特集 2012年3月4日

酒で米を炊いてみた

水の代わりにに日本酒を使って米を炊きます。
水の代わりにに日本酒を使って米を炊きます。
だし汁の代わりに日本酒を使って作る鍋があります。「美酒鍋」といわれる広島県東広島市西条地域で食べられる鍋料理です。

Wikipedia 「美酒鍋」

鍋の中の日本酒はアルコールが蒸発するので、良い香りを放つ共に旨味が残り、大変美味しい鍋となるそうです。

鍋が旨くなるなら米も旨くならないでしょうか?日本酒を使って米を炊いてみました。
1972年生まれ。元機械設計屋の工業製造業系ライター。普段は工業、製造業関係、テクノロジー全般の記事を多く書いています。元プロボクサーでウルトラマラソンを走ります。日本酒利き酒師の資格があり、ライター以外に日本酒と発酵食品をメインにした飲み屋も経営しているので、体力実践系、各種料理、日本酒関係の記事も多く書いています。(動画インタビュー

前の記事:揚げたてのジャイアントコーンが食べたい

> 個人サイト 酒と醸し料理 BY 工業製造業系ライター 馬場吉成 website

やっている人はいるようだ。しかし・・・

米を日本酒で炊く前に、実際にやっている人がいないかネットで調べてみました。すると、何件か実際に炊いたとのレポートが出来てきます。

「酒の香りがして美味しい」、「なんかイマイチ」と感想は様々ですが、共通して言われていることがありました。それは炊いた米が硬いということ。原因は恐らくアルコールの沸点が水より低いからでしょう。アルコールの部分が先に沸騰して蒸発してしまい、上手く炊けていないのです。

でもこれ、なんかの状況に似ていますね。そう、標高の高い場所で米を炊く時と同じです。

なんでもやっているデイリーポータル

標高の高い場所で米を炊くと、気圧が下がり沸点が下がるので米が上手く炊けません。では、どうしたらいいか。その答えはデイリーポータル内にあります。
先生よろしくおねがいします!ライターの松本さんは山の専門家。こんな山向けのiPhoneアプリも作っています。
先生よろしくおねがいします!ライターの松本さんは山の専門家。こんな山向けのiPhoneアプリも作っています。
以前、ライターの松本さんが富士山の山頂で上手く米を炊く方法を紹介しています。こちらの記事。

「富士山山頂で米を炊く 2007」

この記事によりますと、富士山山頂でも以下の点に注意すれば上手く米が炊けるそうです。

1.アルミの厚いコッヘルを使う
2.水を多めに入れる
3.コッヘルの蓋の上に石を載せる
4.とにかく弱火でコトコト炊く
5.炊けたら蒸らす
こんなにおいしそうに炊けている。松本さんの記事より。
こんなにおいしそうに炊けている。松本さんの記事より。
この教えに沿って日本酒で米を炊けば、硬くなることなく上手く炊けるはずです。やってみましょう。

コッヘルや石は無いから代わりのもので。

山の上ではなく家なので、使えるものは多い。
山の上ではなく家なので、使えるものは多い。
使用する鍋はコッヘルではなく、普通の家庭で使うアルミ鍋です。無理に山用の物を使わず、家に有る物を使います。
実験なので、一応計量して作ります。
実験なので、一応計量して作ります。
まずは米を研いで鍋に入れます。流石に研ぐ時は水を使用。流してしまう部分にまで酒を使う勇気は無かった。
このぐらいの酒を入れます。
このぐらいの酒を入れます。
続いて酒を投入。通常米を炊くときは、米の体積1に対して1.2程度の水を入れます。水は多めに入れるので、エタノールの沸点が80度ぐらいであることを考慮して、米1に対し1.45ほどの日本酒を入れます。
家の中に石は無いのでフタの上にダンベルのプレートを乗せる。5kg、10kgもあったが、デカイし重過ぎるので2.5kgプレート。
家の中に石は無いのでフタの上にダンベルのプレートを乗せる。5kg、10kgもあったが、デカイし重過ぎるので2.5kgプレート。
鍋に米と酒を入れたら、フタにおもりを乗せます。手ごろな重さと大きさのダンベルプレートを使用。家の中は使える物が多くて実験が楽だ。
酒飲んで待っているか。
酒飲んで待っているか。
おもりを乗せたら火をつけて最初は強火で。沸騰したら弱火にしてコトコトと炊いていきます。

