特集 2011年11月1日

食べて遊んでくつろいで。古民家を巡ろう

秋は古民家の季節~
秋は古民家の季節~
古民家といえば、今ちょっとしたブームになっている。古民家を改造したカフェや雑貨屋などもよく見かけるようになった。
アンティークな家屋や庭は、そこにいるだけで時間がゆったりと流れていき、特に何をするわけでもなく心地よい。私も最近、すっかり古民家の魅力にとりつかれてしまった。(参照記事:山の中でみつけた昔の家でくつろいだ話

秋深まる空の下、いくつかの気になる古民家を巡ってみた。
1975年生まれ。千葉県鎌ヶ谷市在住。猫好き。人生においての目標は食べたことのないものをひとつでも多く食べること。旅先ではまだ見ぬ珍味に出会うため目を光らせている。

前の記事:猪鹿蝶を食べる

> 個人サイト 晴天4号 Twitter (@hosoi)

■ 北条家住宅(佐渡)

夏に佐渡へ行った時に立ち寄った、わらぶき屋根の古民家。国の重要文化財に指定されているそうだ。
建物は18世紀後半ごろのものと推定されている
建物は18世紀後半ごろのものと推定されている
人の姿はなく、説明の看板だけがある。庭は田舎のおばあちゃんちに遊びに来たようなナチュラル感がある。
百選って多いな
百選って多いな
保存状況はきわめてよいそうです
保存状況はきわめてよいそうです

入り口を開けてみたら…

今まで行った事のある古民家は、どれも中に入れるタイプのものだったこともあり、正面の扉をなんの迷いもなく開けたのだが、そこには思いきり人の住んでいる空間が…。
人こそはいなかったが、慌てて閉めた。ごめんなさい。
入っちゃいけなかったっぽい
入っちゃいけなかったっぽい
家財道具もあったし、テーブルの上にティッシュとか茶筒とかあった…。これは外から眺める古民家なのか。
しょっぱなからこんな始まりで申し訳ないです。
蔵、かっこいい
蔵、かっこいい

■ 武家屋敷(旧河原家住宅・旧但馬家住宅・旧武居家住宅)(千葉県佐倉市)

佐倉にある、三棟並んだ武家屋敷。三棟もあるとなかなかゴージャスだ。
今度は中に入れますので。
入場料は一般210円
入場料は一般210円
武家屋敷、P完備
武家屋敷、P完備
右側の土塁沿いが全部屋敷
右側の土塁沿いが全部屋敷

かっこいい

武家屋敷の魅力は、ちょっとだけストイックな間取りになっている所だと思う。自分が子供だったら絶対にかくれんぼを始めて怒られているのだろう。
家の内外に秘密基地を作れそうな一画がたくさん
家の内外に秘密基地を作れそうな一画がたくさん
縁側に座っているだけでいい気分になれる、それが古民家
縁側に座っているだけでいい気分になれる、それが古民家

時間がとまっているみたい

屋内に入ると鎧兜や刀などが置いてあり、時代劇のワンシーンに忍び込んだようでわくわくする。
あと、言ってしまうとこういった文化財の古民家は土日でも来場者が少ない。静かにタイムスリップ的雰囲気を楽しむには持ってこいのスポットだと思う。
静かに楽しみたくもあるけど、かくれんぼもしてみたい
静かに楽しみたくもあるけど、かくれんぼもしてみたい
内見中「いい間取りですね」
内見中「いい間取りですね」

住みたいです

最近のアパートは、和室を洋室にリフォームすると人が入りやすいらしい。フローリングもいいけど、畳もいいぞ。なにも敷かなくても寝転がれるぞ。なぜかそんな主張をしたくなる。(余談だが私の部屋も和室で座イスに座ってパソコンを叩いている。でも床に物を置く事に抵抗がないから席の周りがすぐに散らかるよね、和室…)
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お隣さんもすてき

