よくもそんなに都合良くジャストサイズのナットが落ちていたものだ。
などと、15年も前のドラマに突っ込むつもりは毛頭ない。 そういうのって、素敵じゃん? ロマンティックじゃん?
僕も自分サイズのナットを拾って指輪にしたい。
(text by 住 正徳)
工事現場にお邪魔して
とはいえ、そうそうナットなんて落ちてない。ましてや自分サイズのナットを道ばたで拾うなんて奇跡に近い。だったらナットがいっぱい落ちてそうな場所、工事現場で探してみればいいのではないか。
知り合いの工務店にお願いして、ナウ・オンな現場への立ち入り許可をいただいた。場所を特定させない、作業の邪魔にならない、怪我をしない、という条件の元、都内某所の工事現場を案内してくれた。地下一階、地上4階建てのビル建築現場である。
作業の邪魔にならないよう、お昼休み限定で指輪を探す。
お昼ご飯に向かう職人さんたちと入れ替わりで現場に入った。さっきまでの作業の余韻で現場内は塵と埃が舞っている。
探し方は単純だ。落ちているナットを片っ端から左の薬指に合わせていく。それだけである。全部で5フロアもあるのだ。手際良くやっていかないと間に合わない。
と思っていたのだが、フタを開けてみるとあまり落ちてないのだ……。
ボルトとナットはペアであって、工事現場にナットだけが落ちているって事はあり得ないのかもしれない。プラモデルを作った後に、何かネジが余ってるけどこれなんだろう、みたいな状況が建築現場にあってはならないのだ。
つくづく「101回目のプロポーズ」の再現が難しい事を実感する。 そもそも何で今更「101回目のプロポーズ」を再現したいなんて思ったのだ。
あ、そうだ。そういうのって素敵だし、ロマンティックだからだ。
実現が難しい事こそ、それが叶った時の喜びは大きい。物事はあきらめた時点で終わってしまうのだ。「101回目のプロポーズ」にはそういう教訓があるに違いない。
もう少し探そう。
あきらめなかったご褒美に、立て続けに3つ見つかったがどれも全然小さい。薬指はおろか小指にだって入らない。 探し始めてから30分が経過してしまった。
あと30分でみんなが戻って来てしまう。 場所を地下へと移す事にした。