特集 2012年2月6日

炭水化物トリプルアタックメニューを食べる

一見普通のカレーうどん、でもどこかおかしなところがある
一見普通のカレーうどん、でもどこかおかしなところがある
焼きそばパンやラーメンライスに代表されるように、炭水化物をダブルで食べるメニューというのがある。 一回の食事の中で、基本的には主食としての位置づけになる炭水化物。それが二つ重なっているのが特徴であるわけだ。

しかし中には、さらにそれを一歩進めて炭水化物がトリプル状態のメニューというものもある。どういう取り合わせなのか、実態を探ってみた。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

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さよなら栄養バランス

ごはんや麺・パンなど、三大栄養素で言うと炭水化物系に分類される食べ物たち。その一つを主食とし、メインのおかずや副菜と組み合わせるのが一般的な食事のスタイルだろう。

しかし中には、そんな常識に囚われずぐいぐいと炭水化物メインで迫ってくるメニューがある。
目的地はサブカルの魔窟
目的地はサブカルの魔窟
目指したのはお好み焼の店
目指したのはお好み焼の店
まずやってきたのは、中野ブロードウェイ。マンガやフィギュアなど、サブカルチャー系の店が密集している独特のビルだ。

そんな中、今回訪れたのは「ひまわり」というお好み焼のお店。店の前にはさまざまなメニューのサンプルが並んでいる。
こういう「ずばり国名」メニューも気になる
こういう「ずばり国名」メニューも気になる
サンプルを見る限り、個性的なバリエーションで勝負してくるタイプの店らしい。お好み焼屋なのに「イタリア」という名のメニューがあるのも気になるが、今回のターゲットではない。
おかしいだろ、君
おかしいだろ、君
お好み焼きにそばを合わせたものを「モダン焼」と呼ぶのは知っている。ただ、そこにご飯が加わったものは初めて見た。「ライスモダン焼」なるものらしい。炭水化物がトリプルで迫る。

大阪の人は、お好み焼きをおかずにご飯を食べる習慣があるという話は結構有名だと思う。ただ、これはそれとはまた違うんじゃないだろうか。
メニュー内容より気になるのが最上部の文
メニュー内容より気になるのが最上部の文
趣味としての焼そば
趣味としての焼そば
ライスモダン焼専門シートあり
ライスモダン焼専門シートあり
人気すごそうな書体
人気すごそうな書体
店内に入ってメニューを見てみる。ライスモダン焼を探すのだが、その前に気になったのは「趣味の焼そば」なるキャッチコピー。そういうカテゴリーで焼そばを考えたことはなかった。

そしてライスモダン焼は専用別紙が用意されている充実ぶり。「超人気」という言葉そのものの勢いが過剰な気がする上、書体もスラッシュな感じ。確かにサンプルはパワフルだったけど、実体はどんなもんだろうか。注文してみよう。
意外とおとなしいな…
意外とおとなしいな…
ライスモダン焼と注文して出てきたのがこれ。サンプルで見たのとは少々様子が違う。言われなければ、普通のお好み焼きに見えるんじゃないだろうか。
粉もの・麺・ご飯の三位一体
粉もの・麺・ご飯の三位一体
意図的ではないけど、親指立ってる
意図的ではないけど、親指立ってる
中を開けるともちろん予告通りに麺やご飯が登場。料理の性質上、それらが渾然一体となって口に入ってくるタイプ。一緒に食べたことはないけれど、どんな感じになるかは想像がつきやすい組み合わせだと思う。

そしてその想像通りの味。ノリで作ったっぽい割に、料理として破綻がないのが誰とでもうまくやれる炭水化物の特質。男子校の文化祭で出てきそうなおいしさだ。

続いてはまた別の形でのトリプルアタックを食らってみよう。やってきたのは新宿・歌舞伎町にある立ち食いそば屋。
普通の立ち食いそば屋のようだけど
普通の立ち食いそば屋のようだけど
やきそばがあるのが特徴
やきそばがあるのが特徴
「後楽そば」というお店。この手の店にラーメンがあるのは珍しくないかもしれないが、ここは焼きそばがあるのが特色。左の写真でもガラスの向こうに鉄板で焼きそばを炒めている姿が見える。

そばにしようか、ご飯物にしようか。そういう迷いに加わってくる焼そばという勢力。一体どうすればいいのか。
こういうソリューションがある
こういうソリューションがある
その迷いに対する答えは「全部食べちゃえばいいじゃん」。焼そば・天ぷらそば(うどん)・五目ご飯の全てがセットになったメニューがあるのだ。

