特集 2011年7月11日

おんなじ日の日本語&英語新聞読みくらべ

訳すのをあきらめてる番組もある
訳すのをあきらめてる番組もある
個人的には普段から縁のない英字新聞。ときどき電車内などで読んでいる人を見かけると、「かっこいいなー」と、なんとなく思うくらいだ。 その日もたまたまそんな光景を見かけた。ただ、いつもと違ったのは、同じ日の日本語と英語の新聞にはどんな違いがあるのかだろうかと、ふと思ったことだ。

身近にあるけど実はちょっとした未知の世界である英字新聞。そういうわけで、調べてみた。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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手に入れろ、英語の新聞

どんな違いがあるのかふと興味をもった、日本語と英語の新聞の違い。その差を確かめるには、同じ日のものがよいだろう。

ただ、日本語の新聞同士でも新聞社が違えば紙面が違ってくるのは当たり前のこと。そこで今回は、同じ会社が出している日本語と英語の新聞を調べることにした。具体的には、読売新聞とデイリーヨミウリとを比べてみることにしよう。

まず必要なのは両者を入手すること。確実なのは、販売店に行って買うことだろう。あるかどうかを確かめるため、電話で聞いてみよう。
真面目な質問なので変な緊張はない
真面目な質問なので変な緊張はない
そういうわけで何軒か新聞販売店に電話をしてみたのだが、共通した答えは「店頭では売ってない」。これは少々意外だった。

どの店でも「定期購読者に配達はしているけれども、店頭で売る余剰分はない」とのこと。きっちり定期購読者分の数しか入れていないのだそうだ。

どうしたものかと思っていたら、三軒目のお店の人が「駅の売店に行けば売ってると思いますよ」と教えてくれた。確かにキオスクなんかで目にしたことがある。
今日の分はまだあるのだろうか
今日の分はまだあるのだろうか
その方、「実は私もキオスクに買いに行ったことあるんですよ」とも話してくれた。それも意外だが、配達事故があって定期購読者に配れない分が出たときに訪れたという理由を聞いて納得した。先に書いた通り、英字新聞の入荷数は購読者数きっちりなので、緊急事態が発生した場合はそういう手立てをとるしかなくなってくるのだ。

続けて曰く、「ただ、駅の店の分はやっぱり買う人が決まってるみたいで、いつでも並んでるというわけでもないんですよ」。それは困る。近くの駅のキオスクへと急いでみた。
何種類かあるぞ
何種類かあるぞ
どうかと思って店頭を見ると、まだいくつかの英字新聞が並んでいる。よく見ると目的としていたデイリーヨミウリを発見。これで実家からもらってきた読売新聞と比べることができる。
一面はそれぞれこんな感じ
一面はそれぞれこんな感じ
同じ日の新聞同士で比べてみる
同じ日の新聞同士で比べてみる
そうか、開く向きが違うわけだ
そうか、開く向きが違うわけだ
まずすぐ気づいたことは、開く向きが違うこと。学校の教科書でも国語と算数では開く向きが違ったが、縦書きと横書きとの違いでこういうことになる。

ただ、新聞というのは必ずしも本のように1ページ(面)から読んでいくわけではないので、実際に読む段階ではこれはあまり気にならないところだろう。では一面同士を比べて見てみよう。
関連性はあるけど別内容
関連性はあるけど別内容
トップニュース、日本語版が原発の影響で電気料金が上がっていくだろうという記事。英語版は福島の災害で高齢者に多くの犠牲が出ているという記事だ。

関連はしているが、別のトピックという感じだろうか。トップニュースからして実は違う両者。同じ会社が出していても日本語/英語の新聞はどうやら別編集だということらしい。

この点、もし同じ記事が載っているなら一緒に読んで互いの表現を確認することで英語の学習にもなるかと思っていたが、そういう使い方はできないようだ。
電気とコーヒー
電気とコーヒー
同じ一面、右下の角という同じ場所にはそれぞれ広告があった。日本語は電気関係の雑誌、英語はドリップコーヒーのものだ。

内容も違うのだが、はっきり違うのは広告の量。日本語は下部5分の1ほどが広告であるのに対し、英語は右下の一角だけ。これは一面だけでなく、新聞全体を通して言える。
日本語版だと見開き全てが広告という面もある
日本語版だと見開き全てが広告という面もある
カタカナでも発音が本格的な英語版の広告
カタカナでも発音が本格的な英語版の広告
日本語版はかなりの面の何分の一か、あるいは全面が広告であるのに対し、英語版はスポット広告がポツリポツリとあるだけ。これは大きな差があるポイントだ。

今回意図的に見て、日本語版の広告の多さを改めて感じた。一体どれくらいが広告なのか、確認してみよう。
各面の広告量メモ
各面の広告量メモ
新聞全体の紙面量の差は2倍
新聞全体の紙面量の差は2倍
調べてみると、日本語版の広告は合計で約17面分。全体で36面だから、ほぼ半分は広告ということになる。

