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ひらめきの月曜日
 
Wiiを求めて並ぶ人を見守るin冬の札幌


新型ゲーム機や、人気ゲームソフトが発売される際、前日から店舗の前に並んでいる光景をニュースなどでよく見かけます。

私は10年以上ゲームの仕事をしていますが、ゲーム機はおろか、ゲームソフトすら発売日買ったことがありません。
うっかり買ってしまうと、遊んでしまって仕事にならなくて危険、という理由もあるのですが、予約したり、買いに行くのが面倒くさい…など、「いち早く入手したい!」という気持ちが薄いというのが正直なところ。

2006年12月2日、新型ゲーム機「Wii(ウィー)」が発売されましたが、発売前から品薄で入手困難だと聞いていたので、購入は見送るつもりでいました。
しかし、友人数人が「店の前に並ぶ!!」と息巻いていたので、「じゃあ見に行くわ」ということに…。

場所は12月の札幌。しかも屋外。
今年は雪が遅くてまだ積もっていないとはいえ、夜中には気温がマイナスになり、かなり寒いです。

東京ならともかく、札幌で並ぶ人なんているのか?
並んだとしても、寒さに耐えられるのか?

などと疑問に思いつつ、様子を見に行ってきました。

(text by 加藤 和美



午前3時の札幌駅前ヨドバシカメラ前(東側)。
歩道が凍っている。

■誰もいない…わけではなかった

友人たちの話から、とりあえず札幌駅前のヨドバシカメラへ午前3時に行ってみた。
今日のWii発売は午前7時開始。
4時間前なら、それなりに人もいるかもしれない。

正面入口とも言える東側に行ってみたところ、友人どころか、人影がぜんぜんない!

「ああ〜、誰もいない!?
どうしよう、こんなところでこんな時間にひとりっきりで…」

と一瞬困りかけたが、よく見ると、入口付近に看板が立っていた。

「先着位置変更のご案内」
天候が悪いので、並ぶ場所を立体駐車場に変更した、とのこと。
お店がここまでするとは、やっぱり人が来ている!?

おまけによく見ると、看板の下には「Wii入荷1000台!!」という手書きの紙が貼り付けられていた。
事前に、入荷数は「1000台らしい」「500台だ」「いや350台かも」などとウワサが飛び交っていたので、1000台も入荷されるなら友人も入手できるだろうと、この情報にホッとする。


看板の指示にしたがって、反対側の、店舗西側にある立体駐車場に行ってみた。
西側に行くと、チラホラと人影が見えて、やっぱり並んでいる人がいたのだとわかった。
立体駐車場のシャッターが半開きになっていたので、入ってみると…。

行列は駐車場(西側)の方らしい。
こちらが西側。少し人影が見えた。 立体駐車場のシャッター周辺には人がチラホラ。

 

■すでにみなさんいらっしゃいました

なんと!
駐車場の中は、大勢の人が座っていた!
すでにこれだけの人数が、立体駐車場の中で列を作っているとは。

もう来ている人はいるだろうと思ってはいたが、私の予想を上回る人数に、軽くカルチャーショックを受ける。

午前3時段階で、推測だがだいたい300人弱はいただろうか。

温度計(ちなみに冷蔵庫用)で測ってみたところ、駐車場内の気温は0度だった。

札幌の冬の外気温にしては、0度なら普通というか、特別寒いうちに入らないけれども、それでも何時間もじっと待っているのはつらくないのだろうか?

友人の友人が来ているらしいので、連絡をつけてもらい、話を聞かせてもらうことにした。

立体駐車場の通路部分なので、全体的にナナメだ。
駐車場なのに、車はいなくて人がぎっしり。壮観だ。

 

■並んでいる人インタビュー その1

友人の友人であるS君に連絡がついた。
S君とその友達は、先頭から50人目くらいの、けっこう前のあたりで待っていた。

インタビューさせてもらったS君。 寒いところすみません。


――S君は何時から来てるんですか?
S君:6時です。

――えっ、昨日の夕方の6時!?
S君:はい。閉店まで店内をウロウロしてて、夜10時に閉店してから外に出ました。

――並ぶのは10時からですよね?10時に並んだのに、前にこんなに人がいるのはどうして?
S君:10時になった時にみんなワッと外に出たんですけど、まだ案内が出ていなくて、みんながあちこちに並んでいるような状態で(笑)。その後店員さんが来て「ここから並んでください」と列ができました。