あ、こっちはわらぶき屋根じゃない。三棟あると、一度に三つの縁側に座れるのがお得だ。(縁側といえばビールだけどそこは我慢しなければいけない)。
どう考えてもバーベキュー向きの住宅
どう考えてもバーベキュー向きの住宅
スーパー銭湯でしか見かけない湯船
スーパー銭湯でしか見かけない湯船
炊事場の外壁、中にはかまどがある
炊事場の外壁、中にはかまどがある
庭にはもみじがある。紅葉の季節はさぞ風情があるのだろう
庭にはもみじがある。紅葉の季節はさぞ風情があるのだろう
毎回思うのだが、古民家の中には何もないし、何もすることがないのに退屈しない。昔の誰かの家の中に自分がすっぽり収まる事がすでにエンターテインメントなのかもしれない。
ぼーっとたたずんでいると、心の中で「そうだ、京都いこう」のテーマ曲が流れ始めるのも毎度の事として受け入れてしまう。京都じゃないのに。
何度も来ていたらそのうち縁側をぞうきん掛けしたくなりそうで怖い
何度も来ていたらそのうち縁側をぞうきん掛けしたくなりそうで怖い
なお、武家屋敷の隣は猫屋敷でした(一般家屋)
なお、武家屋敷の隣は猫屋敷でした(一般家屋)

■ 古民家食堂(千葉県八街市)

次は趣向を変えて、食堂タイプの古民家を紹介したいと思います。
その名も古民家食堂!
その名も古民家食堂!
道に迷って電話したら外で待っててくれた。そこはかとなく漂う親戚んちっぽさ
道に迷って電話したら外で待っててくれた。そこはかとなく漂う親戚んちっぽさ
通り沿いによくある大きな敷地の農家の平屋ってよくありますよね。それがそのまま食堂になっているのである。
通りに向けて掲げられたおしながき
通りに向けて掲げられたおしながき
中も何となく親戚んちっぽい。足の悪い年配客のために椅子席を設けていると言っていた。ホスピタリティ
中も何となく親戚んちっぽい。足の悪い年配客のために椅子席を設けていると言っていた。ホスピタリティ
法事をやりたくなる空間
法事をやりたくなる空間

築60年くらいだそうです

ご主人のお母様がずっと住んでいたのだが、90歳をすぎて亡くなってからご主人と奥様で食堂を始めたそうだ。
それにしても「古民家食堂」ってストレートで良いネーミング。
私もこれからもちろんご飯を食べますよ。
カラオケは一曲100円
カラオケは一曲100円
田舎のいとこの部屋にそっくり
田舎のいとこの部屋にそっくり
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「たまご丼」が気になる

一般的なメニューが並ぶ中、「たまご丼350円」という文字が目を引く。なんか安いし。
たまごかけご飯だったらそう書くよな…
たまごかけご飯だったらそう書くよな…

「たまご丼」はこれだ

注文してみると、親子丼の肉なしバージョンだった。なるほど!十分おいしそう。
これで350円って安くないか?
これで350円って安くないか?
とろとろの卵と玉ねぎが乗っている。ご飯の量はふつうなので満腹になる。付け合わせのコンニャクも、味が染み込みまくっていて美味だった。
肉がなくてもおいしいのだ
肉がなくてもおいしいのだ
あまり食堂という感じがしないな
あまり食堂という感じがしないな
最初に頼んだもつ煮込み。ボリュームがすごい
最初に頼んだもつ煮込み。ボリュームがすごい
食後のお茶タイムも店なのを忘れてくつろぐ始末
食後のお茶タイムも店なのを忘れてくつろぐ始末

おしゃれな古民家カフェとはまったく違うものだけど

おしゃれさは皆無だけど、なんでしょうこの安心感。人んちっぽい店はいくつか見てきたつもりだけど、なんというか「勝手知ったる人んち」感がある。そこらへんのテーブルで子供が宿題を始めても何の違和感もない。農家独特のおうちのせいか、映画「サマーウォーズ」の雰囲気を彷彿とさせる。二回目からはただいまーと言って入ってしまいそう。
庭に成ってるみかんをくれた。「足りなかったら成ってるのいくらでも持ってってー」とのこと
庭に成ってるみかんをくれた。「足りなかったら成ってるのいくらでも持ってってー」とのこと
「夜はカラオケで盛り上がってるわよ」。近所だったら通うと思う
「夜はカラオケで盛り上がってるわよ」。近所だったら通うと思う
八街らしく落花生が干してある
八街らしく落花生が干してある
陰干しされる猫
陰干しされる猫
お腹もいっぱいになり、あいさつをして車に乗り込んでいると、店員さんが走ってきた。
「これあげます」
「これあげます」
車窓越しにじゃがいもを渡された。
なんだなんだこの店は!本当に親戚の家なのか…?そうだったのか…?