待っている間に「さけちゃ漬け」を食ってみる

コトコト炊くのは時間がかかるので、その間に一度やってみたかった事をやってみます。
一応燗酒名人認定されています。
一応燗酒名人認定されています。
まず燗酒を作ります。
水を使って炊飯器で普通に炊いています。
水を使って炊飯器で普通に炊いています。
燗が出来たら普通に炊いたご飯を用意します。
甘いいい香りがしてきますなあ。
甘いいい香りがしてきますなあ。
燗酒を炊いたご飯にかけます。
「さけちゃ漬け」完成。米を温めた米の汁で食す!
「さけちゃ漬け」完成。米を温めた米の汁で食す!
「鮭茶漬け」ではなく「酒茶漬け」が出来ました。茶の要素はないから「酒漬け」か。体に悪そうな響きですね。

前からどんな味になるのか一度やってみたかった。こんな機会なので食べてみます。
おー、うまそー!(気分的には)
おー、うまそー!(気分的には)
ダーッ!こりゃ米の飯じゃない。ひたすら酒だー!
ダーッ!こりゃ米の飯じゃない。ひたすら酒だー!
ライターの大塚さんも言っていますが、コレは無しです。甘みの少ない、アルコールの強いどぶろくと思えばまあ飲めないことも無い。しかし、ご飯の甘味と発酵による甘味はちょっと違う。違和感は拭えません。

私は食事と酒は同時なので、おかずと一緒に米の飯を食べつつ燗酒を飲むなんて事はよくやります。こうやってかけて食べるとこうも合わないとは。二度とやらないリストに書き加えておきます。

酒で米が炊き上がる

さて、横道にそれましたが、そろそろ結果の出る頃。30分ほどゆっくりと炊いて10分ほど蒸らし、日本酒で米が炊き上がりました。
フタを開けると日本酒のいい香り。
フタを開けると日本酒のいい香り。
炊いている最中も日本酒のなんとも言えぬいい香りが立ち上っていました。フタを開けるとそれが一気に広がります。
見た目はふっくら艶やか。普段炊飯器で炊くよりも米の粒が若干大きくなっている気もする。
見た目はふっくら艶やか。普段炊飯器で炊くよりも米の粒が若干大きくなっている気もする。
日本酒で炊き上がった米は、炊飯器で炊くよりも艶がよく、米粒が膨らんで少し大きくなったように見えます。しゃもじですくった感じでも硬くはなさそうです。上手く炊けています。

なによりも、立ち上がる日本酒の香りがとてもいい。では、食べてみましょう。
ふっくらしていて甘みも強く旨いぞ!
ふっくらしていて甘みも強く旨いぞ!
日本酒で炊き上がった米はとても旨かったです。ふっくらと柔らかく、甘みも増していました。山の上で炊く方法を使えば日本酒を使ってより美味しく米が炊けることが分かりました。

ただ、アルコールは感じないものの、日本酒独特の香りが強いので、酒が苦手な人には向いてないかもしれません。
マグロとカンパチとイカの漬けを乗せた漬け丼。酢飯とは違う旨さ。
マグロとカンパチとイカの漬けを乗せた漬け丼。酢飯とは違う旨さ。
試しに丼物にしてみたところ、日本酒の香りは気にならなくなりました。米の甘味が引き立っているので、日本酒で炊いた米はそのまま食べるよりもこのように丼物にして食べるのがより良いのかもしれません。日本酒で米を炊くのはアリですね!

美味しいけれど・・・

今回は日本酒のみで米を炊きましたが、恐らく醤油や具材などを入れて炊き込みご飯のようにしたら更に美味しかったことが予想されます。是非一度やってみたい。

しかし、炊くのに時間がかかり、色々と準備が要るので面倒です。そして、最大の問題は使う日本酒が多いこと。料理が美味しくなるのは嬉しいが、そのまま飲んだほうがもっと嬉しいと思うのは私だけではないでしょう。

これだけ豪快に日本酒を使う料理は、数年に1回ぐらいの気まぐれにしておきます。
さけちゃ漬けは漬物と一緒に食べたら結構美味しかった。こうなると米は関係なくただ酒だ。残すものか!
さけちゃ漬けは漬物と一緒に食べたら結構美味しかった。こうなると米は関係なくただ酒だ。残すものか!
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