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コネタ242
 
地獄めぐり大阪編
 

ウソをついただけで舌を抜いてしまう、という滅茶苦茶なお方がいらっしゃる。地獄の閻魔(えんま)様である。

舌を抜かれると、話すことも食べることも不自由になる。もちろん障害者手帳の交付対象である。ウソをついただけで、このような障害を一生背負って生き続けなければならない不条理さ。

国連や人権団体なんかに知られたら大変なことになりそうだが、そんな閻魔様を展示しているお寺が大阪にあると新聞に紹介されていた。

滅茶苦茶なモノが大好きなぼくとしては、これは是非とも足を運んでおきたいところだ。

そこで今回は、大阪は平野区にある全興寺・地獄堂を訪れてみることにした。

(text by ステッグマイヤー名倉

境内に入るとすぐ地獄堂

新聞記事を片手に地下鉄平野駅から歩くこと5分少々。生活感あふれる商店街のド真ん中に全興寺は鎮座していた。 おお、げにおそろしき閻魔様はここに展示されているのか!

…と戦々恐々の思いで境内に進む(すみません、ウソです。実際は「閻魔様+展示」という取り合わせのマヌケさにクラクラしてました)。するとそこはもう、「地獄堂」への入口だった。

入口には、地獄度判定テストが設置されていた(下写真)。それぞれの項目について、自分に当てはまるほうを選ぶ二択形式。で、試しにやってみた結果、


地獄度判定テスト

<極楽への道>

<地獄への道>
感謝して真剣に努力する   絶えず不満や愚痴が多い
義務も責任も進んで果たす   やる気がなく無責任
時間を守り金を生かして使う   時間も金も無駄使いする
親切で人のためによく尽す   陰口悪口が好きで和を乱す
心身の健康に心掛けている   暴飲暴食 自分を粗末にする
何事も善意に解釈する   すぐに腹を立て人に迷惑をかける
信念を持ち辛抱強い   迷いも取り越し苦労も多い
常に反省し素直に改める   利己的気ままで自分かって
恥を知り恩を大切にする   欲が深く自惚れが強い
夢と希望に笑顔で生きる   依頼心が強く苦労に負ける

地獄行「決定」。そんなー。

地獄行き決定

正直に答えたら、こういう結果になってしまった。地獄行き「決定」。恐ろしい地獄の責め苦が待っているとのこと。

でもなァ。こういう設問にすべて「A」と答える人こそ本当の極悪人だと思うのは、ぼくだけだろうか。

自分のことを「親切で人のために尽くす」なんて自己評価してる人が一番恐い。こういう人たちが戦争はじめたりするんだ、きっと。


閻魔様。「タコ獲ったどーっ!」

赤鬼様、鬼ババア様、そして閻魔様

…と結果を逆恨みしつつ、地獄堂の内部に足を進める。

狭く薄暗い小屋の中、正面に閻魔様が陳列されていた。そのかたわらを固める赤鬼様と鬼ババア様。

ところで閻魔様の面持ち。なんとなく、よゐこの浜口とかぶってるような気がするんですが、これはぼくの思い過ごしでしょうか。

 「なに? ワシが浜口に似とるだとっ!?」
 「いえ、ただそんな気もしただけで……」
 「ウソツキは舌抜きの刑じゃあ!!」
 「ウソとちゃいますやん。う、うがあーー」

赤鬼様。デジカメの赤目防止機能を忘れたかと一瞬思ったが、考えたらそんなワケない。
これは鬼ババア様でしょうか。

ドラをたたくと地獄があらわれます。

あわられた地獄ビデオ。さながらスプラッター。

とうとう地獄あらわる!

賽銭箱の下にはドラが設置されていた。これを叩くと地獄が現れるとのこと。

試しにドラを叩いてみる。いったい何が始まるのか!? 

…と少々緊張しながら身構えていたら、傍らのモニター画面からビデオが流れ始めたのでした。なあんだ、地獄のビデオ放映かよ。

ただ、その内容のほうは、なかなかハードなものだった。人々が火の海に放り込まれたり、串刺しにされたりと、おっかないことこの上なし。

さらに、おどろおどろしいナレーションが。

 「人の話を聞かない者は火あぶりに!」
 「親切にしない者は竜の口に!」
 「人をだます者は釜ゆでに!」

話を聞かなかっただけで火あぶりにされちゃあ、たまったものではない。閻魔様はやっぱり滅茶苦茶だ。

こういう物語の存在に、人間の本性を垣間見て、ふうんと思う。


なくても分かる説明図。イラストが妙にいい味。

地獄の釜の音を聞く

妙にダークな気分のまま地獄堂を出る。

外にはこんなアトラクションが設置されていた。石の穴に頭を入れると、「地獄の釜」の音が聞こえるらしい。

さっそく頭を突っ込んでみた(心底マヌケな姿勢である)。耳を澄ますと確かに、「ビュオーン、ビュオーン」という間延びした音が聞こえてくる。

中はどうなってるんだろうと思ってフラッシュ撮影してみたら、下の写真のようなことになってました。うわ、汚ねえ!!

穴に頭を突っ込んでみる。
音源。ある意味地獄。

「水まきするから、ちょっとどいとってねー」。地獄の水まき。

突然の水まきにて終了

石の穴をためつすがめつしていたら、突然、周りに水が飛んできたので驚いた。

なにかと思えば、お寺の奥さん(?)がホースで水をまきに来ていたんである。

 「お兄さんごめんねー」
 「水まきするから、ちょっとどいとってねー」

今回の地獄めぐりはこうして、奥さんの水まきによって強制終了したのでありました。


駄菓子屋さん博物館

境内には駄菓子屋さん博物館も

こうして地獄を追い出されたわけですが。

まだ時間があるので境内をぶらぶら歩いてみたら、地獄堂のすぐ横に「駄菓子屋さん博物館」という小屋を見つけた。

中に入ってみたらナンのことはない。昔の駄菓子やおもちゃが並ぶ普通の展示コーナーだった。地獄と駄菓子が同居するこの感覚はどこで培われたんだろう。

ちなみに、展示されていたおもちゃは、全体的に子どもを莫迦にしたような代物たちでした。

グリコのおまけ「土もの」。なんですかコレ?
「つけひげ」はちょっと欲しい。

こんなラッコはいやですぞ。

というわけで全興寺の地獄堂、いかがだったでしょうか。

地獄堂は妙に本気で怖がらせようとしているものの、境内では子どもたちがトレカで遊んでいたり、奥さんが水まきにやって来たりで、その実情は何とものどかなものでありました。

なお、この全興寺の周囲一帯は「平野街ぐるみ博物館」と呼ばれており、町内をあげてオモシロ展示に取り組んでいるようです(駄菓子屋さん博物館もその一つ。ほかには自転車屋さん博物館、へっついさん博物館などがある)。

だからどうってこともないんですが、地獄堂をお参りしたときは、ついでに見物してみるのも一興かもしれません。

すぐ横の商店街では、こんな素敵なラッコの親子がお出迎えしてくれます。

 
 

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