ちなみに英語版は全18面。厚さとしては日本語の半分だが、広告はとても少ないので、記事部分の面積としては日本語とあまり変わらないことになる。

一部売りの値段はともに130円。とすると、記事の面積あたりの価格はほぼ同じとも解釈できる。手にとったときの厚みの違いからすると、意外な発見だった。
いったん広告です

必ず同じ内容のはずのあの面に注目

先ほど一面の様子を見てわかったように、同じ日の同じ会社の新聞でも記事内容は別。しかし、同じ日の新聞なら必ず内容が同じである面がある。それはテレビ欄だ。
ここは必ず同じはず
ここは必ず同じはず
情報内容の性質上、テレビ欄は言語の種類こそ違えど、載っている内容は同じでなくてはならない。ここなら他の面と違った形での読みくらべができることになる。

ちなみに英語版のテレビ欄は最終面ではなく、中程の12面。どんな違いがあるか、またどんな共通点があるか確かめてみよう。
調べてみたら26年以上続いてた
調べてみたら26年以上続いてた
まったくもってそのまんま
まったくもってそのまんま
英語版は一面にさまざまなメディアの情報を凝縮して載せているために、日本語版と違って番組内容の詳しい説明はない。それでも、題名で違いや共通点が読み取れる。

日曜昼のバラエティ「アッコにおまかせ!」は、そのままに「Akko ni Omakase」。ローマ字表記だとなんだか妙だ。

他にも、これと同様にそのまんま系の番組というのはいくつかあった。
「笑っていいとも」もやっぱり…
「笑っていいとも」もやっぱり…
そのままローマ字表記
そのままローマ字表記
「笑っていいとも」も「Waratte Iitomo」。こちらもかなりの長寿番組、このあたりになるともうその題名がアイデンティティになっているのかもしれない。これを読んだ外国人が、頭の中で「アッコニオマカセ」とか「ワラッテイイトモ」と思っていることを想像するとなんだか面白い。

同じようなジャンルの番組でも、違う表記になっている場合もある。
なんとも言えないこのタイトル
なんとも言えないこのタイトル
ローマ字表記ではない
ローマ字表記ではない
「モヤモヤさまぁ~ず」は題名だけだと日本語でも内容がちっともわからないが、どうなっているだろうか。「Moya-Moya Summers」とかだったりすると、やっぱりさっぱりわからない。

正解は、「Tokyo Town Stroll」。真面目に訳してるパターンだ。

調べてみたら、「stroll」は「散歩」とか「ぶらぶら歩く」といった意味とのこと。力の抜けた日本語の題名とは違い、番組の内容をしっかり説明しているわけだ。
さあ、英語ではどうなってるでしょう?
さあ、英語ではどうなってるでしょう?
なるほどと思わされる題名
なるほどと思わされる題名
内容を訳すスタイルの題名も多い。「のど自慢」は「Amateur Singing Contest」。日本人の感覚だと、のど自慢はもう定番過ぎて「のど自慢」としか思えないが、英語の題名は冷静。確かにそうだ、素人の歌のコンテストだ。

「鶴瓶の家族に乾杯」は「Tsurube's Trip without plan」。個人的にはこの番組をちゃんと見たことがなかったので、そういうものなのかと調べてみたところ、この番組は公式サイトでも「ぶっつけ本番の旅番組」という紹介のされ方だった。

ならばまさに「Tsurube's Trip without plan」だ。「家族に乾杯」は語感や雰囲気重視の命名なのだろう。

ちなみに、日本語版だとテレビ欄の裏の角にある四コマまんがは、英語版ではテレビ欄の下部にある。
テイストが異なる四コマまんが
テイストが異なる四コマまんが
マンガはあるわけだが、日本語版のマンガと雰囲気は違う。例えば最後のコマでの登場人物の女性のセリフは「もし私の父が大金持ちだったら、今でも母と結婚生活を続けてはないでしょう」というもの。

なんだかダーク。いつもこうなのかはわからないが、日本語版の「コボちゃん」とは異なる味わいが漂う。

ここまで、番組タイトルを比べると大体納得できると思ったのだが、期待はずれになってしまっているものもあった。
「みいつけた」「ニャンちゅうワールド」はどうかと言うと…
「みいつけた」「ニャンちゅうワールド」はどうかと言うと…
訳も説明も放棄
訳も説明も放棄
幼児向け番組「みいつけた!」はそのまま訳すと「Find!」という感じでいいだろうか。ただ、「ニャンちゅうワールド放送局」はどうしたものだろうか。

