特集 2011年9月7日

もなかのプラモを作った

おやつを食べつつ、完成したプラモ鑑賞…じゃなくておやつ自体がプラモだ。
おやつを食べつつ、完成したプラモ鑑賞…じゃなくておやつ自体がプラモだ。
昔のプラモデルは、例えばロボットなどでいえば複雑な関節構造や内部機器が再現されておらず、ボディの裏表をパカッと貼りあわせるだけの単純な構造だったという。そんな状態のプラモを「モナカキット」などと呼んだそうだ。

モナカキット。その言葉自体が面白い。
それならモナカそのもののプラモを作ってみましょう。
1970年群馬県生まれ。工作をしがちなため、各種素材や工具や作品で家が手狭になってきた。一生手狭なんだろう。出したものを片付けないからでもある。性格も雑だ。もう一生こうなんだろう。(動画インタビュー)

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モナカプラモへの険しい道

さすがに、普通の生活をしていていきなり「あ、もなかのプラモを作ろう」と思ったりはしない。きっかけはテレビである。

タモリ倶楽部で、昔のプラモの特集をやっていて、「あーこんなのあったなー」と、もだえたのが始まりである。
あーモナカだなー。
あーモナカだなー。
見よ、この単純な構造。頭と胴体と足が一体となって、その裏表を貼りあわせればほぼ完成である。まさに、もなか。

こういうプラモなら、自分でも作れるのではないだろうか。言っておくが「フィギュア」でなく「プラモ」だ。キットそのものを製作しようというわけである。

さっそくモデルさんを雇った。
近所のコンビニで買ってきた。そういえば、もなかを1個だけ買ったのは生まれて初めてである。
近所のコンビニで買ってきた。そういえば、もなかを1個だけ買ったのは生まれて初めてである。
内部構造を検証する。あっという間に把握する。
内部構造を検証する。あっという間に把握する。
エンジンもモーターも、油圧装置もなくて安心した。餡がそれらの役割を全てを担っていた。これなら、型を取れば楽勝な気がする。

これからこの皮と餡をシリコーンで型取りをするわけだが、皮の脆弱さが気になる。塗料のクリアカラー(not水性)で、表面を少々強化してみた。
金魚すくいにこれ持っていったら殴られるだろうか。
金魚すくいにこれ持っていったら殴られるだろうか。
餡にくっついてきた皮を取るのが地味に大変。
餡にくっついてきた皮を取るのが地味に大変。
さて次はいよいよ、プラモらしくするための過程である。

プラモは普通、ランナーと呼ばれる枠の中に部品がつながっている状態で売られている。そのランナーを手作りしてみたい。
プラ棒を買ってきた。参考までに右は、うちにあってまだ作る気の起こらない鉄人28号のプラモ。
プラ棒を買ってきた。参考までに右は、うちにあってまだ作る気の起こらない鉄人28号のプラモ。
この数字も再現しようとして失敗したのは後のお話。
この数字も再現しようとして失敗したのは後のお話。
熱でプラ棒を曲げる。簡単に曲がって良い気分。
熱でプラ棒を曲げる。簡単に曲がって良い気分。
多数の部品を一気に成型するためのランナーだが、もなかプラモは(余談だが「もなか」の表記に悩む。「最中」だと「さいちゅう」と読みたくなるし、ひらがなだと「も」が助詞みたいで読みにくい)部品が「皮A」「皮B」「餡」の3つしかないのだ。

それでも、プラモはあのランナーが肝心だと思うし、もなかがランナーにつながっている絵をぜひ見たいので、大変な道だが進んでいきたい。
クロスさせるプラ棒の断面を凹型にする。ログハウスの要領だ。
クロスさせるプラ棒の断面を凹型にする。ログハウスの要領だ。
ランナーにつなげるのに一苦労。よくわからん。
ランナーにつなげるのに一苦労。よくわからん。
型を取るとき、取る対象を立体的に反転させる(オス型対メス型の関係ね)、その辺がよくわからない箇所が多々ある。これも数学的、たぶんトポロジー的な才能が欠如しているせいだろうか。

その細かいわからなさを説明するのに、これまた表現の仕方がわからない。1ページ目からぼんやりと進行だ。
よくわからんなりに、土台ができあがった。
よくわからんなりに、土台ができあがった。
マグリットの絵のような。
マグリットの絵のような。
次は、やっとシリコーン型をとる過程である。対象がもなかだけに、果てしなく地味な色合いの画面が続く。
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寄せては返す、「もなかなのだ」という思い

