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はっけんの水曜日
「せい」をつけに行く
やつめ……。

「最近、体調悪くてさあ……ダルいし眠いし、イロイロ辛いことも多くて、気持ちもはれないし。栄養のあるものでもパーッと食べたいんだけど……」
と、友人R子が言った。
「栄養?」
「そう、栄養」
「肉とか?」
「ちがうちがーう、こう、食べたことないような、食べると内面からピチピチビューティになるような……」
「叶姉妹が食べるような?」
「そう、せいがついて、かつ、美容に良いやつ」
「じねんじょとか、すっぽんとか?」
「そう、それそれ! 食べたことないものを食べれば、きっと元気が出て、何もかもうまくいくにちがいないわ! きゃー!」
そうかなー、とは思ったが、彼女につきあって、とりあえず「せい」をつけに行くことにした。
絶賛五月病中の方、必読です。

(text by 大塚 幸代



丸子亭、中野ブロードウェイの2Fにあります。

じねんじょを食べる

私たちは中野に11時30分に集合した。
中野ブロードウェイの2階に、自然薯(じねんじょ)専門店があるというのだ。

じねんじょは、山に自生する、日本原産の野生のヤマイモのこと。
酵素を多く含み、カルシウム、鉄分、リン等のミネラルやビタミン類も豊富で、「疲労回復、成人病、ガンや糖尿病予防」に効果があるそうだ。ほほう。
ちなみに、スーパーで売っているヤマイモは中国から伝わったもので、じねんじょとは違う種類らしい。

カウンターとテーブル席ひとつの狭い店内に入ると、ボタンダウンのシャツを着た青年と、新聞を読んでいる50歳くらいの男性が、麦とろを食べていた。
麦とろ愛好者は、なぜか「こざっぱり」しているように見えた。なぜだろう。

テーブル席に座り、麦とろ定食を注文して、しばし待つ。
「あのさあ、Rちゃん」
「なに」
「Rちゃんって、じねんじょ初めてでしょ?」
「そうだよ、麦とろ自体は好きで、たまに食べるけど」
「……私さあ、麦とろって食べたことないんだけど……」
「えっ」
「いやあ、小学校の頃、ヒジキとかトロロとか苦手で、肉とゴハンばっかり食べてて……今は年とって味覚が変わって、ヒジキも大好きだから、大丈夫かなーとは思うんだけど」
「うーん……でもねえ、この定食って麦とろ食べられなかったら、全くダメなんじゃないの?」
「……そういうオカズ構成だよねえ」
「たぶんね」

 

麦とろ定食。

ねばりけは、意外と少なかった。

料理の乗ったトレーと木のおひつが運ばれてきた。
オカズは
・けんちん汁
・ひじきの煮物
・こぶの煮物
・つけもの
で、素材を生かした、あっさりした味つけになっていた。

おひつから自分で麦ごはんをよそって、とろろをすくってかける。
麦とろをよそい、口に運ぶ。
「……んあ、美味しいなー、これ」
とRちゃん。

私はおびえながらも、口にゴハンを流し込んだ。
ズズッ。
「……あ、美味しいわ」
「でしょ?」
イモをダシで溶いたやさしい味が、麦めしによく合う。二日酔いの翌日に食べたら最高だろうな、と思った。
年をとるってすばらしい。ビバ、大人味覚。

食べてるうちに汗が出てきた。
「Rちゃん、暑くない?」
「いや、べつに。っていうかユキヨちゃんだけ、何でいきなり新陳代謝良くなってんのよ!」
「さあ……」

丸子亭
中野区中野 5-52-15 中野ブロードウェイ2F  



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