特集 2011年10月20日

登って滑ってポッカール!

スキーもスノボもできなくてもこれはできる!
スキーもスノボもできなくてもこれはできる!
山登りは楽しい。息を切らしながら斜面を登って、山頂に立ったときの充実感は何事にも代え難い。でも、下りるのは楽しくない。疲れるし、面倒だ。ラクに楽しく下山する方法はないかなあ。

と、ドイツ人の医者とエンジニアが考えたらしい。

そうしてできたのがポッカール。腰掛けにタイヤをつけて、座ったまま斜面を滑り降りる乗り物だ。僕は登山はしないけど、ポッカールには乗ってみたい。

まだ日本に入ってきて数年、一般的には馴染みがないと思うけど、インストラクターに講習を受けながら試乗できるところがあると知って、体験してきた。
1974年東京生まれ。最近、史上初と思う「ダムライター」を名乗りはじめましたが特になにも変化はありません。著書に写真集「ダム」「車両基地」など。
(動画インタビュー)

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ポッカール乗りたいんですけど

やってきたのは、群馬県みなかみ市のホワイトバレースキー場。現在、関東ではここだけ、上級インストラクターの講習つきでポッカールの体験ができるのだ。
ポッカール虎の穴
ポッカール虎の穴
インストラクターの永瀬さん(左)と運動音痴の筆者(右)
インストラクターの永瀬さん(左)と運動音痴の筆者(右)
今回ポッカールのインストラクターをしてくれるのは、みなかみを拠点にスキーやカヌーなどのインストラクターもされている永瀬さん。ポッカールも日本に輸入されたときから関わっていて、なんと乗り方のマニュアルをまとめたり、インストラクターの資格も整備されたとのこと。おおお、文字通り日本での第一人者だ!
これがポッカールだ!
これがポッカールだ!
ポッカールは、インラインスケート(ローラーブレード)のように縦に3つ並んだタイヤの上に小さな腰掛けとハンドルがついただけのシンプルな構造。でも、インラインスケートやスケボーなど、ほかの滑る系エクストリームスポーツ用具との最大の違いは、ブレーキがついていること。しかもマウンテンバイク用ブレーキを作っているメーカーの、強力なディスクブレーキだ。
強力なディスクブレーキが標準装備
強力なディスクブレーキが標準装備
そのため、乗る人が自分のレベルに合ったスピードを調節しながら滑ることができるのだ。さすがドイツ人、冷静だ。これアメリカ人が発明してたらブレーキなんてなかった。たぶんハンドルもない。

ポッカールのもうひとつのポイントは、前後のタイヤに比べて、ブレーキがついている真ん中のタイヤが少しだけ大きいこと。滑っている最中は前後どちらかのタイヤが常に浮いた状態なので、多少のデコボコでも走れるし、カーブも曲がりやすい。こういう小さな工夫がドイツ人らしい。
真ん中のタイヤだけ少し大きい
真ん中のタイヤだけ少し大きい
それでは、ヘルメットと肘当てを装着して、簡単な講習を受けたらさっそくポッカール初体験!
いかにもエクストリーム系苦手ですという見た目
いかにもエクストリーム系苦手ですという見た目
ポッカールはかなり小さくてかわいい
ポッカールはかなり小さくてかわいい
...なのだけど、そのためにはまずこの斜面を登らなくてはならない。
滑るために自分で持って登る
滑るために自分で持って登る
「ポッカール人口がもっと増えれば、夏でもリフトを動かしてもらえるかも知れないんですけどね」と永瀬さん。ポッカール普及のいちばんのネックは、自分で担いで登らなくてはならない、ということらしい。
リフト動かしてくれー
リフト動かしてくれー
「こうやって担ぐと楽ですよ(永瀬さん)」
「こうやって担ぐと楽ですよ(永瀬さん)」
もともと登山家が楽に降りるために作ったものだから、滑るために登るのがたいへんで普及しない、というのはちょっと皮肉だけど、夏でもゴンドラが動いているようなスキー場で滑ったら楽しそうだ。

ポッカール初体験

100mほど斜面を登った場所から、まずはゆっくり滑って直進とブレーキの練習。

ポッカールに腰掛け、足を前に投げ出して、足の下からハンドルを握る。まるでリュージュのような姿勢がポッカールの基本スタイルだ。投げ出した足は靴底で地面を擦りながら、バランスを保つために使う。右手はハンドルについたブレーキを握り、スピードを調節するのだ。
正しいポッカールのスタイル
正しいポッカールのスタイル
座っただけでなぜか初心者感丸出し
座っただけでなぜか初心者感丸出し
しかしこれ本当にバランス取れるのか?と思った。それに見た感じ背中や首が疲れそうだし、お尻も痛そうだ。

そんな不安をよそに滑り出した永瀬さんに続いて、いよいよポッカールの初滑りだ。
これは!楽しい!!

