特集 2012年2月20日

まどか・はるみ・ビロロ、聞いたことない柑橘類たち

女子の名前だけでなく、ダンシーも混ざってます
女子の名前だけでなく、ダンシーも混ざってます
果物の中でも、さわやかでフレッシュなイメージの強い柑橘類。最も身近なのはミカンだろうが、他にもスーパーに行けばいろいろな種類のものがある。 しかし、いろいろあると言っても、1000種類あると聞いたらどうだろう。さすがにそれは想像の範囲を超える数だと思う。

それはさすがに店ではなく、研究施設。その一般公開に行ってきた。
1973年東京生まれ。今は埼玉県暮らし。写真は勝手にキャベツ太郎になったときのもので、こういう髪型というわけではなく、脳がむき出しになってるわけでもありません。→「俺がキャベツ太郎だ!」

前の記事:炭水化物トリプルアタックメニューを食べる

> 個人サイト テーマパーク4096 小さく息切れ

セクシーでもある柑橘類たち

今回訪れたのは、静岡市にある「独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 果樹研究所 カンキツ研究興津拠点」という施設。一回じゃ読めないだろ、という名前の場所だ。
プラタナス並木が迎える施設
プラタナス並木が迎える施設
「拠点」という終わり方もかっこいい
「拠点」という終わり方もかっこいい
「カンキツ研究興津拠点」という最後の部分だけでも十分かっこいい。通常は関係者以外は入れないのだが、年に一度だけ一般公開が行われる。
実がたわわって、それだけで楽しくなる
実がたわわって、それだけで楽しくなる
門から入ると、プラタナス並木の間から早速たくさんの実をつけた木がたくさん立ち並んでいるのが見える。茶色の幹に緑の葉、そこに黄色やオレンジの丸い実が鈴なり。

自分の庭でもないのに、妙にうれしい気持ちになるのはなぜなのか。奥に進んで、建物の中に入ろう。
よく見るとわかるけど、どれも違う実
よく見るとわかるけど、どれも違う実
開放されている部屋には、たくさんの種類の柑橘類がゴロゴロと並べられている。観光農園ではなく研究施設であるため、木に成っている果実は触れられないが、ここにあるものは自由に手に取っていいのもうれしい。
女性のような名前をつけられた品種が多い
女性のような名前をつけられた品種が多い
そ、そんなことしていいんですか?
そ、そんなことしていいんですか?
近年開発された品種には、「あきひめ」や「たまみ」など、女性の名前がつけられているものも多い。じっと見つめていると、勝手に想像がふくらんでくる。

さらには「持って、傷つけて香りをかいでね」という表示もある。……僕は試されているのだろうか。私がもう少し若かったなら、どうにかなってしまったんじゃないかとい う待遇。
まどかちゃんは皮下脂肪多めだね
まどかちゃんは皮下脂肪多めだね
西洋美人を勝手に想像
西洋美人を勝手に想像
おしりを擬態するフルーツ
おしりを擬態するフルーツ
安心しろ、みんな正気だ
安心しろ、みんな正気だ
特に女性のような名前の果実に爪で傷をつけ、鼻を近づけてクンクンやってると、「俺は本当に大丈夫か」という気にもなってくる。おしりのような形のものにそうしたときは、相当まずい気がした。

でも大丈夫、周りの人たちもみんな同じようにやっている。鼻腔を通り抜けていくのは、あくまでさわやかな柑橘系の香り。心の中までは他人には見えないはずだ。
女子だけでなくダンシーも
女子だけでなくダンシーも
四字熟語みたいなのも登場
四字熟語みたいなのも登場
デカフルーツでゆがむ次元
デカフルーツでゆがむ次元
手の大きさと比べると変な「獅子ゆず」
手の大きさと比べると変な「獅子ゆず」
女子の中に混じったダンシーや、漢字4文字でおじいちゃんの名前のように思えるものもある。

そしてまた別の尺度で個性的なのが、やたらとでかいやつ。中でも特に大きいものを持っている自分の写真を見て、小顔効果があるのに気がついた。
お楽しみの試食コーナー
お楽しみの試食コーナー
あまり聞いたことない品種を食べられる
あまり聞いたことない品種を食べられる
寿司桶に山盛りなのが新鮮
寿司桶に山盛りなのが新鮮
それは飲み物の名前だと思ってた
それは飲み物の名前だと思ってた
屋外のテントには試食コーナーも。食べやすくカットされた柑橘類を自由に食べられる。器が寿司桶なのは、どこかのおばあちゃんちに来たような気持ちにさせて楽しい。

定番品だけではなく、比較的珍しい品種があるのもうれしい。レモネードというのはここでは飲み物ではなく品種名。レモンと他の種をかけあわせたものらしく、レモンの風味もありつつ甘みもあっておいしい。
君たちを食べくらべるなんて…
君たちを食べくらべるなんて…
「しっかり私を見て!」
「しっかり私を見て!」
試食コーナーにも「たまみ」と「はるみ」という女性のような名前の品種が。そんな、どっちが好きなんて決められないよ…と思いながら食べたが、あっさり「俺ははるみの方が好みだな」と判断できた。

