特集 2011年8月29日

実は夏の季語「甘酒」で暑気払い

中ほどに見慣れないメニューがある
中ほどに見慣れないメニューがある
スーパーの飲料コーナーの冷蔵ケースに、缶入りの甘酒があるのを見かけた。 甘酒と言えば、冬の飲み物というイメージが強い。寒い日に息で冷ましながら、ゆっくりと飲むのがおいしい。しかし、甘酒の缶を手に取ってみると、「甘酒は夏の飲み物だった」と書いてある。

一体どういうことだろうか。夏でも甘酒はおいしいのか、実際味わってみた。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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「飲む点滴」ってすごい自信の甘酒

スーパーの冷蔵ケースで見かけた甘酒。冬場に温めて売っているのは見たことがあるが、夏だと「この季節に甘酒?」と疑問も浮かぶ。
コーヒーに挟まれて置いてある甘酒
コーヒーに挟まれて置いてある甘酒
冬バージョンと色違い
冬バージョンと色違い
缶のデザイン自体は見覚えがある。森永が出しているもので、同じ柄で赤いタイプのものだ。こちらには「甘酒」の前に「冷やし」とあり、色が青い。

なんとなく気になって、パッケージをよく見てみた。
意外なことが書いてある
意外なことが書いてある
江戸時代は夏の飲み物として親しまれていたという甘酒。よく見ると、商品名の下に「甘酒は夏の季語」ともある。

そうだったのか。「冷やし甘酒」なるものは、メーカーが夏にも売ろうと独自に提案したものだと思っていたが、実は古くから夏の飲み物だったらしいのだ。
冷蔵庫でしっかり冷やして
冷蔵庫でしっかり冷やして
グラスも冷凍庫に入れておいた
グラスも冷凍庫に入れておいた
実際に飲んでみる。温かい甘酒と比べて、ゴクゴク飲めるのが新鮮。パッケージに「のどごしすっきり」とあるのが今ひとつ信じられなかったが、飲んでみるとわかる。結構すっきり飲めるのだ。
冷やしバージョンだけの材料がある
冷やしバージョンだけの材料がある
メーカーのサイトで原材料について調べてみた。赤い缶の甘酒と材料を比べてみると、青い冷やし甘酒の方だけには黒蜜が使われているのがわかる。

このあたり、冷やして飲む用に味を微調整しているのかもしれない。冷やし甘酒の販売は2000年から行われているそうなので、もう10年以上続いているわけだ。個人的には今回初めて飲んだわけだが、それなりに受け入れられているものなのだと思う。

冷やし甘酒、缶入り以外でも飲めるところはないだろうか。他にも探してみたい。
風情のある名前
風情のある名前
交差点名になってるとオフィシャル感あり
交差点名になってるとオフィシャル感あり
やってきたのは中央区の甘酒横丁。昔、この通りに甘酒屋さんがあったことがその名の由来になっているらしい。
豆腐がメインの「双葉」さん
豆腐がメインの「双葉」さん
あった、冷し甘酒
あった、冷し甘酒
その店は今はもうなくなってしまったのだが、その店の意志を継いで甘酒を今でも売っている店がある。「双葉」という豆腐のお店だ。

店頭には常温のものの他、氷水に浸けられた「冷し甘酒」があった。説明の紙には、やはり夏の季語であることが書いてある。
説明によりプレミア感も出てくる甘酒
説明によりプレミア感も出てくる甘酒
さらには豊富な栄養があることから「飲む点滴」という呼び方も。病院で本物の点滴をゴクゴク飲んだら騒ぎになるだろうが、これなら大丈夫。点滴経験のない私も気兼ねなく飲める。

その味わいは滋味深く、点滴だと言われる前より体によさそうな気がしてくる。こういう場合は素直に感化されていいんじゃないだろうか。

かなりの種類のお酒が揃う
かなりの種類のお酒が揃う
ここだけ喧騒から区切られている
ここだけ喧騒から区切られている
続いてやってきたのは、東京駅構内のショッピング・フードモール「グランスタ」にある「はせがわ酒店」。駅構内とは思えないほどたくさんの品が揃う店だ。

