特集 2011年10月9日

松の木の皮の入った餅はうまい

これは松ぼっくり。食べられない。
これは松ぼっくり。食べられない。
確か、子供の頃に見た歴史ドキュメントのようなテレビ番組だったと思います。昔の人は、松の木の皮に様々な手を加えて餅のようにして食べたそうです。

どのように作っていたかなど細かい所は思い出せないのですが、確かに餅の様になっていて、普通に食べていたのを覚えています。

色々調べると、秋田県のとある道の駅では、その食べられるようにした松の皮を使った餅を売っているそうです。行って食べてきました。
1972年生まれ。元機械設計屋の工業製造業系ライター。普段は工業、製造業関係、テクノロジー全般の記事を多く書いています。元プロボクサーでウルトラマラソンを走ります。日本酒利き酒師の資格があり、ライター以外に日本酒と発酵食品をメインにした飲み屋も経営しているので、体力実践系、各種料理、日本酒関係の記事も多く書いています。(動画インタビュー

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秋田県由利本荘市鳥海地域の名物

東京から東北新幹線で山形の新庄まで3時間半。更に奥羽本線で秋田県の湯沢まで1時間。そこから車で40分ほど行った所に目的の道の駅はありました。
東京から東北新幹線で山形の新庄まで3時間半。更に奥羽本線で秋田県の湯沢まで1時間。そこから車で40分ほど行った所に目的の道の駅はありました。
東京から東北新幹線で山形の新庄まで3時間半。更に奥羽本線で秋田県の湯沢まで1時間。そこから車で40分ほど行った所に目的の道の駅はありました。
秋田県由利本荘市鳥海町にある道の駅清水の里鳥海郷。そこに目的の松の皮をつかった餅が売っています。
周りは大体山林に囲まれていて水の綺麗な美しい場所のようです。
周りは大体山林に囲まれていて水の綺麗な美しい場所のようです。
道の駅の周囲は山と稲刈り前の田んぼばかり。天気が良かったらここで寝ていたかも。
道の駅の周囲は山と稲刈り前の田んぼばかり。天気が良かったらここで寝ていたかも。
道の駅に入ると、そこは物産パラダイス。
朝採り野菜満載の棚!しかも安い。
朝採り野菜満載の棚!しかも安い。
予約販売の天然舞茸も朝早くならウッカリ買えることも!
予約販売の天然舞茸も朝早くならウッカリ買えることも!
「ここの端から端まで全部貰おうか!」とセレブ発言をしたくなるぐらいの素晴らしい品揃えを見つつ、目的の松の皮の餅を探すと有りました。
鳥海名物!松皮餅。
鳥海名物!松皮餅。
地元の加工グループの方々が作るお菓子やオニギリなどの棚にありました。松皮餅です。
人気No.1の製品らしいぞ。3個300円。
人気No.1の製品らしいぞ。3個300円。
パックになって売られている餅は、見た感じ普通の大福と変わりません。全体的に赤く、所々に赤い繊維状の物が見えます。説明書きを見ると、中にはこしあんが入っていて、松の臭みも無いらしい。

松といえば、マツヤニがあってクセが凄く強そうです。そもそも木の皮なんて食えるのかという代物。お菓子になるぐらいですから、そういう部分はクリアーされているのでしょう。まずは加工グループの方にお話を聞いてみます。

沢山のテレビに出たそうです。

ということで、この松皮餅を作る加工グループ「みつばの会」の方に話を聞いてみました。
松皮餅を作る村上明子さんと、村上洋子さん。同じ村上ではありますが、姉妹ではなく、同じ地区に村上姓が沢山いるそうです。今まで数々のテレビ番組に出たらしい。
松皮餅を作る村上明子さんと、村上洋子さん。同じ村上ではありますが、姉妹ではなく、同じ地区に村上姓が沢山いるそうです。今まで数々のテレビ番組に出たらしい。
松皮餅は、古来より受け継がれてきた郷土食。江戸後期の大凶作の際に飢えをしのぐために考案されたとか、矢島藩士が兵糧攻めにあった際に考案したとか。色々説はあるようですが、全国でもこの鳥海町と隣の矢島町でのみ作られているものだそうです。
煮た松皮。特徴的な匂いはなし。色が凄い。これで100個分ぐらいの餅作りに使える。
煮た松皮。特徴的な匂いはなし。色が凄い。これで100個分ぐらいの餅作りに使える。
そして、こちらが松皮餅に使われる松皮。アカマツの幹とコルク状の表皮との間にある薄皮を丁寧に剥がし、重曹などと共に短くて1日、長くて3日ほど煮てアクを抜く。更に、煮て柔らかくなった物を包丁で丹念に叩いて細かくしてやっと食べられるようになります。
お二人の話では、松の皮は虫食いが無くピチピチとした若い年頃の物を煮るのが味もいいそうです。「私達みたいなのじゃダメなんだよー、ハハハー(秋田の方の発音が分かる人はそれで読んでください)」と笑っていた。お年寄りジョークか。
お二人の話では、松の皮は虫食いが無くピチピチとした若い年頃の物を煮るのが味もいいそうです。「私達みたいなのじゃダメなんだよー、ハハハー(秋田の方の発音が分かる人はそれで読んでください)」と笑っていた。お年寄りジョークか。
食べてみると特に特徴的な味はありません。わずかに甘さが感じられる程度。野菜の柔らかい繊維の部分だけを噛んでいるようです。これならば食べても問題はない。ただ、触ると手が茶色く染まるほどの強い色があります。
「今まで、おもいっきりテレビとか、ダーツの旅とか、おはよう日本とか色々出たよー。日テレにも行ってきた。いなかっぺも出たよな。」いなかっぺってどんな番組だろう?
「今まで、おもいっきりテレビとか、ダーツの旅とか、おはよう日本とか色々出たよー。日テレにも行ってきた。いなかっぺも出たよな。」いなかっぺってどんな番組だろう?
この煮た松皮は、昔から節句などのお祭りで赤い餅を作る時に使っていたそうです。ひな祭りの3色のひし餅ならば、緑はヨモギ。赤は松皮餅になります。今のように餡を入れた餅にしたのは村上さんのグループの方々が初めて。

