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特集


エキサイティング火曜日
 
自販機に誘われて

自動販売機って気になる。
インターネットショッピングの盛んなこのご時世だが、街にも自動販売機(以下自販機)があふれている。お金を入れると品物が出てくる、シンプルな構造。まるで近未来だ。

そしてふと思った。都会で暮らしていると、たまには誰ともしゃべらずに過ごしたいときもある。ある週末の一日、自販機とだけ会話してみようと、街へ出た。

(text by 乙幡啓子



アメリカンな外観。
べろーん。

近未来的朝食

ある休日の朝。自販機めぐりするのにいきなり寝過ごす。朝食を食べる時間もなく、急いで家を出た。

お腹が減って動けなくなる前に、何か口に入れねば。お腹が…お腹が…お腹がすいたらスニッカーズ♪手っ取り早く食事を済まそうと、東急大岡山駅のスニッカーズ自販機に出かけていった。

なぜか東急線の沿線でしか見かけたことのない、妙にアメリカンで陽気な外観のスニッカーズ専用自販機。出るものが1種類の自販機って、なんだか奇妙だ。すごくピンポイントで限られた需要に、機械まで作って対応するとは。でも上りホームでは売切れていたので、忙しい人には売れているのかも知れない。

見かけは陽気なくせに、「お釣りは出ません。途中で購入をやめられません」と、あくまで非情な性格なのだった。都会の一隅にこんな闇が、ブラックホールが口をあけているのだ。


さりげなく置いてある。
ハケ自身は楽しそうだった

モダンタイムス?

さて、電車を乗り継ぐうちに、靴が汚いことに気がついた。そういえばあそこにあれがあった、と。わざわざ地下鉄三越前の駅に出向く。

自動靴磨き機がひっそりとたたずんでいる。いつも通るたびに気になっていたのだ。このときも、カップルがそばで興味深げに見てそのまま去っていった。

自動靴磨き機。もっと気のきいたネーミングをしがちなところだが、あえて無骨な名前で勝負しているのがいい。

チャップリンの映画「モダンタイムス」の、自動食事機に似ている、と思った。

サラリーマンらの視線を感じつつ勇気を出して100円投入、左足から入れてみた。まるで洗車だ。ハケが靴の周りを、冷やかしのようにシャワシャワシャワシャワなでていく。

ああ、変な気分である。


 

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