販売コーナーの他、その場でお酒を飲めるカウンターバーもある。個人的にお酒を飲めないので普段は縁のない大人ムード漂う一角なのだが、今回はちゃんとした目的がある。
ちゃんと甘酒もあるのがうれしい
ちゃんと甘酒もあるのがうれしい
品揃えに甘酒もあるのだ。この日あったのは二種類。福岡県と新潟県の酒蔵が造ったもの。しっかり冷えたのを出してくれる。

左はアワやキビといった雑穀も材料としたもの。それに対して右の材料は米麹だけ。それぞれ材料からイメージされる通りの風味と味わいがある。

そして驚いたのは、ともに砂糖の類は使っていないのに、かなりしっかりと甘いこと。森永や甘酒横丁のものは砂糖やグラニュー糖を使っているので納得の甘さだったが、そうでないのにこの甘さはすごい。ほんのり甘い、というレベルではないのだ。
飲む点滴に続く新フレーズ
飲む点滴に続く新フレーズ
そりゃ元気出ますわ
そりゃ元気出ますわ
雑穀甘酒のパッケージには、発酵食品ゆえに「東洋のヨーグルト」との表現も。飲んでいると、言われるがままにどんどん元気になってくる気がする。

夏の季語になるのもわかるおいしさの冷たい甘酒。ここまでのものもよく冷えていて十分おいしかったが、さらに冷たさも味わってみたい。
にぎわう商店街を歩くのは楽しい
にぎわう商店街を歩くのは楽しい
「だるまや」という字面がかわいい
「だるまや」という字面がかわいい
やってきたのは、北区・十条駅近くの商店街にある「だるまや」というお店。メインは餅菓子であるようだが、かき氷も人気のお店らしい。

前日の夕方、お店に電話をしたところ「今日の分はもう並んでる人と予約の分で氷が終わっちゃうのよ」と言われるほどの人気ぶり。予約という概念は全く考えてはいなかった。

「明日もやってますから、よかったら来て下さいね」とも言ってくれたお店の方。そういうわけで翌日、開店時刻に合わせてやってきたわけだ。
和三盆や1280円のも気になるが、狙いは真ん中のやつ
和三盆や1280円のも気になるが、狙いは真ん中のやつ
店内に張ってあるメニューには「氷甘酒」の文字が。初めて聞く組み合わせ。「氷」と「甘酒」とが一つの言葉としてつながっているのはやはり新鮮に感じる。もちろんこれを注文だ。
天然氷と聞くと気分も盛り上がる
天然氷と聞くと気分も盛り上がる
クリーム牛乳ってのも気になるなー
クリーム牛乳ってのも気になるなー
このお店、日光の天然氷を使っているのが特徴であるらしい。そう言えば同じ氷室のかき氷を日光に行ったときに食べたことがある。パクパク食べても不思議と頭が痛くならず、とてもおいしかった覚えがある。

「クリーム牛乳」「冷し牛乳」「カルピスジュース」といった他のメニューを眺めつつ待っていると、しばらくして注文のものがやってきた。
見た目は地味な大人のかき氷
見た目は地味な大人のかき氷
これが「氷甘酒」。言葉としても見た目としても、イチゴやメロンのような華やかさがないのがまたいい。子供の自分にはなかったチョイスだ。
鼻を寄せると香る甘酒
鼻を寄せると香る甘酒
終盤までしっかりと甘酒味
終盤までしっかりと甘酒味
食べてみる。かき氷に甘酒をかけた味だ。

味わいを言葉で表すと、素直にそう書くのが一番しっくりくる。簡潔に過ぎるとは思うが、その通りの味。そして、それでもう十分においしい。

冷し甘酒とは別次元の冷たさ。それでいて、甘酒の味が氷に負けていない。最後までちゃんと甘酒の味が楽しめた。ごちそうさまでした。

帰り際のこの様子にも驚く
帰り際のこの様子にも驚く
夏の季語、飲む点滴、東洋のヨーグルト、そしてかき氷にまでなっていた甘酒。続けて味わったことで、自分の中にはすっかり「甘酒は寧ろ夏の飲み物」というイメージができたようにも感じる。

最後のお店、食べ終わって外に出るとご覧の行列。その人気ぶりに驚きつつ、店頭で買って食べたお団子もおいしかったです。
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