見た目よりも安定感は高く、両足が地面に着いているせいか、転びそうな不安感はなかった。ブレーキもよく効くし、スピードを出したい欲求に駆られる。けっこう飛ばしたぜ、と思って動画を見たら、想像以上にのんびりした速度だった。目線が低いのでスピード感もあるのだ。

そういえば心配した背中やお尻の痛さも感じなかった。
こんな乗り物ちょっとない
こんな乗り物ちょっとない
でもまだ直滑降しかできない。そこで次は曲がり方を教えてもらった。
でもその前にまた登らなきゃ
でもその前にまた登らなきゃ

たった30分でスラロームまで!

何度か登り降りして、安定して直進ができるようになったところで、次は曲がり方だ。

教えてもらった曲がり方はふた通り。目線を進みたい方に向けながら、その方向に肩を向けるとなぜかすいーっと曲がる。もっと小回りしたいときは、身体を垂直に保ちながら曲がりたい方のハンドルを押し下げる。すると、くいっと曲がる。

1、2本練習しただけで、すぐに曲がれるようになった。
コーナーリングもすぐにできた
コーナーリングもすぐにできた
もちろん、インストラクターの永瀬さんが教え上手というのはある。そのうえで、ポッカールにはスノボやスケボーにあるような「初心者の壁」がないのかも知れない。「滑るための練習」をすることなく、初心者は初心者なりに滑れる。そしてそれがすごーく楽しい。もちろんスピードが上がれば難易度も増すから、技術は奥深い。
それなりに曲がれるようになって(転びながら)、とうとうコース上にパイロンが立てられた。最後はスラローム体験だ。
でもその前にまた登る
でもその前にまた登る
初めは登るのが大変だと思っていたけど、気がついたら下に滑り降りるなりポッカールを掴んで登っていた。想像したより軽いし、あまりの楽しさに、またすぐ滑りたいと身体が勝手に動くのだ。
この坂を滑りこなしてみせる!
この坂を滑りこなしてみせる!
さっきの倍くらいの高さまで登って、一気に下まで滑り降りる。スピードが上がってスリルも増すけど、ポッカールで長い距離を滑り降りる爽快さは普段ちょっと味わえない。これは本当にみんな一度は滑ってみるべきだ。
夢中になって1時間みっちり滑ったら、かなりくたくたになった。

日本ではまだインストラクターは数える程度、滑走できる場所も限られていて、いくつかのスキー場や牧場でレンタルされているくらいしか広まっていないポッカール。発祥の地ドイツではダウンヒル競技も行われているらしい。

スピード系、バランス系好きな人は、いまから初めてヨーロッパに殴り込みをかければ、ポッカール界の石川遼や錦織圭、小林可夢偉になれるかも知れない。

そして凱旋帰国して、ぜひ夏でもスキー場のリフト、動かしましょう。
最後に永瀬さんが手放しでパイロン回収しながら滑ってきてびっくりした
最後に永瀬さんが手放しでパイロン回収しながら滑ってきてびっくりした

長い距離滑りたい

初めて乗ったポッカール。想像以上に誰でも乗れて、でも奥が深いスポーツだった。自分の足で登るのは大変だけど、長い距離を滑った方がぜったい楽しい。小さくてカラフルなポッカールに所有欲も刺激され、いまwebカタログと地図を見ながら、自分のポッカールでどこか滑れるところがないか探している。
なんと冬は車輪をスキーに付け替えて雪の上を滑ることもできる!
なんと冬は車輪をスキーに付け替えて雪の上を滑ることもできる!

取材協力/ポッカールProStaff
http://www.bockerl.sakuraweb.com/
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