特集 2012年3月12日

アップルという名のみかん水

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神戸の新長田のあたりでは、アップルというジュースが好んで飲まれているらしい。

そのアップル、りんごの味じゃなくてみかんっぽい味で黄色いらしい。えっ、なぜアップル…。

気になったので飲んできた。
1983年三重県生まれ、大阪在住の司法書士。
手土産を持参する際は消費期限当日の赤福で受け取る側に過度のプレッシャーを与える。

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色んなモノの街、長田

ということで新長田までやってきた。何度も見たことがあるがとりあえず鉄人28号を見ておく。
身近すぎるロボット
身近すぎるロボット
鉄人28号が出来て3年。周りに馴染みすぎて股の下を自転車が通り過ぎても違和感がない。「名物」という感じから「景色」くらいになっている。地域密着とはこういうことか。

お参りも済ませたのでアップルだ。アップルは主にお好み焼き屋で飲まれているらしいのでお好み焼き屋さんを探す。
のれん以外情報なし。
のれん以外情報なし。
ここ長田は、粉もん屋集積率一位でもあるらしいので適当に歩けばあるだろう。と思っていたが、あまり見当たらず、やっと見つけたのがのれんだけが出ているお店。

メニュー見えないが、大丈夫、だよね…。お腹が減ったし、入るか。

ビックリするほど家庭的

ドアを開けた瞬間驚いた。店内は鉄板一枚のみでカップルが仲良くお好み焼きを食べている。ちょっと気合入った人の家の台所に入っちゃった気分。
店内全景。
店内全景。
えっ、あっ、これ、どうしよう。俺、これ、いていいの!?と、戸惑っていたら、カップルの女性が「あたし今からタイツ脱ぐね」って言い出した。

なんだそれ!僕!ここに!います!!って力強く「一人ですけどいいですか」って言って座ったら、カップルはお会計を済ませて出ていった。「今から」というのは「ここで」という意味ではなかったようだ。
関西風ではない焼き方ですな。
関西風ではない焼き方ですな。
なんだかよくわかんないけどガッカリしながらメニューを見ると、あった、アップル!アップルと月見肉玉を注文した。

飲んだこと無いけど懐かしいアップル

アップル、普通のりんごジュースが出てきたらどうしよう。と思っていたら「はい、アップル」と言いながら出されたのは何も印刷されていない瓶に入った黄色いジュース。
これが、アップル…?
これが、アップル…?
あっ、アップル…?噂どおりのりんごじゃないっぽさ。飲んでみると不自然な甘さに少しの酸味。あ、これ、飲んだこと無いけど、飲んだことある感じ。科学の味がする。なんだか懐かしい一昔前の科学の味だ。

「アップルってりんごの味じゃないんですね」店員さんに話を聞いてみる。

店員さん「せや、アップルはアップル味、りんごの味するのはりんごジュースや」

なんだその、WindowsのPCはパソコンでAppleのPCはMacみたいな扱いは。
コカコーラとこのジュース位の距離がりんごジュースとアップルの距離。
コカコーラとこのジュース位の距離がりんごジュースとアップルの距離。
店員さん「確かに今飲んでみると全然りんごの味せーへんねんけどな、昔はこれでりんごやいうて喜んどったんよ。チューチューみたいやろ」

あぁ、チューチュー、確かにそれっぽい味だ。懐かしく感じたのはそこからか。
お好み焼き焼けたよ。
お好み焼き焼けたよ。
店員さん「昔はどこでも売っててんけどな、今はもうお好み焼き屋くらいでしか見かけへんわ。でもな、あっついお好みに冷たいアップルは最高やで」

そう、アップルはご飯に絶対に合わないと思うがお好み焼きには不思議と合う。

みんながひとつの方向に向かって力を合わせる。みたいな感じではなく、あの人達、一緒にいてもバラバラな事してるのに、一緒にいるとなんだか楽しそうだよね。みたいな感じ。
はい、どろーり。
はい、どろーり。
お好み焼きをおやつとして食べる、ということを聞くたびに、よくわかんねーな。と思っていたが、アップルと一緒にならばおやつになりうる、アップルとお好み焼きの組み合わせは日本のジャンクフードだ。

アップル工場を探しに行って見つからなかった

そんなアップル、このあたりでしか作っておらず、このあたりでも作るところが減ってきているそうだ。と、言うことは近くに工場があるのでは。調べてみると近くにあるようで、ちょっと見てみたいと行ってみた。
向かう途中の商店街で見つけた、争った痕跡が見える婦人パジャマ(日本製)
向かう途中の商店街で見つけた、争った痕跡が見える婦人パジャマ(日本製)
が、見つからなかったので期待して読み進めた人はガッカリするんじゃないかと思って先に見つからなかったと言っておこう。
途中で見つけたカッコいい自転車。
途中で見つけたカッコいい自転車。
iPhoneで調べた地図を頼りに歩く。ただの住宅街でもちょっと離れたところだとなんだか楽しいのが不思議だ。

駄菓子屋はおじいちゃん感溢れてこそ

もしや、アップルがあるのでは。
もしや、アップルがあるのでは。
そろそろ工場があるはずだ、という所で駄菓子屋が見つかった。これはアップル置いてそうだぞ。と思って中に入る。
アップルはなかったけど、タッパ入ってた。
アップルはなかったけど、タッパ入ってた。
さぁ、アップル!と思ってジュースの棚を見たらアップルは無かったが「くぎ煮」と書いたタッパが入っていた。神戸名物、いかなごのくぎ煮(小魚の佃煮)。今が旬ですよね。
おせんべいの小袋小分け売が嬉しい。
おせんべいの小袋小分け売が嬉しい。
大袋も普通に売ってる。
大袋も普通に売ってる。
その他にも、一箱が大きいクッキーやおせんべいが分けて売られていて子供への優しさと、おじいちゃんちに来た感じが嬉しい。

最近レトロな感じを打ち出した駄菓子屋がたまにあるけれど、売っている商品は駄菓子でなくてもこっちのほうが駄菓子屋だと思う。
おせんべいとコーラドリンク買った。
おせんべいとコーラドリンク買った。
レジに人がいなかったので「すみませーん」と声をかけると、歌いながら洗い物をしていたおじいちゃんが歌いながら出てきて、歌いながらお会計をしてくれた。丁重に扱われている感じはしないが、なんだか心地いい。
住所ではこのあたりなのだが。
住所ではこのあたりなのだが。
と、楽しく歩いているが、目的のアップル工場は見つからない。地図上ではこのあたりだが、それらしきものはなし。歩いている人に聞いてみると「西村さんとこ、やっとったかも」と言うので西村さんとこはどこかと聞くと「あっち」とのこと。
焼きそば屋にもアップルあった。
焼きそば屋にもアップルあった。
あっちに行ってみても見当たらなかったので、まぁ、しゃあないかぁ。と思って焼きそば食べて帰った。

隙があるものっていいよね

アップル、確かに全然りんご味じゃなかった。りんごジュースとしての完成度は高くないけど、アップルとして魅力的。お好み焼き屋のおっちゃんの「アップルはアップル味や」というのがよくわかる。

色んなモノが高品質、高性能化していく中で高品質じゃない方がむしろ良いよね。みたいに思うものもある。でもそれらが無くなっていくのも残るのも自分たちの選択次第。好きなものが残るように、好きなものを選んでいくようにしたいですな。
ぼっかけ焼きそば(牛すじとこんにゃくの焼きそば)すごく美味かった。
ぼっかけ焼きそば(牛すじとこんにゃくの焼きそば)すごく美味かった。
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