迷える子羊に示された解決策。別々に三つ頼むのは罪の気配もするけど、最初からセットになってるならこれにしてしまおう。
券売機でもいい位置につける「三色」定食
券売機でもいい位置につける「三色」定食
出てきた食券も「三色」定食
出てきた食券も「三色」定食
でもポスターは「三食」定食
でもポスターは「三食」定食
店内の表示は三色使って「三色」定食
店内の表示は三色使って「三色」定食
やや気になるのは、この定食メニューの表記のゆれ。ポスターでは「三食」定食なのだが、それ以外では「三色」定食。どちらでも意味が伝わる気がするので、いずれかが間違いとは言いにくい。

謎を解きたくなる割に、どうでもよすぎて忙しそうな店員さんには聞きにくい。ともあれ食べよう。
まあ、こういうことになるよね
まあ、こういうことになるよね
一見何の変哲もない三色(食)定食。普通のメニューが三つ並んでいるだけだからだ。

そして、よく見て考えるとそのおかしさがじんわり効いてくる。全てが主食、栄養バランスのことを忘れた食いしん坊が食べる食事だ。地味な見た目ながら、血糖値が爆発的に上昇しそうな勢いがある。
スカッと来るソース味
スカッと来るソース味
実は新鮮な食経験
実は新鮮な食経験
食べてみてわかるのは、それぞれのくっきりした味付け。個別に「俺こそ主食!俺がメイン!」と主張してくる。定食内の別のものを一口食べた瞬間から、その味の世界にくっきりと切り替わる。

定食という名前でありつつ、そこに調和はない。この分断された感覚が新しい。

最後にやってきたのは、埼玉県行田市にある「由す美(よしすみ)」というお店。
モダンデザインうどん店
モダンデザインうどん店
ふりがなつきでありがたい
ふりがなつきでありがたい
紹介する順番こそ最後になったこのお店。しかし実は、別の用事で近くに行った際にこの店で食べたメニューから今回の企画は思いついたのだ。

原稿を書いている時点で、飲食店口コミサイトの埼玉うどん屋カテゴリーにおいて点数ランキング第一位。かなりの実力がありそうだ。
おすすめメニューのボードに目をやる
おすすめメニューのボードに目をやる
真ん中のこれ、なんかおかしくないか?
真ん中のこれ、なんかおかしくないか?
そういう店ではシンプルなメニューを食べるのが定石かとも思うが、気になったのは正規メニューとは別のおすすめボードにあった「カレーうどん丼」。

頭の中で声に出して読んでみる。カレーうどんどん。何かの間違いのような響きもあるメニュー名。
普通のカレーうどんにしてはおかしいところがある
普通のカレーうどんにしてはおかしいところがある
こちらはやってきた「カレーうどん丼」。一見ごく普通のカレーうどんに見えると思う。しかし、その実体を匂わせるかすかな手がかりが隠れているのだ。
はじっこにご飯粒ついてる
はじっこにご飯粒ついてる
というわけで中からご飯さんこんにちは
というわけで中からご飯さんこんにちは
丼のふちに、一粒の米が。このカレーうどん丼、白いご飯を盛った丼の上にカレーうどんがかけられているというメニューなのだ。

確かにカレーうどんを食べ終わったあと、残ったカレー汁を前に「ご飯欲しいな…」と思ったことがある。その欲求に最初から対応しているのがこのメニューなのだ。そういう形で合理化したか。

しかし今回のテーマはトリプル炭水化物。これだけではダブルに過ぎない。
おもちでトリプルアタック完了
おもちでトリプルアタック完了
説明文のテンションも高い
説明文のテンションも高い
もう一つの炭水化物は餅。カレー味の浸食力に抵抗できるはずもなく、すっかりなじんでいる。

うどんは埼玉によくある武蔵野うどんのゴシゴシした歯ごたえとは異なり、コシがぷりぷりしているタイプ。カレー汁もうどん屋ならではのダシが効きつつ、一般的なカレーうどんよりスパイシーで体が温まる。構成要素それぞれがうまい上に、ハーモニーも素晴らしい。
うまい食べ物は人をまぬけ面にさせる
うまい食べ物は人をまぬけ面にさせる
下部のご飯は最初から入っている分、味が染みていてカレーとの一体感が高い。残り汁に後から投入すると、ご飯に「今入りました!」というよそ者感があるが、ここではすっかりなじんでる。単なるとんち以上の効果があるようだ。

まずお茶と柿を出してくれた最後の店
まずお茶と柿を出してくれた最後の店
3種類の炭水化物が組み合わせされた、栄養バランスは一度脇に置いておこうという料理。勉強は得意じゃないけど、まっすぐ走るのはやたらと速いクラスメイトのようなエネルギーがありました。
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