特集 2012年3月10日

地名餃子を食べ歩き誕生させる

これは金町餃子です!
これは金町餃子です!
地名を冠にした「地名餃子」なるものがこの世には存在する。「宇都宮餃子」などがそれにあたる。

調べてみると、この地名餃子は東京にもあるようだ。今回はそれらを食べ歩き、最終的には地名餃子を作ってみようと思う。
1985年福岡生まれ。思い立ったが吉日で行動しています。地味なファッションと言われることが多いので、派手なメガネを買おうと思っています。(動画インタビュー)

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地名餃子とは?

地名を冠にした餃子が存在する。先に書いた「宇都宮餃子」もそうだし、三重県津には「津ぎょうざ」なるものがあり、北九州の八幡には「八幡ぎょうざ」というものがあるそうだ。僕はそれらを地名餃子と呼んでいる。
ちなみに餃子は大好物です
ちなみに餃子は大好物です
このような地名餃子が近くにもないものかと思っていたら、東京にもあるようだ。宇都宮や津のような広範囲ではなく、もっと狭い範囲の地名がつている。早速食べに出かけることにした。
西荻窪にやって来ました
西荻窪にやって来ました

西荻餃子

中央線の駅である「西荻窪駅」。荻窪駅、吉祥寺駅に挟まれ若干影が薄い場所だ。中央線も動物園で言うと雉のオリの前のような感じで平日以外は通過してしまう。駅前には「せんとくん」の製作者が作った象の像がなぜか鎮座している。
「せんとくん」と通ずるものがある
「せんとくん」と通ずるものがある
そんな西荻窪、通称「西荻」にある地名餃子が「西荻餃子」である。駅前に入り口がある仲町街というゴールデンレトリーバーが3匹横に並んで歩けば追い越しできなくなるような狭いアーケード街にあるお店だ。
西荻餃子(東京都杉並区西荻南3-10-10)
西荻餃子(東京都杉並区西荻南3-10-10)
間違いなく地名を冠にしている餃子だ。メガネがないと生活できない僕がメガネを外しても読み取れるほど大きく「西荻餃子」と書かれている。もちろんメガネをつけて見てみるとより鮮明に「西荻餃子」と読み取れた。
テイクアウト専門です
テイクアウト専門です
もうかなり前からあるお店らしく、キャベツとひき肉が主原料で冷えてもギトギト感がなく美味しいそうだ。「西荻を意識して作っているんですか?」と聞いたら別にそういうわけではない、という答えだった。西荻にあるから西荻餃子なのだ。
美味しそう!
美味しそう!
モチモチの皮とキャベツの甘みが絶妙。その美味しさは、いつまで経っても「中国4000年の歴史」という止まってしまった時間を動かせるほどだった。西荻窪から中国4001年の歴史を刻んだ気がした。
うまいの最上級の「うんまい」です
うまいの最上級の「うんまい」です

金町餃子

次は金町駅にある地名餃子をいただく。常磐線などが止まる葛飾区にある駅だ。隣の駅は松戸駅で、もう千葉が手を伸ばせば届く位置にある。松戸駅の方が大きいので、ここもどこか影が薄い気がする。
金町駅
金町駅
そんな金町にあるのが「金町餃子」だ。駅からすぐなのだけれど、その道中には「金町」よりも違う地名が多かった。「博多ラーメン」「うどん四国大名」「長崎カステラ」など。ホームなのにアウェイ感が漂う。そんな場所に金町餃子はあるのだ。
金町餃子(東京都葛飾区金町6-5-1)
金町餃子(東京都葛飾区金町6-5-1)
この金町餃子は中国餃子だそうだ。ややこしい。やはり金町にあるから金町餃子なのだろう。この餃子からピーナッツの脅威などは感じ取れない。ただ美味しそうなだけだ。こういう猫がいたら絶対にかわいいだろうという餃子なのだ。
コロコロしている
コロコロしている
絵に描いたような具沢山。そしてモチモチの皮がたまらなく美味しい。ニンニクが入っていないので、パンチ力こそないが、母性のような優しさに満ち、いくらでも食べられる気がする。彼女にしたいタイプの餃子だ。これまた中国の歴史を進めたと思う。あわせて中国4002年の歴史だ。
美味しくてなのか、すっごいアップな写真になっていた!
美味しくてなのか、すっごいアップな写真になっていた!
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亀戸餃子

