特集 2011年10月28日

シャーペンの芯の銘柄をあててみせよう

区別、つきますか
区別、つきますか
シャープペンシルの芯。ふだんはあまり気にしないが、あれもメーカーの人が色々と企業努力をしているはず。銘柄ごとに特徴があるんじゃないか。

特徴を完全に見抜けば、利き酒みたいな感じで、シャーペンの芯のメーカーをあてることもできるだろう。

なにしろ最近の芯はすごいのだ。
本業は指圧師です。自分で企画した「ふしぎ指圧」で施術しています。webで記事を書くことをどうしてもやめられない。(動画インタビュー)


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シャーペン売場のきらびやかさ

売場を見るとメーカーは盛んにそれぞれのウリを宣伝している。意外と派手で楽しい。三菱鉛筆の「ユニ」はこんな感じだ。
「4億個のナノダイヤ配合」「最強芯のままくっきりなめらか!!」
「4億個のナノダイヤ配合」「最強芯のままくっきりなめらか!!」
すごいでしょう。「億」「ナノ」「ダイヤ」「最強」となんともしびれることが書いてある。シャーペンの芯に「ダイヤ」が入っているのというのがすごい。ダイヤって!

一方で、パイロット社の芯も負けていない。こっちは芯のネーミングがかっこいいのだ。
「ネオックス・グラファイト」
「ネオックス・グラファイト」
「ネオックス・グラファイト」…スタイリッシュで強そうなネーミングだ。小さい頃に良く見ていたメタルヒーローもの(例:『ビーファイターカブト』『超光戦士シャンゼリオン』)が思い出される。
こちらは「ナノダイヤ」こそ使われていないもの「高純度グラファイト」を使用
こちらは「ナノダイヤ」こそ使われていないもの「高純度グラファイト」を使用
良く見てみると、シャーペンの芯のケースがどことなく特撮ヒーローっぽいデザインに見える。各種固さの種類がそろっているところもヒーロー集合っぽい。

芯をもっと知りたいです

こんな風に僕は売場でやられてしまった。「ユニ」「ネオックス・グラファイト」両方買って家に帰った。この芯のかっこよさに、なんとか自分なりの形でもっとアクセスしたい。強くそう思った。

そこでぼくはシャーペンの違いがわかる人間になろうと決めたのだ。これが今回の利きシャーペンの芯の発端である。
ぺんてるの「Ain」には特に目立ったことは書いていなかったので今回は見送った
ぺんてるの「Ain」には特に目立ったことは書いていなかったので今回は見送った
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ここから修行シーン

今回使うのは「B」の芯。同じBでも、ユニは「4億個のナノダイヤ」、ネオックスグラファイトは「高純度グラファイト」をそれぞれ使っている。必ず書き味に現れるはずだ。
見た目は全く同じ。長さも統一されている
見た目は全く同じ。長さも統一されている
とにかくそれぞれの芯を意識して書いてみる
とにかくそれぞれの芯を意識して書いてみる
たくさん書いてみる
たくさん書いてみる
イラストを描いた方がわかりやすいんじゃないか
イラストを描いた方がわかりやすいんじゃないか
シンプルにラインはどうだ
シンプルにラインはどうだ
うん。

…確かに違いはある。「ネオックスグラファイト」の方がいくらか硬い。
さらなる手がかりを求めて、食べる
さらなる手がかりを求めて、食べる
食感にも若干の違いがある。やはり「ネオックスグラファイト」の方が書き味同様、食感も硬い。「高純度グラファイト」がそうさせているんだと思う。

ユニの「4億個のナノダイヤ」の方が硬そうなイメージがあるのだが…何事も身体で調べてみないとわからない。

※シャーペンの芯は食べ物ではありません。食べることで思わぬ健康被害を受ける可能性がありますので、絶対に真似をしないでください。(編集部注)

感触を確かにするために、毎日書いてみる
感触を確かにするために、毎日書いてみる
…ん?
…ん?
さらに気付いたことがある。どうも「ネオックスグラファイト」の方が同じ筆圧でも濃く書けるような気がするのだ。

両者の書き味の違いを叩き込むべく練習していたが、やはり「感触」を覚えるというのは難しい。しかし「濃さ」は視覚の問題である。こちらの方が判断材料として扱いやすいかもしれない。
いろいろ書いた
いろいろ書いた
ユニで描いたウニ(疲れてくるとだじゃれを描きたくなってきませんか)
ユニで描いたウニ(疲れてくるとだじゃれを描きたくなってきませんか)

だいぶつかんできた

編集部の工藤さんに連絡して「利きシャーペンの芯ができるようになったところ」を見てもらうことにした。

ニフティ本社で工藤さんに「この芯はユニかネオックスか、どっちでしょう」と出題してもらって、僕がそれで書いたり、あるいはそれを食べたりしてどちらかを当てる、という形式だ。