――その後はずっとお店の東側の、外にいたんですか?
お友達:1時30分くらいに、店員さんが駐車場に来てくださいって言って、こっち(立体駐車場)に移動しました。

――外にいる間、寒くなかった?
S君:寒かったですよ!足の先からだんだん感覚がなくなってきて。途中でこれはヤバイと思って、コンビニ行っておでん食べたり。

――立体駐車場に移ってから、寒さはどうだった?
S君:風が来ないのがいいですね。外だと、ここ(膝掛けの隙間)に風が入ってきて寒いんです。

――どうやって時間をつぶしてるんですか?
お友達:話したり、DS(※携帯ゲーム機のニンテンドーDS)をやったりしています。

――DSで遊んでいて、手が冷たくなったりしませんか?
S君:なります!カイロの上に手を置いて暖めながらプレイしてます(笑)。あとは、前後に並んでいる人と話したりしてました。ヒマだから何人並んでるのか見に行ったり。

――並び始めたのが10時で、今3時だから、5時間たってますよね。退屈しませんか?
S君:待っている人がみんなDSをプレイしているので、ワイヤレス通信をすると知らない人が対戦してきたりして、それがすごい面白いです(笑)

――今回以外に並んだことってありますか?
S君:こんな風に長い時間並んだのは初めてです。

――どうして並ぼうと思ったんですか?
S君:ネットで予約してもよかったんですけど、こうやって並んで、Wiiが欲しい人をいっぱい見ながら買った方が、喜びが大きいかと思って。

――(笑)イベント的な。
S君:こういう機会って、数年に1回じゃないですか。できるだけ楽しもうと(笑)


さすがに寒いながらも、発売までの時間をそれなりに楽しんでいるようだ。
「待つのは苦痛」としか思えなかった私だが、S君の
「並んで買った方が喜びが大きい」
「楽しもう」
という言葉には、目からウロコだった。

待つのは苦痛ではなく、楽しいイベントなのか!


ここで偶然、S君たちの近くで、知り合いグループも並んでいるのに気がついた。せっかくなので、話を聞こう。

 

■並んでいる人インタビュー その2

次に話を聞いたのは、N君をはじめとした学生さんグループ。
最初は2人だけなのかと思ったら、やたらと人が入れ替わっている。
これはどういうことなのか?

N君(中央)とその仲間たち。
気温は0度だが、お祭り気分のハイテンション。


――全部で何人いるの?
N君:全部で8人です。
お友達:買うのは2人だけなんですけどね。俺たちはボランティアで。

N君:ここから歩いて15分くらいのところに住んでる奴がいるんで、そこで寝たり待機してて、2時間交代でここに来てます。

――何時に来たの?
N君:10時です。並ぶのは10時からだったんで。最初は俺1番だったんですよ。
お友達:証拠の写真があります。

(N君が案内の看板の横に1人で立ってる写真を見せてもらう)
N君:店員さんから「8時から待ってる人がいるので、前に入れていただいてもよろしいですか?」って言われたんで、一応「いいですよ」って言ったんですけど、内心くやしかったです。

――寒くない?
N君:寒いですね。ここ(立体駐車場)でも寒いです。特に足が寒い。
お友達:並び始めた頃が一番寒かった。雪が降ってきて風が吹いてて。外からこに移る頃にはだいぶマシになってましたけど。

――みんな薄着なんだけど大丈夫?
N君:今日俺が「Wii買いに行くぞー!」って言ったんで、急ごしらえです。
お友達:マフラーと帽子、今日買いました。
N君:手袋持ってない人もいるし。

お友達:急に「並ぶ」って言われたんで、準備してなかったんです。でも今は室内だから大丈夫です。

――他に並んだことはある?
N君:初めて並びました。

――どうして並ぼうと思ったの?
N君:変な話ですけど、今日Wiiを買ってる夢を見たんです。それで「手に入れなきゃ」っていう使命感が出て(笑)

――待ってる間は何をしてるの?
N君:しゃべったり、DSやったり。
お友達:語り合ったりできます。

「ここはおまえの部屋か」というくらいのくつろぎっぷり。
しつこいようだが気温は0度。

 

