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コネタ


コネタ049
 
 超巨大! 氷の自販機
これは普通の自販機

「超巨大な自販機があるんですけど、
見に行きませんか?」

先日、知り合いからこんなお誘いを受けた。

「巨大な自販機」

と聞いて、あなたならどれくらいの大きさのものをイメージするだろうか?

高さが2メートル?
あるいは横長に3メートル?

だが、そこに待ち受けていたのは我々の常識を覆す、とてつもない大きさの自動販売機であった…。

T・斎藤




それは氷の自販機だという。


…氷の自販機?




それはビル全体が自販機なのだという。


…ビル全体が自販機??




話しを聞いただけでは、理解できなかった。


場所は長崎県は川棚町のあたり。ずばりド田舎である。




やがて、私の目に飛び込んで来たものは…!


氷の自販機。   (…自販機!?)

そこには、 「氷」とだけ書かれた建物が
そびえ立っていた。

この建物全体が、
「自動販売機」として機能するというのだろうか?

近づいて確かめてみた。



待ち受ける近所の子供たち

近づくとそこには近所の子供たちが待ち受けていた。

夏休みで暇な彼女たちの目には、私が恰好の遊び相手に見えたようだ。

「何しに来たとぉ?」

いきなり、返事に詰まるような質問を浴びせ掛けられる私。

「写真撮ってぇー。」

と、串刺しにした魚を自慢される。

しかし、それを自慢されても…。

再び返事に詰まる私。

たしかに自販機

子供たちを振り払い、近づいて見ると、たしかに氷自動販売機と書いてあった。

我々がいつもコーヒーを買ってるような自販機とは明らかに異なる「配電盤」のようなパネル。

自販機であるということを意識させない斬新なデザインとも言える。

よく見ると「プリベイドカード挿入口」なるものまである。ますます謎が深まる氷の自販機。

しかし…

これ、買えるの?買っていいの?


で、買ってみる

思わず躊躇しそうになったが、
勇気を振り絞ってコインを入れてみた。

1回200円。

何が何だか分からないまま
「細氷」を選択する。

カチッ。

自販機始動!

ブブブブ…
ゴゴゴゴ…

「なんだなんだッ!?」

突如、不気味な重低音が
建物全体から 響き始めた。

一瞬、なにやら「押してはいけないもの」を押してしまったかのような、「パンドラの箱」を間違って開いてしまったかのような錯覚にとらわれる。


ガラガラガラガラ…

と、上から氷が降って来た。

 

← で、出てきた氷。

200円でこんなにたっぷり!

氷自販機の正体

さて、この超巨大な氷自販機、
一体何モノなのか?

実はコレ、魚を冷やす為の氷。

漁に出る前にこいつで船にたくさん氷を積んでいき、獲った魚を冷やすのに使うのだ。

ということで、漁港でたまに、こういう貯氷施設を目撃する。

こいつの周りは若干涼しい為、仕事を終えた漁師さんがダベったり、近所の子供たちなんかが、こうして遊んでいたりする。

私は漁に行くわけではないし、かといって車に積んで帰ってもしょうがないので、出した氷は子供らと一緒に食べた。

味は、まぁ「氷」である。

いや、その前にコレ食べて平気なのか?

なんて疑問を抱いた時にはすでに子供たちがカゴに食らいついていた。

量が量だけに、もちろん全部は食えない。
しかしこれだけ量があると残すことに罪悪感は感じない。草原に住む草食動物たちもたぶん同じ考えだろう。

素敵な表情で氷をかじる子供たち


それにしても今年の夏は暑い。

あまりにも暑い時、
ふと、この氷の自動販売機のことを思い出す。

そしてもう一度訪れて、私の頭の上に氷の雨を降らせたい、という思いに駆られるのであった。
(本来の使い方と違うけど。)


 

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