僕の顔は濃い。 日本人離れしているようで「インドネシアにいそう」などと言われることもある。そのおかげでそこそこインパクトがある顔なのではと思う。苗字も「地主」と少し変わっている気がする。やっぱりそこそこインパクトがある気がする。
しかしながら存在感は薄いようなのだ。 ある夜、ボーっとしていたら電話がかかって来たことがある。「あれ、お前は来ないの?」と受話器の向こうで知人が言っている。何を? と僕は思う。何一つとして、僕がどこかに行くべきだったのか選択肢が浮かんでこないのだ。
受話器の向こうは盛り上がっているらしかった。 知人に「今日なにがあったけ?」と聞くと「Aさんの結婚式の2次会じゃん」と言い「呼ばれてないの?」と当たり前のように続けた。受話器の向こうはうるさいくらいで、知人の声が上手く聞き取れない。「来ないの?」と知人は大きな声で言っている。
もちろん僕は行かないのだ。 なぜなら呼ばれていないのだ。そんなお知らせは来ていないのだ。しばらくしてAさんに会う機会があったので、そのことについて聞くと、彼女は当たり前のように「忘れてた」と言い放った。何でですか! とツッコミたかったが、離婚に向けて話し合い中ということで「忘れていたなら仕方がない」とサラッと流しておいた。
他にもあった。 1年ほど前、メールで「新年会に来ませんか?」みたいな誘いが以前の仕事関係の人から来たことがあった。どうやらただ飯が食べられるようだったので、「行きます」と答えた。しかしそれ以降、一通たりともそこからはメールが来なかった。
もちろん僕はその新年会に行かなかった。 なぜなら呼ばれていないからだ。そんなお知らせはその後来ていないのだ。しばらくして、そのメールをくれた人に会う機会があったので、そのことについて聞くと当たり前のように「忘れてた」と言い放った。なんとなくインパクトのある濃い顔と名前だと自分では思っていたが、存在感は無いらしい。「忘れてた」のオンパレードである。
しかし、「ねぎとろ丼」は素晴らしい存在感を誇っていた。 ねぎとろ丼なのにおにぎりなのである。パッケージには「寿司おにぎり」と書かれている。寿司なのか、おにぎりなのか悩むところだ。しかし、そんな悩みを凌駕する程に美味しい。もっちりとしたご飯がねぎとろと絡まりとにかく美味なのだ。いつまでも変わらぬ味でいて欲しいと願ってやまない、おにぎりだった。 ( 2011/01/21 21:00:00 )
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