これから対象物両面の型を取って、そこに樹脂を流し込んで完成となる。文章にすると1行だが、不確定要素満載で、あっというまに夜が来る。写真の光線の加減から、何日経て作業しているかを推測していただきたい。
シリコンをたらされる餡の驚きも推測ください。
シリコンをたらされる餡の驚きも推測ください。
「プハッ!」片方固まって、取り出される餡。
「プハッ!」片方固まって、取り出される餡。
シリコーンをこんな目的で無駄遣いするわけにはいかない!以前取った型を刻んで混ぜて嵩上げ。
シリコーンをこんな目的で無駄遣いするわけにはいかない!以前取った型を刻んで混ぜて嵩上げ。
型を取り終えたら、樹脂の注ぎ口と、空気口を開ける。
型を取り終えたら、樹脂の注ぎ口と、空気口を開ける。
見事に皮が2層に分かれた、これ取るのも地味に大変で、今回はもなか皮に恐怖した。
見事に皮が2層に分かれた、これ取るのも地味に大変で、今回はもなか皮に恐怖した。
ここまでで1kgくらいのシリコーンを使ってしまった。この型、次に使う日は果たして来るのだろうか。なんといっても、もなかのプラモ型である。いつかこれでカスタネットでも作ろうか。
ぴったり型を合わせて、樹脂を流し込む。大きい型は、寝かせて流し込むことにしたが…
ぴったり型を合わせて、樹脂を流し込む。大きい型は、寝かせて流し込むことにしたが…
餡のほうは、注ぎ口(上部の扇型)でつまってしまったらしい。空気口をもっとあけたほうがいいか。
餡のほうは、注ぎ口(上部の扇型)でつまってしまったらしい。空気口をもっとあけたほうがいいか。
ところで空気口だ。「密閉された洞窟に水を流し込む」ので、空気口を適所にあけないと、空気が逃げずところどころ穴の開いた完成品になってしまう。これがなかなか一発でいかない。
でも、「ここがこうなってるから、こう通すか」など試行錯誤するのはけっこう楽しい。
でも、「ここがこうなってるから、こう通すか」など試行錯誤するのはけっこう楽しい。
直して直して成功すると、非常にうれしい。もうランナーあまり意味なくなってるが、うれしい。
直して直して成功すると、非常にうれしい。もうランナーあまり意味なくなってるが、うれしい。
餡のほうは、割と楽に完成品ができた。だが問題は皮だ。2枚いっぺんに成型できるよう、ノート大もの大きい型を取ったのはいいが、どうやって樹脂を流し込もう。

こういう大きな型は、へたったりするのを防ぐため、普通は石膏を流して支えにしたりするらしい。でもまあこの大きさならぎりぎり大丈夫だろう。それにだいたい、もなかプラモだ。そんなに精度にこだわらなくていいだろうさ。
皮のほうは、平らに流し込んでもダメで…
皮のほうは、平らに流し込んでもダメで…
注ぎ口を側面(写真だと上部)に取って、横に立てて流し込んでも、途中までで固まってしまう。
注ぎ口を側面(写真だと上部)に取って、横に立てて流し込んでも、途中までで固まってしまう。
思い切って長辺を縦にして流し込んだら、勢いでか知らんが一気に流れてくれた。バリだらけになったが。
思い切って長辺を縦にして流し込んだら、勢いでか知らんが一気に流れてくれた。バリだらけになったが。
でもバリを取るのは地味に好きだ。
でもバリを取るのは地味に好きだ。
皮のほうは5回ほど試してようやく完成品ができた。後は軽くヤスリなどで仕上げて、「もなかプラモ」の完成である。
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ある休日、もなかを完成させる

―今日は久々に、何も予定のない休日だ。持ち帰った仕事も、外出の予定もない。この1日を自由に使えるのだ。

何年ぶりかに、プラモデルでも作ってみよう。ただし、1日でできる簡単なものがいいなあ。
もなかプラモというのがあった。最近は釣り船とか建機とか、何でもプラモになってるんだなあ。
もなかプラモというのがあった。最近は釣り船とか建機とか、何でもプラモになってるんだなあ。
部品はこれだけか!これなら今日1日で完成させられそうだ。
部品はこれだけか!これなら今日1日で完成させられそうだ。
組み立て図と、部品。懐かしいなあこういうの。部品は3つだけなのか!
組み立て図と、部品。懐かしいなあこういうの。部品は3つだけなのか!
そうそう、こうやってニッパーできれいに切るんだ。あっという間に全部切り離してしまったよ。
そうそう、こうやってニッパーできれいに切るんだ。あっという間に全部切り離してしまったよ。
着色も、昔買ったウェザリング用の塗料でこだわって、と。
着色も、昔買ったウェザリング用の塗料でこだわって、と。
できたぞ!早いなあ。・・・。
できたぞ!早いなあ。・・・。
観賞用の、TAMIYAのターンテーブルに乗せて、夕暮れまで眺めていよう。・・・。
観賞用の、TAMIYAのターンテーブルに乗せて、夕暮れまで眺めていよう。・・・。

ハンドメイド・プラモは、作る工程とは裏腹に、あっという間にできあがってしまった。そしてできたものはといえば、もなかだ。

終始、もなかを作ってるんだなあという思いが、人の思考をぼんやりさせる。「ウェザリング」なんてわくわくするような用語を入れてみたりしたけど、結局 もなかはもなかだった。

「プラモ」という様式そのままを形にしたのは面白かった。手間はかかるが、次はもっと動きのあるものをプラモにしてみたい。

本物の食品から型を取る。これはよく考えたら食品サンプルだ。次は伊勢海老の活け作りか何かを…。

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今週の10(土)・11(日)は、私が記事を書かせてもらってます「季刊レポ」の1周年記念祭が高遠にて行われます。高遠での「週末本の町」にて、 「なぜか埼玉」のさいたまんぞうデビュー30周年と「季刊レポ」創刊1周年を祝うことに。

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「季刊レポ」Webサイト http://www.repo-zine.com/
週末本の町 http://takatobooktown.com/index.html
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