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ファミマ焼おむすびじゃこと青じそ

ファミマ焼おむすびじゃこと青じそ
焼おむすびじゃこと青じそ ファミリーマート 118円(節分ですが豆をまいたりする予定はありません)

「え!」と言ってしまうことがある。
その「え!」は驚きの「え!」だ。予想していなかった展開に思わず自然と「え!」を発してしまうのだ。発した「え!」に続くのは、そういう考えもあるのかという納得だったり、ちょっと待ってと聞き返すものだったりする。前者には「アハ体験」にも似た気持ちよさがあるが、後者は腑に落ちないモヤモヤだけが残る。

いつだったか知人と話していたら「神保町」の名前が出た。
「神保町」といえば世界最大規模の古書店街だ。僕もたまにふら〜と出かけては、たくさん立ち並ぶ本屋を冷やかしている。本の街なだけにとにかくどこを見ても、本、本、本といった感じで、「神保町=本」と言っても問題ないと僕は思っている。

ただ知人は神保町と聞くや、すぐさま「美味しい店が多い」と言った。
神保町で真っ先に出てきたのが「美味しい店が多い」で驚いた。僕は「え!」と思わず口に出してしまった。確かに美味しい店もあるだろう。でも、神保町でまず出てくるのは「本」だと僕は思い込んでいた。それなのに何の迷いもなく「美味しい店が多い」である。そういう考えもあるのか、とその後納得してしまった。

またいつだったか僕は知人の女性と話していた。
「初恋の人を覚えているか?」みたいなどうでもよい会話だった。彼女は覚えているらしく「初恋は幼稚園の時」と言った。同じクラスの子で名前も覚えている、と言うので僕は驚いた。しかし、そこではまだ「え!」は出ない。

僕は幼稚園で一緒だった人の名前を一人も覚えていない。
その旨、彼女に伝えると「君は幼稚園を卒園すると引っ越して、小学校は違う地域にあるやつに行ったからじゃない」と言う。確かに幼稚園だけでなく小学校まで一緒だったら覚えているかもしれないと思う。「幼稚園だけが一緒だった子は私も覚えてない、小学校も一緒だった子は覚えているよ」と彼女は続けた。

「で、初恋の人の名前は?」と僕は彼女に聞いた。
彼女は「山田太郎」みたいなどこにでもあるような普通の名前を言った。さらに「幼稚園を卒園すると山田君は違う小学校に行ったけどね」と彼女はこれまた普通に言ってのけた。次の瞬間には彼女は何事も無かったかのように違う話を始めていた。

僕は「え!」と言ってしまった。
「小学校まで一緒だったら覚えている」というさっき共有したことはどこに行ってしまったのだと心配になる。長い長い空耳だったのだろうか。あるいは、その共有したことも引っ越してしまい忘れてしまったのかもしれない。いや、でも彼女は引っ越しても覚えているはずだ。「山田太郎」のことを覚えていた。じゃ、何で。なんだか腑に落ちないまま、一人眠った。

そして、「焼おむすび じゃこと青じそ」を食べた時もその美味しさに「え!」と言った。
醤油の香ばしい匂いと共に、青じその香りも漂う。じゃこと青じそ、そして胡麻が口の中で競演している。互いを尊重し合っているようで絶妙な味わいだ。鼻へと抜ける青じその香りがたまらない。いつまでも変わらぬ味でいて欲しいと願ってやまない、おにぎりだった。 ( 2011/02/03 21:00:00 )




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