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ちしきの金曜日
 
インパクトありきな薬局のポスター

こういう情報量重視のも大事だけども。

オトナになっても病院はあまり好きにはなれないのだけど、子供の頃は薬局にも妙な恐怖感があった。昔の薬局というと、今のようなオープンな雰囲気ではなく、大きなガラス扉から覗く古びたクスリ棚や白衣の男たち‥その光景はどこか化学準備室を思わせる怪しさを感じた。

そして何より扉に貼られた「生理不順に!」「ご相談ください!」など書かれた手書き風ポスター。効用の説明よりもインパクト重視。今もあんなポスターは残っているのか?街の薬局を巡ってみた。

大坪ケムタ



日本にドラッグが蔓延している

とりあえず自転車でふーらふーらと回ってみようと思い、まずgoogleマップで薬局の場所を調べたのだけど、まぁ薬局の多いこと多いこと。23区内ならひと駅あたり5軒ずつくらいあるのではないだろうか、半径100mくらいで。

実際に厚生労働省のデータによると、国内の調剤薬局の数は1990年が35981店、95年が39433店、2000年46783店、2005年51233店、2007年51957店というから実際増加の一途ではあるよう。それにしても目立つのが‥


ドラッグ!ドラッグ!
どこもかしこもドラッグが!

ほとんどがこうした「ドラッグストア」なお店。店頭には特売のお菓子やジュース、トイレットペーパーなんかが山と積まれたアメリカのかほり漂う店構え。先に書いたようなポスターなんかは見あたらない。

違う!違うんだ!俺たちが見たいのはこんなだ!


この文字横の赤丸って薬局ならでは。
当サイトではおなじみなこれ。

「足のつる人」に関しては法師丸さん林さんも言及してるので今さら何も言いません。今回の薬局調査で一番見たかったのは左の赤丸強調タイプなのだけど、これが予想以上に見なかった。書道の添削のようなこの様式は廃れつつあるのだろうか。赤丸つけただけでヒッチコックの映画と同レベルの緊迫感が伝わってくるのに。

そして薬局の定番の手書き(風)ポスターといえばこれでしょう。


 

「痔」ではなくて「ぢ」。ちなみに「痔」の本当のひらがな表記は「じ」で良いそうで、「ぢ」はヒサヤ大黒堂のオリジナルなのだとか。自然と商品名を当たり前に使ってる「カットバン」「マジックインキ」みたいなもんか。病名というのがすごいけれど。

薬局のインパクトポスターの代名詞である「ぢ」、さらなる進化系もちらほら発見。


肝臓もぢも患ったお爺ちゃんお婆ちゃん‥情報多すぎ。

『地球へ‥』みたいになってて切ない。

「ぢ‥」「神経痛‥」。2点リーダーをつけるだけで、どこかドラマティックになるなぁ。「お尻が痛いんだけど‥私のことなんか構ってくれないんでしょ?」とボヤかれてるような、そんなもどかしさがある。「腰痛‥」「痛風‥」「大人になってからの水ぼうそう‥」。うん、なんか感情がこもってくる。

 

薬局コピーの王道、それは痛みと効果

むかし薬局が怖かった、というのは痛みや辛さに関する言葉をストレートに投げかけてくるから、ではなかったか。死や苦痛に対する恐怖というか。10代も後半になると自分に関係ある文句なら反応するし、関係ないものだと流す、と情報の取捨選択を自動的にすることで怖さも薄れていくのだけど。30代になるとまた病気にリアリティが出てくるんだけどね。


旗で直球アピール。どういうメッセージだ。

3連コンボ。格闘ゲームでもないのに。

万が一交通事故に遭い車に跳ね飛ばされて、手元にあるのがこの「痛い!」の旗だけ。そんな状況で必死に振ったら笑われるだろうか?それとも真剣に取られるだろうか。そんな笑えるのに笑えない目には遭いたくないなぁ。しかもこの3連看板の前ならなおさら。

切実な痛さ・辛さを抱えてる人を振り向かせるという意味では一番強烈だったのがこちら。


タナトス的キーワードを入れることで潜在意識にアピール。

病院や薬局にとって禁じ手でもある「死」という単語。負のキャッチーさではあるが、たしかにどんな「とっておきの薬」かは気になる。ここの薬局に魔法使いがいてベホマかけられても驚かないな、このコピーなら。

これら「痛い!」系が辛さアピール型とするならば、効能アピール型が薬局ポスターのもうひとつの定番。ひとことで言えば「こんなに効くよ!」という意。そのタイプでこれ以上ないストレートさだなぁ、と思えたのがこちら。


「スッキリ」でも「快便」でもなく破裂音。

もう「これは絶対気持ちよさそう!」と思わせる名コピー。「初体験」「発射」「爽快感」と繋がるイメージもキュンと来る。ドカーン、とか破裂音はもっと世の中に増えていい気がする。

チェーン系のドラッグストアが増えて便利になるのはいいけれど、個性的なポスターや看板が減るのはどこか残念。わかりやすい説明書きもいいけど、独自ポスターには熱意がある。チェーン店でも手書きPOPとか競わせればいいのにな、ヴィレッジバンガードみたいに。


両国じゃなくて高田馬場にありました。

薬局の店名も変わりつつある

最初に薬局は年々増えてる、と書きましたが、チェーン系以外だと店の名前は「アーバン」「グリーン」みたいなカタカナ系か、上みたいなカワイイ系の二択な気がします。このセンスも手書きポスターにも通じる気がするようなしないような。そんなまとめの時は大体「する」と思ってないんだけど。


 
 
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