コツはつかんだので、あとは当日まできっちり詰めるだけ。視覚と触覚の暗記作業である。
しかし予定の日が迫ってくるとすごく不安(これ、自分で自分に練習の出題ができない)
しかし予定の日が迫ってくるとすごく不安(これ、自分で自分に練習の出題ができない)

手がかり

前日までに僕がつかんだ手がかりを整理して、ニフティに行く。
表にまとめるとこうなります
表にまとめるとこうなります
それぞれ対応させたが、ほんのわずかな差である。でも手掛かりはこれしかない。垂直の断崖絶壁に、指の先だけ引っ掛けてよじ登ったらこんな気分だと思う。
何度となくニフティに来たことはあるが、今日はみょうにビルの高さが目につく
何度となくニフティに来たことはあるが、今日はみょうにビルの高さが目につく

それでは「利きシャープペンの芯」始めます

もう戻れないところまできてしまった。出題者は編集部の工藤さん、撮影係は編集部の古賀さん、そして回答者としての僕だ。
緊張する
緊張する
それでは始めましょう。
僕が目を閉じている間に
僕が目を閉じている間に
工藤さんがランダムに芯を選び、シャーペンに入れてくれる
工藤さんがランダムに芯を選び、シャーペンに入れてくれる
こういうところで弱ってゆく
こういうところで弱ってゆく
シャープペンを渡された僕は、それで紙に書いたり
シャープペンを渡された僕は、それで紙に書いたり
噛んだり舐めたりして
噛んだり舐めたりして
悩む
悩む
なんだこれ。全然わからない。自分がわからないことに驚いて「ん?!」と大きな声が漏れてしまった。

僕は今まで一体何を見ていたんだろう?いや、落ち着け、そもそも手がかりはとても小さな感覚だった。

…そう考えてゆくとやや硬い感触のようにも思える。とすると…ネオックス・グラファイトか。決定的な感触ではないが、この状況でユニは選べない!
どうだ!
どうだ!
工藤「はずれです」 斎藤「なっ…!」
工藤「はずれです」 斎藤「なっ…!」
しかし、このゲームは十番勝負なのだ(最初にそう設定しておいて良かった!)。初戦はつまづいたが、これはデータになる。
なるほど…これがユニの筆跡…と感覚の補正をし、次戦へのバネに
なるほど…これがユニの筆跡…と感覚の補正をし、次戦へのバネに
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連勝モード

感覚の補正をした僕は強かった。
長考するも
長考するも
無事あてる(心の底からホッとする!)
無事あてる(心の底からホッとする!)
カメラマン古賀「ガッツポーズ下さい、ガッツポーズ!」
カメラマン古賀「ガッツポーズ下さい、ガッツポーズ!」
4戦目まで終えた僕の戦績はこの通り。完全に挽回した。
3勝1敗
3勝1敗

連勝の落とし穴

外すと工藤さんうれしそう
外すと工藤さんうれしそう
正解が続くと欲が出てくる。

たとえば、工藤さんがシャーペンの芯を出すときの音、シャーペンの芯をセットし終わったときのケースの位置関係。

そういうところにも意識がいくようになってきた。とくにケースの位置は情報
汗びっしょり
汗びっしょり
しかし、出題しているのは工藤さんである。ケースの位置を使い、逆に僕の誤答を誘い出す作戦に出る…ということも充分にあり得る。

そんなことをしても工藤さんに何の得もないのだが、すごくやりそうな感じだ。

ここで集中力を欠き、僕の感覚は鈍る。気付けば、5、6、7戦は、3連敗。
3勝4敗
3勝4敗

10番勝負の結末

一度すべてを水でリセットしよう
一度すべてを水でリセットしよう
出題にも気合いが入る(僕には見えていません)
出題にも気合いが入る(僕には見えていません)
結局は筆圧を一定にして濃淡で判断する、という方式一つに絞った
結局は筆圧を一定にして濃淡で判断する、という方式一つに絞った
カメラマン古賀「最後の出題なんで、こっち向いて回答を指差して下さい!」
カメラマン古賀「最後の出題なんで、こっち向いて回答を指差して下さい!」
なんでVS工藤さんみたいな構図になって
なんでVS工藤さんみたいな構図になって
最終的な戦績はこの通り。1/2の選択に対して、5勝5敗という結末になった。
5勝5敗
5勝5敗
何も言い返せません
何も言い返せません

シャーペンの芯をあてるのは無理です

恐ろしい結末に頭がクラクラする。ぼくは一体何をやっていたんだ。発見したと思っていたシャーペンの芯のわずかな差異、あれば全部僕の思い込みだったのか。受け入れがたい。

10番勝負を終えてエレベーターに乗る。工藤さんと古賀さんの姿が見えなくなった瞬間、腰が抜けてその場でへたりこんでしまった。

なんとかニフティの近くの喫茶店まで辿り着いた僕は「一番甘いコーヒーを下さい…」と自分が注文するのを、どこか遠くで聞いていた。
メープルシロップのコーヒーが出てきた
メープルシロップのコーヒーが出てきた
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