このように、N君たちグループは元気いっぱい。
交代してはいるが、他の人にくらべてかなりの軽装で、無謀なところが学生さんらしい。

「寒い中で並ぶ」としても、彼らからしてみたら、やはり面白いイベントのひとつなのだ。

それにしてもみんな口を揃えて、「大丈夫だけど足が寒い」と言っている。
寒さには体の先端が弱いと聞くが、まさか身をもって理解することになるとは思わなかった。

 

■友人到着

みんなの話を聞いているうちに、時間は午前3時30分。
友人たちがやってきた。

みんなめいめいにダンボールを持っている。
歩道は部分的に雪が残ったり、凍ったりしているので、レジャーシートくらいでは寒くて座れないのだ。
私は座布団代わりに、分厚い雑誌を持ってきた。


私が来た午前3時には、みんな立体駐車場に並んでいたのだが、30分のあいだに、立体駐車場には入れないくらい人が増えていた。

それでも400人以内には入っているだろう。
Wiiの入荷数は1000台なので、余裕で買える範囲だ。
買えるかどうかを気にしていた友人たちも、並んでいる人数を確認してホッ。


しかし残念ながら、友人たちは立体駐車場の出入口のすぐ横、外に並ぶことになってしまった。

気温はマイナス1度。
予想よりは暖かいが、微風があって寒い。
友人一行は、シャッターによりかかるように座り始めた。

右から友人のYさん、Fさん、Tさん。
各自、座るためのダンボールを持参。
すぐ横が出入口。できれば中で並びたかった。

 

だんだん足先の感覚がなくなっていく…!
怖いのでクツを脱いでさする。

■それぞれの防寒

外の気温は、時間によって変わったが、マイナス1〜3度くらいだった。
天気予報では雪が降るかもしれないとのことだったので、雪が降らなかったことが本当にラッキーだった(昨晩中は少し降った)。


今回気をつけてきた防寒は「厚着」。
当たり前だと思われるかもしれないが、札幌は室内が暖かいので、コートの中は薄着が多い。
しかし今日はめったに着ない厚手のセーターを引っ張り出してきた。

その上から風を通さない素材の上着を着れば体部分はけっこう暖かいのだが、足先だけはどんどん冷たくなっていく。
冷たいのを越して痛い。

あわてて使い捨てカイロをクツの中に入れるが、うまく暖かくならない。仕方ないので足踏みをする。雪中行軍か。

Yさんが
「あー、今、足湯とか持ってきれくれるサービスがあったら売れる。っていうか俺が買う」
と言い出す。

たしかに、キンキンに冷えた足を、熱いお湯につっこめたら、どんなにいいか。
「岩盤浴入りたいなあ」
「ラーメン食べたいなあ」
など、それぞれの願望を言い出す。
マッチ売りの少女か。

防寒は気をつけたつもりだが、それでも札幌の冬はつらい。


まわりのみなさんも、それなりの格好をした人がほとんど。
シュラフや、スキーウェアで寒さもなんのその、といった重装備の人もいる。
中にはコンロを持ち込んでお湯を沸かしている人や、カップラーメンのいい匂いをさせている人もいた。

しかしたまに、「普段着で来てしまいました」というような人もいて、見ているこっちが心配になったりする。


ちなみにすぐ近くにコンビニがあるので、食べ物や飲み物、トイレなどは済ませられる。

ズボンを重ねてはいている。
風を避けるだけでもかなり寒さをしのげる。防災シートで風からガード。新聞紙は…???
思わず「寝たら死ぬぞ!」と叫んでしまったYさんの寝姿。 暖房の効いたコンビニに入ると、体がじんわり。トイレに行列ができていた。

 

私はDSのタッチペンを忘れたが、FさんがDSを2台持っていたので借りた。なぜ2台?

■防寒ができたら時間つぶし

寒さはなんとかしのいで、あとは販売までの時間をどうつぶすかだ。
友人たちはさっそくニンテンドーDSを取り出して、ワイヤレス通信で対戦している。

あまりにも楽しそうなので、思わず自分もDSを取り出して参加。
今日Yさんから言い渡されていた注意事項は、
「フル充電したDSを持参すること」
だった。

ふと気になって、まわりを見回してみた。

こんな夜中から、Wiiを買うために並んでいる人たちである。
当然のように任天堂製品が好きなのだろう。
みんなニンテンドーDSを持ってプレイしていた。
この空間、ものすごいDS占有率。

近くにいたグループ。当然DSをプレイ。 立体駐車場内もDSだらけ。

 

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