、この後いろいろな物を汚してみよう!としたものの、コレが意外と難しい。ある程度凸凹・ザラつきがないと色が定着しないし、紙だと吸収してしまって程良い汚れ具合が難しい。

それに元より「汚れが似合う物」ってのがなかなか無い。適当に色をつけると左のウチワのように単純にゴミっぽくなってしまう。汚れ=すなわち味であり歴史。付け焼き刃で汚すもんじゃーないって事でしょうね。でも使えるよね、ウェザリング。

単に祭りで拾っただけにしか見えないウチワ。


でも表がコレだと呪われてるような気に‥


 

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