次の地名餃子がある場所は亀戸。
亀戸までは東武亀戸線に乗ってやって来たのだけれど、その亀戸線の踏み切りは白と黄色と黒というものが多かった。見慣れた踏み切りは黄色と黒だったのでとても驚いた。
白と黄色と黒の踏み切り
白と黄色と黒の踏み切り
そんな踏み切りに見とれながらやって来た亀戸
そんな踏み切りに見とれながらやって来た亀戸
亀戸といえば亀戸天神などが有名だ。上京してきた頃は「い」はどこに行ったのだろうと思っていた。「い」の要素がないのに「かめいど(亀戸)」。今はもうなれてしまいそのような疑問はなくなってしまったけれど。
亀戸天神
亀戸天神
そんな場所にある地名餃子が「亀戸餃子」。もう50年以上前からある有名な餃子だそうだ。飲み物を除けばメニューは餃子だけ。正真正銘の餃子の専門店である。営業時間が「~売り切れまで」となっているあたりに人気店であることがうかがえる。
亀戸餃子(東京都江東区亀戸5-3-4)
亀戸餃子(東京都江東区亀戸5-3-4)
今までの餃子はモチモチが特徴だったけれど、亀戸餃子はパリが合言葉。具のシャキシャキ感も素晴らしく、なんかもう笑っていた。頬を急にぐい~と引っ張られても怒らないくらい幸せな気持ちになった。
パリっとした皮が特徴
パリっとした皮が特徴
お店に入ると黄色いカラシが白い小皿に盛られて運ばれて来た。その小皿に自分で酢と醤油を注ぎ、餃子に付けるタレを作ることになる。それを見ていてふと思った。これは、亀戸線の踏み切りと同じではないかと。亀戸餃子は亀戸を意識しているのだ!
色合いが同じ
色合いが同じ
興奮気味にお店の方に聞いてみると、「特にそういうことはないな~」とのことだった。僕の十八番である勝手な勘違いだった。亀戸にあるから亀戸餃子なのだ。とても美味しく15個も食べてしまった。
具のシャキシャキ感も好きだった
具のシャキシャキ感も好きだった

地名餃子を作りたい

地名餃子を食べ歩き、その結果ぜひ地名餃子を作ってみたいと思った。だって、亀戸の餃子といえば「亀戸餃子」となり、味噌カツといえば名古屋のように、その土地を代表するもの(餃子)になれるのだ。そういうものを作ってみたい。
梶が谷餃子を作ります
梶が谷餃子を作ります
まずはどこの餃子を作るか考えた。すでに地名餃子があるところはダメだ。そこで「梶が谷」という場所をチョイスした。神奈川県川崎市高津区ある田園都市線沿いの町「梶が谷」。お隣には溝の口という大きな街もある。
最近梶が谷にできたコイン精米所(田んぼなんて全くないのに)
最近梶が谷にできたコイン精米所(田んぼなんて全くないのに)
せっかくなので、地名だけでなく梶が谷にちなんだ具材や、その餃子から梶が谷を感じ取れるものにしたいと思う。今回食べ歩いた地名餃子はそのようなことをしていなかったけれど、それは美味しいからであり、素人の僕が作る餃子はそのような付加価値をつけなければ勝負できないのだ。
梶が谷駅の駅前(何もない)
梶が谷駅の駅前(何もない)
梶が谷の隣である溝の口駅の駅前(栄えている。わずか一駅でこの違い!)
梶が谷の隣である溝の口駅の駅前(栄えている。わずか一駅でこの違い!)

梶が谷は谷

梶が谷餃子を作るにあたり、まずは梶が谷の特徴を抑える必要がある。その特徴をこれから誕生する「梶が谷餃子」に活かすのである。ちなみにそもそも梶が谷をチョイスしたのは僕が住んでいるからである。
梶が谷あるある:帰りたくなくなる
梶が谷あるある:帰りたくなくなる
梶が谷はとにかく帰りたくなくなる起伏のある街並みをしている。僕は梶が谷駅から家に帰るまでに、上って、下って、上って、下ってをしなければならない。梶が谷という地名から連想できるけれど谷なのだ。
そもそも家から出たくもなくなる
そもそも家から出たくもなくなる
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梶が谷あるある

梶が谷の隣は溝の口という大きな街。
溝の口では田園都市線、大井町線、南武線という3つの電車に乗ることができる。梶が谷は田園都市線だけ。しかも急行は止まらない。日中は3本に1本が急行だ。つまり3本に1本は梶が谷を通過していくのだ。
梶が谷あるある:3本に1本は通過
梶が谷あるある:3本に1本は通過
溝の口にはスタバがある。オシャレなコーヒー屋だ。しかし、梶が谷にはない。ないのだ。しかし、タリーズコーヒーがある。店内にはオシャレな雑貨屋のような音楽がかかっている。ドトールコーヒーもある。こちらは2階立てだ。
梶が谷あるある:タリーズコーヒーがある
梶が谷あるある:タリーズコーヒーがある
梶が谷あるある:ドトールコーヒーもある
梶が谷あるある:ドトールコーヒーもある
さらに梶が谷にはフレッシュネスバーガーがある。オシャレなハンバーガー屋である。梶が谷に住む人にとっては、ここのオープンテラスで犬に水を飲ませながら、ハンバーガーを齧ることがステータスの一つ。僕はそう思っている。
梶が谷あるある:フレッシュネスバーガーもある
梶が谷あるある:フレッシュネスバーガーもある
最後の梶が谷あるあるは「練り物が半額」である。僕が帰りがけに寄るスーパーは、いつ行っても大体練り物が半額で売られている。練り物が好きな僕には天国のような町なのだ。だって満額ではなく半額でいいのだ。
梶が谷あるある:練り物が半額
梶が谷あるある:練り物が半額
これが梶が谷のおおよそ全てである。以上のような特徴を活かして「梶が谷餃子」を作りたいと思う。特にひねらず素直にその特徴を活かしたい。ということで、以下が梶が谷餃子の材料となる。
梶が谷餃子の材料(皮とひき肉は梶が谷駅の横にある東急ストアで買った)
梶が谷餃子の材料(皮とひき肉は梶が谷駅の横にある東急ストアで買った)