近くにはおいしいミカンの見分け方の掲示もあった。「色が濃い」「表面がきめ細かい」といったあたりは見当がつくが、「へたの周囲が盛り上がっていない」「へたの軸が細い」というのは初耳。今後店で選ぶときには参考にしよう。
楽しい散歩道
楽しい散歩道
かわいいなー
かわいいなー
充実してそうなやつもいれば
充実してそうなやつもいれば
そうでもなさそうなのもいる
そうでもなさそうなのもいる
建物の周囲は丘状になっていて、ここにたくさんの果樹が植えられている。こちらもメインの道は開放されており、道なりに生えている木々を眺めながら 歩けて楽しい。

それぞれの木には品種名のプレートがある。個性的な名前が付いていて面白い。
これに至っては
これに至っては
もうふざけてるんじゃないかと思う
もうふざけてるんじゃないかと思う
「ビロロ」などという名前のものもあった。ネットで調べてみたら、酸っぱい、香りもない、利用価値はほとんどない、などと悲しいことが書かれてい たので、せめて名前だけでもおどけてみせたのかもしれない。
一番気になったのがこれ
一番気になったのがこれ
まだなんか起きそうな予感
まだなんか起きそうな予感
今回最もインパクトがあったのは、フルーツおさわりコーナーにあった上の写真の果実。独特の形をしているし、下部を見るとまだこれからさらなる発展がありそうな予感もする。
おかしいだろ、きみ
おかしいだろ、きみ
どうやら「仏手柑(ブシュカン)」という名のものであるらしい。やはりここに置いてあるのは完全に成熟してはいないようで、写真によるとこれからどんどん広がってくるようだ。

これは気になる。しかしここはあくまで研究施設、ここにある実を買えるわけではない。
というわけでネットで注文
というわけでネットで注文
知らない新聞が詰められてる味わい
知らない新聞が詰められてる味わい
ネットで調べてみると、仏手柑を販売しているサイトがあるではないか。どうせならばとここは一番大きいタイプを選んで注文。数日後、佐賀県から段ボール箱に入って届いた。
果物というより謎の物体
果物というより謎の物体
木にタコが成っている
木にタコが成っている
いや、タコにしても脚が多い
いや、タコにしても脚が多い
仏様の手に似ているからと付けられたであろう「仏手柑」という名前。いくらありがたい名前を戴いたからといっても、これはがんばり過ぎじゃないだろうか。何がどうしてこうなるのだろうか。
手の中にこの物体がある不思議感
手の中にこの物体がある不思議感
実ではなく花のようにも見える
実ではなく花のようにも見える
宇宙から来た隕石か
宇宙から来た隕石か
海を漂うクラゲにも
海を漂うクラゲにも
その分、じっと見ていてもなかなか飽きない。目の前にあることそのものが不思議で、手に取ってもその意味が伝わってこない。この世のものとは思えないというのはこんな感じだろうか。

角度や見方によってさまざまに思えるのも深い。ただ、気になるのは外見だけではない。
「ギャー!」と聞こえてくるような
「ギャー!」と聞こえてくるような
少々罪深い気持ちにも
少々罪深い気持ちにも
それは中身と味だ。一体どうなっているのだうろか。

知るためには切ってみるしかない。包丁を当てると、妙にドキドキする。マンドレイクの伝説を思い起こすようでもあるが、恐れをなさず、ゆっくりと手に力を込めていこう。
…ん?
…ん?
ガガーン
ガガーン
全く実がない。

いや、少ないだろうなとは思っていた。ウィキペディアに「実が少ないので生食には向かない」と書いてあったのも読んだ。しかし事実は、実が全くないというものだった。
捕獲された宇宙人か
捕獲された宇宙人か
個体差もあるのかもしれないが、今回のは「全てが皮」ということになるだろうか。これ一つで2000円というメロンにも勝る高級フルーツだったのだが、実を味わ うには至らなかった。

実はなかったけどジロジロ見られて満足
実はなかったけどジロジロ見られて満足
これまで知らなかった柑橘類の世界。女性の名前がついていたり、不可思議な形だったりと、楽しく翻弄させられた。

実がなかった仏手柑は、高級版ゆず湯として風呂に入れ、仏手柑湯とでもしてみたいと思う。
▽デイリーポータルZトップへ

banner.jpg

 

デイリーポータルZのTwitterをフォローすると、あなたのタイムラインに「役には立たないけどなんかいい情報」がとどきます!

→→→  ←←←

 

デイリーポータルZは、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。

デイリーポータルZを

 

バックナンバー

バックナンバー

▲デイリーポータルZトップへ バックナンバーいちらんへ