作るのはとても大変

これはうまい!そういえば、インターネットの取材と説明すると「テレビでなくて良かったー」と言われる。どうやらテレビに出るのは恥しいらしい。もういっぱい出ているから大丈夫だと思うのだが・・
これはうまい!そういえば、インターネットの取材と説明すると「テレビでなくて良かったー」と言われる。どうやらテレビに出るのは恥しいらしい。もういっぱい出ているから大丈夫だと思うのだが・・
試しに1つ頂いて食べてみると、松の皮の味や香りはしません。柔らかくフワッとした餅に、引き締まった甘さの餡が入っていて実に美味しい。松皮餅うまいです!

いや、煮た松皮自体に味はほとんど無いので、村上さん達の作る餅がうまいのか?とにかく、この松皮餅うまいです!人気No.1なのも納得。
昔は杵と臼でついていた餅も、最近はこの餅つき機を入れてもらったお陰で随分楽になったとのこと。「どんらく」だけに、どんだけ楽になったことか。
昔は杵と臼でついていた餅も、最近はこの餅つき機を入れてもらったお陰で随分楽になったとのこと。「どんらく」だけに、どんだけ楽になったことか。
村上さん達は、正月などを除いて1年中ほぼ毎朝松皮餅を作っています。作業は朝3時ぐらいから始まります。もう30年ぐらい作り続けているのだとか。
加工所にはこんな装置もありました。自動きりたんぽ製造装置。秋田ならでは。
加工所にはこんな装置もありました。自動きりたんぽ製造装置。秋田ならでは。
最近では材料となる松も少なくなり入手するのが大変で、伐採したと聞いたら雨が降ろうが雪が降ろうが取りに行くそうです。
松皮餅以外に松皮を使ったおかきもありました。赤みがかったものが松皮入り。商品開発にも余念が無い。
松皮餅以外に松皮を使ったおかきもありました。赤みがかったものが松皮入り。商品開発にも余念が無い。
また、松の皮も単に長く煮ればいいというものでもなく、ステンレス製の鍋では綺麗な色が出ないなど難しい点も多く、日々試行錯誤されています。ただの餅とは訳が違う。美味しさの裏に30年以上の積み重ね有りと言ったところでしょうか。

松皮餅、うまいです!
帰りに松皮餅を沢山頂きました。あと、おかきも。ありがとうございました!
帰りに松皮餅を沢山頂きました。あと、おかきも。ありがとうございました!

いつまでも美味しい松皮餅を作り続けてください

近年、松皮餅に使われる松皮が冷え性に効くとか、ポリフェノールが沢山含まれていて体にいいなんてことも言われているそうです。そんな効果があるかは分かりませんが、松皮餅はとても美味しい餅でした。

松皮餅を作る二人はとても元気そうで、毎朝楽しく作業をしている姿が二人の話から想像できます。また、遠い所から沢山の人が来て、この餅を沢山買っていってくれるのが嬉しいそうです。

きっと二人の元気の秘訣は、大変でも毎朝楽しく会話しながら行う作業と、喜んで貰えるという気持ちなのではないかと思いました。いつまでも美味しい松皮餅を作り続けてください。また買いに行きます。
実は煮た松皮も少し頂きました。今のところどのように使うか思案中。そういえば、生中継のテレビは沢山の人が来て朝早くからやるのに、放送するのはちょっとだけで大変だ、なんて事も言っていた。30年でかなりテレビ慣れしているのかもしれない。
実は煮た松皮も少し頂きました。今のところどのように使うか思案中。そういえば、生中継のテレビは沢山の人が来て朝早くからやるのに、放送するのはちょっとだけで大変だ、なんて事も言っていた。30年でかなりテレビ慣れしているのかもしれない。
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