「ねるねるねるね」を筆頭に、カネボウフーズが展開するおもしろお菓子たち。私もそうだが、親が買ってくれなかった方も多いのではないか。
そうだ、コマーシャルに胸をときめかせつつ、経験しないまま大人になってしまっていた。
お菓子を買うくらいの経済力と自由とを手に入れた今、憧れているだけだったあのお菓子たちを試したい。大人になってよかった。
こういうことについては童心に返りたい。店にあったのを全種類買ってみました。
(text by 小野 法師丸)
●たぶん化学も学べそう
おいしさいうよりは楽しさを前面に出してきているケミカルスイーツたち。ここでは勝手にそう名づけているが、なんとなく化学の実験のようでもあるからだ。
たまたま立ち寄ったスーパーはずいぶん品揃えの多い店。お菓子の種類としては4種類、それぞれ味がいくつかあるので、色とりどりな感じで買ってみた。もう誰にも怒られることはない。
実際、メーカーの調査によると、過半数の世のお母さんたちは「身体に悪そう」という理由などでこれらのお菓子を子供たちにすすめたくないと考えているそうだ。それには誤解もあるようなので、詳しくお知りになりたい方はこちらをどうぞ。
まずはトップバッター、最もよく知られているであろう「ねるねるねるね」。なんと今年で発売20周年と、意外なほどのロングセラー。カルシウム入りで健康にも配慮しているのもそつがない。
袋を開けてみて出てきたのはまた袋。カップラーメンで言うところのスープやかやくだけしか入っていないというのがまず衝撃的。
書かれている手順にしたがって、1つ目の袋の粉と水とを混ぜる。できあがったのはなにやら邪悪な感じもするゲル状の物体だ。
うーん、結構きつい。無邪気に「すげえ!」と興奮できなくなってしまったのは大人になったからだろうか。確か色が変わるのがこのお菓子の特徴だったはず、2つ目の袋を入れてからの変化に期待したい。
おお、子供の頃に見たコマーシャルの効果音がよみがえる。お母さん、僕はこれをやってみたかったんだよ!
3つ目の袋のコーンフレークを盛り付けてできあがり。ではさっそく食べてみよう……味の方は………うん、人それぞれに感じる味だ。味ってそういうものだと思う。
●全体的にのびる感じを重視
続いては「にょびガムラー」。私が子供の頃にはなかったと思うが、命名やパッケージのテンションは「ねるねるねるね」と同じだ。
その名の通り、このお菓子はガムであるらしいのだが、内容物はやっぱりスープとかやくっぽい感じ。棒がついてるのが違いだろうか。
のび具合は「ねるねるねるね」に負けてない。子供が夢中でビロンビロンしたくなるのもわかるが、大人がビロンビロンしたくなる気持ちもわかってほしい。このあたりでもお母さんが怒り出しそうだ。
続いては「かきまショー」。商品名の上にある「水でかけるヨ!」というサブタイトルからもわかる通り、水を筆のように使って何かしら描けるという特徴のお菓子のようだ。
おお、水で描いた部分がつながって持ち上がる。これまでのものとはまた違った展開を見せるケミカルスイーツ。「なんだこりゃー」という化学の喜びがそこにある。
●はじめから食べられそうなものがある安堵
今回紹介する最後は「かためてくんくるん」だ。パッケージの雰囲気はこれまでのものと通じるところがあるが、内容物としての違いは始めからちゃんと食べ物の形が見えるクラッカーがあることだ。
おお、普通に入ってるクラッカー。お菓子としては普通のことがここでは特別なことに感じられる。いつの間にか価値の転換が行われていたのだ。
ただ、粉を水に溶くというスタイルはここでも統一。
クラッカーに1本余裕があったので、残った分をそのまま食べてみたのだが、これが実においしい。……いや、そんなことでいいのか。化学の心を忘れてはいまいか。
傘というか、きのこというか、そんな感じのお菓子が完成。傘の部分はラムネっぽい感じと言えばよいだろうか。食べてみて、パッケージの表記を確認して、そうそう、メロンソーダ味だよね、という味だ。
●普通のお菓子もそうでないお菓子も好きだよ
「食べ物で遊んじゃいけません」というお母さんの常套句へのアンチテーゼともとれるケミカルフーズたち。子供の頃にやり残したことをやりきった感じはする。
最後の「かためてくんくるん」、この形はコマとして機能するらしい。大人はコマを回す力も強い、とてもよく回るよ。
「化学+おもちゃ+食べ物」の3つが一体化したとも言えるお菓子たち。別々のよさ、一体化したよさ、きっとそれぞれにあるんだろうと思う。