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特集


フェティッシュの火曜日
 
わたらせ渓谷をお座敷列車が走る

群馬県桐生市から栃木県足尾町まで、1本のローカル線がのびています。「わたらせ渓谷鐵道」 。

足尾銅山華やかなりし頃、1911年に足尾鉄道として開業、その後国有化・JR民営化。そして銅山の衰退により1989年に第3セクターの路線となり、今に至っています。

と、旅番組のように始まる今回。地元の桐生市民だった私は、その通称 「わたけい」 の存在を知ってはいたが、乗る機会のないまま今まで来た。

そんなある日、1通の招待状が届いた。超ローカル線 「わたけい」 を、お座敷列車が走るという。では、行ってみやしょう!(阿藤風)

乙幡 啓子

11時・大間々駅集合

招待状といっても、ある日突然謎の書簡が舞い込んだわけではない。桐生在住の知人が事務局長を務める 「2015年の公共交通をつくる会」 が、わたらせ渓谷鐵道のお座敷列車 「サロン・ド・わたらせ」 を借り切って市民列車を運行するというので、参加表明をしておいたのだ。

そして、説明書とチケット、バッジが届いた。


手作り感の伝わる案内だ。

費用はお弁当代の1000円のみ。それに1日フリーパスがつく。
今までわたらせ渓谷鐵道に乗ったことのない人に乗ってもらう、というコンセプトのもと、お座敷列車を走らせ、終点ではコース別ハイクも用意されている。

最近 「私、鉄道けっこう好きだなあ」 と自覚してきた自分としては、知らない路線に乗るだけでもたいへんそそられるのに、その上 「お座敷」「ハイク」「弁当」。

日が近づくにつれ、乗る夢を何晩も見てしまった。そのせいで、もう行ったのかまだ行ってないのかもうわからなくなってきていたが、やっとその日がやってきた。集合場所となる大間々(おおまま)駅へ向かう。


町外れにぽつんとあります。
1〜2時間に1本くらい。

桐生の女子高時代、こちらの沿線からも通って来る子がけっこういた。朝は30分に1本の電車に乗り、桐生駅までたどり着いても、そこからまた山奥の女子高まで自転車で30分ほどかかる。本当にご苦労様である。

帰りは1本逃せば大変なことになる。


こわい。地元のお店の広告らしいが・・・夢に出そうだ。たまにこういう 「ラッピング車両」(?)が連結されている。
木の表示板。木ですよ木。

これが普段の 「わたけい」 の列車。いかにもなたたずまいの、1色塗り。

乗降口は、バスそのもの。
うさぎの他、鹿など動物さんのレリーフが貼ってある。

余談だが、昔父が車で桐生へ通勤していたころ、1箇所「わたけい」の通る踏切を通らねばならなかった。カンカン鳴って遮断機下りても列車がまったく来る気配がなくイライラしていると、やがてヨタヨタと2両編成がやってくるのでやりきれないと嘆いていた。

しかもボディには足の速い「うさぎ」の絵。やりきれない。


ホームに普通列車が滑り込んできた。何かおかしいと思ったら、列車の下端がホームからすごく離れている。
乗降口はバス仕様なので、あまり問題はない。

首都圏とはいえ、群馬までくれば列車はもうこんな感じである。上写真のように列車内に乗るのに膝を高くあげねばならないのは、わたけい だけの話ではない。

さて、私たちの乗るお座敷列車だが、当初この小豆色の列車を改造したようなものが来ると思っていた。が、駅構内を見回すと、風景からちょっと浮いている車両を発見。


!あれか!あんな立派そうな列車がここにあったとは。
おお・・・パノラマだよ。

なんだか裏切られた気分だ。いや、いい意味で。でも、ほんの少しだけ、銀河鉄道でいえば999くらいのお座敷列車があれば乗ってみたかった気もする。今回乗るのは555とか666の雰囲気だ(わからない人にはすみません)。

ディーゼル車に牽引されてきた3両の客車の中では、すでに「作る会」メンバーの方が待機。おお、人生で初めてのお座敷列車。昔、友人が市外の高校に通学していて、満員電車の中時間調整できゅうくつなまま停車していると、たまに隣の線路に朝から宴もたけなわのお座敷列車が滑り込んでくることがあったそうで、その光景に高校生で満員の車内からいっせいに怒号が飛び交ったそうだ。

そんな伝聞の中でしかイメージのわかなかったお座敷列車に、今。
私、静かに高揚しております。では、足尾に向けて出発です。


畳や障子の様子に心が踊る。
フランス語。

 

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