比べてみると、英語版では「Nursery Programs」とざっくりまとめられている。ここはなんとか別の表現を見てみたかったと思わされたところだ。

別の局では、なぜだか逆のパターンになっているのもあった。
テレビ朝日のこの時間帯は子供のお楽しみ
テレビ朝日のこの時間帯は子供のお楽しみ
なんだか丁寧
なんだか丁寧
日曜朝のテレビ朝日系列と言えば、昔から子供向け番組が居並ぶ時間帯。子供の頃、ここら辺の番組を見たくて日曜でも早起きしていた覚えがある。

ここはなぜだか妙に丁寧。日本語版では「デジモン」としかないところを、英語版では「Digimon Xros Wars,Aku no Death General to Nanatsu no Okoku」と長い。英語か日本語かよくわからず、読み方もたどたどしくなる。

調べてみたら、今やっているデジモンの正式名称は「デジモンクロスウォーズ 悪のデスジェネラルと七つの王国」というもの。副題までしっかり表記してあるのだ。

「プリキュア」は正しくは「スイートプリキュア」で、英語では「Suite Precure」。「スイート」が「sweet」ではなく「suite」なのが個人的には発見だった。公式ページでも確認したが、確かに組曲という意味での「suite」が正しいらしい。
「江」はどうなるか?
「江」はどうなるか?
ここまで見てきたテレビ欄の考察、最後にひとつクイズ形式で出してみる。大河ドラマ「江」はどうなるだろうか。
いったん広告です

英語版人生相談はあるのか

答えは「Go」
答えは「Go」
大河ドラマ「江」は「Samurai Drama:Go」。「説明+そのまま」というところか。

「Go」の意味がどんな風に受け止められるのかは気になるところだが、「Samurai」という言葉は、外国人にとって受けがいいんじゃないかと思う。
これは気になる、日本語版の広告
これは気になる、日本語版の広告
英語版は写真もそれっぽい
英語版は写真もそれっぽい
また違う部分の紙面を比較してみよう。写真はそれぞれの新聞から気になった広告を挙げたもの。「男の腹やせ」は妙に訴求力のある本の題名。なんだか切実だ。

それに対して英語版はいかにもそれっぽい雰囲気のゲストハウスでくつろぐみなさんの様子。腹のことはあんまり気にしていないだろうか。
英語だと「Life Advice」といったところか
英語だと「Life Advice」といったところか
英語版で読んでみたいと思っていたのは、日本語版でもおなじみの「人生案内」のコーナー。この日もドロドロした小見出しが踊っているではないか。

しかし、英語版で探してみたものの、相当するコーナーは見当たらない。悩みやそれに対する回答が日本とどんな風に違うか興味があったのだが、残念なところだ。
「SuDoku」って、「数独」か
「SuDoku」って、「数独」か
逆に、英語版にもあるんだと思ったのが「数独」。その名前からか、日本のパズルだと思っていたので意外だった。

外国でも「数独」の名前は浸透しているようだが、調べてみると「数独」は日本のパズル会社の登録商標。一般的には「ナンバープレース(ナンプレ)」と呼ばれることも多いようだ。

しかし、よくよく起源をたどると、現在のこのパズルはアメリカ人が考案したものであるらしい。話がややこしくなってきたが、日本発祥のパズルだと思っていたのは個人的な思い込みだったようだ。
つい気になるブリーフ
つい気になるブリーフ
長いブリーフ
長いブリーフ
わかっているのについ余計なことを考えてしまったのが「BRIEF」。それは「短い記事」という感じの意味合いだというのは知っているのだが、頭に一瞬浮かんでくるのは別の方のブリーフ。

ネットの辞書で調べてみたら、ブリーフの意味の一つに「短いぴったりしたパンツまたはパンティー」と書いてあった。詳しく言うとそういうことになるよね、という説明。

どうなんだろう。ネイティブの人たちは「BRIEF」とあるのを見て、ぴったりしたパンツのことがチラッとよぎったりはしないのだろうか。新聞を読むのに集中できなくなったりすることはないだろうか。
僕らが勉強してきたやつの逆バージョン
僕らが勉強してきたやつの逆バージョン
英字だけど英語じゃない
英字だけど英語じゃない
日本で発売されている英字新聞ならではと思ったのが、外国人向けの日本語学習ページ。挿絵もあって、中学校の教科書で習ったようなものの反対版だ。

ただ、英字で書いてあるものをよく見ると、あくまでローマ字表記であって言語としては日本語。発音の学習をするためにこうなっているのだろう。

日本人としては「A,so」や「Ja,ittekimasu」といった文字列が妙に新鮮。考えて見れば当たり前だが、日本語というのはこうやって勉強されるものなのだ。

外国人向けに広告出したら反応ないだろうか
外国人向けに広告出したら反応ないだろうか
いくつかの視点で見てきた日本語・英語の新聞。それぞれ独特の雰囲気があって面白かった。

英語版を読んでいると、自然と難しい顔になってしまうようで、それを見ていた妻から「なんだか頭がよくなったみたいに見える」と言われた。

しかし、実際の頭の中では「ブリーフか…」。その見え方は明らかに間違いだ。
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