すごく楽しかったです。

■ 旧坂東家住宅見沼くらしっく館(埼玉県さいたま市)

最後は埼玉にある市指定文化財。ここは公民館的な使い方をされている、少し変わった施設だった。
古民家だからくらしっく
古民家だからくらしっく
おお、くらしっく!
おお、くらしっく!
どうぞお上がりくださいの表示がうれしい
どうぞお上がりくださいの表示がうれしい
この古民家は築154年。一度解体して組み直している。
企画展示や、講習会なども行われている、気さくに入れる古民家。
囲炉裏は毎日フル稼働
囲炉裏は毎日フル稼働
なぜならお茶を入れるから
なぜならお茶を入れるから
立ち寄ると、囲炉裏で沸かしたお湯でスタッフの方がお茶を入れてくださるのだ。
囲炉裏端でお茶を飲んでいると、ここで鮎を串に刺して焼きたくなって仕方なくなる。
入り浸っていたらこのあと会った友人に燻製の匂いがすると言われた
入り浸っていたらこのあと会った友人に燻製の匂いがすると言われた
しばらくすると、向かいの病院から散歩をしてくる人たちで庭が賑わい始めた。
子供が竹馬をしているのが見える。お茶を飲んだら外に行ってみよう。
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土間には昔のおもちゃが常備されている
土間には昔のおもちゃが常備されている
けん玉やコマなどの伝統おもちゃで自由に遊べるのが楽しい。外にはフィジカル派のための竹馬もある。
めずらしい、やることのある古民家である
めずらしい、やることのある古民家である
今日は奥の間で講習会が行われている。邪魔にならないように声をひそめて遊ぼう。
羽子板は何年ぶりだろう
羽子板は何年ぶりだろう
たのしい
たのしい
竹馬、こわい!
竹馬、こわい!
みかねた看護婦さんが
みかねた看護婦さんが
持ってくれたおかげで
持ってくれたおかげで
乗れちゃった
乗れちゃった
土間に戻ると、いつのまにか老若男女で賑わっていた。お茶を入れてくれるスタッフさんが忙しそうだ。
「うちはこういう家だったんだよ!」というおじいちゃんの熱い昔話がBGM
「うちはこういう家だったんだよ!」というおじいちゃんの熱い昔話がBGM
デイケアの若者がおじいちゃんにベーゴマを教えてもらっていた
デイケアの若者がおじいちゃんにベーゴマを教えてもらっていた
アリジゴク観察はまたの機会に
アリジゴク観察はまたの機会に

畳で自由にくつろげる

催し事の邪魔をしなければ、自由に入って見学する事ができる。ちょっと内見をしてみよう。
論語の授業をしていた。渋い
論語の授業をしていた。渋い
この物件、ロフトがあるんですよ
この物件、ロフトがあるんですよ
154年もののアンティークな階段
154年もののアンティークな階段
収納もばっちりです
収納もばっちりです
囲碁・将棋完備
囲碁・将棋完備
料理講座の写真が花なのは何故か
料理講座の写真が花なのは何故か

身体を動かせる古民家

庭や土間で遊ぶことを推奨している古民家もめずらしい。私はなぜ古民家で汗だくになっているのか。
もちろん、建物も歴史があって見ごたえ十分だった。ますます古民家が好きになってしまったよ…。
古民家イエーイ
古民家イエーイ

家が古くて何故たのしい

今回は4つの古民家を巡ってみた。ただの古い家屋といえばそれまでだけど、それぞれに個性があって面白い。これからも、古ーい家を訪ねては心ゆくまでぼーっとしていきたい。
みんなもおいでよ~
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