梶が谷餃子作り

梶が谷餃子はまず「フレッシュネスバーガー」で買った「フレッシュネスバーガー」を小さく刻むところから始まる。特製ミートソースと厚切りトマトが特徴のハンバーガーだそうだ。このまま食べたいという気持ちを抑えて刻んでいく。
刻む!
刻む!
半額の練り物も刻む
半額の練り物も刻む
フレッシュネスバーガーと半額の練り物を刻んだら豚のひき肉を入れてこねる。果たして美味しいのかと疑問が浮かぶけれど、梶が谷を切り取った結果なのだから仕方がない。ある程度こねたら今度はコーヒーを入れる。
タリーズコーヒーを入れる
タリーズコーヒーを入れる
ドトールコーヒーも入れる
ドトールコーヒーも入れる
部屋中にコーヒーの匂いが漂い休日の午前中、春風がレースのカーテンをそよがせる、みたいな光景が浮かんだ。しかし、こねていくとコンビニの肉まんみたいな匂いがした。急に小腹がすいた深夜みたいな光景だ。
完成!
完成!
初めての餃子作りなのだけれど、いたって順調。餃子作りの楽しさにはまりかけていた。時間が腐るほどあって暇で、趣味がない人間だったら餃子作りにはまるだろうと思う。つまり僕ははまったのだ。
包んでいく
包んでいく
完成!
完成!
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梶が谷餃子完成!

あとはこれを焼けば完成である。餃子の良い点は包んでしまえば中が分からない点である。具が三角コーナーのような感じでも包んでしまえば分からない。もちろん梶が谷餃子はそうではないけれど。
梶が谷餃子(神奈川県川崎市高津区梶が谷6丁目←僕の家)
梶が谷餃子(神奈川県川崎市高津区梶が谷6丁目←僕の家)
美味しそうな梶が谷餃子が完成した。具も梶が谷だけれど、盛り付けも梶が谷の特徴を抑えている。まず餃子は4つ。食べ歩いた餃子はすべて5つだったけれど、これは梶が谷駅で3本に1本電車が通過する様子を表している。ちなみに餃子が3個の場合もある。
「通過停車停車通過停車」だと3個。停車から始まれば4個となる
「通過停車停車通過停車」だと3個。停車から始まれば4個となる
餃子の置き方も梶が谷である。普通は焼いた面を上にして出てくるけれど、梶が谷餃子は起伏を表現するために、横向きになっている。やはり梶が谷において、谷を表現しないわけには行かないのだ。
谷を表現
谷を表現
餃子の隣には付け合せとして肉を配置した。500グラムもある肉である。これは梶が谷の隣にある溝の口を表している。大きな街なので大きな肉にした。もうどちらがメインなのか分からないのが梶が谷餃子である。正直な話、僕はその分厚い肉にテンションが上がった。
肉は溝の口
肉は溝の口

梶が谷餃子はアメリカン!

いよいよ梶が谷餃子を食べてみる。梶が谷100%の餃子。ドキドキしながら口に運ぶとこれが非常に美味しい。もし彼女がこれを作ってくれたら抱きしめるし、子供が作ってくれたら料理の道を志すように「中華一番!」あたりを買い与える。
興奮でぶれる
興奮でぶれる
バンズのおかげなのか肉の旨みが餃子に滞在したままな気がする。だから美味しい。もっとも中華とは離れていて「アメリカン」という言葉がこの味わいには合う。カーボーイが馬の上で食べたいものランキング、のようなものがあれば上位に選ばれるような味なのだ。
分厚い肉も食べれて大満足でした(この辺もますますアメリカン)
分厚い肉も食べれて大満足でした(この辺もますますアメリカン)

梶が谷餃子が来る

どの地名餃子も美味しかったし、自分で作った梶が谷餃子もやはり美味しかった。ぜひこの餃子を出すお店を「Lカジ祭り」に出したい(そういう地域のお祭があるんです)。溝の口の表現だけで1000円以上したので、1500円くらいで売りたいと思う。当日は全員、通過から始まり餃子は3個になると思う。
でも、美味しいですよ!
でも、美味しいですよ!
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