デイリーポータルZロゴ
このサイトについて


クラブ活動
 

ファミマ鶏そぼろの生姜ごはん

ファミマ鶏そぼろの生姜ごはん
鶏そぼろの生姜ごはん ファミリーマート 118円(今回で40回目の更新です!)

小人を見た、と思ったことがある。
あれは僕がまだ小学生で当時は鹿児島に住んでいた。小人を見たのは家族で山の中にある大きな公園に遊びに行った時だった。セミが鳴くにはまだ早い時期だったけれど、とても暑かったことを覚えている。高い木々が生い茂る道を歩き、その道々にはアスレチックがあったと思う。

その公園のどこかに木の壁があった。
それは遊具ではなくそっちに行ってはダメ、という本当の意味での壁だった。細い丸太が何本も隙間無く地面に埋めら壁となっていた。隙間が無いので壁の向こうは見えなかったし、当時の僕の身長では壁の上からも向こうを見ることはできなかった。

その壁伝いに道があり僕らはそこを歩いた。
しばらく歩くとその壁にわずかな隙間を発見した。今の僕には無理だけれど、当時の僕ならすり抜けることができる隙間だった。家族はその隙間を無視して歩いて行ってしまった。しかし、僕はその隙間から壁の向こうを見た。

小人がいた。
壁から20メートルほど離れたところで、赤い服を着た40歳くらいの小さな男の人たち(8人くらい)が手をつなぎ輪を作りゆっくりとグルグル回っていたのだ。僕は小人だ、と息を呑んだ。彼らの小さいという点と40歳くらいの男性という点がディズニー映画で見た小人と合致していた。全員同じ赤い服という点も小人感を強めいていたように思える。僕もその輪に加わりたくて、壁の隙間を通り抜けようとした時、母が「ケイスケ行くよ」と声をかけたので、僕は「小人が…」と不思議がりながらも母のもとへと走った。

今になって考えるとアレは何だったのだと思う。
本当に小人だったのだろうか。僕が彼らを見ていた壁の隙間から、彼らまでは20メートルくらいはあった。つまり僕から見れば彼らが「小さい」のは当たり前なのだ。単純に距離が離れているからだ。では小人ではなかったのか…とも思うのだけれど、40代の男性がおそろいの服を着て、手をつなぎグルグル回るだろうかという疑問が浮かぶ。後にも先にも複数の40代男性が手をつなぎグルグル回るところを見たことが無い。だからアレは小人だったんだと思うけれど、部長、部長代理、次長、次長代理、課長、課長代理、係長、係長代理の8人が会社の研修か何かで手をつなぎグルグル回っていたとも考えられる。

小人の存在を信じるより、そう考える方が自然だ。
同じ服を着ていたのも研修で支給された服と考えられる。そっちの方が自然だ。それに小人だったとしても全員が同じ服を着ているとは考えにくい。小人にだって服へのこだわりがあるはずだ。また小人だとしても40歳くらいの男性なわけだから、手をつなぎグルグル回るのは不自然だ。小人が同じ服を着て手をつなぎグルグル回る理由が分からない。きっとあれは会社か何かの研修の一部なのだ。僕はそれを見ただけなのだ。

しかし、小人の方が夢がある。
部長、部長代理、次長、次長代理、課長、課長代理、係長、係長代理による研修の一環では夢が無い。もっとも先に書いたように小人だとしても手をつないだりする意味が無い。そこで、「小人の研修」ということにしようと思う。

昨日の夜、寝ずにそんなことを考えていた。
朝方にはそもそも見間違いでは、という考えや、そもそも全員同じ服を着て手をつなぎグルグル回る研修ってなんだ? とも思ったけれど「小人の研修」ということでこの問題に決着をつけた。少しだけファンタジーがある。

そんな徹夜で疲れた時に「鶏そぼろの生姜ごはん」を食べた。
袋を開けると生姜の匂いが鼻をくすぐり目が覚める。食べてみるとそぼろの絶妙な味わいと、しょうがの鼻へと抜ける匂いがクセになりやはり目が覚める。もっちりとしたご飯も申し分なく美味しい。あの公園で汗をかきながら小人の研修を見た時を思い出す初夏の味わいだった。 ( 2011/02/16 21:00:00 )




△いちらんへ

 

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ

個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.